ソニーはInternational CESにおいて、「VAIO type P」という“ポケットスタイルPC”と呼ばれる、新しい形のPCを発表した。 VAIO type Pの最大の特徴は、16.5mmというフルサイズよりは若干小さなキーピッチながら充分にタッチタイピングが可能なキーボードを備え、1,600×768ドットというまったく新設計の8型ウルトラワイド液晶を採用して、従来のポータブルタイプのUMPCなどにはなかった本格的なPCとしての利用が可能になっていることだ。 それを実現したのはソニー自身が“日本の開発・製造の英知を集結させた”という、高集積のマザーボード、液晶メーカーに働きかけて新型液晶を作ってもらったこと、超薄型の新機構キーボードなどの数々の要素技術だ。これぞ“日本メーカーの矜持”というべきその製品を作ったソニーのエンジニアの方々に、本誌らしく特に内部構造にフォーカスを当ててお話を伺ってきた。 ●自分たちが欲しいものを作る、だからそれに必要な部材をチョイスする Q:今回のVAIO type Pの製品企画を行なう、もっとも基本的なコンセプトを教えてください。 伊藤氏:現在のモバイルシーンを俯瞰してみると、みなさん携帯電話とかスマートフォンといったデバイスを最低は1つは持ち歩いていらっしゃると思うんです。そうした中で、それと一緒に持ってもらえるPCって何だろう、というのが出発点だったのです。 一般的にこうしたPCだと、ビジネス向けにフォーカスするのか、それともプライベートユースにフォーカスするのかということを最初に決めるんですが、この製品の場合にはある時点から一気にパーソナルユースということを意識して製品作りをしていくようになりました。このため、試作の段階ではミニD-Sub15ピンやEthernetなども内蔵させてみたりしていたのですが、これらを取り外すことにしましたし、製品作りの方向として平日のウィークデーだけでなく、休日のお供として持って行ってもらうという視点も重視しました。 そうなると、本体のサイズも休日のバッグに入るようにならないといけない。特に最近の流行のバッグは薄いものが多くそういうものに入らないといけないし、女性向けのバッグでも横に長いバッグが流行ですので、そうしたバッグに入るサイズである必要があるだろうと考えました。 そうして考えていくと、キーボードの使い勝手とディスプレイの解像度は必要だと考え、ジャストキーボードサイズというコンセプトを立てました。 鈴木氏:もう1つ付け加えるのであれば、弊社のラインナップの中で、例えばtype Gという製品が1kg前後の製品として存在しています。このため、VAIOの中での棲み分けという観点でも、それなりの軽さである必要があるだろうとは考えていました。仮に重量が1kgであるのであれば、type Gでいいんじゃないとなってしまいますので。このため、“一番小さいVAIO”を作ってやろう、というのはありましたね。
Q:ということは、重量のターゲット設定があったということですか? 鈴木氏:実は、VAIOでは珍しい話なんですが、今回の製品には設計当初から重量のターゲットはありませんでした。どちらかというと、形、薄さをやっていけば勝手に軽さは実現できるだろうと考えていました。我々が設定したのは、薄さでは20mm以下、奥行きでは120mmという2つのターゲットで、この2つは絶対に守ってやろうと考えていました。 Q:例えば、CPUのチョイスはN系のAtomではなく、Z系のAtomが選択されています。これらも薄さや奥行きなどを実現するためにこだわったと言うことなのでしょうか? 鈴木氏:決定的な要因になったのは弊社では“スタミナ”と呼んでいるバッテリ駆動時間です。また、すでに述べたように薄さや奥行き、そして軽さを実現するためにもZ系のAtomのチョイスは有効です。確かにN系のAtomを選択すれば、コストは安価になる。しかし、その対価としてZ系に比べてバッテリ駆動時間は短くなってしまうし、本体のサイズも厚くなってしまう。 実はこの製品の企画を始めた段階では、いわゆるネットブックと呼ばれている製品がここまで広がりを持ってくるとは想定していませんでした。ですから、そうしたこともあんまり考えていなくて、弊社が作りたいものはなんだろうということを真剣に考えていくと、N系を選択すると安いものにはなるかもしれないが、作りたい物は作れないと考えました。 伊藤氏:仮にコストだけを重視して製品作りをするのであれば、バッテリの素材にもリチウムポリマーを採用するということはあり得なかったですし、これ専用のディスプレイを起こすなんてことはあり得ないと思うんです。CPUの選択だけではなく、我々が目指していたモバイルのあり方を真剣に考えていったら、こういう選択肢になったのです。 Q:Z系を選択すれば消費電力やフットプリントなどの点で有利で、薄く長時間駆動の製品が作れるというのは、納得できる話です。