発売中 価格:オープンプライス(直販174,800円~) ソニーの「VAIO type T」シリーズは、11.1型ワイド液晶を搭載したモバイルノートであり、ワンセグチューナを搭載するなど、AV機能を重視していることが特徴だ。ボディもスリムで軽く、携帯性も優れている。今回、秋冬モデルとして登場した新「VAIO type T」は、ボディや構成パーツなどが一新され、より魅力的な製品へと進化している。 今回登場したVAIO type Tは、店頭モデル(VGN-TT70B/TT50B)と、直販サイトなどで販売されるVAIOオーナーメードモデル(VGN-TT90S/TT90US/TT90NS)に大別できるが、ここでは、後者を試用した。VAIOオーナーメードモデルは、BTOメニューが充実しており、仕様のカスタマイズが自由に行なえる。今回試用したVGN-TT90Sは、128GB SSDを2台搭載するなど、非常にハイエンドな構成であった。なお、今回試用したのは試作機であり、量産品とは細部が異なる可能性もある。 ●ボディデザインも一新 新VAIO type Tは、従来のVAIO type Tとはボディデザインも異なっている。従来のVAIO type Tは、直線を基調としたシャープでソリッドな印象を受けるボディであったが、新VAIO type Tは、ボディの手前と奥側が少し中央に絞った形になるなど、曲線を多用したデザインとなっている。また、両サイドにシルバーのサイドパーツが装着されており、スマートさを演出している。 サイズは279×199.8×23.5~30.7mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1.14~1.47kg(構成によって異なる)で、旧VAIO type Tの277×198.4×22.5mm(同)、約0.97~1.4kgに比べて、フットプリントはほとんど変わらないが、厚さが増加し、重量も多少重くなっている。しかし、このクラスのモバイルノートの中でも、携帯性は優秀だといえる。 また、マルチレイヤーカーボンファイバーを天板と底面に採用しており、軽量化と堅牢性を両立している。天板については、従来の機種よりもシートを1層増やし、剛性をアップ。底面も3辺折りを実現し(従来は1辺折り)、堅牢性がより向上している。
●Centrino2採用で基本性能が向上
新VAIO type Tは、CPUやチップセットが一新されており、基本性能が向上している。CPUには、Core 2 Duo SU9300(1.2GHz)またはCore 2 Duo SU9400(1.4GHz)が、チップセットには、グラフィックス統合型のモバイルIntel GS45 Expressが採用されている。 またメモリも、従来はDDR2 SDRAM(PC2-4200)が採用されていたが、新VAIO type Tでは、DDR3 SDRAM(PC3-6400)になり、デュアルチャネルアクセスもサポートされたことで、メモリ帯域幅が大きく向上している。メモリスロットとしてSO-DIMMスロットを2基搭載しており、最大4GBのメモリを搭載可能だ。店頭モデルの上位機は4GB、下位機でも3GBのメモリを搭載しており、Windows Vistaも快適に動作する。 さらに、IEEE 802.11a/b/g/nドラフトに対応したIntelの最新無線LANモジュールを搭載しており、Centrino2プラットフォームの要件を満たしている。ベンチマーク結果については後述するが、このクラスの製品としては、トップクラスの基本性能を実現したといえる。 ●新開発のクリアソリッド液晶搭載で色再現領域が拡大 液晶パネルとして、新開発の11.1型ワイドクリアソリッド液晶を搭載したこともウリの1つだ。クリアソリッド液晶は、2008年夏に登場したVAIO type Zにも搭載された液晶だが、従来の光沢タイプのクリアブラック液晶とノングレア液晶のいいとこ取りをしたようなパネルだ。液晶から反射する光を適度に拡散させることで、映り込みを抑え、太陽光や蛍光灯などさまざまな外光条件のもとでも、見やすい表示を実現している。 また、新開発のカラーフィルターと、新しい白色LEDバックライトの採用によって、色再現領域も拡大。NTSC比100%という優れた色再現性を実現。さらに、色階調も従来のRGB 18bitから、RGB 24bitになり、ディザリングなしで1,677万色の再現が可能になった。解像度は1,366×768ドットで、アスペクト比はハイビジョン放送と同じ16:9である。表面にはハードコーティング処理が施されており、キズにも強い。液晶の表示品位は優秀で、色モードをテレビやDVD/BDなどの用途に合わせて切り替えることもできるので、BDタイトルも色鮮やかな表示で楽しめる。 また、キーボード右上に照度センサーを搭載しており、周囲の明るさに応じて、バックライト輝度を自動的に調整することが可能だ。バックライトの輝度を最適化することで消費電力が削減され、バッテリ駆動時間もより長くなっている。
