|
■西川和久の不定期コラム■
デュアルコアAtom 330で遊ぶ! その1:ハードウェア編
|
ネットブックを含めAtomプロセッサを使ったほとんどのマシンはシングルコアの230や270を搭載している。前者はTDP 4W、後者はTDP 2.5WとTDPこそ違うものの、パワー的には同じ。情報は豊富でこの連載も含めネット上には記事やレビューの山となっている。
ただAtomファンとして気になるのはデュアルコアのAtomプロセッサ、330の存在だ。試すにはCPU単体で販売していないこともあり、330を搭載したマザーボードか、ベアボーンキットを購入することになる。
気になりだすと即行動タイプの筆者は、早速330のマシンを組み立てる事にした。これから何回かにわたり、自作Atomプロセッサ330マシンで遊びながらのレビューをお届けしたい。
Text by Kazuhisa Nishikawa
●購入したパーツなど
まず330マシンを組み立てるに当たって迷ったのが、「マザーボードを購入して適当なケースを選ぶ」か、「一式揃っているベアボーンキットをにする」かだ。現在筆者の知る限り、330を搭載したマザーボードを単独で販売しているのは、「Intel BOXD945GCLF2」のみ。ベアボーンキットは、「Shuttle X27D」と「Aopen XC Cube LE211」。選択肢は限られる(一部D945GCLF2を内蔵したベアボーンキットはある)。
BOXD945GCLF2はGigabit Ethernet(GbE)とVGA出力に加えSビデオ出力に対応、X27DはGbEとDVI搭載、XC Cube LE211はミニD-Sub 15ピンでLANがEthernet(100BASE-TX)となるもののPCI Express×1とPCI Express Mini Card Slotを1つ搭載している。それぞれ一長一短で悩ましいところだ。筆者的にはGbEでDVI、できればPCI Express×1も欲しいところ。百歩譲ってPCI Express×1は諦めるとすれば、消去式で残るのはShuttle X27Dとなる。
ところがこのShuttle X27Dはケースが薄く、搭載できるドライブは2.5インチHDD1基と、薄型光学ドライブが1基。諸事情で3.5インチのHDDを2基使いたい筆者の用途には向かないのだ。できればマザーボード単体でも販売して欲しいところなのだが、そう言うわけにもいかず、結局オーソドックスなBOXD945GCLF2を選択した。実はこのシリーズ、筆者的に縁があり、2世代前のCeleron 215(1.33GHz/2次キャッシュ512KB)を搭載したD201GLYL、そして一世代前のAtomプロセッサ230を搭載したD945GCLFと全て購入している。
ベースが決まれば後は簡単。ケース、HDD、DVDドライブ、メモリなど、予算をうまく分配して買っていくだけ。事前に調べていたこともあり、買い物自体はスムーズだった。失敗だったのは、先にケースなど大物を買ってしまい、その後秋葉原界隈をウロウロするのが大変だったことだ。ついでにこの連載とは無関係なものも見たかったのだが、結局、2時間未満で帰りの地下鉄に乗ってしまった。
BOXD945GCLF2。230を搭載したD945GCLFは、ヒートシンクが高くケースを選んだが、BOXD945GCLF2は低くなり、そのような問題は無くなった
|
HDDはWD10EADSで1TB、DVDドライブは何でも良かったので安いのを購入した。手前の付属品はLG GH22NS30B-Bに同梱されていたもの。CD-ROMにはPowerDVDなどソフトウェアが入っている
|
P4用電源ケーブル、PCIバスのGbE NIC、そして2GBのメモリ。P4用電源ケーブルは以前、D945GCLを購入した時、必要なのに気が付かず、これだけのために秋葉原へ再度行ったこともあり、念のため購入
|
AQTIS AC150-IT81SB。3.5型HDDを2基搭載でき、BOX型で価格的に安いのはこれしかなかった。リムーバブルHDDベイ×2に対応したChenbro ES32067-BK-150や、リムーバブルHDDベイ×4のオウルテック OWL-PCCHS01は非常に興味があったものの、前者は3万円近く、後者は5万円近くするので今回は予算の都合上諦めた
|
AQTIS AC150-IT81SBの内部はこんな感じだ。安いだけあって立て付けがイマイチだが、5インチのベイが1つ、3.5インチのベイが2つ。中もスッキリしていて扱い易そうだ。5インチのベイはちょっとした仕掛けがあり、なかなか面白い
|
BOXD945GCLF2に必要な"田の字"型のP4用電源端子はAQTIS AC150-IT81SB付属の電源ユニットに含まれていた。購入時、店員に確認したところ「解らない」と言う話で、P4用電源ケーブも購入したのだが、結果的には不要だった。電源ユニット自体は150Wなので、そこそこ余裕がある
|
