Windows Vista時代を快適に過ごす環境
【第三回:Blu-Ray Disc編】



 Windows Vistaの快適環境を探る本企画。最終回となる今回は、Windows Vistaにおける光学ドライブ環境について取り上げたい。光学ドライブとはいっても、書き込み型DVDドライブはすでに一般的な存在といえるわけで、ここではBlu-Ray Disc(BD)ドライブをいかに利用するかを中心に検証を行なってみたい。

●光学ドライブのサポートが強化されたWindows Vista

 Windows Vistaではインストールメディアが基本的にDVD-ROMで提供されるようになり、DVD-ROMドライブがほぼ必須要件となった(別途申込でCD-ROM版も入手可能)。しかしながら、現在のPCのトレンドから推測すれば、DVD-ROMの読み出しができることはもちろん、何らかのDVDメディアへ書き込みを行なえるドライブを所有しているユーザーがほとんどだと思われる。

 Windows XPでは、こうしたDVDメディアのうちOSレベルで書き込みをサポートしていたのはDVD-RAMのみ(それもFAT32に限る)に留まっていた。また、CD-R/RWへの書き込みもサポートしていたが、こちらもパケットライトが行なえるわけではなく、Windows XPでは結局、何らかのライティングソフトやパケットライトソフトを利用するのが一般的だ。

 しかしながら、Windows Vistaではこの状況が大きく改善された。光学メディアのフォーマットとしてUDF1.02/1.5/2.0/2.01/2.5の読み書きをサポートしたことにより、現在主流の全DVDメディアへの書き込みをサポート。また、ライブファイルシステムと呼ばれる、パケットライティングのように利用できる機能もサポートされた。つまり、ライティングソフトなどをインストールしなくても、DVDメディアへの書き込みであまり不自由しなくて済むようになったといえる。

 もっとも、こうした機能強化は現時点のトレンドを押さえただけという見方もできる。問題は次世代メディアへの対応だ。Windows XPがサポートしている読み出し可能なフォーマットはUDF1.02/1.5/2.0/2.01であり、BDやHD DVDで採用されているUDF2.5以降に対応させるには、ドライバをインストールする必要があった。

【画面1】Windows VistaではDVD±R/-RAMだけでなく、BD-REなどへの書き込みもエクスプローラ上から行なえる

 これに対し、Windows Vistaでは、ドライバをインストールすることなくこれらの新メディアを読み出せるだけでなく、エクスプローラを利用して書き込みも行なえるのである(画面1)。BD-Rで利用可能なUDF2.6は読み込みのみのサポートとなる点だけがネックだが、データの読み書きに関していえば次世代メディアもほぼ網羅しているのである。

 また、DVD周りでは、Home PremiumとUltimateに、DVD-Video再生に利用できるMPEG-2デコーダが実装されるようになった点も特徴だ。機能面では不満を持つ人もいると思うが、ソフトウェアDVDプレイヤーなどを別途用意しなくても、とりあえずはMedia CenterやWindows Media Playerを利用してDVD-Videoの再生が行なえるのである。

 ただ、次世代メディアで提供されるコンテンツの再生に関しては、Windows Vistaでもサポートされない。開発途中ではHD DVDのデコーダが実装されるという話があったと思うが、これも結局は実装されなくなっている。

 第1回目でも触れたとおり、この企画を行なうために用意したテスト環境には、ナナオの「FlexScan S2411W」を利用している(写真1)。この液晶は1,920×1,200ドットの解像度を持っており、1,920×1,080ドットのいわゆるフルHD解像度をドット・バイ・ドットで表示できる。こうしたフルHD対応の液晶ディスプレイも今では、ちょっと手を伸ばせば導入ができる価格帯になっている。

 BDドライブやHD DVDドライブの製品数が少しずつ増え、フルHD液晶も手が届く状況で、肝心のコンテンツ視聴が行なえないとあっては、せっかくのハイエンドパーツも宝の持ち腐れとなってしまう。そこで、ここではアイ・オー・データ機器の「BRD-UM2S」(写真2、画面2)を借用し、市販のBDコンテンツの再生を試してみることにする。なお、アナログ出力ではなく、DVI-Dを利用したデジタル出力を前提に話を進めるのでご了承いただきたい。

【写真1】ナナオの「FlexScan S2411W」 【写真2】アイ・オー・データ機器の「BRD-UM2S」 【画面2】BRD-UM2Sを取り付けるとパナソニック四国エレクトロ二クスの「SW-5582」として認識される

 このBRD-UM2Sは、1月17日に同社が発表した“Windows Vista対応”を大きくアピールしているUSB 2.0接続のBDドライブだ。このアピールの根拠は、添付ソフトにある。DVDオーサリングソフト「DVD MovieWriter 5 BD version」や、HD対応デジタルビデオからの映像取り込みやBDへのライティングを行なう「BD DiscRecorder」、ライティングソフト、パケットライトソフトの「B's Recorder GOLD9 BASIC」「B's CLiP7」といった、主要なソフトがいずれもWindows Vistaに対応しているのだ。

