GeForce GTX 280に使われているGT200コアのアーキテクチャをベースにしたデュアルGPUビデオカード「GeForce GTX 295」が発表され、サンプル品を入手することができた。このパフォーマンスをチェックしてみたい。 なお、今回は時間の都合により、限られたゲームベンチのみ実行している。また、量産製品とは一部仕様が異なるので、消費電力のテストは行なっていない。あらかじめ、ご了承いただきたい。 ●GTX260に近い仕様、プロセスは55nmへシュリンク まずは、GeForce GTX 295の仕様を整理しておきたい。主な仕様は表1にまとめた通りである。消費電力はNVIDIAが製品発表時に公表した値である。 【表1】GeForce GTX 295の主な仕様
GeForce GTX 295は、GT200アーキテクチャをベースとしたGPUを2個搭載する製品で、そのコアは55nmプロセス版が使用される。55nmは、GT200を採用したシングルGPU製品を含め、本製品が初めての製品化となる。 製品仕様はGeForce GTX 260に近い。コアクロック、Streaming Processor(SP)クロック、メモリクロックはいずれもGeForce GTX 260と同じ。また、ROPユニットやメモリインターフェイスも同じであり、各GPUに512Mbitのメモリチップを14枚接続することで、896MB×2GPU分のビデオメモリを搭載する。 ただし、SPについては、1GPU当たりのユニット数がGeForce GTX 280と同じ240基で、2GPU合計で480基となった。つまり、SPおよびテクスチャユニット部のクラスタを10個、ROPおよびメモリインターフェイス部のクラスタを7個持つという、これまでにない仕様のコアが2個搭載されていることになる。 製品のパッと見は、旧世代のデュアルGPUカードである「GeForce 9800 GX2」に似た直方体状の化粧カバーを持つ(写真1)。ただ、GeForce 8以降のNVIDIAリファレンスデザインとは異なり、化粧カバーの表面はパンチングされ、光沢のない塗装になっている(写真2)。
2枚のPCBでクーラーをサンドイッチする形状である点もGeForce 9800 GX2と同様であるが、裏面側のPCBは化粧カバーで覆われずむき出しの格好だ(図、写真3)。さらに、ヒートシンクの一部も開放されており、化粧カバーのパンチング加工と併せて、熱が籠もらないことを重視したようなデザインになっている(写真4)。
電源端子は6ピンと8ピンの2つで、両方を正しく接続する必要がある(写真5)。表1で示した通り、本製品の公称消費電力は289Wとなっている。PCI Expressスロットと6ピン、8ピンの電源端子から供給できる合計電力は300Wであり、ほぼ限界に近い状態である。GeForce GTX 295の動作クロックやメモリインターフェイスの仕様が、GeForce GTX 280ではなくGeForce GTX 260に合わせたものになったのは、電力面の理由も大きいのではないかと想像される。 ブラケット部はDVI-I×2とHDMIの構成(写真6)。最近のNVIDIAのハイエンド製品では定番となった、プライマリアダプタを示すLEDなども搭載されている。
ドライバは、本製品向けのβドライバであるGeForce Release 180.87を使用している(画面1)。 GeForce 9800 GX2までのNVIDIA製デュアルGPUカードは、パフォーマンスを向上させる「マルチGPUモード」と、複数のディスプレイ出力を利用できる「マルチディスプレイモード」の2種類が用意されていた。しかし、先月リリースされたGeForce Release 180で、SLI時にマルチディスプレイを利用可能になったため、GeForce GTX 295においては、「マルチGPUモード」と「非SLIモード」という表現を用いた設定画面になっている(画面2)。 マルチGPUモード時には2系統までの出力しかできないのに対して、非SLIモードで実行している場合では、DVI×2とHDMIの3系統の出力を同時に出力できるといった明確なメリットがある。また、片方のGPUがディスプレイ出力に使われていない場合に、GeForce PhysX専任GPUとしても動作させられる。なお、今回のテストはマルチGPUモードに設定して行なっている。
●3製品のハイエンドビデオカードを比較 それではベンチマーク結果をお伝えしたい。環境は表2に示した通り。冒頭でも触れた通り、テストするゲームは6タイトルのみで、アンチエイリアスおよび異方性フィルタを適用した条件のみ測定した。そのほかのクオリティ設定は、各ゲームの設定画面で選択できる最高クオリティのものを選択している。 【表2】テスト環境
