●リビングにTVモニタが5台 「PLAYSTATION 3(PS3)」と「Wii」が導入されたことで、ようやくウチ(ゴトウ家)のリビングのAV機器配置が完成した。ほぼ予定通りとはいえ、できあがったのは、どうしようもないほど複雑なシステムだった。 複雑になっている最大の理由は、リビングキッチンエリアに、TVディスプレイが合計5台あること。リビングの正面に32型の液晶HDTV(720p)と26型の液晶HDTV(720p)がそれぞれ1台ずつ。リビングの壁際に古いCRT TVが1台、キッチンに7型の防水液晶TVが1台、リビングの続きの和室にも古いCRT TVが1台という配置だ。
TVが5台というと、たいていの人に「ほえええ……」と感心されてしまう。しかし、ウチの場合、これで釣り合いがとれている。家族が5人だからだ。5人が5並列で異なるコンテンツを楽しめるように考えたら、必然的にTVが5台になっただけの話。これをゴトウは「モニタレベル並列性(MLP:Monitor-Level Parallelism)」と呼んでいる。ちなみに、友人に“大画面マニア”がいるが、ウチの構成はその意味では“多画面マニア”だ。ただし、財政上の理由からコストをかけられないので、安物液晶TVと古CRT TVで構成している。 個人的には大画面より多画面の方が実際的だと考えている。デジタルホームのシナリオによくある、リビングに豪華な大画面TVが1台という構成は、ウチの場合、ありえない。夫婦2人といった静かな家庭でなら1画面で一緒に平和に観るというのもアリだとは思う。しかし、子供が3人もいて、家族それぞれの嗜好のシンクロ率がゼロ、というケースでは1画面はNGだ。例えば、長男がXbox 360でゲーム、次男がWiiでゲーム、長女が女の子向けアニメ、ゴトウがアニメ、ゴトウ(奥さん)がキッチンでニュースを観ているケースでは、最大5並列のMLP帯域が必要になる。1人につき1モニタのMLPというあたりは、1ソフトオブジェクトに対して1 CPUコアのTLP(Thread-Level Parallelism)のCellと考え方が似ている(笑)。 また、デジタルホームでは、各部屋でそれぞれコンテンツを楽しむというユーセージもたびたび出るが、これも実際の家庭を想定していないストーリーだと思う。親としては、できるだけ子供達は部屋に引きこもらせずに集めたい。最新ゲーム機とビデオマシンとTVモニタをリビングに集めれば、必然的に家族も集まるという構図になる。 5台のモニタでサウンドはどうしてるのかをよく聞かれるが、これも慣れの問題だ。もともと、Xbox 360の稼働音でさえ、それほど気にならないような騒音レベルのリビング。正面の2台以外のTVは、分散して配置されているので音はそれほど問題にならない。正面の2台についても、コンテンツがゲームの場合なら、たいていサブタイトルが出せるので、音声の聞き取りはクリティカルではない。 ●リビングにCPUコアが21個の時代 5台のTVに接続されているマシンはHDDレコーダが4台、PCが1台、ゲーム機が7台、そのほか、デジタルCATVのSTB(セットトップボックス)がある。このうち9台のマシンがLANにつながっており、HDDは11基、CPUコア数は20個以上、フル稼働時の消費電力はちょっと考えたくない(笑)。配線にいたっては、ケーブル地獄のありさまで、さすがに頭が痛くなる。それでも、「逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ」とチャートを書きながらようやく配線。しかし、配線変更をしやすいように前面にコードを配したために、見た目はかなりブサイクなものになってしまった。
