10月4日(現地時間)、MicrosoftはWindows XP ServicePack 3(SP3)のβ版を、同社のβテスター向けサイトなどを通じて配布を開始した。XPにとって最後のメジャーなサービスパックになると言われているSP3は、今後βテストを経て、2008年前半のリリースが予定されている。 今回はその公開されたばかりのXP SP3のβ版を利用して、その内容などをチェックしていきたい。 ●XP SP3、先週末よりβテスト開始 Windows Vistaの登場後に、XPへのアップデータが必要なのかという疑問があるかもしれない。確かにVistaは新しい3Dユーザーインターフェイスなど魅力的な機能を備えているとはいえ、インストールするにはそれなりのハードウェアへの投資が必要なことは以前の記事でも触れたとおりだ。GPUがDirectX 9に対応していない、メインメモリが512MBしかないなどの条件下では、Windows Vistaをインストールしても、あまりメリットが享受できないだろう。 もちろんできることならハードウェアをアップグレードしてWindows Vistaへ移行するのがよいのは言うまでもないが、何らかの理由(例えば内蔵GPUでビデオカードの交換が難しいとか……)でそれが難しいならこれからもXPを使い続けるというのも選択肢としてはありだろう。 そうしたユーザーにとって、今回の記事のテーマであるXP SP3は良いニュースと言えるだろう。MicrosoftはこのSP3のリリースを2008年の前半に予定している。XP SP2がリリースされたのは2004年の8月だったので、実に3年以上ぶりの大幅アップデートということになる。 Microsoftは先週末に同社のβテスターサイトを通じて、XP SP3のβ版の配布を開始した。すでに多数のβテスターによりダウンロードが行なわれており、2008年のリリースに向けて大規模なテストが行なわれることになる。 ●エンドユーザー向けの新機能はあまりなし XP SP3のメインテーマは、セキュリティやネットワーク関連のアップデートがほとんどで、SP2の時のように追加された新しい機能は少ない。新しい機能は以下の通りだ。
【表】XP SP3で追加される新機能
見てわかるとおり、エンドユーザーに関係ありそうな新しい機能はほとんどない。主にビジネスでPCを利用する場合、そのセキュリティを高める機能が中心になっている。今のところ、Internet Explorer 7やWindows DefenderといったSP2リリース後に追加された無償ツールなども含まれてはいないようだ。 唯一エンドユーザーに関係がありそうなのが、アクティベーション関連だろう。MicrosoftがXP SP3と一緒に配布した資料によれば、XP SP3ではVistaと同じようにセットアップ時にプロダクトキーを入れなくてもインストールできるようになっているという。今後XP SP3が適用済みのDSP版などが登場すれば、とりあえずプロダクトキーなしでインストールし、動作を確認してからプロダクトキーを入れるという方法も可能になる可能性がある。
今回配布されたXP SP3のβ版は、単体インストールが可能なスタンドアロンバージョンとなっている。今のところx86版の日本語版、英語版、ドイツ語版が配布されており、日本語版の容量は367MBとなっている。インストール自体はさほど時間はかからず15分程度で導入が終わった。インストール後にリブートすれば適用終了だ。 インストールが終わっても、外見では全く差がわからない。XP SP2の時のようにセキュリティ関連のウィザードが始まったりなどもしないので、XP SP2との差を見つけるのが難しいほどだ。結局いろいろ見てみたのだが、システムのプロパティでSP3というバージョンを見つけたぐらいで、特に新しいコントロールパネルのアプレットなどが追加されたりということもないようだ。
●XPで不満がなければXP SP3待ち、そうでなければVistaへの移行を 以上のように、XP SP3は、XP SP2のように新しい機能を追加するサービスパックというよりは、どちらかと言えばこれまで積み上げてきたパッチをまとめてインストールするということに主眼がおかれたサービスパックであると言っていいだろう。MicrosoftとしてはすでにVistaという新しいOSをリリースしている以上、“旧バージョン”となる XPの機能を拡張するというのは“自己矛盾”になってしまうわけで、妥当なところだと言えるのではないだろうか。 このため、エンドユーザーにとっては、XP SP3により得られるものは、複数のパッチが当たることで信頼性が向上すること、セキュリティが高まることなどということができるだろう。XPの機能そのものには満足しており、特に新しい機能は必要ないというユーザーであれば、このXP SP3を待つことには意味があると思われるが、OSそのものの機能を拡張したいと思うのであれば、Vistaへの移行を検討するほうが望ましいだろう。 ●SP1の導入でより安定性が増すWindows Vista
最後に、以前の記事で紹介した、Windows Vista ServicePack 1(以下SP1)について、その後の使用感をお伝えしておこう。 記事中でも述べたように、Vista SP1は目新しい機能の追加はなく、どちらかと言えば安定性、信頼性、性能の向上などに焦点が置かれていると述べた。実際にインストールから1週間使った筆者の感想は、確かに安定性や性能などの向上があったと感じている。 例えば、Windows UIの安定性は格段に上がった。具体的に言えば、Windowsではタスクバーの右側に“通知領域”と呼ばれる動作中のツールなどの状態を表示する領域があるが、Vista SP1導入前はアイコンが出たり出なかったりという問題がよく発生していた。これはHDD上に何らかのエラーがある時によく発生し、スキャンディスクをかけると解決することが多いのだが、SP1をインストールした後にはそうした問題がほとんど発生しなくなった。また、全体としての性能は明らかに向上しており、以前よりも快適に利用できるようになった。 別にVistaに限らず、新しいソフトウェアには何らかの問題はつきもの。こればっかりは避けようもないのだが、それもSP1の導入で多くが解決できる可能性が高いのではないかと筆者は考えている。筆者は発売日より自分のメインマシンでVistaを使い続けているが、新しいソフトウェアへの懸念からVistaの導入をためらってきたユーザーにとっても、来年(2008年)の第1四半期に予定されているSP1のリリースはVistaへ移行する良い機会ではないだろうか。
□マイクロソフトのホームページ (2007年10月9日) [Reported by 笠原一輝]
【PC Watchホームページ】
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