●BDドライブを搭載し、SSD×2やSSD+HDDなど、柔軟なストレージ構成が可能
新VAIO type Tの最大の特徴が、Blu-ray Disc(BD)ドライブを搭載したことである(店頭モデルの下位機は、DVDスーパーマルチドライブ)。Blu-ray Discへの書き込みにも対応しており、バックアップ用途などにも利用できる。新VAIO type Tは、BDドライブ搭載のモバイルノートとして、現時点で世界最小・最軽量を誇る。チップセットに内蔵されている動画再生支援機能により、市販のBDタイトルもコマ落ちすることなく、迫力ある映像を楽しめる。 また、VAIOオーナーメードモデルでは、ストレージ構成の自由度が高く、128GB SSDを2基搭載したり、2.5インチHDD+SSD、2.5インチHDDのみ、1.8インチHDDのみといった、さまざま選択が可能である。なお、2.5インチHDDと光学ドライブを同時に搭載することはできず、光学ドライブ搭載時は、1.8インチHDDまたはSSDを搭載することになる。SSDは、HDDに比べて、ランダムアクセスが高速で、消費電力も少ないという利点があるが、容量面では不利であった。しかし、新VAIO type Tでは、SSDを2基搭載してRAID 0(ストライピング)を構築することが可能で、SSDでも256GB(128GB SSD×2)の大容量を実現できる。256GBのSSDを搭載したノートは、世界初とのことだ。なお、今回の試用機は、BDドライブ+128GB SSD×2というハイエンド構成であった。 ●ノイズキャンセリング機能も新搭載 新VAIO type Tでは、ノイズキャンセリング機能を搭載したことも魅力の1つだ。ポータブルオーディオプレーヤーでは、ノイズキャンセリング機能を搭載した製品が発売されているが、ノートPCで本格的なノイズキャンセリング機能を搭載したのは、おそらくVAIO type Tが初めてであろう。付属のノイズキャンセリングヘッドフォンをヘッドフォン端子に装着するだけで、ノイズキャンセリング機能が有効になる。ノイズキャンセリング機能はデフォルトで有効になっているが、ユーティリティによって有効/無効の切り替えや、効き具合の調整が可能だ。ノイズキャンセリング機能の効果は大きく、電車の中などで音楽を聴く際に、音量をあまり上げなくても快適にリスニングが楽しめる。 さらに、高音質サウンドチップ「Sound Reality」を搭載しており、106dBという高いS/N比を実現。ノイズキャンセリング機能とあわせて、クリアで臨場感にあふれたサウンドを再生できる。 また、ワンセグチューナも搭載されており(VAIOオーナーメードモデルでは、ワンセグチューナの搭載/非搭載を選択可)、ワンセグ放送の視聴や録画が可能だ。ワンセグ用アンテナは旧VAIO type Tと同様に液晶の右側に配置されており、使わないときには内部に収納できる。なお、旧VAIO type Tのアンテナは、引き出したときに軸が回転するようになっていたため、収納時にアンテナの向きを正しく合わせる必要があったが、新VAIO type Tのアンテナは回転しないようになっているので、向きを気にせず収納できる。F型プラグとのアンテナ変換ケーブルも付属しており、外部アンテナを接続すれば、より安定した受信が可能だ。
●HDMI端子や指紋センサーを搭載 キーボードには、キートップとキートップの間が開いているアイソレーションキーボードを採用。タイプミスが少なく、キータッチも良好だ。ただし、試作機では、やや強めにタイピングしないと、キーを取りこぼすことがあった。VAIOオーナーメードモデルでは、日本語キーボードと英字キーボードを選択できる。ポインティングデバイスとして、インテリジェントタッチパッドを搭載。店頭モデルやVAIOオーナーメードモデルで指紋センサーを選択した場合、左右クリックボタンの中央に指紋センサーが搭載される。 インターフェイス類も充実しており、USB 2.0×2、アナログRGB、LAN、IEEE 1394のほか、HDMI端子も装備している。