11月上旬 発売 価格:オープンプライス ASUSTeKのEee Boxは、Eee PCのコンセプトをデスクトップという形に変えた製品だ。CPUがAtomであるため、Intel式に呼べばネットトップということになる。今回はEee Boxを使いデスクトップ型としての性能、使い勝手に迫ってみよう。 ●PCの新しい設置スタイルを可能とする省スペースデザイン 今回用意したのは編集部が購入した「Eee Box」で、型番は「B202-WHT」だ。16型ワイド液晶セットモデルだったため、購入価格はヨドバシカメラで59,800円だった。1つ指摘しておきたいのは、これまでの常識では「PCは小さいほど高価」だったこと。確かにEee Boxに匹敵する安価なPCはある。しかし、そうした製品は、ATXやmicroATXといった規格化され、大量生産されるパーツから構成されるのが一般的だ。Atomの登場はこうした点でブレイクスルーであると言えるだろう。 さて、前置きはこのくらいとしてまずはデザインを見ていこう。Eee Boxのサイズは269×222×178mm(幅×奥行き×高さ)。DVDのトールケースよりはひとまわり大きいがそれでも小型である。ただし光学ドライブは別途購入しなければならず外付けとなる。ネットトップとしては先行するMSIのWind PCが光学ドライブを内蔵し、比較的従来までのスリムPCに近かった点と比べると設計思想に違いが感じられる。
インターフェイスは前面および背面に集約されている。前面はフタが取り付けられており、閉じた状態ではフラットですっきりとしたデザインだ。フタを開けると、USB 2.0×2、SDHC/MMC/メモリースティックPRO対応のメモリカードスロット、ヘッドフォン/マイク用のオーディオ入出力端子がある。背面はUSB 2.0×2、DVI-I×1、Gigabit Ethernet端子、S/PDIF対応ライン出力、そしてACアダプタ用ジャックと無線LAN用アンテナポート。なお、Gigabit Ethernetの対応は特筆すべきところだろう。有線ネットワーク機器ではGigabit Ethernetの普及が進んでおり、特にASUSTeKの主力となるマザーボードではほぼ100%といった状況だ。
上部にあるのはスリットのみ。下部はスリットが2カ所となる。下部スリットのうち1つはHDDベイであり、そのネジ穴の1つははシールで封印されている。ベイには簡単な取っ手もあり、ドライバ等でこれを引き出して、ベイユニットを引き出すことが可能だ。
搭載されていたHDDはSeagateの2.5インチSATA HDD「LD25.2」の80GBモデル。このLD25.2は、Seagateによれば主にゲーム機、ビデオレコーダー、そして薄型コンピュータ向けの製品とされており、低消費電力、低発熱、高信頼性がその特徴だ。もちろんロットによって搭載ドライブが変わる可能性は否定できない。しかしまだ低容量の2.5インチHDDは製造されているはずで、さらに言えばIntelおよびMicrosoftの許す最大容量のHDDまでは搭載可能だったはずだ。LD25.2の採用は、ASUSTeKはコスト以上の目的があってあえてこの製品を選んだと読むこともできる。
そしてACアダプタにもふれておこう。今回入手したのはホワイトのEee Box B202-WHTだが、添付されていたACアダプタの色は黒だ。このあたりEee PC 901-Xとは事情が異なるらしい。普通にデスク上で使うのならばACアダプタは机の裏に隠れる。ただ、Eee Boxは従来のようなデスク置きだけでなく、家庭内でもいろいろな場所で使われるのではと思う。そうした新しい置き場所で、このACアダプタの色が気にならないかと心配だ。
●VESAマウンタで一体型のような使い方も可能 ここでセットの液晶ディスプレイ側も説明しておこう。付属するディスプレイ「16W」は解像度が1,360×768ドット。コンパクトであり、セットモデルで59,800円前後という価格も魅力である。ただし機能は最小限でありインターフェイスもミニD-Sub15ピンのみ。スペックシートを確認してもらえば分かるが、左右はともかく上下の視野角が狭い。また、ディスプレイスタンドもプラスチックパーツを組み合わせるだけと簡素だ。トータルしてEee Boxがスタイリッシュであるのに対し、どうしてもディスプレイ側がチープに見えてしまう。もっとデザイン面でも惹き付けるところが欲しいと感じた。ただし、上位の19型ワイド液晶「19W」は解像度が1,440×900ドットになり、HDCP対応のDVI-Dが追加され、さらに音声入力とスピーカー、130万画素Webカメラも搭載されている。こちらのセットが64,800円前後と差額が5,000円に収まっているのならば、19型セットモデルがお得と言えそうだ。
Eee BoxにはVESAマウンタも付属する。そしてこれを使うとEee Boxを液晶ディスプレイの背面に背負わせることが可能だ。Eee Box自体小さいが、さらに設置スペースを節約できる。このマウンタホールはVESA規格に沿っているため、基本的にはPC用液晶ディスプレイのほとんどのモデルに装着可能だ。そして、例えば音声入出力を備えたディスプレイや、USB Hubを備えたディスプレイである場合、さらにEee Boxとディスプレイとの一体感が増す。あるいはASUS自身も、こうした他社ディスプレイに対抗するため、何かしら特徴を持ったディスプレイを作ってみてもおもしろいのではないだろうか。USB Hubやメモリカードリーダを搭載したディスプレイは既に例があるし、Eee Boxとの電源連動機能、あるいはEee Box側がHDMIに対応していたのなら映像と音声をHDMIケーブル1本で伝送できただろう。ASUSTeKの液晶でしかできない何か、そうした「液晶セットが欲しい」と思わせるポイントがあればなお良かったと思う。 ●分解してみました