 しかし、本製品に付属するDVD/BD再生ソフトの「InterVideo WinDVD」は、アイ・オー・データ機器から、3月を目途にアップデータを提供される予定だが、現時点ではWindows Vista上でBDビデオを再生することができないのである。

 では、WinDVDの発売元であるInterVideoの製品の対応状況はどうか、というと、これも芳しいとはいえない。現在の同社のDVD再生ソフトは、「WinDVD 8 Platinum」「WinDVD 8 Gold」の2製品が主力製品である。

 まず、前者については、Windows Vistaへの対応が現時点で正式に表明されていないという問題がある。試せば動くかも知れないが、今回は試すのを取りやめた。というのも、AACSで著作権保護されたコンテンツ再生に関して機能制限があるためだ。

 WinDVD 8 Platinumは単体ではAACS保護のコンテンツには対応せず、アップデータを適用する必要があるのだが、そのアップデータは現時点で公開が停止されている。また、仮にアップデータを入手できたとしても、AACS保護されたコンテンツは960×540ドットで再生されてしまう旨が、アップデータの公開ページに記載されているのだ。

 実際、BRD-UM2Sに付属するInterVideo WinDVDは、Windows XPでは一応BDビデオも再生できたが、FlexScan S2411Wでフルスクリーン再生すると、明らかにスケーリング表示をしているボケが表れる。こうした理由から、現時点で、WinDVD 8 Platinumを利用してBDビデオを再生するのは、少なくともフルHD液晶を利用する場合にはお勧めできない。

 InterVideoのもう1つの製品であるWinDVD 8 Goldに関しては、Windows Vistaへの対応は正式に表明されている。ただし、こちらはWinDVD 8 Platinumから一部機能を省略した廉価版で、BD/HD DVD再生機能も省略されている。BDビデオの再生を検討するならば選択肢からは外れる製品である。

●Power DVD Ultraを利用してフルHD再生を検証

 それでは、もう1つの主要DVD再生ソフトである、CyberLinkの「PowerDVD」はどうかというと、BD/HD DVD対応の「PowerDVD Ultra」を2006年12月28日に発表しており、こちらはWindows Vistaにも対応している。また、AACS保護されたBDビデオの再生に関しても、特に制限事項は記載されていない。そこで、今回はこのPowerDVD Ultraを利用して検証を行なうことにした。

 まず、PCを利用してBDビデオなどのコンテンツを再生するには、最低限、以下の条件を整えなければならない。

・再生するメディアに対応したドライブ
・AACS対応のBD/HD DVD再生ソフト

※以下、デジタル出力の場合
・HDCP対応のDVI/HDMI端子を持つビデオカード
・HCDP対応のDVI/HDMI端子を持つディスプレイ
・COPP対応のビデオカードドライバ

【画面3】CyberLinkが提供しているBD/HD Advisorは、PCをスキャンして、BDやHD DVDのコンテンツをデジタル出力できる環境であるかをチェックしてくれる

 こうした条件をチェックするためのツールである「CyberLink BD/HD Advisor」が、PowerDVD Ultraには付属している(画面3)。このツールは、実行したPCの環境を調べ、それがBD/HD DVD再生に問題ないかを簡単にチェックできるもの。まだベータ版であり、今回の環境では、ビデオカードとビデオカードドライバが新しすぎたためか正しくチェックされていないが、今後のバージョンアップに期待したい。なお、このツールは必要事項さえ記入すれば、PowerDVDユーザー以外でもダウンロードできるので、興味がある人は試してみるといいだろう。

 さて、いきなり結論を言ってしまうと、このPowerDVD Ultraを利用した場合、市販BDビデオもフルHDで再生されているようである。ようである、という表現にしたのは、再生解像度を知る手段がなかったためだ。テストに利用したBDビデオは「フルメタル・ジャケット」で、ちょっと古いソースから作られたものだったため判別しづらい状況だったが、先述したWinDVDの表示とは明らかに異なっており、字幕等もまったく滲みなく表示されていることから、フルHDで再生されていることは間違いないと思う。

 ちなみに、Windows Vistaでは、Protected Media Path(PMP)と呼ばれるコンテンツ保護技術が搭載される。これは、簡単にいえば、Windows Vista上で処理するコンテンツデータのセキュリティを確保するためのもの。ビデオカードと液晶ディスプレイ間をHDCPでセキュアにしても、そのビデオカードに至るまでの処理中のデータがセキュアでなければデータを盗む出す手段は残されてしまうわけで、あらゆる経路で暗号化されたデータが流れるようにすることで、コンテンツ保護を行なうのである。

 一方で、ユーザーにとってはデメリットもあって、もし、PowerDVD Ultraが、このPMPを実装しているとすれば、データの暗号化処理が加わることによって、CPU負荷が高まる可能性もある。そこで、Windows XPとWindows Vistaにおいて、BDビデオ再生中のCPU負荷に変化があるかも、チェックを行なった。

