そしてIntelも、IDFでの積極的なSSDへのコミットメントを見る限り、モバイルコンピューティングの将来を担う技術の1つとして、SSDに強い関心を寄せているのだろう。 いや、もう少し正確に言えば、デスクトップやサーバーといった分野を含め、将来的にSSDがもっと広範に使われるようになると考えているという。そうした将来を見越し、Intelは高付加価値のNOR型フラッシュメモリに特化していた戦略を変更してNAND型フラッシュ事業にも取り組み始めていた。その最初の戦略的な技術がIntel Turbo Memoryだったが、Intel製SSDの開発もまた昨年(2007年)のIDFで予告されていた。 IntelはUSB型から超小型のパラレルATAタイプ、1.8インチ、2.5インチ型のSATAタイプまで、各種の製品を用意。データセンター向けのハイエンド製品までをカバーする。もっとも高速な製品を用いれば、データセンターのデータベースパフォーマンスを50倍まで向上させることができるという。 Intelは'96年以降、HDDの速度がほとんど向上していないことを指摘する。たとえばCPUはマルチコア時に175倍、シングルコアでも65倍以上に性能が向上しているのに対し、HDDは1.3倍にしかなっていない。一方、SSDならば190倍以上の性能を引き出すことが可能だとIntelは言う。そう、Intel製SSDの訴求点は圧倒的な速度である。 ●SLC/MLCの両モデルを投入 Intelは今後30日以内にMLC(マルチレベルセル)、90日以内にSLC(シングルレベルセル)のSATA SSDを発表する。一般クライアントおよびコンシューマ向けのメインストリーム製品にはMLCの80GB版、160GB版が、それぞれ1.8インチ型と2.5インチ型、2つのフォームファクタで提供され、より高速で信頼性の高いSLC版は32GBと64GB(フォームファクタは2.5インチ型のみ)が用意される。いずれも出荷は第4四半期。 SLCタイプは「X25-E」という名称で、シーケンシャル読み込みが250MB/sec、シーケンシャル書き込みで170MB/sec、リード遅延時間は75μsの構成で、アクティブ時の消費電力が2.4W、アイドル時には0.06Wで動作する。動作保証時間はMTBFで200万時間、1,000Gの衝撃に耐えることもできる。 MLCタイプは「X25-M」(あるいは1.8インチ型の場合は「X18-M」)でシーケンシャルライトが70MB/sec、稼働時間はMTBFで120万時間となるものの、アクティブ時の消費電力は0.15Wしかなく価格も安い。 Intelが公開しているX25-Mと他社同等品とを比較したグラフを見る限り、その性能は圧倒的だ。SATAエミュレーションを行なうLSIが高速なのか、特にランダムリード時の速度差は驚くばかりだ。 驚くほどの高速性を実現できた理由のうち、もっとも大きなものは何かと訪ねたところ、担当者は「10チャンネル並列でフラッシュメモリを読み書きする高速LSIが一番大きい」と答えた。 モバイルPC向けには、低所費電力や小型化、軽量化といった利点を提供できるのは明らかだが、Intelはその高性能を活かしてサーバーやゲームPCなどでの需要も見込むようだ。 価格は未定だが、発表会では「容量単価は従来の製品と同等で、性能だけが著しく高い」といった説明を繰り返し行なっていることから、価格は相場並で大幅に高価、あるいは安価といったことにはならないと考えられる。
●Intelが見つめるSSDの未来 Intelからの発表内容はこれだけで、あとは高性能なSSDの登場を待つのみなのだが、周囲の状況を考えると、Intelが単純にSSDを販売するだけでは終わらないように思える。 これは筆者の邪推かもしれないが、Intelは将来、Centrinoなどのプラットフォーム技術の一部にSSDを組み込むことを考えているのかもしれない。SSDはソフトウェアから見ると単なるディスクドライブにしか見えないが、その制御方法や高速化の手法といったところまで踏み込み、さらには将来的にSSD専用のコマンドセットを策定するといったところまで行くと、チップセットとSSDの関係を密にする意味も出てくるからだ。 いずれにしろ、Intelが高性能を売りにプロモーションを強くかけてくれば、SSDの認知はさらに広がり、一気に需要が伸びて他社製品の低価格化や高性能化といった影響を周りに及ぼすことになるだろう。
□Intelのホームページ(英文) (2008年8月20日) [Text by 本田雅一]
【PC Watchホームページ】
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