工人舎「KOHJINSHA SR8WP06A」
~DVDスーパーマルチを内蔵したミニタブレットPC



工人舎
「KOHJINSHA SR8WP06A」

 工人舎のミニノートPCに新モデルとなる「SRシリーズ」が登場した。従来モデルである「SH6シリーズ」の特徴を受け継ぎつつ、DVDスーパーマルチドライブを本体に内蔵した2スピンドルPCとして進化している。

 今回、そのSRシリーズの中からホワイトモデルである「KOHJINSHA SR8WP06A」をいち早く試用できたので、さっそく紹介していこう。ただし、今回試用したマシンは、システムまわりのチューニングが終了しておらず、スペック面も製品版とは異なる評価機であったため、さまざまな面で最終的な製品版とは異なる部分がある可能性があることはあらかじめご了承願いたい。


●DVDスーパーマルチドライブ搭載で汎用性が向上

 SAシリーズやSH6シリーズなど、従来までの工人舎のUMPCは、非常にコンパクトなサイズと、1kgを切る軽量さが大きな特徴であった。それに対し、今回登場したSRシリーズでは、フットプリントが233×177mm(幅×奥行き)と、初代のSAシリーズの218×163mm(同)に比べひとまわり大きくなっている。また、厚さも従来モデルでは本体後方から前方にかけての形状が薄いくさび型に近かったのに対し、SRシリーズでは前方から後方まで均一の厚さ(約33mm)となった。加えて重量も、約1.1kg(標準バッテリ搭載時、実測値では1,148g)と1kgを超えている。

 このように、本体サイズが大きく、重量が重くなったのには理由がある。それは、SRシリーズでは本体にDVDスーパーマルチドライブを内蔵しているからだ。内蔵されているのは、9.5mm厚の±R DL対応DVDスーパーマルチドライブだ。これで、アプリケーションのインストールはもちろん、各種データの書き出し、DVDビデオの再生など、さまざまな作業を外付けドライブを用意することなく行なえるようになった。もちろん、このようなミニノートPCにDVDスーパーマルチドライブを内蔵させることには異論もあるかもしれないが、これによってマシンの汎用性が向上していることは間違いない。

 また、本体が大きく重くなったとは言っても、大幅な大型化や重量増というわけではないため、実際の携帯性はほとんど変わっていないと考えていい。加えて、耐荷重100kgfの高い堅牢性も当然維持されている。そういった意味では、SRシリーズでDVDスーパーマルチドライブが内蔵されたことは、間違いなく前向きに捉えていいはずだ。

 ところで、このDVDスーパーマルチドライブは、ドライブトレイ右上のスイッチを利用して電源を切れるようになっている。こういった配慮がなされている部分を見ると、単純に汎用性を高めることだけに注力しているわけではないということが十分に伝わってくる。ただしドライブ自体の着脱は不可能なので、取り外して軽量化を行なうことはできない。この点は少々残念だが、本体サイズを考えると仕方がないだろう。

本体上部 フットプリントは233×177mm(幅×奥行き)と、従来モデルより若干大きくなっている 重量は、標準バッテリ搭載時で実測1,148gと1.1kgを超えていた
右側面にDVDスーパーマルチドライブを搭載する DVDスーパーマルチドライブは、トレイ右上のスイッチで電源を切れるようになっている 従来モデルでは本体手前がやや薄くなっていたが、SR8WP06Aでは均一の厚さとなっている

●Intel Ultra Mobile Platform 2007を採用

本体底面にメインメモリ用のSO-DIMMスロットが用意されている。オンボードではメモリは搭載されず、標準で1GBのSO-DIMMモジュールが取り付けられる

 SR8WP06Aのシステムは、IntelのUMPCプラットフォーム「Intel Ultra Mobile Platform 2007」を採用している(Intel Ultra Mobile Platform 2007の詳しい解説は関連記事参照)。従来モデルとなるSH6シリーズでも採用されていたため、基本的にシステムに大きな変更はないと考えていい。ただし、CPUは600MHz動作のIntel A100から800MHz動作のIntel A110へと強化されており、パフォーマンスは向上している。CPU以外は従来と基本的に同じで、チップセットはIntel 945GU Express、メインメモリはPC2-3200 DDR2 SDRAMを最大1GBまで搭載可能だ。

