第399回
Mac OS X 10.5 Leopardレビュー(3)



すでにLeopardを自分のマシンにインストールして2週間近く。OSが極端に遅くなり、再起動をかけて復旧というトラブルが2回ほどあったが、致命的なバグには今のところ遭遇していない

 前回から少し時間が空いてしまったが、Appleの広報機ではなく、自分が毎日使うMacBook ProでLeopardを使いはじめて2週間近く過ぎた。Leopardレビューの最後は、その中で感じたことを、新機能の紹介ではなく実際の使用感としてお伝えしたい。

 またレポートの最後に、今年(2007年)10〜12月期に大幅な成長を見込むAppleの戦略とLeopardに見る成熟したPC市場における成長戦略についても触れていきたい。



●1週間以上使用して感じた“Leopardのウケの良さ”

 筆者は普段、PC業界だけでなくデジタルカメラやAVといった分野でも仕事をさせていただいているが、Leopardのレポートを読んだ取材先から「Leopard、なんか良さそうですね。新機能がたくさんあるようですし」と声をかけられた。

 確かにLeopardには新しい機能が多数含まれている。Appleのカウントによるとその数は300を超えるそうだが、前バージョンのTigerを使っていたユーザーは、おそらく機能の数字、あるいはAppleの宣伝で語られているほどには大きく変化しているとは感じないと思う。

 しかし、実はここにLeopardの良さがある。

 Leopardのファーストインプレッションでも述べたが、Leopardの長所は新機能の斬新さにあるわけではなく、コンピュータをよりユーザーフレンドリーに、扱いやすくするために工夫されたユーザーインターフェイス、機能実装の丁寧さにあると思う。OSに大きな変更を加えたにもかかわらず、(実装メモリ量にもよるが)むしろ動作がTigerよりも速く感じられるという点も含め、実際にユーザーが使用して快適だと感じられるよう、開発の現場からも配慮しているような雰囲気を感じ取れる。

 既存ユーザーが自然な形で新機能を使いこなせるよう、あまり奇をてらった変更は行なわず、ある程度、ビジュアル面でも美しく見せつつ、自然に新しい機能を使いこなせるよう、かなり気をつけて開発を行なったのだろう。

 そうした実装面の長所は、既に過去のバージョンで実現されていた機能の改良としても表れている。Mac OS X最初のリリースである10.0から10.2にかけては、Microsoftに比べ圧倒的に少ない開発リソースの中で、いかにOSの核となる部分の完成度を上げるかにAppleは必死だったように思う。

 言い方は悪いが、この間のMac OS Xはユーザーをも巻き込んだ壮大なβテストのようにも感じられた。だからこの間、筆者はMac OS Xを使って仕事をしていない。それまでずっとWindows機の横に置いて、常にWindowsと比較しながら評価してきたMacを手元に置かなくなった。

 それが10.3に至ってシステムの完成度が高まり、ユーザーインターフェイスの実装に独自の工夫を凝らせる余裕が生まれ、10.4のTigerでは積極的に新しい機能の取り込みを行なった。Leopardではさらに新しい機能を取り込みながら、従来機能に関してもユーザーインターフェイスの実装を磨き込んだという印象だ。

 ユーザーはすでに、新しい機能の追加だけを喜ばなくなってきている。新しい機能が増えても、結局のところ使いこなすのが面倒だったり、機能そのものを熟知しなければならない。加えて大半のユーザーが必要とする機能は、すでに備わっている。

 そんな状況の下において、Appleは少しずつ「ユーザーに機能を使いこなして貰うための機能改良」へと、開発のベクトルを動かしてきた。その成果が顕著に表れ始めたのがLeopardだと思う。

●たとえばこんなこと

 PCの利用スタイル、アプリケーションの使いこなし方は人それぞれだ。Leopardの良い面というのは、おそらくいくら他人の意見を聞いたとしても、本質的な部分は見えてこないだろう。

 しかし、たとえばこんなこと、といった例ならば示すことができる。これまでに紹介した記事と重なる部分もあるが、改めて筆者の感じたLeopardにして特に効率的になったと感じている部分、トップ3を紹介したい。

・手軽にファイル内容を確認できるQuickLookとFinder

文字ばかり書いている筆者の場合、自前で作成する書類はこうした地味で色気のないCover Flow表示となるが、資料として送られてくるPDFやPPTを探すにはQuickLookとともにやっぱり便利。リリース直前は対応していなかったWord 2007のdocxファイルにも、正式版では対応したらしく、Cover Flow表示が可能だった