まずは「Call of Duty:World at War」(グラフ1)である。前作とは異なりデモの録画やtimedemoの機能を備えていないため、実際のプレイ中のフレームレートをFRAPSを使って測定した。Semper Fiミッションの森の中の抜けるシーンで、敵が一度しか登場しないので測定誤差を最小限に抑えられるわりに、木々の描画と仲間の動作が含まれるので適度な負荷がかかる。テストは3回実行し、もっとも良かったスコアを採用している。 結果を見ると、既存製品に対して、1,280×720ドットの条件からスコアがよく伸びていることが分かる。Radeon HD 4870 X2とは、この低解像度条件で大きな差がついているあたりが興味深い。ドライバの良さだろう。 GeForce GTX 280との比較では、高解像度になるほどその差は開いており、1,920×1,200ドットでは1.6倍程度の性能差をつけている。こちらはビデオカード自体の描画性能の良さが表れた結果と言える。
「Dead Space」(グラフ2)もFRAPSを使った測定となる。ゲーム前半の建物内を1周する際のフレームレートを測定。やはり敵が登場しないため誤差を抑えられるシーンである。テストは3回実行し、もっとも良かったスコアを採用した。なお、本タイトルはドライバ側の異方性フィルタ設定が反映されず、ゲーム側にもサンプル数を指定する項がない。ドライバ側からアンチエイリアスのみ指定してテストしている。 このアプリケーションはNVIDIA両製品が非常に優秀なスコアを出している。1,920×1,200ドット/4xAAの条件では、GeForce GTX 295とRadeon HD 4870 X2の差が2倍近い。さらに、GeForce GTX 280に対しても、1,600×1,200ドット時に約31%、1,920×1,200ドットで約46%と、その差は小さくない。 ただし、1,280×720ドット時にはGeForce GTX 280とほとんど差がない結果となった。アンチエイリアスを適用した状態ではあるものの、GPUにとっては負荷が軽い状態なのだろう。ただ、後述する結果では、動作クロックが低いことと、マルチGPU化によるオーバーヘッドの影響が出ていると思われるタイトルもあることを考えると、これは、わずかとは言え、高いスコアを示したことを褒めるべきかも知れない。
「Fallout 3」(グラフ3)もFRAPSを使って測定。このタイトルはGPU性能の影響があまり大きくないタイトルであるため、普通のシーンではGPU差や解像度差がほとんど出なかった。そのため、車とバスが同時に爆発するというGPUに対する負荷が大きくなるシーンを中心に、前後数秒間を加えた範囲のフレームレートをFRAPSに測定させている。測定時間は10秒程度と極めて短いが、負荷が大きいシーンでもこの程度の平均フレームレートが期待できる、という参考にはなるだろう。 とはいえ、GeForce GTX 280との比較でみる限り、結果はGPU性能の影響が小さかった。解像度、フィルタの影響によって描画負荷が大きくならない限り、マルチGPU製品よりもシングルGPU製品の方が良好な結果を示すという傾向である。Radeon HD 4870 X2は、やや遅れを取る格好になってるが差は小さく、現実のプレイにおいて、劇的な影響を及ぼすほどではない。 このタイトルに関してはシングルGPU製品でも十分だと判断できるが、1,920×1,200ドットの条件でもわずかにスコアを逆転していることから、2560×1,600ドットクラスのディスプレイを持ってるユーザーならGeForce GTX 295のメリットを享受できるかも知れない。
「Far Cry 2」(グラフ4)はソフトに含まれるベンチマークツールを使用。以前にも触れたが、異方性フィルタの設定が用意されず、ドライバ側の指定も無視されるので、アンチエイリアスの指定のみ行なっている。 本タイトルはかなり良好な結果となった。Radeon HD 4870 X2の比較では、低解像度から高解像度まで、はっきりした差をつけており、このタイトルにおけるGeForce GTX 295の有効性を感じさせる結果になっている。 また、GeForce GTX 280との比較は、1,920×1,200ドット時の性能差は1.46倍程度と、Dead Spaceに近いものだが、1,280×720ドットから効果が得られている。1,920×1,200ドット/4xAA設定において、GeForce GTX 280では満足に楽しむにはやや微妙なスコアであるが、GeForce GTX 295なら余裕を持って楽しめるという点で、現実的にも意義が大きいスコア差といえる。