しかし、一方BOM(Bill Of Material、部材のコスト)を考えると、Z系の方がN系よりも高めであるのは事実です。 伊藤氏:我々としてはこの製品が目指しているところには自信を持っています。これまでもVAIOが実現してきた妥協しないモバイルというところを、市場に提案していくんだ、そしてそうした市場を牽引してきたんだという自負もあるので、自分たちを信じて突き進んでいくしかないなと考えています。 Q:とはいえ、これまでのVAIOの価格体系と比べても、BOMとの割合を考えると、店頭売りのモデルで10万円というのはかなり思い切った価格設定ではないですか? やはりネットブックによる低価格の流れというのは影響しているのではないですか? 鈴木氏:私たちエンジニアが価格設定をしているわけではないのですが、おっしゃるようなことは否定できないと思います。正直に言ってネットブックがここまできていなければ、こうした価格設定は無かったかもしれないですね。 ●キーストロークは1.2mmだが、打鍵感は充分なものを確保 Q:それでは、実際に本体を分解しながらお話を聞いていきたいと思います。まず、この製品では表からはビスがどこにあるのか見えないようになっていますね。
鈴木氏:そうですね、デザイン上の要請からそうした構造になっています。バッテリを外したところに、ビスがあってそれを外すことでキーボードが取り外せるようになっています。キーボードは、12カ所のツメでマグネシウムのセンターフレームにかみこむ構造になっていて、剛性を確保しています。余談になりますが、フレームの方にはもう少し穴がありまして、本当はもう少しツメつけたかったんですが、さまざまな事情で12カ所になっています(笑)。 Q:なるほど、確かに実際に打鍵してみるとキーボードはたわまないし、思ったよりもクリック感がありますよね。 鈴木氏:我々もVAIO全体の中で、キーボードがたわんだりしてフカフカしたら気持ちが悪いというのは経験的にわかっていますので、なるべくそうしたことを起こさないような構造にしようと注意して設計しています。今回の構造をとることで浮きもしなければ、沈みもしないので、快適に入力していただくことが可能だと思っています。また、今回はキーボードそのものも特注品になっています。キーボードベンダ様にお願いして新しい構造のパンタグラフやモールドを採用したキートップを開発してもらったのです。 Q:見た目でもわかるとおり、ストロークはあまり大きくないと思いますが、実際に打ってみると、そうは感じませんね。 鈴木氏:たぶん数字をお聞きになると、“えっ? ”と思われるような数字ですよ。今回の製品のキーストロークは1.2mmになっています。我々も開発を始めた当初は1.2mmという数字には内心おっかなびっくりでした。実際にいくつか試作してみて、1.0mmとか1.1mmとか試してみた結果、ギリギリが1.2mmだったのです。 ただし、キーボードを押した時の圧力カーブがあると思うのですが、それに関しては通常のものに近いレベルのカーブを実現しています。我々も実際に入力してみて、感触を確かめて、これならいけるだろうと判断しました。 Q:キーボードを分離型にしているのは、VAIOのトレンドなのでしょうか? 鈴木氏:そうですね、デザイン的な理由と使い勝手の理由と両面があります。今回は特に16.5mmというVAIOとしては最小のキーピッチですので、隣のキーを押してしまう可能性があります。そこで、分離型のキートップにしたほうが有利であると判断していますし、実際にその効果がでていると考えます。
Q:今回はポインティングデバイスが、他のVAIOとは異なりパッド型ではなくスティック型を採用しています。私のようなハイエンドユーザーは大歓迎ですが、さりとてすでにパッドに慣れている一般のユーザーさんには戸惑いもあるのではないかと思いますがいかがでしょうか? 鈴木氏:ご存じのようにVAIOでも過去の機種では何機種かスティック型を採用しています。好き嫌いがあるのは事実ですが、熱心に支持してくださるユーザーさんもいらっしゃいます。今回スティック型の採用を決めるにあたり、社内ではさほど議論にはなりませんでした。というのも、今回は最初にジャストキーボードサイズということを絶対的なコンセプトにしていたので、そこにタッチパッドを入れようとすれば、奥行き120mmという目標は達成できなくなってしまうので。 Q:タッチパネルを搭載すると言うことは考えなかったのでしょうか? 鈴木氏:その議論は確かにありました。ただ、タッチパネルがついていると、お客様はパネル側を持って操作されるようになるという懸念がありました。今回は液晶のヒンジを軽いものを使っていたりと、あまりそうした使い方は想定していませんので、タッチパネルがついているのは変かなと。別の技術的な課題として、富士通さんの製品のようにコンバーチブルにするには、奥行きと厚さが必要になるんです。