 新機能の中でも大きくフィーチャーされているQuickLookだが、言葉で書いてみると実はたいしたことはない。ファイルを表示するためのプラグインを用いて、ファイル内容を対象アプリケーションを起動せず、OS側が表示するだけのことだ。ファイル内容のプレビューならば、Windows VistaのExplorerでも不可能ではないし、ファイルプレビュー機能だけなら、それ以前のWindowsにも用意されていた。

 だが、Leopardでの実際の操作は、キーボードやマウスでファイルを選びながらスペースバーを叩くだけだ。プレビューが表示されるまでの時間もたいていの場合はきわめて短く、PDFやプレゼンテーションファイルなどはページをめくって内容を深く確認することもできる。そのままキーボードやマウスで別のファイルを選べば、QuickLookの表示内容は選択ファイルに素早く切り替わっていく。

 難点は例外的にPowerPointの表示が遅いことだが、これはプレビュー用のモジュール次第という面もあるため、時間が解決する可能性が高そうだ。

 単にプレビュー機能としてQuickLookがあるだけでなく、ファインダーのCover Flowとして、同様のプレビュー用プラグインが活用されている点も見逃せない。Cover Flow表示の中でPDFなどのページを送ったり、動画を表示できるのもいい。

 実際にこれらの機能を使っていると、我々が普段、ファイル内容を確認/閲覧するためだけに、いかにアプリケーションをわざわざ起動しているかが実感できる。参照や閲覧、確認だけならば、もっと手早い手法があるということを、改めて思い知らされた。

・メール処理の流れを途切れさせないスケジュール、アドレスデータの管理

 名刺データなどの住所管理にアドレスブック、スケジュール管理にiCalを利用することが前提となるが、メール処理の流れを途切れさせずに、これらの入力を手早く行なえるようになったのは、個人的にもっとも嬉しい改善点だ。

 メール内に特定の日付(あるいは期間)や住所、電話番号、メールアドレスなどを指し示すメッセージがあると、その部分にドロップダウンが出て、アドレスブックやiCalへの登録編集をその場で行なえる。

 しかも、それぞれのアプリケーションが起動して入力するというスタイルではなく、その場にデータ編集のポップアップが出て入力を手早く済ませることが可能なため、特にスケジュールデータの入力負担が大きく減ったと実感している。

 加えて、スケジュール確保のメールが届いたそのときに、メール処理の一環としてスケジュールデータを入力することになるため、たとえばスケジュールが重なっている場合など、その場ですぐに判明、スケジュール変更のメールを返信できる。

 また以前のレポートにも書いたように、iCalがCalDAVに対応したことでWindows PCと同じスケジュールデータを共有したり、他のWindowsユーザーとスケジュールデータを共有するといった、クロスプラットフォームのコラボレーション環境を構築しやすくなったことも大きい。

「来週の水曜日、午後1時」という部分を自動認識。来週の水曜日に予定をその場で入力できる。これは理屈抜きに便利 iCalの設定に追加されているアカウントタブ。CalDAVアカウントを登録すると、サーバにスケジュールデータを作成可能になり、グループスケジューリングに対応できる。Windowsとの相互運用にも便利

 さらに言えば、別の回で紹介したメモやTo-Doの管理もMailだけで行なえ、IMAPサーバーを用いればサーバーを中心にした同期も可能になる。一般には、あまりIMAPサーバーを使う機会というのはないかもしれないが、POPサーバーとの組み合わせでも1台のMacで情報を管理しているなら問題はない。

 OS付属のメールクライアントというと、さほど高機能ではない場合が多いものだが、ワンストップで日常的な情報管理の大部分をMailだけで行なえるようになり、コンピュータを使った作業の負担が下がった。

・地味に便利な辞書機能

個人的に利用頻度が高い辞書機能。OSの機能として統合されているので、さまざまなアプリケーションから辞書機能を呼び出せる。ここではJedit Xから呼び出した

 辞書検索や類語検索といった機能は、実はMac OS Xの前身であるNEXTSTEPの頃から、このOSの得意技であった。その後、辞書機能は紆余曲折を経ながら今のようになっているが、日本語辞書が搭載されたのは今回が初めてだ(小学館の大辞泉、類語例解辞典、プログレッシブ英和中辞典、和英中辞典を収録)。

 この辞書検索機能は単にアプリケーションとして、辞書ブラウザが付属しているだけでなく、OSの機能として統合されているため、作業の流れに沿ってさまざまな切り口から辞書を活用できる。

 ファーストインプレッションでも、Spotlightの検索窓から辞書を呼び出せることを紹介したが、さらにさまざまなアプリケーションからも辞書を活用できる。

 たとえば、SafariやMailに表示されている文章はもちろん、筆者がこの原稿を書くために使用してるJedit Xでも、該当文字を選択してコンテキストメニューから「辞書で調べる」を指定すればすぐに辞書検索が開始する。

