NECのノートPC「LaVie」シリーズの中でも、優れた操作性、セキュリティ性、およびモバイル性を持つビジネスモバイルノートとしておなじみの「LaVie J」。そのLaVie Jがフルモデルチェンジし、仕様面やデザイン面など、あらゆる面で大きく進化した。今回は、その新LaVie Jシリーズの中から、最上位モデルとなる「LaVie J LJ750/LH」を取り上げる。 ●フラットなボディを採用し、かつ堅牢性も向上
ここ数年、パナソニックのLet'snoteシリーズの成功もあり、ビジネスシーンでの利用をメインターゲットとするモバイルノートでは、1kg前後の軽量さと、大きな外圧にも耐える優れた堅牢性を両立させるという点に重点が置かれていたように思う。そこで、天板部分に凹凸を持たせたボンネット構造を採用することで、薄い素材を採用しながら優れた堅牢性を実現する製品が増えていた。それは、従来のLaVie Jシリーズも同様だ。 しかし、それによって本体の厚さやデザイン性は若干犠牲にされていた。天板部分に凹凸があり、しかも本体カラーはシルバーを基調とするモバイルノートがあふれ、メーカーや機種が違っても個性を感じることが少なくなっていた。しかし新LaVie Jシリーズでは、本体デザインやカラーリングが大幅に変更され、従来までのイメージが完全に払拭されている。 まず、最大の特徴となるのが、天板のボンネット構造を取りやめて、本体がフラットになったという点だ。天板部分の凹凸がなくなり、かなりすっきりとしたイメージだ。しかも、天板部分がフラットになっただけでなく、手前から後部まで、本体の厚さが均一になっている。 従来モデルでは、本体の厚さは2スピンドル機の「LJ750/JH」で34mm~38.6mm、1スピンドル機の「LJ700/JH」で27mm~38.6mmであった。それに対しLJ750/LHでは、本体前部から後部まで厚さが均一の29.8mmとなっている。LJ700/JHの最薄部と比較すると、3mmほど厚くなっているものの、全体で考えると薄くなったと感じる。また、2スピンドル機であるLJ750/JHとの比較では5~9mmほど薄くなっており、パッと見比べただけでも、大幅に薄くなったという印象を強く受けるはずだ。従来モデルの1スピンドル機よりも薄くなっているわけで、これは特筆すべきポイントだ。 薄く、天板がフラットになっているにも関わらず、耐圧性能は300kgfと、従来モデルの2倍の耐圧性能を実現。加えて、天面およびパームレスト面での点加圧への耐圧性能も25kgfとなっている。実際に、天板の中央部分を手で押してみても、やわらかいという印象は受けず、押している部分の裏に位置する部分での液晶の表示色の変化も全く見られなかった。これなら、満員電車のような非常に強い外圧が加わる環境にも安心して持ち込めるだろう。 フットプリントは292×214mm(幅×奥行き)と、A4サイズとほぼ同じ。幅は従来モデルよりも24mm大きくなっているが、奥行きは若干短くなっている。とはいえ、特にサイズが大きくなったという印象はない。重量は約1,279g、実測値では約1,268gであった。2スピンドル機であることを考えると、十分納得できる範囲内の重量ではあるが、もう少し軽量であっても良かったように思う。 ちなみに、新LaVie Jシリーズには、容量が少なく軽量な「バッテリパック(M)」(約225g)と、容量が多くやや重い「バッテリパック(L)」(約315g)という2種類のバッテリが用意されているが、LJ750/LHでは標準でバッテリパック(L)が付属する。そのため、バッテリパック(M)を搭載すれば90gほどの軽量化を実現できる。バッテリ駆動時間よりも重量を優先させたいなら、バッテリパック(M)を別途購入して利用するのがいいかもしれない。 ●本体カラーはブラックで統一し、スクラッチリペアを標準採用 本体のデザイン変更に合わせて、ボディカラーも変更となり、全面ブラックで統一となった。従来モデルでは、液晶面のベゼル付近のみがブラックで、それ以外はシルバーであったが、今回は液晶ベゼルだけでなく、天板や底面、キーボード面も含めブラックとなっている。また、天板部分は光沢仕上げの「ピアノブラック」を採用、従来モデルにはない高級感が伝わってくる。 そして、天板部分に関しては、凹凸のないフラットな構造となり、光沢仕上げのピアノブラックを採用している部分以外にも特徴がある。それは、小さなキズを自己修復する「スクラッチリペア」という特殊塗装が標準で施されるという点だ。従来モデルでも、NEC Directでの直販専用モデルでスクラッチリペアが採用されていたが、新LaVie Jシリーズでは、店頭販売モデルながら上位モデルで標準採用となっている。裸のままカバンに出し入れしていると、本体表面に細かなキズが付くということがよくあると思うが、スクラッチリペアによって、そういった細かなキズは自然に目立たないように修復される。特に、光沢のあるピアノブラックとなっている天板は、ちょっとしたキズでも目立つと思われるため、スクラッチリペアが施されている点は非常に好感が持てる。 ただ、天板部分は光沢のある高級感あふれる塗装ではあるものの、持ったときの指紋がしっかりと残ってしまい、かなり気になってしまう。光沢のある表面処理が施された機器では、どうしても付きまとってしまう問題のため、ある程度は我慢する必要があるとは思うが、どうせならつや消しブラックモデルも用意して、どちらかを選択できるようになっていればよかったように思う。
