●IAを強く打ち出すIntel 日本がゴールデンウィークまっただ中の5月3日、Intelは2007年春のAnalyst MeetingをNew Yorkで開催した。対象が金融/証券会社のアナリストということで、話題の中心は経営や事業戦略が中心となるが、Otellini社長を筆頭に、各事業部の事業部長クラスが顔を揃える貴重な機会でもある。ここでは、このイベントから、いくつかの話題をピックアップしてみたいと思う。 4月に北京で開催されたIDFに続いて、このAnalyst Meetingでも強調されたことは、Intel Architecture(IA)の拡大(あるいは拡張)である。PCは成熟してしまった、とはよく言われることだが、おそらく先進国について、これは間違っていない。動画ファイルの共有(合法、違法含めて)など、インターネットコンテンツのリッチ化が先進国での買い換えを促す、とはいうものの、今後先進国のPC市場が急成長するとは考えにくい。 つまりIntelの成長、とりもなおさず聴衆であるアナリストにとって最も大事な株主価値の向上は、先進国のPC市場以外の部分に大きく依存する。すなわち、まだPCが十分に普及していない経済発展中の新興国であり、IAが浸透していない別の種類の市場へIAを売り込むことである(図1)。
「経済発展中の新興国」を代表する国の1つが中国であることは言うまでもない。米国外で開催するグローバルイベントとしての最初のIDF開催地に北京を選んだことでも明らかなように、Intelはこの市場を極めて重視している。中でも、新興国のノートPC市場には大きな期待が寄せられている(図2)。
先進国においても市場の成長が期待されるノートPCは、Intelが最も強みを発揮している分野の1つ。と同時に、Intelにとって最もおいしい市場でもある。Centrinoの成功もあって、プラットフォーム戦略で先行したノートPCにはデスクトップPC以上にIntel製のパーツが採用されることが多い。 「来週ローンチされる」(Otellini社長)Santa Rosaプラットフォームでは、オプションではあるものの、Intel製のNANDフラッシュメモリも採用される(Intel Turbo Memory)。ノートPCに限らず、Intelが進めるプラットフォーム戦略により、Intel製プロセッサに対する純正チップセットの採用率は高まっており、2007年末には90%近くになるものとIntelは見ている(図3)。
●組み込み/Ultra Mobile市場の成長を狙う 一方、IAが浸透していない別の市場のうち、大きな成長が見込まれているのが、家電などの組み込み分野とUltra Mobileプラットフォームだ。上の新興国向けノートPC市場と合わせ、この3つを次の「戦略転換点」と呼んでいるほど(図4)。それぞれの市場規模を最大100億ドル、2011年には9億ユニット規模の市場があると見込んでおり(図5)、いかにIntelが大きな期待を寄せているかがわかる。
図5にある通り、この市場を攻略する上で、Intelがカギになると考えているのがInternetとの互換性、低消費電力、低コストの3点だ。Internetとの互換性とは、たとえばWebブラウジング中にエラーが発生しない、ということ。プラグインも含めた互換性のことであり、それにはIAとフルスペックのWindowsが不可欠である(図6)。 低消費電力と低コストを実現する切り札となるのが、45nmプロセスによる6番目のプロセッサとして紹介されたSilverthorneだ(図7)。ダイ面積が小さなSilverthorneは、1枚の300mmウェハから2,500個取ることができるという(図8)。これが低コストの秘密である。
IntelはこのSilverthorneを、Ultra Mobileプラットフォームだけでなく、家電の組み込み用、新興国向けの低コストPC用に幅広く販売するとしている(図9)。IAプロセッサを組み込み用に用いることは、従来からIntelもAMDも、VIA TechnologiesやNational Semiconductorも行なってきたことだ。しかし、これらの多くは(Intelの製品も含めて)、PC用としては陳腐化してしまった過去の製品の流用であることが多かった。Silverthorneで画期的なことは、この市場用に全く新規に開発を行ない、最新の製造プロセスで量産を行なう点にある。
●NetBurstは終焉へ こうした新しい製品が登場する一方で、消えていく製品もある。どうやら2007年はNetBurstマイクロアーキテクチャの最後の年になりそうだ。図10でも明らかなように、非Coreマイクロアーキテクチャのプロセッサは12月にゼロになる(Itaniumは別であろう)。Pentium 4やCeleron D、あるいはNetBurstマイクロアーキテクチャのXeonは、これで姿を消す。
さて、最後にちょっと目にとまったスライドをいくつか紹介しておこう。図11は、プロセッサの予定したスケジュールに対する遅延の度合いを示したものだが、NetBurstマイクロアーキテクチャのプロセッサのスケジュールがいかに遅れ気味だったかがわかる。その理由の1つは消費電力の問題に違いないが、最後のNetBurstマイクロアーキテクチャのプロセッサとなったTulsaのスケジュールが4カ月半も前倒しになっていることからすると、それ以外の問題もあったのだろう。
図12は、マーケティング戦略の変更を示すものだ。プラットフォーム毎に6つのキャンペーンを展開していた2006年から、2007年は「Multiply」に1本化されるという。これもコスト削減/リストラの一環に違いないが、わが国からIntelのTV CMも消えてしまうのだろうか。そうだとしたら、最近のTV CMにはおもしろいものもあっただけに、ちょっと残念な気もする。
□関連記事 (2007年5月7日) [Reported by 元麻布春男]
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