発売中 価格:オープンプライス ASUSTeKから「ゲーマー向け」を強烈にアピールするノートPC「G1S」が発売となった。DirectX 10対応のGPUを搭載するほか、ゲーマー好みのデザインや、ゲーム中に点滅するライトなど、LANパーティー的な雰囲気を漂わせる製品に仕上がっている ●GeForce 8600M GT搭載が大きな特徴 まずは、ハードウェアスペックから確認していこう。本製品でもっとも特徴的な部分が、GPUにGeForce 8600M GTを搭載している点だろう。GeForce 8600M GTは、NVIDIAのモバイル向けDirectX 10対応GPUで、この連載の初回で取り上げられている東芝の「dynabook Satellite WXW/79CW」が搭載するGeForce 8700M GTの1つ下位に当たるモデルだ。ストリーミングプロセッサの数などは同一だが、クロックが若干低く設定されている。ゲーム利用においてはこのパフォーマンスが何より気になるところであろうが、それについては後述することにしたい。 そのほかの主なスペックは、基本的にSanta Rosaプラットフォームに準じた製品になっている。CPUはCore 2 Duo T7500(2.2GHz)。現時点におけるモバイル向けCore 2製品の最上位モデルがCore 2 Extreme X7900(2.8GHz)であり、GPUともに最高グレードの製品のひとつ手前でバランスをとった製品といえる。 メモリは標準で1GBを搭載するが、これは1枚のモジュールで提供されている。チップセットはIntel PM965を使用しており、デュアルチャネルメモリインターフェイスを持っているものの、この構成ではシングルチャネルで利用していることになる。 もちろん、メモリスロットは1スロット空いた状態になっているので、できるなら1GBを追加した方がいい。ゲーム用途においてはメモリ帯域幅によるパフォーマンスの影響も見逃せないファクターだ。 そのほか、HDDは120GB、LightScribe対応のDVDスーパーマルチドライブ、Gigabit Ethernet、無線LAN(IEEE 802.11a/b/g/n対応)、130万画素Webカメラ、ExpressCard/54スロット、SDカード/メモリースティックリーダなど充実している。 ●多数詰め込まれたゲームユーザーへの配慮 本製品はゲーマー向けと位置付けられたノートPCであり、ゲームユーザーに対する訴求ポイントが非常に多い製品だ。まずキーボードとポインティングデバイスから紹介したい。 キーボードは本体サイズにマッチした標準的なキーピッチ/配列となっているが、ASDWキーやファンクションキーなどゲームにおいて頻繁に利用されるキーを色分けして判別しやすくしている。また、キートップの面積が小さめなキーデザインも特徴的で、隣のキーを間違って押すといったミスも減りそうである。 キーストロークも適度で、押したときにフワッとする感触のないしっかりとしたキータッチが得られる。ゲーム用途にフォーカスした製品ではあるが、このキーボードの感触は通常の文章入力が多い人にも好まれそうだ。 ポインティングデバイスは一般的なタッチパッドを装備。このタッチパッドについては表面がつるつるしており、すべりが悪い印象を受ける。このタッチパッドでの操作はWindowsの通常の操作でも若干ストレスを感じるほどである。 そもそもタッチパッドでゲームを楽しむ人がどの程度いるか、ということもあるが、本製品ではそうした点への配慮として、Logitech(ロジクール)のMX518を付属している。解像度の高い光学式マウスとして人気を集めた製品で、本来の製品そのままにPS/2コネクタも付属している(もちろん本製品では利用しない)。 マウスやタッチパッドのデザインがカーボン調になっているのも特徴である。こうしたデザインのコンセプトは本体全体で統一されており、黒を基調とし、本体の天板もカーボンパネルにしている。やや角張ったデザインやタッチパッドの周りにヘアライン加工の金属をあしらうなど、工業製品的なデザインになっている。 さらに面白いのが、ディスプレイの脇に設けられたLEDである。これは「ASUS Direct Flash」と名付けられた機能で、ゲーム中に点滅するというものだ。