ゲーム機は最新の3台を正面の2台の液晶TVに接続している。PS3はHDMIで32型液晶TVに、D端子で26型液晶TVに接続されている。Wiiは32型液晶TVだったのが今は26型の方に。理由は、32型の前にはコタツがあるから。Wiiをプレイする度にコタツをずらすのが面倒になり、試しに26型の方に接続している。交換で、Xbox 360は26型から32型に移した。このほか、旧世代のゲーム機、PS2、US版Xbox、GAMECUBE、Dreamcastは、全部サブTVに接続されている。ゲーム機の「特盛り」みたいな状態。 もっとも、実際には、現在はXbox 360は子供部屋の方に移っている。移した理由は、Wiiを買った翌週に、ゴトウ(奥)と長女が風邪で1週間も寝込んでしまったためだ。風邪の伝染を防ぐために、暫定的にXbox 360を長男と次男が使っている子供部屋(通称がオトコ部屋)に移した。オトコ部屋には、AV系の入力を持つ20型の16:9の液晶PCディスプレイをHDTV代わりに使っていて、今はXbox 360をVGAで接続している。あくまで暫定措置なのだが、3台の新世代ゲーム機が同時稼働するケースもしばしばあるので、この冬の間はこの態勢で、ゲームが落ち着いたらXbox 360をリビングに戻すつもりだ。オトコ部屋には、このほかにゲーム機として初代PS2、日本版Xbox、Dreamcastがある。
リビングのPCは、LAN上の各ビデオサーバー上にあるコンテンツの再生のほか、WebアクセスやSkype、iTunes、フォトビューア、そのほか諸々のPC上のユーティリティツールのために使っている。PC以外のクライアントも考えなかったわけではないが、結局、PCアプリと、PCの使い勝手が便利と判断した。もっとも、実行するタスクは、重くてもWMVのデコードまでなので、使い古しの非力マシンを転用。リビング用に静音キューブを組む計画だったのが、暇がなくてずるずるとそのままになっている。 ちなみに、ルーターとHubはリビングの真下、1階の仕事部屋にある。リビングの床にはぽっかりと直径5cmの“穴”が空いていて、仕事部屋まで通じている。これもまた、よく笑われる。家を建てる時に、LANケーブルを通すより、将来にわたってフレキシブルに使える穴を開けようと考えた結果だ。数10本までのケーブルが通る太さなので、LANや電話などのケーブル群は全てここを通している。9年前は、有線LANしか想定しなかったので、仕事部屋から家中の全ての部屋に、同様の穴が空けてある。
●広がるゲームに対する無関心 こうして概観すると、ハードウェア悪夢のような構成で、人からは「これが本当にリビングなの」と笑われる。だが、ディスプレイの競合を気にせずにゲームやビデオを楽しもうとしたらこうなる。もっとも、そこまでゲームに重点を置くのは、今時ではかなり珍しいとは思う。 このところ、新ゲーム機の購入記を立て続けに書いて、つくづく実感したのは、周囲がゲームをしなくなったこと。友人の編集者D氏からは「PS3をゲーム機として見ているライターなんてゴトウさんくらい。ほかの人は、メディアプレーヤーとしか見ていない」と言われた。PS3のアタッチ率(ゲーム機1台に対するゲーム販売本数)が伸びないわけだと思う。 ゲーム関係の友だちや、中学生と小学生の息子たちと話している時は、あまり感じないが、世間的にはゲームに熱中している方が異例。回りのPC屋を見回しても、新世代マシンが出て、熱狂している雰囲気がない。これは中学生の長男の回りも同じで、学校でもPS3の話題なんて出てこなくて、Wiiがちょっと話題になる程度という。 任天堂の岩田聡氏(代表取締役社長)の指摘する「ゲームに対する無関心」に、周囲を包囲されている雰囲気だ。だから、Wiiは、ゲームに対する関心を喚起し、新たなゲームユーザーを掘り起こす、あるいは去ってしまったゲーマーを呼び戻すことにフォーカスした。では、その狙いに対してWiiはどうだったかというと、ゴトウ家という狭いサンプルを見ると、まだ回答は出せていない。 より一般的に見ても、今のWiiは、まだ、プロセッサ性能の違いが、ゲーム機の決定的差でないことを、見せつけるところには行っていないと思う。ただ、家庭内の“敵”に警戒心を抱かせずに入るという、Wiiの最初の目的は達しつつあるように見える。