笠原一輝のユビキタス情報局

Intelが2008年第1四半期にFSB 1,600MHz対応製品を投入




 Intelは10月の半ばにOEMメーカーに対して同社のロードマップを更新し、新たな戦略をOEMメーカーなどに伝えた。OEMメーカーの関係者によれば、FSB 1,600MHzに対応したCore 2 ExtremeとX38の後継となるX48チップセットを、2008年の第1四半期に投入することが新たに明らかにされた。

 2008年第1四半期に投入される予定のFSB 1,600MHzに対応したCore 2 Extremeは、QX9770とQX9750の2製品があり、前者がシングルソケットでX48用、後者がデュアルソケットで“Skulltrail”(スカルトレイル、開発コードネーム)用となっている。

●FSB 1,600MHzに対応したQX9750、QX9755を2008年第1四半期に投入

Core 2 ExtremeのベースとなるYorkfiledのCPU。実際にはヒートスプレッダが実装されて出荷されることになる

 Intelは9月に米国で行なわれたIntel Developer Forum(IDF)において、11月12日(現地時間)に、45nmプロセスルールで製造される新しいCPUコア“Penryn”(ペンリン)を採用したCore 2 Extreme QX9650を投入することをすでに明らかにしている

 OEMメーカー筋の情報によれば、10月に行なわれたロードマップのアップデートの中で、2008年の第1四半期にさらなる上位SKUを用意していることをIntelは明らかにしたという。それがCore 2 Extreme QX9770とQX9775の2製品だ。いずれもPenrynベースのクアッドコア“Yorkfield”(ヨークフィールド)を搭載した製品となり、動作クロック周波数は3.2GHzに達するという。QX9650のFSBが従来製品と同じ1,333MHzであるのに対して、QX9770とQX9775はいずれも1,600MHzと、より高いFSBをサポートするという。



【表1】Core 2 Extreme QX9770とQX9775のスペック
(情報筋よりの情報を元に筆者作成)
ブランド名プロセッサ・ナンバクロック周波数FSBCPUソケットソケット数対応チップセットTDP
Core2 ExtremeQX97753.2GHz1,600MHzLGA77125400150W
QX97703.2GHz1,600MHzLGA7751X48136W

 同じクロック周波数、FSBであるのに、2つのSKUが存在するのは、ターゲットとするマーケットの違いだ。QX9770が、従来のQXシリーズと同じようにシングルソケットのセグメントをサポートするのに対して、QX9775はデュアルソケットのマザーボードをサポートする製品となる。

 シングルかデュアルかということを除けばスペックに関してはほとんど同じQX9770とQX9775だが、実は1つだけ大きな違いがあるという。それが消費電力だ。CPUの消費電力の指標の1つであるTDP(Thermal Desgin Power:熱設計消費電力、ピーク時の想定消費電力)は、QX9770が従来のCore 2 Extremeシリーズから若干上がって136Wになるのに対して、QX9775では150Wに達するという。

 QX9770は、シングルソケットのマザーボード利用をするので、マザーボードも通常のATXフォームファクタに納める必要がある。となると、電源関連に割ける基板上の領域も制限され、電源周りの設計を改良するとしてもある程度の限界がある。もちろん、マザーボードの製造コストも気にしないといけないので、従来に比べ電源周りの仕様を拡張するのは難しい。しかし、デュアルソケット用のQX9775は、ワークステーション/サーバー用マザーボードでの利用を前提としているので、電源周りの仕様もそちらにあわせることができ、多少TDPをあげても対応が可能だ。実際、XeonではすでにTDP 150WのCPUが投入されており、電源の設計仕様はそれを流用すれば良い。

 余談になるが、こうした戦略をとることはIntelにとってもメリットは小さくない。というのも、同じクロック周波数であるのに、QX9770は136W、QX9775は150Wであれば、QX9775の方が歩留まりが上がるのだ。

 しかし、QX9770の予定価格は現行のCore 2 Extreme(不動の999ドルだ)にプラス400ドル程度であるのに対して、QX9775はプラス500ドル程度になる見通しだとIntelに近い筋は伝える。つまり、Intelにとって、QX9755はQX9750に比べて収益性の高い製品であるということができるだろう。もっとも、1,500ドル近い価格なので、出荷量は多くなく、Intelの収益に影響するほどではない。

●Intel独自仕様“DDR3-1600”をサポートするX48チップセット

 FSB 1,600MHzに対応したチップセットとして、Intelは2つのチップセットを用意している。1つはシングルソケットのQX9770用チップセット「Intel X48」、もう1つはデュアルソケットのQX9775用チップセット「Intel 5400」(Seaburg:シーバーグ)だ。

 今回初めてOEMメーカー向けのロードマップに登場したX48は、10月10日に発表および製品発売が開始されたX38の後継となる製品で、X38に比べて以下の点が拡張されている。

(1)FSB 1,600MHzに対応
(2)DDR2互換を廃しDDR3のみに対応
(3)Intel仕様のDDR3-1600に対応

 FSB 1,600MHzへの対応はもちろん、Core 2 Extreme QX9770への対応ということになる。QX9770ではTDPも136Wへと拡張されるので、マザーボードの電源周りも若干の強化が必要になる。X48の設計では、そうした点にも配慮が行なわれている。

【表2】X38とX48の比較
(情報筋の情報より筆者作成)
 X48X38
FSB1,600-
1,333
1,066
800
メモリDDR3-1600(XMP)○*1-
DDR3-1333
DDR3-1066
DDR3-800
DDR2-800-
DDR2-667-
*1 各チャネル1DIMMのみ
Intel Developer Forumで公開されたIntelのX38搭載マザーボード「DX38BT」。ちなみに開発コードネームはBonetrailで、X48搭載マザーボードの開発コードネームはBonetrail2で、製品名は「DX48BT2」になるという。写真の頭部人骨の模型はそのBonetrailのキャラクターグッズということだ