●WXGA表示対応の12.1型ワイド液晶を採用 デザイン面に次ぐ、LaVie Jシリーズの大きな特徴となるのが、液晶パネルだ。従来モデルでは、1,024×768ドット(XGA)表示対応の12.1型液晶が採用されていたが、新LaVie Jシリーズでは、サイズこそ12.1型と同じだが、1,280×800ドット(WXGA)表示対応のワイド液晶に変更されている。 従来まで、ワイド液晶といえばマルチメディア機能を豊富に搭載する一般/ホビー向けノートで採用されるものというイメージが強かったように思う。しかし実際には、横解像度が広い方が、WordやExcelなどのビジネスアプリケーションも快適に扱える。そのため、最近ではビジネスノートでもワイド液晶を搭載する例が珍しくなくなっている。そういった意味では、新LaVie JシリーズでWXGA表示対応のワイド液晶を採用したというのも当然の成り行きだろう。 ところで、液晶パネルには表面が光沢処理された「スーパーシャインビュー液晶」を採用している。スーパーシャインビュー液晶は、LaVieシリーズの中でも、ホームユースをターゲットとするモデルなどで広く採用されているもので、発色に優れ、画像や映像の表示品質を得意としている。確かに、LJ750/LHの液晶を見ても、非常に鮮やかな映像表示が確認できた。 ただ、少なからず外光の反射が発生するのも事実。従来モデルで採用されているノングレア液晶と比較すると、どうしても反射は気になってしまうだろう。とはいえ、一般的なグレア液晶と比較すると外光の反射は低く抑えられているため、この程度であれば我慢できる範囲内ではある。 ちなみに筆者は、パネル表面の光沢処理よりも、液晶のサイズのほうが気になった。筆者は、従来モデルと同様の、XGA表示対応の12.1型液晶搭載ノートを利用しているが、新LaVie Jシリーズの12.1型ワイド液晶の方が縦方向の解像度が高いにもかかわらず、高さは狭くなっている。つまり、画素ピッチが狭くなっているわけだ(12.1型XGA:0.24mm、12.1型WXGA:0.204mm)。画素ピッチは、10.4型のXGA液晶とほぼ同じ(0.206mm)で、かなり文字が小さく表示される。もちろん、文字の視認性が厳しいというほどではないものの、従来モデルから乗り換える場合には、表示される文字の小ささが気になる可能性があるということを頭に入れておいたほうがいいかもしれない。
●充実した無線機能を搭載 LJ750/LHは、充実した無線機能が搭載されている点も魅力の1つだ。無線LAN機能は、IEEE 802.11a/b/g/n(ドラフト2.0)をサポート。また、上位モデルのLHにはBluetooth 2.0+EDRも標準搭載。さらに、Certified Wireless USB準拠のワイヤレスUSB機能も標準搭載され、ワイヤレスUSB hubも標準添付されている。ちなみに、ワイヤレスUSB機能を搭載するノートPCは、このLJ750/LHが初である。 ワイヤレスUSB Hubには4ポートのUSBポートが用意されており、各種USB機器をワイヤレスで利用できる。利用できるUSB機器は、マウスやキーボード、USBストレージデバイス、プリンタなど。ただし、アイソクロナス転送方式はサポートしていないため、USBサウンドデバイスやWebカメラなどは利用できない。また、mini-Bポートも1ポート用意されているが、こちらはUSBケーブルを利用した親機との接続認証(ケーブルアソシエーション)を行なうためのもので、USB機器を接続して利用するものではない。 このワイヤレスUSB Hubを利用するには、LJ750/LHとワイヤレスUSB Hubの双方にACアダプタが接続されている必要がある。その状態であれば、ワイヤレスUSB Hubが電波の届く範囲内に入ると自動的に接続され、ワイヤレスUSB Hubに接続されているUSB機器が利用できるようになる。
データ転送速度は最大480Mbpsとされている。試しに、LJ750/LHから約20cmほどの距離にワイヤレスUSB Hubを置き、2.5インチHDDを内蔵するUSBストレージに保存されている約724MBのファイル1個、および平均2.7MBほどの画像ファイル100個を転送(読み出し)してみたところ、表に示したような時間がかかった(3回計測の平均)。速度は双方ともほぼ5MB/秒、つまり約40Mbpsといったところである。同じUSBストレージをLJ750/LH本体のUSBコネクタに直結して同じテストを行った場合と比較して3倍以上遅い。そのため、ワイヤレスUSBにはキーボードやマウス、プリンタなど高速なデータ転送速度を必要としない機器を接続して利用し、ストレージデバイスは本体のUSBコネクタに直結して利用した方が良さそうだ。 とはいえ、机の上にワイヤレスUSB Hubを置き、キーボードやマウスなどを接続しておけば、LJ750/LHをデスクに置いてACアダプタを接続すればすぐにキーボードやマウスが利用でき、外出時には本体をそのまま持ち出せばよくなるため、一般的なポートリプリケーターよりも利便性は大幅に向上するはず。そういった意味では、データ転送速度がそれほど高速ではないものの、かなり使い勝手がよく魅力的なデバイスであることは間違いないだろう。 表:ワイヤレスUSB Hubに接続したUSBストレージからのデータ転送にかかった時間