Intel BOXD945GCLF2 |
9,980円 |
AQTIS AC150-IT81SB |
9,800円 |
DDR2 PC2-6400 CL5 2GB |
1,970円 |
WD WD10EADS 1TB SATA |
9,240円 |
主要パーツ小計 |
30,990円 |
LG GH22NS30B-B ブラックバルク SATA |
2,980円 |
玄人志向 GBE-PCI2 GbE-NIC |
990円 |
P4用電源ケーブル(結果的に不要) |
294円 |
合計 |
35,254円 |
以上が購入リストになる。AKIBA PC Hotline!で情報だけは知っていたものの、実際久々に秋葉原で買い物してみるとこの金額はちょっと信じられない状態だ。2GBのメモリ、そして1TBのHDDを搭載したPCが何と3万円。何かの間違いかなと思うほど。こうなってくるとPCに対するOS代の占める割合がかなり問題になるのは明白だ。そろそろ時代の流れに合わせて価格の見直しをして欲しいと思うのは筆者だけではないだろう。
●組み立ててみる
必要なパーツも揃ったので事務所へ戻り組み立ててみた。ケースが小型だといろいろ手間暇かかるが、今回はマザーボードのサイズの割に大型なので非常に簡単だった。所有時間は30分未満だ。まずマザーボードをセットする前に、ファンがどの程度煩いのか音のチェック。電源ユニットは若干、裏側の9cm角ファンからも少し音がする。静音を望むなら交換した方が良さそうだ。次に秋葉原へ行く時にでも買って来ることにして、今回はこのまま作業続行することにした。
BOXD945GCLF2/正面。Atomプロセッサを採用し、チップセットやヒートシンクなどが軽装備なので、Mini-ITXのマザーボードとしては窮屈でゴチャゴチャした感じは無い
|
手前から、電源コネクタ、SATA×2、IDE、メモリスロット、PCIバスなどが並ぶ。ファンがあるのはノースブリッジで、Atomプロセッサ側はヒートシンクのみ。その上に文中で触れた、P4用電源コネクタがある
|
BOXD945GCLF2/背面。PS/2キーボードやマウス、シリアル、パラレルポートなど、レガシーなインターフェイスも対応している。既にあまり需要は無いと思われるので、DVI出力などを搭載して欲しいところだ
|
マザーボード、DVDドライブ、HDD、そして各ケーブル類を一応接続してみた。かなり余裕があるのがわかる。ケーブル類が綺麗にまとまっていないので後で整理することにしたい
|
このAQTIS AC150-IT81SBというケース、5インチベイが少し変わっている。ご覧のように、化粧パネルがあり、右横の銀色のボタンを押すと……
|
このようにDVDドライブのトレイが出てくる。この銀色のボタンが、DVDドライブのイジェクトボタンを押す仕掛けだ。ドライブの位置を調整しないと、ちょっとした事で直ぐにトレイが出てしまう。ただこの機構が外せないため、リムーバブルHDDケースなどは付けられない
|
配線などはコネクタの向きが決まっているので間違えようがなく、唯一ありがちなHDDやPOWER LEDのプラス/マイナスを逆に配線するミスもフロントパネルでLEDが光っているので大丈夫。マザーボード上のAUDIO端子は、ケースに付属するケーブルのコネクタがAC'97用とHD Audio用と2種類あり、後者のコネクタを使用する。
組み上がり、電源をONにしたところ……結構音が煩い。事前にケース側のファンは調べたので、原因はBOXD945GCLF2、ノースブリッジ用のファンだ。同社のCPUに付属するファンは昔と違って随分静かなものが使われているようだが、BOXD945GCLF2はコストを優先したのだろうか。ちょっとこの音は許せないレベル。せっかくCPU自体はTDPが低いのにこれでは台無しだ。できれば改善を望みたい。> Intel
さて、机の上に14型の液晶モニタと一緒に並べてみるとこんな感じになる。スリムなネットトップが多い中、サイズ的には大きめだが、その分、ドライブベイが多いので、いろいろ遊べる。とりあえず作動確認も兼ねてWindows XPをインストールしてみたが、330そしてHDDが最新のドライブと言うこともあり、スルスルっと入ってしまった。明らかに半年ほど前に組んだD945GCLFより速い。これはなかなか期待できそうだ。
●Single Core Atomとの違いは
先にWindows XPをインストールしたのは、他のAtomマシンのデータがXP上で取ったものだからだ。HDDが最新と言うこともあるだろうが、体感上の反応が凄く良くなっており、あえてベンチマークテストを動かす必要も無いほど違う。HDBenchを動かす前に、デバイスマネージャなど、BOXD945GCLF2固有の情報も一緒に掲載した。230を搭載したD945GCLFや270を搭載したEee PC 901-Xとの違いは、NICがGbEに対応したこと、CPUがデュアルコアとなり、Hyper-ThreadingがONなので、計4CPU扱いになっているところとなる。
