大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

新MacBookの魅力をAppleフィル・シラー上席副社長が語る
〜「Appleにとって、500ドルノートの投入はあり得ない」




 Appleの新たなMacBookおよびMacBook Proが好調な出足を見せている。ユニボディと呼ばれるアルミニム筐体を採用するとともに、液晶部へのガラスパネルを採用。さらには、4本指でのマルチタッチ操作までを可能にしたガラス製のマルチタッチトラックパッドの採用も大きな特徴だ。「今回のMacBookの進化を一言で表現するならば、ブレイクスルーという言葉が最適だろう」と語る、米Appleのフィル・シラー上席副社長に、新MacBook、新MacBook Proの魅力を聞いた。

-- 新MacBookおよび新MacBook Proはどんな進化を遂げていますか。

新MacBookを手にするフィル・シラー上席副社長

シラー氏 まず、このアルミニウム筐体を見てください。筐体と内部フレームは、1枚のアルミの板から削り出したもので、軽くて、薄く、そして、強度も実現したものです。これはノートブックとして求められている要件を実現するために、もっとも適した素材と構造であるといっていいでしょう。従来の製造方法では難しかったエッジの利いたデザインも、削り出しによって可能としています。それと、液晶パネルも、LEDバックライトを採用し、鮮やかな画面を実現しました。

 また、先進的なキーボードデザインや、ガラス製マルチタッチトラックパッドの採用で、非常にスムーズな操作性を実現している。ボタンがなくなったことで40%ほど大きくしましたし、パット全体でクリックができるようにしています。キーボードを操作していても、パッドの好きなところを押せばクリックできるんです。さらに、2フィンガー、3フィンガーでの操作に加えて、4フィンガーでの操作もできるようになっています。デスクトップ上に表示されている複数のアプリケーションを、4フィンガー操作によって、Exposeとして利用するといったこともできます。また、設定によっては、右下部分をクリックすると、「右ボタンクリック操作」が可能になりますから、右クリックに慣れたWindowsユーザーにとっては、より身近な操作環境も実現できるともいえます。


新しいMacBookとMacBook Pro ボタンと一体化したマルチタッチトラックパッド

 さらに、特筆できるのが、グラフィック面での進化です。今回の製品では、当社としては、初めてNVIDIA製のグラフィックス統合型チップセット「GeForece 9400M」を採用し、3次元グラフィックスパフォーマンスを格段に進化させています。これにより、3次元グラフィックスを活用したゲームも、スムーズに描写ができ、快適な利用環境が実現されています。

 エコという点でも大きく進化しています。今回の製品では、美しいこと、耐久性があるということだけでなく、環境にも配慮した製品を作りたいと考えました。一体型のアルミ成形としたことで、パーツの数が減っていますし、リサイクルレートも上昇させている。環境にも配慮したノートブックが完成したといえます。

 一方、今回は、Mini DisplayPortを採用した24型のCinema Displayを新たに投入しました。これは、ノートPC専用のディスプレイといえるもので、Mini DisplayPortを利用して、MacBookに接続すれば、ディスプレイ内蔵のiSightカメラ、マイク、スピーカー、USB Hubなどのすべての機能が利用できるようになります。

-- 新MacBookで、一番気に入っているところはどこですか。

シラー氏 やはり、ユニボディのデザインですね。これは、画期的なものであり、今回のMacBookを象徴するものだといっていいでしょう。今回のMacBookは、まったくのゼロからデザインしたものです。新たにものをつくるため、美しく、すばらしいものを作るために、すべてをゼロから始めること、アーキテクチャを変えるということにも恐れずに取り組んでいくというAppleの姿勢を体現できた製品といえるのではないでしょうか。競合他社には、それができないでしょうし、そんな勇気はないでしょう。


新MacBookの象徴とするユニボディの構造

 それを示す最大のポイントが、ユニボディだといえます。この構造は、MacBook Airから始まったものです。MacBook Airでは、とにかく薄いものを投入したいと考え、同時に、堅牢性が高いものを作りたかった。だが、堅牢性を高めようとすると、どんどん厚くなってくる。これを解決するには、筐体を1枚のアルミから削り出さなくてはならない。そこで採用したのがこの手法でした。ではそこまでできたのであれば、次はメインストリームの製品に反映できないか。それが今回のMacBookおよびMacBook Proで実現したものだといえます。

-- ユニボディの製造工程を、ウェブサイトで公開していますね。これまでそんな例はありませんでした。

シラー氏 確かに、Appleはできるだけシークレットにするというのが、これまでのやり方ですし、製造工程を、一部といえどもお見せすることはなかった。しかし、ユニボディは、自慢の機能ですし、MacBookのデザイン、ポリシーを理解していただくという点でも重要なものと判断した。これをウェブで公開するということは、何カ月も前から決定していました。

-- 特徴の1つとして、新たな操作性についても触れていましたが、この進化はどう捉えたらいいですか。

シラー氏 新しいマルチタッチトラックパッドは、ユーザーにも大変好評です。しかし、これは、Appleにとっては自然な進化だといえます。もともとマウスや、トラックパッドを市場に持ち込んだのはAppleが最初です。そして、マルチタッチも、AppleがiPhoneで実現し、これによって、操作性を大きく進化させた。この考え方を、ガラス製マルチタッチトラックパッドによって、より進化させたのが、今回のMacBookということになります。