「Left 4 Dead」(グラフ5)は、timedemo機能を持っているので、病院マップでの実際のプレイをデモファイルに記録し、timedemoコマンドで再生して平均フレームレートを調べている。 Half-Life 2シリーズと同じSource Engineを採用しており、Radeonシリーズでの最適化も行なわれているタイトルである。Radeon HD 4870 X2がかなり健闘している印象で、1,280×720/1,600×1,200ドットではGeForce GTX 295に勝る結果を出している。ただ、1,920×1,200ドットになると逆転を許す。このあたりは、GeForce GTX 295の描画性能に高いポテンシャルを感じる結果だ。 GeForce GTX 280に対しては、1,280×720ドットでは後塵を拝する結果となったが、1,600×1,200/1,920×1,200ドットではきっちり逆転している。
「LOST PLANET COLONIES」(グラフ6)はソフトに含まれるPerformance Testを使用。設定画面にあるマルチGPUの項は、GeForce GTX 295およびRadeon HD 4870 X2使用時はオン、GeForce GTX 280使用時はオフに指定している。 Radeon HD 4870 X2は、GeForce GTX 280に対しては余裕ある結果を見せるが、GeForce GTX 295は、それを軽く上回るフレームレートをたたき出している。 AREA1はCPUの性能が影響しやすいシーンであるが、GeForce GTX 295は解像度が上がっても性能が落ちないという分かりやすい結果となっている。GeForce GTX 280やRadeon HD 4870 X2は、1,280×720ドットから1,920×1,200ドットへ解像度が上がると10~20fps程度のパフォーマンスダウンが見られるが、GeForce GTX 295はわずか1fpsしか落ちない。描画性能の余裕を感じさせる結果だ。 GPUの性能が大きく影響するAREA2は、GeForce GTX 280に対して最大で1.7倍超、Radeon HD 4870 X2に対しても最大1.26倍と、明確な差をつけている。ただ、こちらは解像度が低い方がGeForce GTX 295とGeForce GTX 280の差が大きく、Radeon HD 4870 X2ともっとも差が大きいのが1,600×1,200ドットであるという、少々意外な結果となった。 ただ、Far Cry 2同様、GeForce GTX 280では1,920×1,200ドットだと心許ないが、GeForce GTX 295なら平均60fpsという重要な基準を超えることができるというメリットはあるだろう。
●シングルビデオカードの最高性能更新は確実、早期登場に期待 一部タイトルの低解像度条件では、GeForce GTX 280と比較して各種動作クロックが低いことや、マルチGPUによるオーバーヘッドの影響も見られるが、おおむねGeForce GTX 280を超える性能を持った製品といって差し支えない。シングルビデオカード製品としては、Radeon HD 4870 X2も高い性能を持っていたわけだが、GeForce GTX 295はこれも上回るシーンがほとんどで、シングルビデオカードとして最高性能を持つ製品ということになるだろう。 価格は499ドルとされている。現在の円相場で見れば5万円前後の価格にも期待がかかるレベルだ。もっとも、現状でRadeon HD 4870 X2の相場が5万円台半ば~6万円台になっていることを考えると、これと同等の価格帯になると考えるほうが現実的だとは思う。それにしても、今年夏頃まではGeForce GTX 280がこの価格帯であったことを考えると、NVIDIA製品における、このセグメントのコストパフォーマンスは一気に上がることになる。 本製品の具体的な登場時期は不明であるが、すでに完成度は高く、そう遠くない将来に投入される可能性は高い。製品投入時期には、テストタイトルを増やした詳細なテストを改めて行なう予定だ。 □関連記事 (2008年12月19日) [Text by 多和田新也]
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