DVDドライブやHDDは購入リストに書いた通り。NICはRealtekのRTL8168C/8111C相当だ。デュアルコアとHyper-Threading ONで4CPUになっているのがわかる
|
同じくCPUモニタが4つになっている。また起動直後のメモリ使用量は169MB。やはりWindows XPは今となっては軽いOSだ
|
マザーボードのレイアウト図を見ていたところ、Audio端子の横にS/PDIF OUTがあることに気が付いた。D945GCLFには存在しない端子だ。VCCもあるので、うまくすれば、光デジタル出力を付けることも可能。近々試してみよう
|
Intel D945GCLF2/330。ご覧のようにCPUの能力が他の2つ230、270とは倍違うことがわかる。HDDも最新版なので速い
|
Intel D945GCLF/230。性能的に横並びなのはグラフィックだ。どれも同じGMA950なので当然の結果となる
|
Eee PC 901-X/270。ベンチマーク対象のドライブはC:なのでSLCのSSDなのだが、こうして並べるともはやあまり速くない
|
デュアルコアになり、素直にCPUのパフォーマンスは倍になっている。またHDDもかなり高速なので、この2つが速くなれば体感速度も変わるのは当たり前だ。ただ残念なのは内蔵グラフィックスGMA950のパフォーマンスがあまり良くないこと。これが全体の足を引っ張っている。参考までに筆者が自宅で使っているThinkPad T42のHDBench/グラフィックスコアは27952/7998/9038/82/0、ATI Mobility Radeon 7500なのだがBitBlt以外は圧勝だ。Windows VistaのAeroにも対応していない旧式のグラフィックエンジンにさえ負けているため、せめてPCI Express×1が1本あれば他のグラフィックエンジンを使えて便利なのに……と思うと共に、この部分が強化されると益々Atomマシンばかりが売れる結果を招きそうだ。実際、ASUSのN10JはNVIDIA GeForce 9300M GSを搭載し、Windows Vistaを動かしている。店頭で触ったところ、割と普通にWindows Vistaが動いていた。
短時間ではあるが、HD動画を再生しながらネットを見たり、複数のWebブラウザを立ち上げるなどのテストを行なっても、引っかかった感じは皆無、日頃使っているネットブックのEee PC 901-Xとは動きが違う。こうなるとTDPが270相当のデュアルコアAtom(まだリリースされていないがN370か?)を搭載したネットブックが早く出ないかと期待してしまうが、今のスケジュールでは来年になりそうだ。
●総論
|
各種OS。いろいろ試していく予定 |
さて、一通り自作PCの作動確認はできたので、次は他のOSをインストールして遊びたい。用意したのは3種類。Windows Vista 32bit版、CentOS 5.2 64bit版、そしてWindows Home Serverだ。Atomプロセッサの特徴として、安価なPC向けに作られている割に、Intel 64(旧EM64T)、つまり64bitにも対応していることがあげられる。何らかの64bit対応OSを試すことにしよう。
Windows Home Serverは、筆者は1回も触っていないのでレビューも兼ねて扱ってみる。Windows Server 2003 R2がベースなので、Atomプロセッサでも十分動くだろう。しばらくの間お付き合い願いたい。(続く)
【お詫びと訂正】初出時に、Atom 330および230の表記を「N330」「N230」と誤っておりました。お詫びして訂正させていただきます。
□関連記事
【9月25日】デュアルコアAtom搭載Mini-ITXマザー「Intel D945GCLF2」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0925/tawada152.htm
【10月24日】デュアルコアAtomの位置づけ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/1024/hot576.htm
【9月22日】Intel、ネットトップ用デュアルコアAtomを出荷
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0922/intel.htm
□バックナンバー
(2008年12月2日)
[Reported by 西川和久]
PC Watch編集部
pc-watch-info@impress.co.jp
ご質問に対して、個別にご回答はいたしません
Copyright (c) 2008 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.
|