今回の製品では薄さ20mm、奥行き120mmという目標を絶対に守ろうと考えていたので、タッチパネルは難しいだろうと判断しました。 ●CAD上に部品を並べてみたら、ラーメン屋の客待ち数百名みたいな状況に Q:さて、いよいよ基板に到達ですが、非常に小さい基板になっていますね。これだけ小さくなると、電源の設計なども大変そうですが、いかがでしょうか? 木村氏:そうですね、ただ電源の密度自体は他の製品とはあまりかわっていません。ただ、今回の製品では高さ制限がきつくて、上に上にと部品を実装していくことができないのです。このため、コンデンサなども高さが低いものを探してきて利用しています。本当なら背が高い方が効率がよいので、それを使いたかったのですが、そうも言っていられないので、できるだけ低いものを探し出してきて使っています。 Q:なるほど、今回の基板は何層基板なんですか? 木村氏:10層基板です。スタンダードな6層基板に比べるとコストはかかっています。 Q:それだけの多層基板を採用するということは、配線や部品の実装が大変だったということなのでしょうか? 木村氏:そうですね、例えばメモリなんですが、今回国内向けには2GB、海外向けのSKU(製品種別)では1GBのメインメモリを実装しているため、8つのメモリチップを搭載する必要がありました。このため、最初はメモリデバイスを、基板の表と裏、両方に搭載しようという案も考えたりと、配置が大変でした。 鈴木氏:今回、実際に基板設計のCADデータを持ってきたのでご覧になっていただきたいのですが、見ていただいてわかるとおり、当初の部品配置では部品が基板上に全く載りませんでした。CAD上で、あれが載らない、これが載らないとあれこれやったりして、そのたびに一喜一憂(笑)。企画の伊藤さんに、もう駄目だよ、とか泣きを入れてみたりとか(苦笑)。 伊藤氏:私もこの図面をずっと見せられていて、進捗を見守っていたんですが、正直言って入るとは思えませんでしたよ。その時同僚と言い合っていたのは、“今日はラーメン屋の行列何人だった”と、載らないパーツを人気ラーメン店の行列にたとえて見たりとか(苦笑)。
Q:確かにこれはすごいですね。結局どのようにして入れたんですか? 木村氏:いくつかポイントはあるんですが、結局メモリカードを諦めて別基板にしておくことにしたんです。また、部品の徹底的な小型化を行なって、それをA面(筆者注:いわゆる表面)とB面(同:裏面)に分散しておいたりとか、ともかく地道な作業をやっていきました。また、後期のデータを見ていただくとわかるんですが、最終的には基板を止める穴も必要になるので、それを空ける必要がでてきて、さらにショックとか(笑)。メモリも1GBまででよければ、半分の場所で済むので、嬉しいなとかあるのですが、企画側からの要望でやっぱり2GBは必要でしょうということになって、その場所をなんとか確保したりと、大変でした。 鈴木氏:ご覧になってわかるとおり、この基板ではチップセットの真裏が電源になっているのです。普通そういう設計は、電源のノイズでチップセットに影響がでてしまうのでNGなんですが、今回は優秀な多層基板を採用したので、それを回避することができて、可能になりました。 Q:なるほど、それでもUSBポートなどがちゃんと確保されているのだから立派です。 鈴木氏:そうですね、実は設計として議論していたのは、ExpressCardスロットやPCカードスロットは取ってもいいのか、という点でした。しかし、それを入れる場所はないので、今回は取り外すことにしました。じゃあ、無くすとして、ExpressCardスロットに入るExpressCardって何が市販されていて、かつそれはUSBで代替できないのか、ということを検討しました。結論としてはExpressCardをUSBで代替できないのは、eSATAのカードぐらいで、それは今回の製品の性格上対応できなくても使い勝手には影響はないだろうと判断しました。 Q:確かにそれはそうですね、ただ、わがままなユーザーとしては、ドッキングステーションはあってもよかったかなとは思います。 鈴木氏:確かにそれは我々も検討してみました。しかし、今回のチップセットとして採用したIntel SCH US15Wのポート数を考えると、すでに内蔵デバイスとしてワンセグかWAN、無線LANなど結構詰め込んでいて、さらにドッキングステーションをサポートするとなると負荷が増えてしまうので、今回は見送ることにしました。 ●無駄なスペースは許さないという執念で複数の基板を組み合わせて有効利用 Q:今回は基板が1枚ではなく、3枚が1セットで1つの基板を構成しています。こうした複雑な構成をとった理由は何でしょうか? 木村氏:本当は1枚の基板でやれればそれがベストなのは事実です。しかし、今回はセットの方で高さに制限があって、1枚の基板だけでは実装出来る場所もありません。そこで、逆に複数の基板を積極的に利用することで、高さを有効利用できるようにしているのです。 