●基本性能、セキュリティ性も充実 では、LJ750/LHの基本スペックを確認しておこう。 CPUは、超低電圧版Core 2 Duo U7600(1.20GHz)、チップセットはIntel GM965 Expressを採用。メインメモリは、PC2-4200 DDR2 SDRAMを2GB搭載する。オンボードメモリが1GBで、1GBのSO-DIMMが標準で搭載され、デュアルチャネル動作もサポート。メインメモリの最大容量は3GBだが、その場合には1GBの増設メモリを外して交換することになる。また、2GBを超える部分はデュアルチャネル動作とはならないので注意したい。 HDDは、160GBの2.5インチSATAドライブを搭載する。HDDの交換は容易には行なえないため、できれば容量200GBオーバーのHDDを搭載してもらいたかったところだが、160GBでも特に容量不足に悩まされることはないだろう。 光学式ドライブは、2層メディア(DVD±R DL)をサポートするDVDスーパーマルチドライブを搭載。本体右側面からアクセスできる。 本体左側面には、PCカードスロット(Type2×1)と、SDカードスロット(SDHC対応)、Gigabit Ethernet、ミニD-Sub15ピンを用意。本体右側面には、光学式ドライブに加え、USB 2.0×2を用意。USB 2.0が2ポートしかないが、ワイヤレスUSBをサポートしているため、USBポート不足に悩まされることもないだろう。 キーボードは、ピッチ17.55mm、ストローク2.5mmと、従来モデルのキーボードとほぼ同じ仕様のものを搭載する。主要なキーはほぼ正方形で、タッチは重すぎず軽すぎず、適度なクリック感もあり、非常に軽快に扱える。ポインティングデバイスも、パッド式のNXパッドで従来機種とほぼ同じ操作感だ。 キーボード左上には、指紋認証用のセンサーを搭載。また、キーボード右下パームレスト部分にはFeliCaポートも搭載。加えてTPMチップも標準搭載。指紋認証用センサーでのログイン認証だけでなく、FeliCaポートを利用した認証や、HDDの暗号化にTPMチップを活用するなど、優れたセキュリティ性が実現可能だ。もちろんFeliCaポートは、インターネットショッピングでの決済などにも活用できる。さらに、従来モデル同様、加速度センサーを利用したHDDの保護機能「ハードディスクセーバー」も搭載。本体の落下など外部から衝撃を受ける可能性のある状況を関知すると、HDDのヘッドを待避させてHDDを保護するというもので、HDDに保存されているデータの安全性もしっかり考慮されている。これらはいずれも上位機種のみの機能となっているが、HDDの保護機能は下位機種にも採用して欲しいところだ。 ●価格はやや高いが、その価値は十分 では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。利用したベンチマークソフトはいつものとおり、Futuremarkの「PCMark05 (Build 1.2.0)」と「3DMark05(Bulid 1.3.0)」、「3DMark06(Build 1.1.0)」の3種類。Windows Vistaに用意されているパフォーマンス評価の結果も加えてある。 結果を見ると、ほぼスペック通りの結果が出ていると言っていいだろう。グラフィック機能は、Intel GM965 Express内蔵のGMA X3100が利用されるため、3DMark06のSM 2.0やHDR/SM3.0のテストも動作しているが、3D描画能力に関しては特に優れているわけではなく、ゲームなどの3D描画のアプリケーションを利用するのは少々厳しいだろう。とはいえ、LJ750/LHのメインターゲットであるビジネスシーンで主に利用されるアプリケーションなら、おそらくほとんどのものが十分快適に利用できるはず。高いグラフィック能力を必要とするアプリケーションを利用しなければ、パフォーマンスに不満を感じることはまずないと考えていいだろう。 新LaVie Jシリーズは、本体デザインが大幅に変更されたため、フラットで、光沢のあるピアノブラックが印象的な天板、新たに採用されたワイド液晶などに目が奪われがちだが、従来モデルと同等またはそれ以上の堅牢性やセキュリティ機能もしっかり盛り込まれており、ビジネスノートに求められる性能も申し分ない。もちろん、本体サイズや重量も、普段から持ち歩くモバイルノートとして不満を感じるところはない。しかも今回試用した最上位モデルのLJ750/LHでは、ワイヤレスUSB、指紋認証ユニット、FeliCaポートなど魅力的な機能が満載されており、もはや他に搭載できる機能が見あたらないと言ってもいいほどだ。 販売価格は、直販サイトNEC Directで274,890円(Officeなし)とやや高価だが、機能が充実しているだけに、十分その価格に見合う価値があると言っていい。とにかく、ビジネスシーンで利用する高性能なモバイルノートを探している人に広くおすすめしたい。 □NECのホームページ (2008年3月10日) [Reported by 平澤寿康]
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