 メインメモリは、オンボードでは搭載されず、底面からアクセスできるSO-DIMMスロット(1スロットのみ)を利用して搭載されるが、標準で1GBと最大容量のSO-DIMMモジュールが取り付けられている。そして、この影響はかなり大きい。SH6シリーズでは、UMPCながらOSとしてWindows Vista Home Premiumが採用されているが、当初筆者は、このスペックでVistaを利用するのはかなり厳しいんじゃないか、と思っていた。しかし、実際に使ってみると、スペックからは想像できないほど快適にVistaが動作する。もちろん、Core 2 Duo搭載ノートと比較すると、アプリケーションの起動にも時間がかかるし動作も重いが、それは不快に感じるようなものではなかった。DVDビデオやMPEG-2、WMVなどの動画ファイルなどの再生も、コマ落ちすることなく全く問題なく行なえた。

 ちなみに、ビデオ機能はチップセット内蔵だが、Intel 945GU ExpressにはWindows Aero対応のGMA 950が内蔵されており、もちろんSRシリーズでもAeroが利用できる。

●1,024×600ドット表示対応7型ワイド液晶を搭載

 液晶ディスプレイは、従来モデルのSH6シリーズ同様、1,024×600ドット表示対応の7型液晶を搭載する。初代SAシリーズの液晶ディスプレイは、サイズはSHシリーズと同じ7型ながら、800×480ドットと表示解像度が低かった。そのため、やや使い勝手が悪かったのも事実だが、SH6シリーズでは解像度が1,024×600ドット(WSVGA)となったことで、1,024×768ドット表示(XGA)の液晶ディスプレイとほぼ遜色のない使い勝手を実現。Webアクセスはもちろん、WordやExcelなども快適に利用できるようになっている。

 また、液晶表面にタッチパネルが取り付けられ、180度回転してたたむことでピュアタブレットスタイルとして利用できる点にも変更はない。OSとしてVista Home Premiumを搭載しているために、タッチパネルの活用度は大幅に向上し、タブレットPCとしても申し分なく活用できるようになった。

 液晶はLEDバックライトが採用され、高い輝度を確保。また、発色も申し分なく、映像なども非常に鮮やかに表示され、タッチパネルによる視認性の犠牲もほとんど感じられない。DVDビデオの再生も、申し分ないクオリティで楽しめる。

 ただし、サイズが変わらず高解像度となったため、表示される文字サイズはかなり小さくなり、特に文字の視認性はやや厳しくなってしまった。本体サイズが従来モデルよりも大きくなったことで、液晶周囲にはかなりのスペースが残されており、より大きな液晶パネルの搭載も十分可能なように思われる。もちろんその場合には、価格面でのメリットが失われる可能性が高くなるし、液晶周囲のボタン配置も厳しくなるだろう。とはいえ、本体サイズと液晶のサイズがアンバランスに感じる。今後は、価格が多少高くなるとしても、もう少し大型の液晶パネルを搭載するモデルの投入を期待したいところだ。

液晶ディスプレイは、1,024×600ドット表示対応の7型ワイド液晶を採用。もちろん表面にはタッチパネルが取り付けられ、スタイラスや指でタブレットPCとして扱える スタイラスはパネル右上に収納されている 液晶パネルは180度回転し、ピュアタブレットスタイルとしても利用可能だ

 液晶パネル上部には、130万画素Webカメラを搭載。また、液晶パネル左右にはスティックタイプのポインティングデバイスとともに、カーソル操作やスクロール、Enterキー、画面の回転などを行なうボタンが用意されており、ピュアタブレットスタイルでの操作も軽快だ。ちなみにボタンの数は従来モデルのSH6シリーズから2個少なくなり、画面の輝度をコントロールするボタンは画面右から画面左に移動している。

