三浦優子のIT業界通信

BCN AWARDに見るPCパーツの復調ぶり




田中繁廣取締役

 1月18日に株式会社BCNが発表した2006年のPC販売動向は、PC本体が2月から11カ月連続で金額、台数共に前年割れという厳しい結果となった。

 BCN 田中繁廣取締役によれば、「1月30日にWindows Vistaが発売される影響による買い控え傾向が出た。Vista発売後も、若干回復はするだろうが、2月実績で前年並みに戻るのは難しいと予想している」と当分は厳しい状況が続くとしている。

 だが、マザーボードや電源、PCケースといったPCパーツの販売は、「金額、台数ともに好調に推移している。HDD、メモリなどの製品の売れ行きが復調している要因としても、PCパーツが販売好調であることに影響されていると見て間違いない」(田中取締役)との見方を示している。

 BCN AWARD 2007のデータから、2006年のPCパーツ販売の動向を追った。

●新しいテクノロジー登場が落ち込んだ需要を喚起

 BCNが発表するランキングデータは、全国22社2,300店舗の量販店、PC専門店のPOSデータを集計している。PC本体や薄型大画面TVなど、デジタル家電製品が取り上げられることが多いが、データ取得販売店の中には、アロシステム、サクセス、九十九電機など、PCパーツ販売に強いところも含まれている。

 PCパーツはPC販売が不調な時期においても、比較的堅調な商材とされてきた。が、2005年後半あたりから専門店においても、「売れ行きが芳しくない」との声が挙がっていた。

 しかし、2006年には大きく状況が好転したことがランキングデータから明らかになった。

 「マザーボード」、「PCケース」、「PC電源」という3分野について、2006年6月から12月までの半年間の販売数量実績、販売金額実績の対前年同期比をまとめた。

 その結果、「PC電源」については、数量、金額ともに6カ月間連続で前年を上回る結果となった。販売数においては、6カ月間、前年比2桁増となる絶好調ぶり。金額においても、8月から12月の間は前年比2桁増となっている。

 これはビデオカードなどに直接給電する機能を搭載した製品が相次いで登場。ビデオカードの2枚刺しなどもあって、自作PCに大容量電源を搭載する必要が出たことが要因となっている。

 2005年時点で、パーツ販売が不調だった要因について専門店では、「店舗への来店頻度が高く、購買回数も多い自作ユーザーだが、『欲しいものはすでに揃っている』という人が増えている」と説明していた。2006年になって新しい機能仕様が登場したことで、自作ユーザーにとっても「欲しい製品」がついに登場したのだろう。

 これは「マザーボード」、「PCケース」についても同様。この2つのジャンルについては、8月以降、前年を超える販売となっているため、8月に発売されたCore 2 Duoの影響が大きかったと考えられる。

 「マザーボード」については、数量よりも、金額の伸びが高いことから、値崩れ前の発売直後に製品を購入するユーザーが多かったことを示している。

 いよいよ1月30日には、Windows Vistaが発売になる。九十九電機によれば、「DSP版の予約状況は、Windows XPを大きく上回る好調な状況が続いている」という。こうした傾向から考えると、Windows Vistaの発売もPCパーツ販売にはプラス影響を与えることが考えられる。

 2007年に入ってもPC本体はVista発売後も需要がどれだけ回復するのか楽観できないとされている。それに対し、2007年のPCパーツは明るい見通しとなるのではないだろうか。

PCパーツ 販売数量推移 対前年比(BCNランキング調べ)

PCパーツ 販売金額推移 対前年比(BCNランキング調べ)

●ベンダー別シェアはASUSTeKがマザボ部門トップ、電源とケースはサイズの2冠

 BCNでは、BCNランキングのデータを年間で集計し、分野別に販売数量が最も多かった企業を表彰する「BCN AWARD」を毎年開催している。AWARDを受賞したベンダーは、年間、最多数の販売実績を作ったことになる。

 8回目となるBCN AWARD 2007では、「マザーボード部門」で、AUSUTeK Computer Inc.(ASUS)が2年連続、4回目の受賞。「PCケース部門」と「PC電源部門」は、株式会社サイズが両部門とも初めて受賞した。

 「マザーボード部門」でトップとなったAUSUTeK Computer Inc.は、「ASUS」ブランドでお馴染み。マザーボード部門でのトップシェアは、2年連続となる。獲得したシェアも43.2%と、前回の31.3%を大きく上回った。

 「PC電源部門」と「PCケース部門」の2つの部門で、株式会社サイズが初めてのナンバー1の座を獲得した。サイズは、静音タイプのPC電源「鎌力」などを販売しており、こうした製品の人気があがったことでナンバー1の座を獲得した。

BCN AWARD 2007 PCパーツベンダー別シェア

●ベアボーンは金額、台数共に不調続く

 復調したPCパーツの中で、唯一、金額、台数共に前年割れのまま推移しているのがPCベアボーン製品だ。2006年6月から12月までのBCNランキングのデータを見ると、金額、数量共に大きく前年割れした状況が続いている。

 この要因については、価格を重視してPCベアボーンキットを購入していた顧客層が、ベアボーンキットではなく、PC専門店が提供するショップブランドPCを選択したことが要因になっていると推測される。

 ショップブランドPCは、パーツ販売が不調だった2005年においても、「販売が好調」とする専門店が多かった。これは、かつてはPCベアボーンキットを購入していた顧客層が、ショップブランドPCに移行したことが要因の1つとなっているとみられる。

 かつては、自作派ユーザーだけをターゲットとしていたPC専門店にとって、「非自作派」の受け皿となっていたのがベアボーンキットだった。しかし、サポートの手間やOSのプリインストールの普及によって、専門店側もショップブランドPCに注力する傾向が強くなっている。こうした状況が、ベアボーンキットの販売に影響を与えたものと考えられる。

不振続くベアボーンキット

□BCNのホームページ
http://www.bcn.jp/
□BCN AWARD 2007発表のページ
http://bcnranking.jp/feature/04-00012111.html
□関連記事
【1月18日】年末のPC販売、Vista待ちで大幅前年割れ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0118/bcn.htm
【1月11日】BCN AWARD 2007発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0111/bcn.htm
【2006年12月20日】「PC市場の3割はナショナルブランド以外」、BCN調査
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/1220/bcn.htm

バックナンバー

(2007年1月30日)

[Reported by 三浦優子]


【PC Watchホームページ】


PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp ご質問に対して、個別にご回答はいたしません

Copyright (c) 2007 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.