デスクトップPCを持ち寄るゲームパーティー、いわゆるLANパーティーにおいてはこうした光るデスクトップPCなどが人気であるが、それをノートPCでも実現するものといえるだろう。 もちろんソフトウェアで無効にすることも可能である。ただ、“ゲーム中である”という判定が甘いのが気になった。というのも、Windows Vistaが起動した直後から点滅し続けていたり、ゲームを終了しても点滅が止まらないことが頻繁にあった。Windows VistaではAeroが有効になっていると常時Direct3Dが稼働しているため、そうした判定には難しさがあるのかも知れないが、いずれにしてもソフトウェア側で対処可能な問題と見受けられるので改善を望みたい。 このほか、気になったのはディスプレイとオーディオである。ディスプレイは1,440×900ドットの出力が可能な15.4型ワイド液晶パネルを利用している。15.4型というサイズには文字の大きさなどに違和感のない適切な解像度であると思うし、XGA表示時などにアスペクト固定表示がなされるゲーム向きなセッティングになっている。ただ、光沢液晶のわりにコントラストが薄く感じられる点と、写りこみが大きくPCの設置場所に気をつかう必要性を感じられたのが惜しい。 もう1つ挙げたオーディオというのは、スピーカーの問題である。本製品は本体手前下部にステレオスピーカーを内蔵している。このスピーカーのスペック上の出力は不明だが、大きさのわりには悪くない音を出すとは思うものの、やはりサイズ的な限界はいかんともしがたい。特にスピーカーが下を向いていることから、ノートPCを置く机にも多少気を使う必要がある。板の薄い机の上などに置いたとき、スピーカーの音が振動を生んでノイズになってしまうことがあった。このスピーカーはゲームプレイ時にもっとも気になる点だと思われ、外部スピーカーやヘッドホンの利用をお勧めしたい。
●そのほかのインターフェイス/機能 そのほかのインターフェイスや本製品が持つ機能などは、ここで写真を使って説明しておきたい。 ●ゲームの楽しさを増幅してくれるノートPC 最後に本製品のパフォーマンスについて触れておきたい。利用しているベンチマークは、この連載でノートPCを取り上げるときに使っている5つのソフトウェアだが、ロストプラネットに限り、8月にアップデートが行なわれた製品版へと変更した。DX9、DX10の各バージョンで各クオリティ設定をすべて「High」に設定した状態と、DX10版で新たに実装されたモーションブラー、フィルタリング、ファーをDX10で表現するオプションを有効にした場合の3パターンでテストを行なっている(比較機はDX9のみ)。なお、G1Sで1,024×768ドット以外の解像度でベンチマークがうまく計れなかったため、結果はその解像度のみとなっている。 結果はDX9のアプリケーションにおいては及第点といったところだろう。実際ベンチ中の表示を見ていても、これならゲームの利用に差し支えないだろうというレベルまで表現できている。 ただ、この連載の1回目で取り上げられているGeForce 8700M GTとの差がやや大きいのは気になるところだ。CPUも違うので横並びの比較は難しいが、半分近くにまで下がってる部分もある。GPU性能に決定的な差があることは明白だが、今回のテストにおいてドライバのバージョンが古いのも原因の1つだと思われるので、新バージョンのリリースに期待したい。 このドライバの影響がもっとも大きいと思われるのがロストプラネットでDX9のCaveで10fpsを超えているものの、すべての条件で厳しい結果になっている。最新のグラフィック技術を利用したアプリケーションの利用に関して過度の期待を抱くのは禁物といえる。 そうした意味では、これまで継続的に楽しんでいるゲームをノートPCで楽しむための製品、と位置付けると本製品の購入において間違いがなさそうだ。ASUS Direct Flashのギミックやデザイン面などもPCゲームを楽しむ層には受け入れられやすいものだと思う。ゲーム自体の楽しさだけでなく、PC全体でゲームをより楽しくさせてくれる。ゲームPCとしてもっとも大切なものを持った製品といえるのではないだろうか。
□ASUSTeKのホームページ (2007年10月16日) [Reported by 多和田新也]
【PC Watchホームページ】
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