大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

ネットブック市場で、いきなり3位以内を狙うNECの戦略




 国内PCメーカーによるネットブックの動向が注目されるなか、NEC初のネットブック「LaVie Light」が、11月6日の発売を控え、いよいよ最終準備段階に入ってきた。「十分な手応えを感じている。ほぼ予想通りの引き合い」と、NECパーソナルプロダクツPC事業本部商品企画本部 渡邉敏博本部長は、発表から約2週間の反応について語る。果たして、NECはどこまで本気でネットブック市場に挑むのか。渡邉本部長に、NECのネットブック戦略を聞いた。

-- 製品発表から約2週間を経過し、市場の反応はどうですか。

NECパーソナルプロダクツPC事業本部商品企画本部 渡邉敏博本部長

渡邉氏 十分な手応えを感じています。外資系PCメーカーだけでなく、国内PCメーカーからも、ネットブックを投入してほしいという声が多かったこと、そして、国内PCメーカーならではの全国規模でのサポートが魅力であるという声があるように、NECがあるが故の特徴に高い評価をいただいています。なかには、外資系PCメーカーのネットブックの取り扱いは敬遠していたが、NECであればぜひ扱いたいという声も販売店からはいただいています。既存のPC需要とは異なり、2台目、3台目という需要を創出できる製品としても期待されています。

-- 具体的には、どの程度の出荷規模を想定していますか。

渡邉氏 対外的には、ネットブック市場全体の2割のシェアを獲得したいといういい方をしています。

-- もう少しかみ砕いてもらうと(笑)。

渡邉氏 かなりラフな見方になりますが、国内のPC市場は年間1,500万台。そのうち個人向け市場は約600万台といわれています。そのなかで、ノートPC市場は約400万台。我々が製品投入するのは11月ですから、そこから3カ月が勝負として、1四半期分の市場規模は100万台。そのなかで、ネットブックは15〜20%の市場構成比ですから、市場規模は15万〜20万台となります。そこで、2割のシェアを取りたいという計算です。

-- 四半期で3〜4万台という規模ですね。業績への影響は考えていますか。

渡邉氏 現在の景況感が不透明であること、ネットブックの市場が今後どうなるかというのもなかなか見えにくい環境にあります。とはいえ、当社の年間の出荷規模(2008年度出荷計画は275万台)から見れば、ネットブック市場の2割という規模は、それほど影響がないと考えています。ですから、ネットブックの投入によるPC事業の計画変更はありません。

LaVie Light

-- NECは、国内PC市場全体では2割のシェアを突破しているわけですから、ネットブックで2割のシェアというのはやや慎重ですね。

渡邉氏 確かに、そう見えるかもしれませんが、この分野では後発ですから、まずは、最初の目標として2割はやるというように捉えていただきたい。2割のシェアというのは、先行する外資系PCメーカー2社とともに、3位以内のポジションを確保するという意味でもあります。存在感を持つという点で、最低限のシェアだといえます。

 ただ、NECは、ここで勝負をしようと考えているわけではありません。当社PC事業における基本的な考え方はやはりLaVieを使っていただきたい、ということに尽きます。そのなかで、国内トップメーカーとして、ネットブックという製品を求めるユーザーに対して、あるいはインターネットやメールだけが使えればいいというようなユーザー層に対して、きっちりとNECならではの製品を提供していくというのが、この製品のスタンスです。

 昨年末から、ネットブックの商品企画はスタートしています。しっかりと準備は進めてきました。市場動向を見ていますと、7〜9月になってモバイルPCの市場規模が一気に2倍に増加しています。その要因を分析すると、ネットブックの貢献が大きい。いよいよネットブックの市場が顕在化してきたなというのが、この時の印象です。そして、7〜9月のノートPCの伸張率は約10%増でしたが、ネットブックを除くと5%増に留まる。つまり、5%も市場をアドオンするだけの存在感が出始め、そのなかで、国内PCメーカーに対する要望が高まっている。ネットブックを購入したいとするユーザーのうち、71%の回答者が「できれば国内メーカー製を購入したい」としています。こうした市場動向からも、今NECがネットブックをやるべきだと判断したのです。

-- ネットブックは、価格インパクトが強いですね。外資系メーカーは世界規模でのビジネスをしていますから量産効果が見込める。それに対して、国内と一部アジア市場だけを対象にしているNECにとっては不利ですね。

渡邉氏 PC産業は、水平分業モデルが基本となっています。LaVie Lightは、中国のODMで生産しており、このODMが持つ部品調達力、生産力を利用できます。つまり、標準化した部品や仕様であれば、ODMを利用することで、世界のトップベンダーと同じようなコスト構造のなかで勝負ができます。一概に不利というわけではありません。

中国のODMで生産しているため「ASSEMBLED IN CHINA」となっている LaVieシリーズの場合は、米沢で生産しているため「ASSEMBLED IN JAPAN」

-- ただし、価格は外資系PCメーカーのネットブックに比べてやや割高です。

渡邉氏 NECがネットブックを投入するときに、なにで勝負すべきかを考えました。答えは1つしかなかった。それは、安心感です。検討段階では、外資系PCメーカーと同等価格、あるいはそれよりも安い価格で投入してはどうか、という議論もあった。だが、NECが投入するネットブックである限り、安心して利用していただけるものであり、その観点から、価格でも納得していただけるものでなくてはならない。160GBのHDDの搭載、耐圧150kgfという堅牢性や、独自のランチャーソフトの搭載、17mmのキーピッチや2mmのストロールの確保など、細かい点にこだわり、その上で、価格面でも負けないものを出す。開発の現場には、LaVieを作っているんだという気概が、常にありましたからね。