-- 新たな機能を紹介しもらうと、大きな進化がわかりますが、一般ユーザーにとっては、MacBook Airほど、外観上の変化を感じ取りにくいですね。

シラー氏 ここ数年、WindowsからMacにスイッチするユーザーがかなり増えています。また、初めてMacを購入するというユーザーも増加しています。そうしたユーザーにとっては、見た目だけでは少し理解しにくいかもしれません。ただ、手にとってもらえると、ハード/ソフトでのイノベーションを理解してもらえるはずです。Appleストアや販売店では、MacとWindows PCとの違いを理解していただけるような展示がされていますから、ぜひ、そうした場で体験していただきたいですね。

 Appleは、今回の製品について、これまでにない新しいノートブックを作った、あるいは、まったく新しいMacBookを作ったという意識を持っています。そして、それこそが、今回の製品の特徴だといえます。革新的な新たな技術を活用し、ゼロからスタートし、開発したものです。いま、市場に出ているノートPCのなかで、最も画期的な製品がMacBookおよぴMacBook Proです。日本のユーザーは、こうした点を最も理解してくれるユーザーであると思います。いままで、他のメーカーのPCを使っていた人も、MacBookの良さに気がついていただき、ぜひスイッチしていただければと思います。

側面まで継ぎ目のない一体型ボディが特徴

-- 新たなMacBookを、ひとことで表現すると、どんな言葉が当てはまりますか。

シラー氏 ひとことでいえば、「ブレイクスルー」でしょうね。MacBookには、たくさんのイノベーションが詰め込まれています。ここ数年のなかでも、最もすばらしいノートブックに仕上がっている。100点満点の出来映えとなった、すばらしい製品だと自負しています。

-- PC市場では、500ドル程度の低価格ノートPC、いわゆるネットブックが売れ行きを伸ばしています。Appleは、この市場をどう見ていますか。

シラー氏 500ドル程度のノートPCは、価格を安く抑えることを優先しているため、メーカーの勝手な判断で、この機能はいらないからといって削除したり、技術面で妥協をして、スペックを落とすといったことが行なわれています。本来、提供しなくてはならない機能までカットしています。ユーザーのなかには、支払ったお金に対して、より多くの価値を求める人が多くいます。いまは、この機能だけでいいが、数年後には、こんな使い方をしたいという機能も必要なのです。

 例えば、購入時点では、ウェブサーフインをしたり、メールをしたりといったことでいいが、6カ月後には、学校に提出するレポートを書きたい、デジタルフォトを扱いたい、そして、1年後にはビデオ編集をやりたいということも出てくるでしょう。そのときに、5万円のPCでは、こうした使い方をサポートすることができない。Macには、たくさんのイノベーションが詰め込まれており、将来的に必要になるであろうというものまでも含めて提供しています。我々が自信を持って、みなさんに提供できる製品、あるいは、お客様に満足してもらえる製品を実現するには、いまのところ、とても5万円では作れない。ですから、Appleが5万円のノートPCを投入するということは、現時点ではないといえます。

-- 市場成長が著しいだけに気になりませんか。

シラー氏 いいえ、気にはなりませんよ。例えば、自動車の業界を見ると、GMのビュイックを買いたいという人と、BMWを購入したいという人がいる。どちらも、ハンドルがついて、タイヤが4本ある。ただ、運転する喜びとか、快適性などにおいて、明らかに違うクオリティのものが存在する。PCでも同じようなところがあります。低価格のPCと、ハイクオリティを提供するMacとでは、提供されるものが違うということは、多くのPCユーザーに理解されていると思います。そして、それぞれが、なぜ市場に存在しているのかも理解していると思います。その点でも、我々が500ドルのノートPCの売れ行きに慌てるということはありません。


Dockに代表されるMac OSの操作性には強い自信を示した

-- 一方、Windows 7が来年以降登場しますが。

シラー氏 まだ、存在していないOSなので詳細はわかりません。いまは、Vistaしか購入できないですからね。ただ、PCユーザーにとって、Vistaはさまざまな問題を抱えたOSだったようですね。使い勝手が悪かったと感じた人も多いでしょう。結果として、WindowsからMacにスイッチした人も多い。むしろ、この1年で、Macの使いやすさが証明されたといえます。

-- 経済環境は決していいとはいえません。そのなかで、Appleの業績は極めて順調です。Appleが強い理由はなんだと判断していますか。

シラー氏 多くのユーザーに、Appleとそれ以外のPCメーカーとの違いがだんだん理解されてきたからではないでしょうか。Appleは、ハードも、ソフトも、すべて自分で開発しています。だからこそ、新たなイノベーションに対しても、積極的に投資していけます。デザインをどうするかといったことも、Apple独自の視点のなかで決定することができます。だからこそ、ユーザーにどうやったら喜んでいただけるのか、どうしたら使っていただけるのかを考え、実践することができるのです。そこまでできるPCメーカーはありません。

 デザイン、クオリティに対しても、徹底したものをAppleは提供できます。1年前に投入したiMacも、大変高い評価を得ています。日本でも同様に成果をあげています。デスクトップ市場全体の需要が下がっているなかで、iMacが高い成長を記録したという点でも、当社製品の良さを、多くの人にご理解いただけている証左ではないでしょうか。

-- Appleは、10月から新年度に入りました。この1年は、どんな1年になりますか。

シラー氏 いままで一番すばらしい製品ラインアップを揃える形で、新年度をスタートしました。これをさらに、加速する1年になるでしよう。Appleの製品が、いかにすばらしいかを、より理解してもらえる1年になると思います。将来について、具体的なことはいえません。しかし、ぜひ楽しみにしていてください。


□アップルのホームページ
http://www.apple.com/jp/
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(2008年10月31日)

[Text by 大河原克行]


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