液晶パネル左には、スティックタイプのポインティングデバイスとカーソルボタン、輝度コントロールボタンが用意されている 液晶パネル右には、マウスクリックボタン、スクロールボタン、Enterボタン、画面の回転ボタンが用意されている 液晶パネル上部中央には、130万画素Webカメラが搭載されている

●無線機能などスペックも充実

 CPUやチップセット以外の機能も、基本的に従来モデルを踏襲している。

 無線機能として、IEEE 802.11b/g対応無線LANと、Bluetooth 2.0+EDRが標準搭載となっている。本体前面には、無線LANおよびBluetoothを同時にON/OFF制御するスイッチが用意されているとともに、Fnキーとファンクションキーとの組み合わせで無線LANとBluetoothを個別にON/OFF制御できる。

 HDDは、従来同様2.5インチのパラレルATAドライブが利用されている。HDD容量は発表されている仕様書では60GBとされているが、試用機では100GBドライブが搭載されていた。

本体正面。ボリュームつまみ、マイク/ヘッドフォン端子、無線機能のON/OFFスイッチ、メモリカードスロットやCFスロットがある 本体左側面。Ethernet、ミニD-Sub15ピン、USB 2.0×2の各コネクタがある 本体右側面。電源スイッチにACコネクタ、DVDスーパーマルチドライブがある
本体背面 本体底面。メインメモリ用のSO-DIMMスロットがある

 SH6シリーズで搭載されたワンセグチューナはSRシリーズにもそのまま受け継がれている。液晶パネル左上にロッドアンテナを搭載するとともに、外部アンテナ接続端子も用意され、付属の外部アンテナを接続して利用することも可能だ。もちろん、視聴だけでなく録画やEPGを利用した録画予約も行なえる。

 本体左側面にはUSB 2.0コネクタ×2とEthernet、ミニD-Sub15ピンが、本体前面にはSDカード(SDHC/SDIO対応)/MMC/メモリースティック対応スロットと、CFスロットが用意される。PCカードスロットやExpressCardスロットは用意されないものの、拡張性は必要十分だ。

液晶パネル左上に、内蔵ワンセグチューナ用ロッドアンテナを搭載 ワンセグチューナ用外部アンテナを取り付けて利用可能
標準バッテリは容量2,600mAhで約4時間の駆動が可能 付属のACアダプタも非常にコンパクト

●キーボードはキー数が増え扱いやすく

 キーボードは、従来モデルのSH6シリーズと同様、キーピッチ約15.9mm、ストローク約1.5mmの84キーキーボードを採用している。初代SAシリーズでは、キーピッチが16.8mmとかなり余裕のあるサイズのキーボードを採用していたが、キー数が77個と少なく、[\]キーなど一部のキーの配置に無理があったり、[半角/全角]キーやファンクションキーの一部が[Fn]キーとの併用になっているなど、かなり使いづらいものであった。それに対しSRシリーズのキーボードは、ピッチは若干狭くなったものの、キー数が増え、無理な配列は見られなくなった。タッチも柔らかすぎず堅すぎず、ほどよいクリック感もある。キーピッチが狭いためタッチタイプには慣れが必要だとは思うが、それでも扱いやすさという点では従来のキーボードから大きく向上している。

 ポインティングデバイスは、キーボード手前のタッチパッド、液晶パネル左右のスティックポインタの2系統を搭載する。タッチパッドは、面積が狭くクリックボタンも小さいが、右縁にはしっかりスクロール領域も用意されており、サイズの割には軽快に扱える。スティックポインタは、従来モデル同様マウスボタンが上下に配置されているため、操作に少々戸惑うこともあったが、スティックでのマウスカーソルの操作はかなり快適だった。

 従来モデルでもそうだったが、このサイズの中で液晶面のタッチパネルだけでなく、タッチパッドとスティックポインタの2種類のポインティングデバイスを搭載しているという点は、やはり特筆すべき部分だろう。サイズの制約があろうとも、操作性を犠牲にしたくないという開発者の強いこだわりが感じられる。

キーピッチ約15.9mm、ストローク約1.5mmの84キーキーボードを搭載。初代SAシリーズのような無理な配列がなくなり、かなり扱いやすくなっている キーボード手前にはタッチパッドを搭載。サイズは小さいものの、操作性には特に問題を感じなかった