-- LaVieを作っているんだと気概とは、どういう意味ですか。

渡邉氏 LaVie Lightという型番が決定したのは、ギリギリになってからですが、開発チームの間では、LaVieという型番を意識して開発していた部分が多分にありました。つまり、LaVieという型番である限り、これまで培ってきた信頼を裏切るような製品は出せない。ネットブックであっても、これぞNECといわれるものを作るという気持ちでいました。ネットブックは、仕様がある程度決まった製品ですから、そこでどれだけの差別化を図るか。そこにNECのノウハウが注ぎ込んだのが、LaVie Lightというわけです。ですから、開発現場では、とにかく安心にこだわり抜きました。それを維持した上で、当社の経営トップからは、価格にもっとこだわれといわれ、さらに利益を出すことを求められましたから(笑)。単に安くするよりも、大変でしたよ。

パッドのボタン部分との仕切用の板を入れているのも、誤操作を招かないためのNECのこだわり キーピッチは17mm。モバイルPCのLaVie Jの17.5mmと大差がないのもこだわりだ

-- 利益は出ているのですか。

渡邉氏 それは至上命令ですから(笑)。LaVie Light単体で利益を出せる構造としています。

-- LaVie Lightという新たなブランドを用意したわけですから、これはシリーズ化していくことになりますか。

Lightのロゴ部分を強調するデザインとしている

渡邉氏 それは市場次第だといえます。今の立場は、トップシェアメーカーとして、拡大する市場にキャッチアップするという側面が強いのですが、今後、NECならではの先進的な機能を搭載し、より差別化していくということも検討材料の1つですし、一方で、もっと安いものを考えていくというのも検討の方向です。市場の動向を見ながら、方針を決定してくことになるでしょうね。

 ただ、第1号製品の引き合い状況などからみて、これで撤退するということは無いでしょう。我々が注意しなくてはいけないのは、これはあくまでもネットブックであって、LaVieの主力シリーズとは仕様が異なるということをしっかりとお客様に訴求する点ですね。ハイビジョン画質の映像をこれで視聴したいという人が購入してしまったら、NECのPCは使えないじゃないかということになりかねない。LaVie Lightというロゴも、「Light」という部分を四角で囲んで、グリーンで表記し、目立つようにしたのも、LaVieとは異なるシリーズだということを訴えるためです。販売店の方々と協力して、製品のコンセプトをしっかりとお伝えすることが大切だと考えています。

-- NECは、かつてダイナブックが全盛のときに、98NOTEを投入し、シェアを逆転しました。その結果、国内PC市場において、ブックPCではなく、ノートPCという呼称を定着させました。それに倣えば、ネットブックに対して、ネットノートというべきでは。

渡邉氏 その点は、真剣に議論しました。結論からいうと、我々が、今ネットノートといって市場を混乱させるよりも、LaVie Lightというブランドを訴求することに力を注ぐべきと判断しました。実はカタログなどにも、ネットブックという表記は一切使っていません。また、当社がネットブックという時には、市場全体を指す言葉とし、製品個別の場合には、LaVie Lightというブランドを使用することにしました。

-- LaVie Lightの投入が海外PC事業拡大の足がかりになる可能性はありませんか。

渡邉氏 日本では11月6日から出荷を開始しますが、東南アジアでは11月中旬から出荷を開始します。シンガポール、香港、オートスラリア、ニュージーランド、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナムが対象です。ただ、当面の間は、国内市場が中心になります。また、欧州市場向けには、NEC全体としては、ソリューション事業として展開しており、コンシューマビジネスはやっていません。そのため、コンシューマ向けブランドであるLaVie Lightは、欧州市場に展開する予定はありません。ネットブックによって、すぐに海外PC事業が拡大するということにはつながらないと考えています。

-- 企業向けのビジネスはどうですか。

渡邉氏 現時点で、具体的な商談はありませんし、セキュリティなどの観点から、LaVie Lightを企業で一括導入するということはあまり現実的ではないと考えています。もちろん、ロット単位での商談があれば、カスタマイズ対応などを含めて検討することも可能ですが、モバイル性やセキュリティ性に優れたUltra LITEや、シンクライアント端末の製品群がありますから、そちらの方が最適な提案ができると考えています。

-- 年末商戦におけるLaVie Lightの成功のバロメータは。

渡邉氏 まずはネットブック市場で2割のシェアを獲得するということになります。LaVie Lightは新たなユーザー層を創出するという点で魅力的な製品だといえますし、PCをもっと使っていただくという点で、携帯電話とPCとの隙間を埋める製品の1つになると考えています。インターネットやメールの専用製品としても可能性はあるでしょう。シェアという観点でも見方もありますが、NECならではの特徴を活かし、ネットブック市場での存在感を高めることができればと考えています。

□NECのホームページ
http://www.nec.co.jp/
□LaVie Lightのページ
http://121ware.com/lavie/light/
□ネットブック/UMPCリンク集(NEC)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/link/umpc.htm#nec

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(2008年10月30日)

[Text by 大河原克行]


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