Q:と、いいますと、どのような構造になっているのですか? 木村氏:今回基板にはフレックスリジッド基板と呼ばれるものを採用しています。いわゆるフレキケーブルと呼ばれるものが基板から直接生えている形のものになっています。これをうまく利用することで、高さの違う基板を互い違いに接続することで、高さ方向を有効利用しているのです。ご覧になっていただければわかるとおり、ワンセグや無線LANのモジュールが載っている2枚目の基板とメインの基板はそれぞれ互い違いに接続されていて、それぞれのA面に背の高い部品を搭載することで、高さをうまく調整できるようになっているのです。 鈴木氏:しかも、さらにサブ基板として、SDカードとメモリースティックのスロットを搭載している基板が、メイン基板の上に亀の子で接続されているのですが、これもフレックスリジッド基板を利用していて、電気的には2枚目のワンセグや無線LANの基板に接続されています。つまり、基板自体はメイン基板にくっついているのに、信号は行って帰ってくるみたいな形になっています。これは、少しでもスペースを有効に利用するためです。 Q:え、そこまでやってるんですね。 鈴木氏:そうですね、私も最初基板担当からそのアイディアを聞いた時には冗談かと思いました。ただ、とにかく今回の製品では20mmを切るということにこだわりを持っていたので、どんな隙間でも利用してやる! そんな執念をもってやりました。 また、もの凄く細かいことなんですが、今回の製品ではメモリースティックDuoのスロットはPRO仕様になっているのですが、PRO仕様にすると8ピンのスロットになります。現時点では8ピンのスロットだと、つり下げ式のいわゆるリバースタイプと呼ばれるスロットがないのです。このため、基板側からピンを出さないといけないので、それもカードスロットが別基板にした理由の1つです。 Q:SSDの実装に関してはどのようになっていますか? 鈴木氏:今回SATAのSSDを採用しています。性能的にはSATAのSSDの方がパフォーマンスがあるので、お客様のメリットがあると考えました。しかし、Intel SCHはPATAのみの対応で、SATAには対応していませんので、メインの基板にも利用したフレックスリジッド基板を利用して、SATA→PATAの変換チップをケーブル上に搭載することで対応しています。 Q:細かなことですが、マイク端子がないのはちょっと惜しいような気がします。特にビジネスコンシューマなどでマイクを接続して会議を録音したりとかは増えているような気がするので。 鈴木氏:確かに社内でもその議論はありました。しかし、先ほどのExpressCardの議論と同じで、マイクはアナログ端子だけでなく、USBやBluetoothとかさまざまな形でサポートできますので、それは無くても許されるのではないかと判断しました。それから、カタログなどでは大きく謳っていませんが、ソニースタイルでご購入いただく場合に選択できるノイズキャンセリングのヘッドフォンを選択していただくと、Windowsからはそれがマイクに見えますので、それを使っていただくことも可能だと思います。
●ゼロから作る製品だから、解像度も自分たちで定義する必要があった Q:液晶ですが、これも実にユニークです。UWXGA(Ultra Wide XGA)という1,600×768ドットの、おそらく世界で初めての解像度ということになりますが、わざわざ新規の液晶をおこしてまでこうした解像度にこだわったのはなぜですか? 伊藤氏:今回の製品は、本当に0からのスタートだったので、すべてを自分たちで決定しなければなりませんでした。1つには横が1,600ドットということにこだわりたかったということはあります。ブラウザなどを2画面表示できるということにこだわりを持っていました。すでにお話したとおり、ジャストキーボードサイズという基本コンセプトがありましたので、必然的には横長、つまりウルトラワイドになるのですが、縦はWindowsやOfficeが快適に使えるという意味で768ドットは必要でしょう。という形で1,600×768ドットという解像度は決まっていきました。 Q:ドットピッチはどのくらいになりますか、またOSがWindows Vistaということもあり、できればフォントを大きくしてというニーズがあると思いますが、それへの対応は済んでいますか? 鈴木氏:ドットピッチは0.144mm、精細度は220dpiになります。大きなフォントへの対応ですが、もちろん可能ですが、アプリケーションソフトウェアによっては対応できていないものもあります。残念ながら弊社のプリロードソフトウェアの中にもそうしたものがあるのは事実です。我々としてもそれは課題ととらえており、今後対応を進めていきたいと考えています。 Q:難しいと言うことを承知で聞きますが、液晶の左右にはまだまだスペースがあるように見受けられます。