Eee Box外装には合計4個のネジが用いられている。先に紹介したHDDベイの2個に、外装専用に2個だ。外装用の2個のネジのうち、やはり1個はシールによって封印されているのでこれを剥がすこととなる。外装用のネジを外したら、側面版の端にあるわずかなすき間に薄手のスクレイパーなどを差し込み、慎重にツメを外していく。ツメは上部、前面、背面に2個ずつ計6個ある。外枠は比較的柔らかい素材であるが、側面版のツメは相当薄く、ツメを折らないよう気をつけながらの作業が必要だ。 そして現れた内部だが、ここも金属で覆われており、結局これ以上の分解方法が見つからず今回はここで断念した。さて、この側面版を外した状態だが、2カ所開閉可能なフタがある。1つは無線LANのアンテナケーブルを配線する箇所。ピンポイントにアンテナ端子のみであるため内部をうかがい知ることはできなかった。ただ、この無線LAN用のフタから前面部にかけて、ケーブルを引き回すためのような溝が走っている。将来的に何かを搭載するためのものなのだろうか。 もう1カ所のフタはSO-DIMMスロットだ。搭載されていたのはシールにASUS、チップにNANYAのロゴがあるDDR2-533メモリだ。なお、SO-DIMMソケットは2つある。標準搭載が1GBであるため、もう1GB追加するか、あるいは2GBモジュールに交換可能だ。
●Eee PC 901-Xと同等の性能も、SSDとHDDでストレージ性能に違い あらためてEee Boxの内部スペックを紹介しておくと、CPUはAtom N270(1.6GHz)でチップセットはモバイル Intel 945GSE Express+ICH7-Mと、ネットブック/ネットトップの標準的な仕様である。メモリはDDR2メモリで、容量は1GB、動作モードはDDR2-533となっていた。そのほか、デバイスマネージャから得られる情報として、Gigabit EthernetはRealtekのRTL8168C/8111C(PCIe)、無線LANがRalink TechnologyのIEEE802.11b/g/n対応製品、HDオーディオチップがRealtek製といったことがわかる。
インストールソフトウェアを見ると、目立ったものでオフィススィートの「StarSuite 8」、ASUSTeK独自のソフトウェアで「ASUS Easy Update」「ASUS Update」「Eee Cinema」「Express Gate」が確認できる。このうち、Eee Cinemaは10フィートUIを備えたメディアセンター風ソフトウェアだ。また、Express Gateは一部同社マザーボードでも採用されている瞬間起動するOSである。電源オンからExpress Gateの起動までは約8秒とされており、確かに早く、それでいてウェブやメール、チャットといった基本的な機能が利用できる。 ではパフォーマンスを見ていこう。今回利用したベンチマークは、他のAtom搭載製品と比較可能とするため、PCMark05(Build 1.2.0)、HDBENCH Ver.3.40beta6、Crystal DiskMark 2.2、FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3、そして3DMark06(Build 1.1.0)とした。 結果は、他のAtom搭載製品とそれほど変わらないのは当然だが、ASUSTeKの製品と比較すると、SSDを搭載したEee PCに対しHDDを搭載するEee Boxという点でストレージ回りのスコアに違いが見られる。例えばHDBENCDHにおけるランダムリード/ライトなどは大きく異なる傾向だが、HDDもシーケンシャルライトが高速な傾向であり、PCMark05のようにトータルスコアとして出るとEee Boxが逆転するような例もある。 【Eee Boxのベンチマーク結果】
なお、消費電力はWindowsの起動時のピークで19W、3DMark06のGame Test1ピーク時で20W、そして通常時が15W前後と、検証中常に20W以下に収まっていた。動作中も側面がほんのりと暖まるだけであり、エコと静音の両面で満足できるだろう。 初回販売分にウィルス混入、そして回収という事態が生じたEee Box。時系列で追うと、3日に販売開始、そして同日の発覚から翌日4日には交換という対応策が示され、そして14日に調査結果が公表されている。もちろんウィルス混入はあってはならないことであるし、Eee Boxは価格を武器にしているだけにPCリテラシーの低い層をもターゲットとしていることを忘れずに、ASUSTeKは今後しっかりとした改善策を示して欲しい。販売再開は11月上旬とされているが、Eee Box自体は、手軽にPCを始めてみたい方、もちろんPCマニアも含めて、デスクトップの新たな使い方を示すものであると思う。 ネットトップ、ネットブックは、販売時の構成はIntelやMicrosoftの制約があるものの、購入後の拡張はユーザー次第である。腕に自信があるユーザーは、思うままに拡張し、新しい使い方を発見して欲しい。 □関連記事 (2008年10月22日) [Reported by 石川ひさよし]
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