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Intelの次世代CPU「Wolfdale」と「CPU+GPU」




●マルチコアCPU比率を90%近くにまで引き上げるIntel

 Intelの2008年頭までのCPU戦略の詳細が見えてきた。デスクトップでは、Intelはデュアルコア/クアッドコア化と「Core Microarchitecture(MA)」への移行をドライブさせる。さらに、2007年末には、45nm世代の「Penryn(ペンリン)」アーキテクチャのデスクトップCPUとして、デュアルコアCPU「Wolfdale(ウルフデール)」と2ダイ(半導体本体)のクアッドコアCPU「Yorkfield(ヨークフィールド)」を投入する。

 現在、IntelのデスクトップCPUの出荷量のうち70%程度がデュアルコアになっている。しかし、Intelはマルチコア比率を高め、2007年後半には90%近くまでをデュアルコア/クアッドコアへと移行させる。Celeronブランド以外は、全てマルチコアとなり、マルチコアシフトがますます鮮明となる。言い換えれば、IntelはデュアルコアCPU「Pentium D」投入から2年強でデュアルコアへの移行を完成させることになる。アーキテクチャ的に統合された真のデュアルコアCPU「Core 2 Duo」投入からは1年だ。

 マルチコア化と同時に、IntelはCore MAへのシフトもドライブする。現状では、まだデスクトップCPU全体量の2/3はNetBurstアーキテクチャCPUが占めている。しかし2007年第2四半期中には2/3をCore MAに、第3四半期の出荷では90%までをCore MAに移行させ、第4四半期までにCore MAへのシフトをほぼ完了する。NetBurstからCore MAへの転換は、ほぼ1年で完成することになる。

 急速なCore MAとデュアルコアへのシフト。これが可能になったのは、Core MAのCPUコアの物理サイズが小さく、製造コストが低く、量産が効くからだ。Core MA CPUのダイサイズ(半導体本体の面積)はデュアルコア4MBで143平方mmと、Intelの新マイクロアーキテクチャデスクトップCPUとしては最小だ。つまり、Core MAでは設計をコンパクトに納めたことが、Intelの今回の戦略の原動力となっている。

Intel デスクトップCPUのデュアルコア化予想
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●Conroeファミリを上から下までスケーラブルに展開

 Intelは、最終的にデスクトップではCore MAを3系統のチップ、5ブランドで提供する。デュアルコアの「Conroe(コンロー)」系と、Conroeを2ダイ(半導体本体)載せたクアッドコアの「Kentsfield(ケンツフィールド)」、Conroeのシングルコア版の「Conroe-L(コンローL)」の3ファミリだ。Conroeにはバリュー価格の1MB L2キャッシュ版の「Conroe-1M」も今春から投入される。Conroe-1MはConroeと別ダイ(半導体本体)の可能性もある。また、2007年後半には、ConroeのFSBを1,333MHzに引き上げたバージョンも登場する。

Intel Desktop CPU Roadmap
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 ブランド的には、Conroeがメインストリーム向けデュアルコアの「Core 2 Duo」。同じデュアルコアでもバリュー価格のConroe-1Mは「Pentium dual-core(DC)」ブランドで投入される。Core MAでPentiumブランドが冠されるのは、このシリーズだけだ。クアッドコアのKentsfieldはエンスージアスト向けの「Core 2 Extreme」とパフォーマンス&メインストリーム向けの「Core 2 Quad」の2ブランド。シングルコアのConroe-Lは「Celeron」ブランドとなる。ブランド階層としては、Core 2 Extream > Core 2 Quad > Core 2 Duo > Pentium DC > Celeronという5階建てとなる。

 45nm世代のWolfdale/YorkfieldはOEM向けの出荷が2007年中で市場への投入は2008年第1四半期。これは予定通りのスケジュールとなる。アーキテクチャ的にはモバイル向けの「Penryn」と同じ。IntelのMobility Groupの開発したアーキテクチャだ。Merom/Conroe世代のCore MAをさらに発展させ、SSE4命令の一部を実装、キャッシュは6MBに拡張、動作周波数も向上させる。また、機能的にはIntel Trusted Execution Technology(TXT)がイネーブルにされる。FSB(Front Side Bus)はデュアルコアが1,333MHz、クアッドコアが1,067MHzとなる。