 さらにX48ではDDR2への互換設計(X38ではDDR3のみならず、DDR2にも対応した)を排除し、DDR3専用となっている。さらにDDR3の配線設計も見直されており、DDR3を利用した場合の安定性などが改善されているという。

 ユニークなのは、X48ではIntel仕様のDDR3-1600に対応していることだ。現在のJEDECの公式なDDR3の規格ではDDR3-1333までとなっており、DDR3-1600の仕様は用意されていない。しかし、Intelでは独自にDDR3-1600の仕様を策定し、Intel独自のメモリモジュールのプロファイルであるXMP(eXtreme Memory Profile)の仕様の1つとしてDDR3-1600を定義し、これに対応したメモリモジュールとしてメーカーに発売してもらうことで対応するという方針であるという。

 なお、それに合わせてXMPに対応したDDR3-1600では動作電圧をスタンダードなDDR3の1.5Vから引き上げて1.8Vにするという。現在JEDECで議論されているDDR3-1600の仕様は1.5Vで、XMPのDDR3-1600はそれからはずれた仕様となる可能性が高い。それでも、“オーバークロック仕様”であるXMPであれば問題ないと判断されたようだ。

 ただし、構成上には制限もあるようだ。XMPのDDR3-1600を利用する場合には各チャネルで1モジュールのみという構成になる。つまり、XMP DDR3-1600利用時には4つあるメモリソケットのうち2つのみを利用するということになる。こうしたことからも、XMP DDR3-1600がいかに“ギリギリ”な設計であるのかということがわかる。

●2008年第2四半期には次世代メインストリームチップセットとしてP45、G45を投入

 2008年の第2四半期に投入される予定の次世代チップセットとなるEaglelake(イーグルレイク)だが、その製品名はP45(単体型チップセット)、G45(統合型チップセット)となることも併せて明らかになった。

 G45に内蔵される新しい内蔵GPU「GMA X4500」は、IntelによればG33の3倍の描画性能があると説明されているという。GMA X4500はリリース時点でDirectX 10をサポートし、さらにHD DVD/Blu-rayのハードウェアデコーダを搭載しており、CPU負荷率を上げることなくHD DVD/Bluーrayの動画を再生できるようになる。また、HDCPの暗号化鍵もチップに内蔵されることになるので、HDMIの実装もこれまでより低コストで行なえるようになる。

 ただし、DirectX 10のサポートが本当に行なわれるのか、OEMメーカーの中には疑問を呈している関係者も少なくない。というのも、Intelは未だにG35のDirectX 10対応という公約を果たせていないからだ。IntelはすでにG35をひっそり発表し同社のWebサイトに情報を追加しているが、その売りだったはずの内蔵GPUのDirectX 10対応は実は未だ行なわれておらず、現行のドライバ(15.61)ではG965、GM965と同じハードウェアのバーテックスシェーダ 3.0エンジンの機能が追加されたシェーダモデル3.0対応、つまりDirectX 9世代に留まっている。それでも、以前のドライバに比べると、3D描画性能や3Dゲームでの互換性は大きく向上しているが、DirectX 10への対応はまだ実現されていないのだ。

 IntelはOEMベンダに対して、G35は将来のソフトウェアアップデートでDirectX 10に対応可能という話を続けているが、そのDirectX 10対応ドライバは当初の予定であったG35のリリース時点から大幅にずれ込み、2008年の第1四半期になると通知してきているという。問題は第1四半期のどの時期かということになるのだが、あまり遅れるようであればG45のリリースが迫ってしまう。そうなるとG35の存在意義が問われる事態になりかねないのだ。

●Celeron Dual-Coreでよりローエンド市場にもデュアルコアCPUを投入へ

 一方でIntelはローエンドにもデュアルコアを拡張すべく、新しい戦略に打って出る。それがCeleronのデュアルコア化だ。情報筋によれば、Intelは2008年第1四半期にCeleron Dual-Coreと呼ばれるデュアルコア版Celeronを投入する。製造プロセスルール65nmのConroeコアに基づいた製品で、最初の製品(E1200のプロセッサナンバーが与えられる)はクロック周波数は1.6GHz、FSBは800MHz、L2キャッシュは512KBになり、TDPは他のConroeベースの製品と同じく65Wに設定される。

 Intelはすでに低価格のデュアルコア製品として、Pentium Dual-Coreを投入しているが、Celeron Dual-Coreはそれを下回るセグメント向けの製品として投入されることになる。IntelのWebサイトで公開されている価格リスト(9月5日発表)を見ると、現在のPentium Dual-Coreの最下位モデルであるE2140(1.6GHz)は64ドルに設定されているが、情報筋によればE1200の価格はそれよりもさらに10ドル程度下がる可能性が高いという。となると50ドルそこそこ、日本円で6千円程度でデュアルコアCPUが買えることになる。ローコスト/ハイパフォーマンスのPCを組み立てたいユーザーにとっては注目の製品となる可能性が高い。

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【9月20日】【IDF】Intel、45nm製品の11月12日投入を正式発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0920/idf02.htm
【9月7日】Intel、Pentium DCやモバイル向けCore 2 Duoを値下げ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0907/intel.htm
【2月2日】【海外】Intelの次世代CPU「Wolfdale」と「CPU+GPU」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0202/kaigai333.htm

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(2007年10月15日)

[Reported by 笠原一輝]


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