もちろん、HDMI端子はHDCP対応なので、HDMI端子を備えた大画面テレビに接続して、BDタイトルを大画面で楽しむことが可能だ。ポータブルBDプレーヤー的な使い方も考えられる。カードスロットとして、ExpressCard/34スロットを搭載するほか、メモリースティックスロットとSDメモリーカードスロットも備えているので、デジカメで撮影した画像などの転送に便利だ。 ワイヤレス機能としては、IEEE 802.11a/b/g/nドラフト対応無線LANとBluetooth 2.1+EDRをサポート。本体前面に、ワイヤレススイッチが用意されているのも便利だ。パームレスト右側にはFeliCaポートが内蔵されており、液晶上部にはWebカメラ「MOTION EYE」が内蔵されている(ともにVAIOオーナーメードモデルでは非搭載も選べる)。また底面には、ドッキングステーション接続用端子が用意されている。オプションのドッキングステーションには、USB 2.0×3、LAN、アナログRGB、DVIの各端子があり、ワンタッチで着脱できる。
●従来よりも短時間で充電できる「急速充電モード」を搭載 新VAIO type Tは、バッテリ周りも進化しており、従来のVAIO type Tで採用していた「いたわり充電モード」に加えて、新たに「急速充電モード」を搭載。バッテリーの一定容量までは従来の約2倍のスピードで充電が可能で、フル充電までの時間も従来の約5.5時間から約3.5時間へと短縮された(標準バッテリパック利用時)。また、省電力設定用ユーティリティも新しくなり、1つの画面で全ての省電力設定が行なえるようになり、より使い勝手が向上している。VAIOエナジーセーブテクノロジーと名付けられた省電力化技術により、駆動時間がさらに延びており、標準バッテリパック(S)で、公称約9.5~11時間の連続動作が可能だ。また、9セル仕様(10.8V/8,100mAh)の大容量バッテリパック(L)を装着すれば、駆動時間は約14~17時間に延びる。バッテリ駆動時間も、モバイルノートの中でトップクラスであり、高く評価できる。
●SSD RAIDは超高速 参考のために、ベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、「PCMark Vantage 1.0.0.0」と「PCMark05(Build 1.2.0)」、「3DMark06(Build 1.1.0)」、「フロントミッションオンラインオフィシャルベンチマーク」、「モンスターハンターフロンティアオンラインベンチマーク」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」だ。また、Windowsエクスペリエンスインデックスも計測した。比較対照用に、レノボ「ThinkPad X61 Tablet」とパナソニック「Let'snote Y7」の結果もあわせて掲載している。 PCMark VantageやPCMark05の結果は、HDD Scoreが非常に高くなっており、PCMark05のHDD Scoreは、ThinkPad X61 TabletやLet'snote Y7の4倍以上に達している。今回試用したVGN-TT90Sは、128GB SSDを2基搭載してRAID 0が構築されており、HDDを大きく上回るパフォーマンスを実現しているのだ。実際に使ってみても、アプリケーションの起動が速く、とても快適であった。CPU Scoreはほぼクロックから推定される値で、グラフィックス周りも、Intel GM965とほぼ同程度のスコアであった。 VAIO type T VGN-TT90Sのベンチマーク結果
新VAIO type Tは、コンパクトで軽いボディに、高い基本性能を凝縮したモバイルノートである。また、BDドライブやクリアソリッド液晶、ノイズキャンセリング機能、ワンセグチューナの搭載など、モバイルノートとしては珍しく、AV機能が充実していることも魅力だ。SSDを搭載すると価格がかなり高くなってしまうが、HDDモデルなら、比較的リーズナブルな価格で購入でき、コストパフォーマンスも悪くない。旧VAIO type Tも完成度の高いモバイルノートであったが、新VAIO type Tは、製品としての魅力がまた一段と向上している。携帯性と機能の両方を重視する人にお勧めしたい。 □ソニーのホームページ (2008年10月10日) [Reported by 石井英男]
【PC Watchホームページ】
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