 また、当初はPenryn系が「Hyper-Threading」を実装するという情報も流れた。出所はIntelがOEMに提供したデスクトップCPUの資料で、Wolfdale/YorkfieldにHyper-Threadingのチェックマークがついていたことによる。ただし、ある業界関係者によると、Penryn系にHyper-Threadingが実装されると言う説明はIntelから受けていないという。そのため、今のところHyper-Threadingは次のメジャーアーキテクチャチェンジとなる「Nehalem(ネハーレン)」まで実装されない可能性が高いと見られる。

Intel Desktop CPU(2005-2008)
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●まだ正体は見えないIntel版“FUSION”

 さらに、その先では、IntelはCPUとGPUの“ワンチップ”製品を計画している。AMDのCPUコア+GPUコアの「FUSION」プロセッサに対抗するものだ。ただし、IntelのCPU+GPUはシングルダイ(半導体本体)ではなく、マルチダイパッケージとなる。CPUダイとおそらくグラフィックス統合チップセットのダイをワンパッケージに封止した製品になると見られる。

 この製品は、どんな機能を持ち、どの価格帯で投入されるのかは、まだ判明していない。しかし、IntelはAMDのFUSIONに対抗できる2008〜2009年頃の投入を検討していると言われる。組み合わせとしてはPenryn/Wolfdale系CPUとBearlakeチップセット、またはその次のチップセット世代が考えられる。

 デュアルコアの時と同様、IntelはCPU+GPUではマルチダイを先行して投入、その後、シリコン上での統合に向かうと見られる。AMDのFUSIONより先に登場する可能性も高い。ただし、CPU+GPUではさまざまなハードルがある。例えば、メモリバスをCPUパッケージから出さなくてはならない。CPUはソケットに装着するため、電気的にはメモリバスの統合のハードルは高くなる。この事情はAMDと同様だ。CPU回りの配線もより密集するため、レイアウトが難しくなる。また1パッケージで2ダイを載せた場合は、熱密度の高いホットスポットの扱いでも工夫が必要になる。

 チャレンジはハードだけではない。AMDのFUSIONは、グラフィックス機能の統合だけでなく、GPUコアを使ったデータ並列のストリームプロセッシングを重視している。CPUコアとGPUコアの連携が必要なこうした処理では、CPUとGPUを同ダイに統合するアーキテクチャの方が有利となる。また、AMDは、GPUコアのネイティブに近い命令セットを「Close to Metal」でオープンにし始めている。こうしたストリームプロセッシングの推進の準備も、Intelは急ぐ必要がある。

 Intelの利点もある。Intelの場合、GPUコアも自社で開発、自社Fabで製造していた。現状では、CPUとGPU統合チップセットのプロセス技術は1世代ずれている。しかし、シリコン上で統合する場合も、ATIコアを自社Fabに移さなければならないAMDよりハードルが低いと見られる。また、GPUコア用のCコンパイラなどを提供する場合も、コンパイラ技術に優れるIntelに利がある。ただし、AMDはATIの買収によって、先端のGPUコアとその開発陣を手に入れた。Intelは、それと対抗できるだけのGPUコアを開発する必要がある。

●以前のCeleron価格にCore MAデュアルコアが降りてくる

 前回Intelのデスクトップロードマップ図を更新してから3カ月の間に、Intelの戦略はかなり変化した。最大の違いは、マルチコア化にいっそう拍車がかかったこと。

 IntelはデュアルコアCPUのローエンドの価格レンジを70ドル台にまで持ってくると見られる。つまり、70ドルから下がシングルコア、そこから上がデュアルコアという切り分けとなる。ブランド的にはメッセージはもっと明瞭で、2007年後半にはCeleronブランド以外はデュアルコアとなる。

 Intelは当初、シングルコアのConroe-Lを70〜80ドル台にも投入し、90ドル近辺をデュアル/シングルの境界にしようとしていた。しかし、現在では明瞭にデュアルコアが下の価格帯へと浸食している。その結果、わずか1年前にはCeleron Dブランドが占めていた60〜120ドルの価格帯は、全てデュアルコアに変わることになる。言い換えれば、旧Celeron価格でCore MAのデュアルコアCPUが買えることになる。Intelの大バーゲン価格攻勢は、まだ続く。

 ただし、メインストリームのCore 2 Duoとの差別化は図る。Core 2 Duo E6xxx系は1,067MHz FSB(Front Side Bus)でVT(Virtualization Technology:コードネームVanderpool)も有効にされるが、下位のCore 2 Duo E4xxxはFSB 800でVTもOFF、L2キャッシュ量も2MBに抑えられる。Core 2 Duo E6xxx系も下位のE6300/6400は2MB L2だが、これらはマイナーチェンジでE6320/6420となり4MB L2に上げられる。つまり、基本的にはE6xxx系が4MB L2でFSB 1,067MHz、VT/vPro有効に揃えられる。