 Mac OS Xネイティブのアプリケーション(Cocoaで作られたソフトウェア)なら、簡単に辞書検索機能を追加できるため、文章作成に関わるさまざまな作業において辞書を活用できるようになるだろう。

 辞書内容に含まれる文章には見出し語に飛ぶためのハイパーリンクが張られているので、調べた説明内に別の調べたい単語があれば、次々に辞書を引き続けることができる。PCを文書作成の道具として使っているすべての人にとって、非常に実用的な電子辞書機能に仕上がっている。

●MacブームはBoot Camp、Leopard効果による一過性? それとも……

 Leopard発売に伴っていくつかの記事をポストしてきたが、その間、想像以上にMac OS Xに対する期待が盛り上がっているように思う。たとえばBCNランキングは、Leopardが10月26日と、下旬の発売だったにもかかわらず、10月のOS売り上げシェアで53.9%を記録したと報じた

 プリインストールOSをそのまま使い続ける人が大半で、自分でOSアップグレードを行なうユーザーが少ない現在のPC市場で、OSパッケージの販売シェアにどれほど意味があるかは評価の分かれるところだろう。OSにはインストールするハードウェアが必要であり、PCに比べて圧倒的にインストール可能な台数が少ないMacの場合、あっという間にMicrosoftに抜き返されることは容易に想像できる。

 とはいえ、アップグレードインストールの容易さ、要求ハードウェアの低さ、インストールすると高速化することもある進んだチューニング度、分かり易い利点や価格の低さなどが評価されたのだろう。バージョンアップ初期に見られるいくつかのトラブル、バグには早期の対応を望みたいが、まずはLeopardのスタート、大成功と言えるだろう。

 Apple自身も、かなり強気の業績予測を出している。下の表はAppleが証券アナリスト向けに発表している業績の実績と予測値だ。今年の10〜12月期には92億ドルという、とんでもない売上を見込んでいる。今やIBMまでを時価総額で超えたAppleとは言え、昨年(2006年)同期比で6割近くも売上アップを図れると考えているのだから驚く。

【表】Appleが証券アナリスト向けに発表した実績予測図

 好調なiPodは新機種を得て2,000万台を伺う展開になる可能性があるが、注目はMacの販売台数が順調に伸びていることだ。クリスマス商戦とは無縁の今年7〜9月期でさえ、昨年クリスマス商戦期のデータを72%以上も上回った。Leopard効果も期待できる年末商戦は、Intelプロセッサ搭載Macへの移行が他社ソフトウェアも含めて進んだこと、Boot Campが正式版になったことなども考え合わせると、300万台を超えて350万台に近付くかもしれない。あるいはそれ以上……という成果さえ出しそうな勢いだ。

 問題はこの勢いが継続できるかどうか。iPodの成長は今後鈍化すると考えられることから、Appleは今後の成長戦略をMacに託すことになる。iPodからMacへ、MacからiPhoneへと成長のエンジンをいかにスムーズに切り替えられるかがポイントだ。

 Boot CampとLeopardの勢いで突出した数字が出ているだけなのか、それとも継続的な成長を見せることができるのか。来年(2008年)のMacworld Conference & Expoで、AppleがMacをどのように進化させていくのか、その方向を見せれば先が見えてくるかもしれない。

 Apple関係者によると、スティーブ・ジョブズCEOは「この1年少しの間はIntelアーキテクチャへの移行にハードウェア開発のリソースを割いてきたため、基本デザインは変えずに開発を行なってきた。しかし、これからは新しいハードウェアデザインに挑戦しよう」と話していたという。

 たとえばMacBook ProはPowerBook G4の、Mac ProはPowerMac G5のデザインを踏襲しており、内部構造こそ変化しているものの外観は変わっていない。PowerPC時代から外観が変更されたのは、MacBookと先日発売されたiMacだけだ。1年前に大幅に内部構造を更新したMac Proが簡単にモデルチェンジするとは思えないが、MacBook Proに関しては何らかのアップデートが行なわれると考えるのが自然だろう。

 はたしてAppleはiPodからMacへと、成長のたすきをつなぐことができるのか。次の山場は来年の1月である。

□アップルのホームページ
http://www.apple.com/jp/
□関連記事
【10月29日】【本田】Mac OS X 10.5 Leopardレビュー(2)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/1030/mobile398.htm
【10月29日】【本田】Mac OS X 10.5 Leopardレビュー(1)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/1029/mobile397.htm
【10月25日】【本田】Mac OS X 10.5 Leopardファーストインプレッション
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/1025/mobile396.htm
Mac OS X 10.5 Leopard関連記事リンク集
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/link/leopard.htm

バックナンバー

(2007年11月12日)

[Text by 本田雅一]


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