その1では、デュアルコアAtom 330で遊ぶため、CPU付きマザーボード「Intel BOXD945GCLF2」をベースにPCを一台組み上げた。まずは、ネットブック/ネットトップで一般的なWindows XPをインストールし、ベンチマークテストなどを軽く行なったところ、シングルコアのAtomより明らかに快適に動くことが判明! ●ノースブリッジのファン交換Windows Vistaをインストールする前にその1で指摘した、ノースブリッジのファン交換を行なう。ケースが小型でモニタの横へマシンを置く関係で、耳障りでとても遊ぶ気にもなれないからだ。BOXD945GCLF2に使われているファンは40×40×10mmのタイプ。サイズと静音性だけは注意したものの特に何も考えずに下記のものを購入した。ただこの「特に何も考えずに」が、取り付け時にハマることに……。詳細はキャプションをご覧頂きたいが、購入したファンは固定するネジ穴がオリジナルより大きく、ネジがスカスカで止まらないのだ。放熱板側を加工しネジ穴を大きくすれば対応できるがそれも面倒。と言って、ファンだけのためにまた秋葉原へも行きたくない。とりあえず間に合わせの仮付けで、ファンを取り付け難を逃れた。 さて、ノースブリッジのファンが静かになってわかったのは、電源のファンも負荷がかかると結構うるさい。本体側にあるファンは別途費用はかかるが後から交換するのも容易。しかし、電源内のものは、ユニットごと交換するか、中を開けてファンだけ交換となる。卓上に置くPC用のケース付属の電源ユニットは、もう少しファンのノイズを気にして欲しい。 ●32bit版Windows Vistaをインストール Windows Vistaのインストールは非常に簡単だ。インストール終了後、後述するマザーボード付属のドライバCDを入れれば、必要なものが一発で全て入る。グラフィックエンジンはGMA950なのでAeroもON。しばらくネットや動画を見て遊んでいたが、驚くほど普通に使える。「これはいけるかも」とWindows エクスペリエンス インデックスなど、ちょっとしたベンチマークテストを行なった。結果をご覧頂きたいが、ゲーム用グラフィックス以外の値は、ノートPCなどで割と普通に見かける数値だ。 右の画面キャプチャがBOXD945GCLF2に付属する「Intel Express Installer」。日本語にも対応している。ネットブックも含め付属するドライバ(リカバリー)CDから、1つずつドライバをインストールしなければならず面倒なものが多い中、このセットアップ・プログラムは一気に全てのドライバをインストールするため、簡単で入れ忘れもない。チップセット、グラフィックス、Ethernet、オーディオのドライバが対象となる。 ベンチマークテストを動かし、少し触っただけでは実際の体感速度がわからないため、一日この環境で軽い作業をした。画面解像度は1,680×1,050ドット。冒頭でAtomプロセッサにVistaは鬼門と書いたが、少なくともデュアルコアAtom 330には当てはまらないようだ。普段使っている筆者の旧式マシン(Dual Xeon 2.8GHz/Socket 603+RIMM2GB+GeForce 7600GS/AGP4x)とあまり差がない。参考までにWindows エクスペリエンス インデックスを比較すると、プロセッサ:4.3(4.8)、メモリ:4.5(4.3)、グラフィックス:4.1(4.2)、ゲーム用グラフィックス:2.8(4.5)、HDD:5.9(5.7)。ゲームは全くやらないので、これを除けば結構似通った値だ。Photoshopなどは試さなかったのでプロセッサの-0.5の差はわからず、Aeroの切れが若干悪い程度だ。更に普段もっとハイエンドのマシンを使っている友人にも触ってもらったが、「これAtomで合計3万円なの!?」と驚いている様子だった。プロセッサが4.3と言うことは「Core 2 Duo 1.06GHz」と同程度のパワーなのだろう。 これで気を良くした筆者は64bit版のWindows Vistaに挑戦することにした。とは言え、このマザーボードの最大メモリ容量は2GB。64bit版を動かしても(多分)何もメリットはない。Intel 64(旧EM64T)が使えるのでAtomプロセッサで動かしたらどうなるか。単なる好奇心からの実験だ。 ●64bit版Windows Vistaをインストール 少なくとも筆者はこれまで64bit版Windows Vistaは触ったことが無く、今回、どんな感じなのか結構ワクワクしながらのインストールとなった。