7月11日にWILLCOM D4(以下D4と略す)が発売になった。筆者は、秋葉原のヨドバシで予約しており、開店と同時に入手した。すでに数人が並んでいたが、筆者は、iPhoneの表参道の発売にも並んだ後だったので、これぐらいは行列のうちには入らなかった。 今回は、速報として簡単なレポートを行ない、次回、分解を含めて詳細なレポートをお届けする予定だ。 ●パッケージと付属品 D4パッケージの付属品は、ACアダプタ(とACケーブル)、標準バッテリ、ソフトケース、イヤフォンマイク(マニュアルにはヘッドセットと表記されている)、W-SIMである。 そのほか、Office Personal 2007、およびPowerPoint 2007のインストールパック(ディスク)が付属しているが、ソフトウェア自体はすでにインストールされている。 付属のイヤフォンマイク用に、フェライトのノイズフィルタが付属していて、使用前に装着する必要がある。このあたりの気遣いは、日本メーカーらしいが、その分ケーブルが少し重くなって取り回しが面倒になる。 付属のACアダプタは比較的小さく、持ち歩きもさほど気にならないものだ。 D4は、黒で統一された凝った箱に入っている。単行本の箱のような外装の中に2つに開く箱があり、片方に本体や付属品が、もう一方にマニュアルやディスクが入っている。 iPhoneの箱を誉める記事が出たせいか、昨年後半ぐらいから、この手のモバイルデバイスの箱が豪華になってきた。豪華な箱は、少なからず、製品価格にも影響するし、豪華だからいって嬉しいというものでもなけれは、所有する喜びがわくこともない。こうした感情は、ある種のファンだから生ずるか、あるいはメーカーに踊らされているかのどちらかであろう。D4とiPhoneを比較して云々いうつもりはないし、iPhoneも含めて、やたらに箱を豪華にするのはユーザーメリットもないし、「もったいない」のでやめたほうがいいと思う。
●外観 D4の外観は、簡単にいえば、最近のスライド式キーボードのスマートフォンをそのまま大きくしたようなものだ。 液晶側は、右側にポインティングデバイスとなる「タッチパッド」、左にマウスボタン、そして状態表示用のLED(電波状態や充電、HDDアクセスなど)がある。液晶側は、ツヤのある黒になっている。触ったときの指紋などが目立つのだが、高級感はある。 液晶の右側はタッチパネルになっているが、筐体表面にはなにも手がかりはなく、内部で矢印が光るようになっている。真ん中あたりが通常のタッチパッドに相当し、上下にはスクロール用の領域がある。 本体は、側面が銀色の帯とその下の黒い部分に分かれているように見えるデザインになっている。スイッチなどは、この銀色の部分に配置されている。各種のスイッチやコネクタ、スロットなどは、すべて本体側にある。 キーボードは、シート状の薄いタイプで、ストロークはわずかしかないものの、軽いクリック感があり、押したことは確実にわかる。縦5段で、最上段は数字キーになっていて、ファンクションキーはFNキーを併用して入力する。記号キーが一部、最下段に配置されているが、カーソルキーは、凸配列、右シフトキーもある。エンターキーは、2段分で逆L字型となっている。コンパクトながら、あまり無理のない配列だ。また、キーボードにはバックライトが組み込まれていて、暗いところでも入力が可能である。 このサイズだと、両手で持って、両方の親指で打つことがメインにはなるが、両手を使ってキー入力はできなくはないサイズである。ただし、ホームポジションに人差し指を置いてもキーピッチが小さいため、小指や薬指はキーの上に置くことはできない。なので、正式なやり方でのタッチタイピングは難しいだろう。 また、キーボード側の上部には、放熱のための排気口があり、中にはファンが組み込まれている。このD4に採用されているAtomプロセッサは低消費電力というのが1つのウリなのだが、排気はかなり熱く、また、底面部分もファンの近辺は熱くなる。ファンは、発熱量に応じた回転制御が行なわれているようで、負荷により音が変化するものの、スタンバイ状態にならない限り止まることはないようだ。 重量は、標準バッテリ込みで460gと500gを切っている。サイズは、188×84×26mm(幅×奥行き×高さ)とVHSのカセットよりも小さい。
●ハードウェア ハードウェアとしては、D4は、Atom Z520(クロック周波数1.33GHz)を採用し、チップセットには、System Controller Hub(SCH)と呼ばれるUS15Wを採用している。同じAtomプロセッサでも汎用のチップセットよりも、部品のフットプリントが小さくなり機器を小型化しやすい。このUS15Wには、ディスプレイコントローラGMA500および、動画デコードアクセラレータが組み込まれている。Atom Z520とSCH、および無線通信機能を内蔵しているため、D4は、Centrino Atomロゴが付けられている。 メインメモリは1GBを実装しているが、拡張はできない。外部記憶としては、40GBの1.8インチHDDを内蔵しており、さらにmicroSDカードスロットがある。 PHSによる通信のためW-SIM(W-OAM対応)が付属し、専用スロットに装着して利用する。実際に製品に付属していたのはRX420IN(ネットインデックス製)で、これは4Xパケット方式で最大204kbpsでの通信が可能になっている。 無線LANは、802.11b/gに対応したもので、デバイスマネージャの表示ではMarvellの「SD8686 Wireless LAN SDIO Adapter」となっていて、内部のSDIOスロットでの接続になっているようだ。 このほかBluetoothも内蔵しており、バージョンは2.0+EDR、スタックは、ITVのBlueSoleilである。 付属しているのは標準バッテリで、稼働時間は、約1.5時間。こまめにON/OFFして使わないとあっというまに電源が無くなってしまう感じである。大容量バッテリを使えば4.5時間までは延長できる。
●ソフトウェア D4は、Windows Vista SP1を採用している。内蔵のディスプレイコントローラGMA500は、Aeroを動作させることができるが、標準状態では、「Vista Basic」が選択されていた。Aeroでは、ディスプレイコントローラの3D機能を利用するため、消費電力が上がってしまう。このため、Aeroが動作できるものの、デフォルトとしてVistat Basicが選択されているのだと思われる。 アプリケーションとしては、Office Personal 2007とPowerPointがバンドルされている。ビジネスでの利用を想定したものと考えられる。D4は、オプションのコネクタやクレードルを使うことでRGBモニタを接続でき、プロジェクタなどでプレゼンテーションが行なえるため、PowerPointが追加されているのだろう。 その他、D4独自アプリケーションとしては、ユーティリティ類、通信関連、ハードウェア関連(カメラやワンセグ)、専用ラウンチャーなどがある(表1)。 メールは、D4メールランチャーを使って設定し、その後、アカウント別にD4メールランチャーで起動するのだが、標準でVistaのWindows Mailを使うようになっている。D4には、Outlook 2007も組み込まれているので、こちらを使うこともできるが、この場合、手動で設定するか、先にD4ラウンチャーでWindowsメールを設定しておき、あとからOutlook 2007を起動すると、設定のインポートが行なわれる。
【表1】 主なソフトウェア
ざっと使った感じ、バッテリ駆動時間がかなり気になる。500g以下という重量とこのサイズと引き替えなのだが、1.5時間は、さすがに短すぎる。7月31日までプレゼントキャンペーンが行なわれている、大容量バッテリは必須といえそうだ。なお、オプションのクレードルは、同時発売ではなく、少し発売が遅れるとのことだ。 □ウィルコムのホームページ (2008年7月15日) [Reported By 塩田紳二 / Shinji Shioda]
【PC Watchホームページ】
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