ゲームコンソールの場合、これが実は最大の難関なので、Wiiはそれなりにうまい滑り出しをしたと思う。 ●非ゲーマーに親しみやすいWiiのマジック 昔、あるゲーム業界人から「1+1=0または1」の法則というのを聞いたことがある。独身のゲーマーが結婚すると……、(1)結婚相手がゲーム好きでない場合、ゲームコンソールの数は0台になる。(2)結婚相手がゲーム好きだった場合でも、ゲームコンソールは2台が1台になり、ソフトウェアも2本が1本になる。(3)どちらにせよ、子供ができると、(しばらくは)0台になる。 TVに接続するゲームコンソールには、明確な敵がいる。これが携帯ゲーム機との最大の違いで、家庭内の非ゲーマーがゲームの前に立ちふさがる。非ゲーマーから見ると、ゲームに熱中しているゲーマーたちなんて「バカばっか」に見えるようで、家庭内対立がかなり深刻な家は多いと思う。ゲーマーが言葉巧みに非ゲーマーを説き伏せないと、なかなかゲーム環境を維持することが難しい。ある友人ゲーマーは、「ゲームをやってるアナタを見て殺意を覚えたワ」と包丁を持って料理している奥さんに言われたそうだ(笑)。
だから、Wiiの徹底した“非ゲーマーに受け入れられる”作戦は、いちゲーマーとしてはかなり納得できる。結局のところ、ハイテク技術なんて、大人の男のオモチャで、家族がこぞってそれに同調してくれるとは限らない。「小さい」「うるさくない」「“うさん臭い”ゲームコントローラがない」の3大要素はかなり重要だ。ウチでも、Wiiリモコンはリモコン入れに片付けられていて、ゲームコントローラとは別格の扱い(笑)。毎日、Wiiでどんなソフトをどれだけの時間使ったかがレポートされるところも、母親向けサービスだと思う。子供が何時間ゲームをプレイしたかを、母親が監視できる。 とはいえ、家庭に受け入れられたとしても、非ゲーマーが触ってくれなくては次のステップには進まない。Wiiにとって最大のチャレンジはここで、未だにうまく行くのかどうか見えていない。そもそも、非ゲーマーがゲームのような娯楽を求めているのかどうか、という点から疑問がある。ゴトウ(奥)はWiiを前に「仕事と家事を抱えてる主婦は、『ゲームに時間を取られるなんて』と感じてしまう」と言っていたが、これは、かなり一般的な感覚だと思う。 ニンテンドーDSでは「ゲームに時間を使うのはどうも」という層に、知的遊びの「シリアスゲーム」を与えることで成功を収めた。脳トレに代表される知的遊びでは、時間を無駄にしているという罪悪感なく、遊ぶことができる。もし、同じ方法でWiiが道を切り開くとするなら、同様の工夫が必要になる。内心は、ゴトウ家では、“体重計に乗ることがゲームになる”と言われる『Wiiヘルスパック』がヒットするのではと思っているが、それを言うと怒られそうなので、黙っている。 もちろん、この場合の“遊び”は、ゲームパッケージの形を取っている必要もない。そうした展開も見据えた仕掛けが、本体内蔵とダウンロード供給の非ゲーム系コンテンツである「Wiiチャンネル」なのだが、これがまだ今のところかなり微妙だ。 ●Wiiチャンネルがどれだけ魅力か Wiiチャンネルは、Wiiのランチャー型インターフェイスからチャンネルとして選択できるアプリまたはサービス。ディスクコンテンツのほかに、内蔵の非ゲームアプリや、ネットワーク配信型サービス、Webブラウザによるインターネットアクセスなどを含む。Wiiローンチ時点で使えたのは内蔵アプリの『似顔絵チャンネル』と『写真チャンネル』のみ。 このうち、Wii内で使うキャラクタ「Mii」を作る似顔絵チャンネルが、Wiiを稼働させて最初に盛り上がった。次男が「『どうぶつの森』のネコみたい(あやしいネコの顔をデザインできる)」とおおはしゃぎで、次々に顔をデザイン。次男と長女が、あっと言う間に変な顔で似顔絵チャンネルのコーナーを埋め尽くしてしまった。子供がいる家はどこでも同じらしい。 Wiiでは、似顔絵チャンネルで作った自分のキャラを、ゲーム中で自分のアバター(分身)として使う。