●ミニノートでも機能面に妥協したくない人におすすめ

 では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。利用したソフトはいつものとおり、Futuremarkの「PCMark05 (Build 1.2.0)」と「3DMark05(Bulid 1.3.0)」、「3DMark06(Build 1.1.0)」の3種類。Windows Vistaに用意されているパフォーマンス評価の結果も加えてある。ただし、今回は製品版とシステムのチューニングや仕様の異なる評価機を利用したため、結果は参考値として見てもらいたい。

 結果を見ると、さすがにCPUやメモリ、グラフィックの結果がかなり低くなっている。とはいえ、これはシステムとしてIntel Ultra Mobile Platform 2007を採用している以上仕方のないことだろう。それでも、このサイズのミニノートPCで、Vistaが十分快適に動作し、さらに今回利用したベンチマークソフトが全て問題なく動作したということは、大いに評価すべき部分だろう。

【表】ベンチマーク結果
 工人舎 SR8WP06A富士通LOOX U
CPUIntel A110 800MHzIntel A110 800MHz
ビデオIntel GMA 950
(Intel 945GU Express内蔵)
Intel GMA 950
(Intel 945GU Express内蔵)
メモリPC2-3200 DDR2 SDRAM 1GBPC2-3200 DDR2 SDRAM 1GB
OSWindows Vista Home PremiumWindows XP Professional SP2
PCMark05 (Build 1.2.0)
PCMark Score850N/A
CPU Score11161191
Memory Score13441436
Graphics Score250N/A
HDD Score23872263
3DMark05 (Build 1.3.0)
3DMark Score204206
CPU Score13851251
3DMark06 (Build 1.1.0)
3DMark Score87N/A
SM2.0 Score40N/A
HDR/SM3.0 ScoreN/AN/A
CPU Score326N/A
Windows Vistaパフォーマンス評価
プロセッサ2.1N/A
メモリ4.5N/A
グラフィックス3.4N/A
ゲーム用グラフィックス2.6N/A
プライマリハードディスク3.9N/A

 SR8WP06Aは、DVDスーパーマルチドライブを内蔵したことで、従来モデルと比較してサイズが大きく、重量も増えてしまった。特に重量が1kgを超えてしまった点を残念に思う人もいるかもしれない。最近では、1kgを下回る重量のノートPCも珍しくないため、SR8WP06Aが携帯性の面でやや見劣りするのも事実だ。それでも、液晶表面にタッチパネルを配し、タブレットPCとしても活用できるミニノートは選択肢が少なく、従来より変わらず魅力のあるマシンであることは間違いない。また、ワンセグチューナやDVDスーパーマルチドライブを搭載することで、機能面もどんどん向上している。

 そして忘れてはならないのが価格だ。これだけの仕様を実現していながら、販売価格は139,800円と、相変わらず非常に安価に抑えられている。タブレットPCとしてだけでなく、小さいながらタッチタイプも十分可能なキーボードを搭載し通常のノートPCとしても活用できる点に加え、他のミニノートPCやUMPCを圧倒する非常に安価な価格など、とにかく魅力の多いマシンであることは間違いない。メインマシンとしては厳しいが、サブマシンとして、またホビー用途として活用するミニノートPCを探している人におすすめしたい。

□工人舎のホームページ
http://www.kohjinsha.com/
□SR8シリーズの製品情報
http://www.kohjinsha.com/models/sr/sr8kp06/
http://www.kohjinsha.com/models/sr/sr8wp06/
□関連記事
【1月8日】工人舎、重量1.1kgの2スピンドル超小型PC
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0108/kohjinsha.htm
【2007年9月5日】工人舎、SSD搭載超小型PCのCPUを強化
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0905/kohjinsha.htm
【2007年4月18日】【IDF】「Intel Ultra Mobile Platform 2007」正式発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0418/idf05.htm
【2006年11月10日】【Hothot】工人舎「KOHJINSHA SA1F00A」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/1110/hotrev313.htm

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(2008年1月8日)

[Reported by 平澤寿康]


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