例えばベゼルいっぱいとかで2,048×768ドットとか、そんなのとかはできないものでしょうか? 鈴木氏:空いているように見える液晶の左右ですが、実は無線LANのアンテナ、あるいはワンセグないしはワイヤレスWANのアンテナが入っています。特にワイヤレスWANに関しては、認証をパスする必要がありますので、非常にシビアです。私たちもワイヤレスWANの製品をこれまでいくつか出してきてさまざまな経験を積んできているため、ここまでなら攻められるとかはわかってきていますが、認証テストをパスするためにはある程度マージンを持っていないといけないという面はあります。 ●薄さ、軽さ、スタミナを武器にエンドユーザーに新しい提案を行なう製品 Q:ACアダプタもこのモデル専用になっています。 鈴木氏:そうですね、これまでのVAIOを持っていただいているユーザー様には申しわけないのですが、このモデル用のACアダプタは10.5Vの専用タイプになっています。理由は単純で、モバイル向けのVAIOで利用している16Vの端子だと、内径が大きすぎてこのモデルには入らないんです。このため、今回専用の10.5Vのタイプを用意しました。 Q:なるほど、ACアダプタの出力はどのくらいになっています? またシステム全体の消費電力は? 鈴木氏:ACアダプタは20Wの出力に対応しています。このため、システムに負荷がかかった場合でも20W以下になるように設計しています。 Q:発表後にはWindows XPのモデルが欲しいとかそういう声が出てきそうですが、いかがですか? 鈴木氏:内部的にはお客様からそういう声はでるかもしれないね、という話はしました。ただ、最終的には動画のハードウェアデコードに対応するとか、そういうことも総合的に考えてWindows Vistaでいくことにしました。 Q:確かにメモリが標準で2GBありますので、Windows Vistaでも重いとか感じることは少ないと思います。それでもWindows Vista Businessを選択して、Windows XPにダウングレードしたいというニーズはあるのではないかと思いますが、いかがですか? 鈴木氏:最初の製品では予定はありませんが、将来のモデルでの検討課題にさせていただきたいと思っています。 Q:最後にネットブックという新しいトレンドの中、そのプレミアムをどのように説明していくかなどは大変なことだと思います。そうした中でのVAIO type Pの位置づけをどう考えているのか教えてください。 鈴木氏:ネットブックという新しいカテゴリはそれはそれでアリなんだと思います。弊社だってもしかしたら将来そうした製品を出さないとは言ってないですし。しかし、今回の製品はネットブックとは目指す方向が全く異なると思うんです。今回の製品は薄さ、軽さ、そしてスタミナというネットブックにはない特徴を備えた製品です。お客様に新しい選択肢として提案できればよいなぁと思っています。 Q:わかりました、本日はありがとうございました。 取材を終えて筆者が感心したことは、“ジャストキーボードサイズ”というコンセプトに対するこだわり、ということだ。というのも、ここ最近ではミニノートPCのキーボードについてメーカーのエンジニアに語ってもらう時に、“液晶サイズがこのサイズなので、それに合わせてキーボードサイズを決めました”とか“コストの都合で既製品のキーボードを使わざるを得なかったので”とか、そういう話ばかりを聞かされていたからだ。 それに対して本製品では、まずはキーボードは大事でしょ! という意気込みがひしひしと伝わってくる、それに合わせ液晶パネルを起こすという方針は、明らかに他の製品とは大きく異なっていると言える。 ただ、誤解しないで欲しいのは、筆者は今回ソニーがやってきたことだけが是で、その逆は駄目だと言っているわけではない。インタビュー中で本人達も認めているとおり、そうした新しいデバイスを起こすという方針はコストアップを招いているわけで、価格もいわゆるネットブックに比べれば高くなってしまっている。従って、価格を何よりも是とするのであれば、今回のソニーの方針は間違っているとも言うことができる。 何が言いたいのかと言えば、本製品はそうしたところを納得できて、そのプレミアムを理解できるユーザーにこそお奨めできるという事実だ。多少値段が高くなっても、使い勝手のよいキーボードが使いたい、ネットブックの半分近い軽さが欲しい、長時間のバッテリ駆動時間を実現して欲しい、などのニーズを持っているユーザーであれば、その価格差は正当化できるのではないだろうか。自分がそうしたユーザーだと読者が思うのであれば、ぜひとも店頭などでさわってみてその魅力を確認して欲しい。本記事がその助けになれば幸いである。 □ソニーのホームページ (2009年1月8日) [Reported by 笠原一輝]
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