 Core 2 Duo E4xxx系ではそれらの仕様が全てダウングレードされる。さらに、バリュー価格帯のデュアルコアになると、前述のようにCore 2 Duoブランドも外され、同じConroe系なのにPentium DCブランドとなる。Core 2 Duoのブランドにそこまで廉価なイメージはつけたくはないというブランド戦略だと推測される。ただし、Pentium DCの基本的なフィーチャは、L2キャッシュが1MBへとさらに半減されている以外は、Core 2 Duo E4xxxと同じだ。

 バリューセグメントに投入されるシングルコアConroe-Lは、Conroeのカットアウト版でシングルコア、512KB L2キャッシュの構成となる。ダイ自体がConroeとは異なり、低コストだ。

●チップセットはBearlakeでFSB 1,333MHzに移行

 バリュー価格帯にもデュアルコアをもたらすため、Intelのデュアル/クアッドコア比率は、2007年末には80%台後半、90%近くへと大きく増える。その分、IntelデスクトップCPUの平均のダイサイズ(半導体本体の面積)は増えることになる。だが、Conroeのダイは小さいため、それでも合計の出荷数量を維持できるとIntelは計算したと見られる。また、Conroe-1MがConroeとは別の小型のダイだった場合には、さらに平均ダイサイズが縮小し、生産量は増える。

 Intelはデスクトップチップセットを2007年第2四半期から第3四半期にリフレッシュする。2007年第2四半期には、新統合グラフィックスチップセット「G33(Bearlake-G:ベアレイクG)」とディスクリートチップセット「P35(Bearlake-P)」を投入する。さらに、2007年第3四半期には、PCI Express x16×2をサポートするハイエンドチップセット「X38(Bearlake-X)」、そしてグラフィックス機能を強化した「G35(Bearlake-G+)」なども出す予定だ。

 新チップセット群ではFSB 1,333MHzをサポート。それに合わせて第3四半期にはCore 2 DuoもFSB 1,333MHzサポートのE6x50系へとシフトする。E6x50からは、Trusted Execution Technology(TXT)もサポートされる。また、Bearlake系チップセットは、45nm世代のWolfdale/Yorkfieldもサポートする。

●クアッドコアの比率を高めたIntel

 IntelはCore 2 Extremeによってクアッドコアに手応えを感じたようだ。もともと、IntelはクアッドコアCPUを、デュアルコアCPUと同価格で販売する予定だった。しかし、現在は上位の価格帯がクアッドコアだけで占められるようになる。つまり、価格レンジによって、デュアルコアとクアッドコアが明瞭に棲み分けることになる。マルチコアをバリューとしてアピールできると、確信を持ったようだ。

 また、Intelはメインストリーム向けに価格レンジを1ランク下げたKentsfieldも投入する。メインストリーム向けCore 2 Quadはおそらく300〜400ドル帯にまで下がると見られる。それに伴い計画上の出荷量も大幅に増えたと見られる。もっとも、デスクトップCPU出荷量のうちクアッドコアは、2007年末の計画でも6%程度を占めるに過ぎない。

 クアッドコアの浸透と連動するのがデュアルコアCPUの動作周波数のカーブ。IntelのメインストリームCPUの動作周波数は、過去3年、NetBurstでは2.8〜3.6GHzで推移し、Core MAになってからは1.86〜2.4GHzへと下がった。ところが、2007年のロードマップでは周波数は3GHzまで段階的にアップ、さらに45nm世代ではリーク電流を抑えることで、より高い周波数が達成できることをIntelは示唆する。

 つまり、時間とともにCPUの周波数が上がって行く、2003年頃までのパターンが、ある程度復活し始める。Intelは上位のデスクトップCPUをクアッドコアへと段階的に移行させ、それとともに高クロック版のデュアルコアの価格を引き下げる。その結果、メインストリームのデュアルコアCPUの周波数は、同じ価格帯で比較すると2007年を通じて上がり続ける。

 もちろん、再び、周波数がプロセス世代毎に倍々になる時代に戻るとは思えない。しかし、45nmも見据えると、周波数の停滞/低下が止まり、周波数の上昇へと転じ始める可能性がある。

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(2007年2月2日)

[Reported by 後藤 弘茂(Hiroshige Goto)]


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