【画面4】Windows Vista上でも、PowerDVD UltraでDxVAを利用可能

 ちなみに、PowerDVD UltraはDxVAをサポートしており、Windows Vista上でこれを有効にできる(画面4)。この有効/無効による違いもチェックしてみたい。また、今回利用したBDビデオは、冒頭のWarner Bros.のロゴ部分はVC-1で収録、本編はMPEG-2で収録されているので、それぞれの再生中のCPU負荷を見ることにする。

 結果はWindows Vista上のものを画面5~8、Windows XP上のものを画面9~12に示している。Windows Vistaのほうが若干CPU負荷が大きいが、それほど極端な違いは感じられない。Windows Vistaのグラフは少し暴れている印象を受けると思うが、これは再生の開始時点やチャプターを切り替えたときに急激に負荷が跳ね上がったもので、Windows Vistaでは光学メディアへのアクセス処理の負荷が高いことを示すものだ。

 ただし、こうしたデコード処理部分については、DxVAを無効にしたときにWindows VistaのCPU負荷の上昇具合は大きいものの、DxVAを有効にした状態では差はほとんどない。この結果から見れば、PMPのための処理が追加されているとは考えにくく、PowerDVD UltraではPMPが実装されていない可能性が高いように思われる。

【画面5】BD再生中のCPU使用率-Windows Vista、DxVA有効、MPEG-2<【画面9】BD再生中のCPU使用率-Windows XP、DxVA有効、MPEG-2
【画面6】BD再生中のCPU使用率-Windows Vista、DxVA無効、MPEG-2 【画面10】BD再生中のCPU使用率-Windows XP、DxVA無効、MPEG-2
【画面7】BD再生中のCPU使用率-Windows Vista、DxVA有効、VC-1 【画面11】BD再生中のCPU使用率-Windows XP、DxVA有効、VC-1
【画面8】BD再生中のCPU使用率-Windows Vista、DxVA無効、VC-1 【画面12】BD再生中のCPU使用率-Windows XP、DxVA無効、VC-1

【画面13】Windows Vista上でも、PowerDVD Ultraのデコーダを利用した、アナログによるマルチチャネル出力が可能

 また、PowerDVD Ultra上で、Sound Blaster X-Fi Elite Proを用いて5.1chサウンドのアナログ出力も試したが、こちらも問題なく行なえた(画面13)。先述のCPU負荷を示した画面は、いずれもアナログによる2chステレオ出力した状態のもので、改めて、アナログ5.1ch出力を設定した場合のCPU負荷をチェックしてみたが、オーディオデコードの負荷はほとんど感じられない(画面14~15)。

 もちろん、今回のテストPCはハイエンド環境を意識したものであることも幸いして、いずれの状況においても、コマ落ちなどの症状は見られなかった。H.264で収録されたBDビデオだとまた結果も変わるかもしれないが、Windows Vistaで次世代ビデオを再生するための必要環境はすでに整っている判断していいだろう。

 光学ドライブの取り扱いに関して、Windows VistaではOSレベルでも取り扱える範囲が増え、導入の手間は大幅に軽減された。次世代メディアで提供されるコンテンツに関しては、結局OSでのサポートは皆無といっていい状況だが、よくも悪くもWindows XP時代と同様の感覚で使えることが確認できた。

 Windows Vistaが厳しいハードウェア要件を示したことで、今年はユーザーのハードウェア環境も全体的にレベルアップしていくことになるだろう。そうした、これまでよりも強力なハードウェア環境を活かす1つのアイテムとして、今回取り上げたBDドライブなどの次世代ドライブは面白いアイテムではないだろうか。もちろん、BDやHD DVDのコンテンツを視聴するだけでなく、作成するというステップへ上がることも可能であり、よりPCを楽しむためのデバイスとして活躍してくれることだろう。

【画面14】BD再生中のCPU使用率-Windows Vista、DxVA有効、MPEG-2、アナログ5.1ch出力 【画面15】BD再生中のCPU使用率-Windows XP、DxVA有効、MPEG-2、アナログ5.1ch出力

□Windows Vistaの製品情報
http://www.microsoft.com/japan/windowsvista/
□BRD-UM2Sの製品情報
http://www.iodata.jp/prod/storage/blu-ray/2007/brd-m2s/
□S2411Wの製品情報
http://www.eizo.co.jp/products/lcd/s2411w/
□Sound Blaster X-Fi Elite Proの製品情報
http://jp.creative.com/products/product.asp?category=1&subcategory=208&product=14064
□関連記事
【1月17日】アイ・オー、25,000円以上値下げしたVista対応のBDドライブ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0117/iodata2.htm
【2月5日】Vista時代を快適に過ごすハイエンド環境【第二回:ゲーム編】
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0205/vistaenv2.htm
【1月29日】Vista時代を快適に過ごすハイエンド環境【第一回:ワイド液晶編】
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0129/vistaenv1.htm
【2006年7月29日】自作PCでのBlu-rayビデオ鑑賞環境を検証する
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0729/bd.htm

(2007年2月13日)

[Reported by 多和田新也]

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