が、期待に反して32bit版と何も変わらない。コントロールパネル→システムで「システムの種類」を見ない限り、64bit版とは気が付かない。表から見たVistaは全く同じなのだ。当たり前と言えば当たり前の話であるものの、ちょっと拍子抜けしてしまった。 さて、システムはともかくとして、アプリケーションで64bitに対応したものがないか、ネットを検索したところ、有名どころではiTunes for WindowsとFirefoxの64bit版「Minefield」(Community Edition 301 Win64 K8Q/64-X06)を見つけたので試してみた。iTunesに関しては64bit Windowsで使うときはiTunesも64bit版でないとマズイようだ。MinefieldはテーマはFirefoxのがそのまま使え、レンダリングも少し速い。「これは行ける」と、しばらく触っていたところ、最大の問題に当たってしまった。「Flash Player」がまだ64bitに未対応。Flashのコンテンツを見たい場合は、32bitのブラウザを使わなければならない。まさかこんなところで32bitと64bitが引っかかるとは思ってもいなかった。 IE7ではFlashが動いていたので不思議に思っていたところ、スタートメニューに「Internet Explorer」と「Internet Explorer(64bit)」と、2つのバージョンがあることに気が付いた。どうやら32bit版のIE7が動いていたようだ。なるほど、64bit版Windowsがまだあまり一般化していないのも肯ける。Windows Vistaの次期バージョン、Windows 7も32bit版と64bit版共に用意するようなので、Windowsの64bit版が一般化するのはまだまだ先の話なのだろう。メモリはガンガン安くなり、4GB搭載しても数千円の時代なのに困ったものだ。 下の表は、32bit版と64bit版のWindows エクスペリエンス インデックスとCrystalDiskMark 2.2のスコアをわかりやすいようにまとめたもの。背景に色が付いているのが勝っている方となる。ご覧のようにほとんどの部分で64bit版の方が速いが、肝心のグラフィックスは遅く、全体の足を引っ張っている。普通なら力技でグラフィックス・ボードを交換する方法もあるのだが、PCIバスしか搭載していないマザーボードなのでどうにもならない。 32bit版の“()”内の値は、たまたま友人が所有している「VAIO VGN-TZ93S」のWindows エクスペリエンス インデックスの値が結構近かったので参考までに掲載した。スペック的には、「Core 2 Duo U7700(1.33GHz/2MB/533MHz)、945GMS Express/GMA950」となり、チップセット的にも非常に似ている。グラフィックスの2.1は多分古いバージョンのIntelドライバがベースになっているので、今後のアップデートで4点台になる可能性を含んでいる。
少し気になり、このD945GCLF2を構成しているチップセット、Intel 945GC Expressの仕様を調べたところ、最大メモリ2GB(Dual Channel)、PCI Express x1/x16、SATA ×4に対応している。この仕様を満たし(+GMA950の出力もDVI対応)Atom 330プロセッサを搭載したマザーボードが出れば結構売れると思うのだが、どこのメーカーも予定は無いのだろうか。筆者はチップセットに詳しくないのだが、Pentium D辺りに対応している965系でAtomプロセッサが動けば更に面白いと思うのだが。 ●総論
もともと「Atom 330マシンへVistaを入れたらやっぱり重い」という話になると思ったのだが、結果はその逆の答えになり、Atom 330プロセッサそして、Windows Vistaへの援護射撃となった。これだけエコで安価で面白いCPUを作っているにも関わらず、他のCPUでは当たり前のバスやメモリの構成など、ちょっとした部分がまだ未実装なのは非常に惜しい。是非、フルファンクションのAtom 330プロセッサ搭載マザーボードを使ってみたい。
□Windows Vista 64bit版製品情報 (2008年12月9日) [Reported by 西川和久]
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