このあたりは、よく考えられていて、しかも、Wiiリモコンにもアバターデータをロードしてリモコンと一緒に持ち歩きできる。やってることは、そんなに複雑ではないが、テクノロジのうまい使い方だ。 微妙だったのは、もう1つの本体内蔵アプリ『写真チャンネル』。これは、フォトビューア&スライドショウ&簡易レタッチで、ゲーム友だちの中には絶賛している人もいた。しかし、PCでこの手の子供向けフォトレタッチに触った経験があるかどうかで、かなり評価が変わると思う。 実際、同じフォトビューアでも、PS3と比べるとWiiの写真チャンネルは素人っぽさが目立つ。例えばPS3のフォトビューアだと、写真のExifを読んでくれるので撮影日時で整理できる。ところが、Wiiの場合はファイルのタイムスタンプの日時しか読まない。スライドショウで日時が表示されるのだが、それは撮影日時でなくてタイムスタンプの日時。サムネイル生成も、毎回SDカードから読んでいるので、時間がかかる。そもそも写真には、Wiiの解像度は厳しい。 ただし、PS3のスタイリッシュさより、Wiiのわかりやすさの方が子供ウケするのも確かだ。例えば、PS3のスライドショウには、3Dグラフィックス機能を使ったエフェクトのモードがあり、プログラマが鬼のように凝りまくった雰囲気で凄くデキがいい。ところが、子供たちにはこれが全然受けなくて、Wiiのお遊びレタッチなんかの方が受けたりする。こういうのは、開発した人が聞くと、ガクっとなりそうだが、●PS3とWiiのWebブラウザ WiiチャンネルでWiiに触ってもらうチャンスを増やす、これ自体はいいアイデアと思う。しかし、Wiiローンチ時点では、ネットワーク系のチャンネルサービスである『お天気チャンネル』『ニュースチャンネル』『インターネットチャンネル』ともに間に合っていなかった。最初に買うのはゲーマーだと想定しているとしても、これはちょっとイメージが悪い。 19日から始まったお天気チャンネルは、想定内の内容のサービスで、可もなく不可もなく。ただし、地球儀(世界各都市の天気)の使い勝手はかなり疑問。 Operaブラウザのβサービスが始まったインターネットチャンネルは、もっと微妙で、個人的には、SD解像度で文字が極めて見にくいレンダリングである点と、現状でUSBキーボードのドライバがない点が大きなマイナスだ。ただし、キーボードの問題は、Wiiではキーボード文化からも離れるという意図の現れでもあり、キーボードに固執する方がアナクロかもしれない。文字も簡単にズームできるので、たいした問題ではないと言う友人もいる。このあたりは、個人差がかなりあるはと思う。 面白いのは、SCE自社製のPS3ブラウザと、Operaを移植したWiiブラウザを比べた場合。非ゲーマーのゴトウ(奥)に試させると、2ブラウザのAJAX対応や安定性での差異よりも、コントローラかリモコンかの操作体系の違いの方が大きいという。PS3ブラウザはコントローラをうまく使っていてゴトウには快適なのだが、それがゴトウ(奥)になると慣れなくて使いにくいそうだ。Wiiリモコンでポイントする、直感的な操作の方が、より使いやすいという。つまり、非ゲームアプリでも、ソフト自体の問題ではなく、ゲームコントローラの是非という、マンマシンインターフェイスの問題に戻ってくるわけだ。 もっとも、ウチの場合はゴトウ(奥)もPCのヘビーユーザーなので、結局のところ一番使い勝手がいいのはPCという話になる。ウチのリビングのように、常に稼働しているPCがTVに接続されていると、WebブラウジングはPS3でもWiiでもなく、PCに戻ってしまう。PS3もWiiも、Webブラウジングでは、現状ではそれぞれ弱点があり、PCの快適さにかなわないからだ。もっとも、PS3ブラウザは、ローンチ直後と比べると、格段に安定して来ており、パフォーマンスも上がってきている。このあたりは、開発期間と労力だろう。 ただし、PCでのWebブラウジングの快適さは、結局、世の中のWebページがPCに最適化されていることにも起因している。そのため、PS3やWiiのブラウザが、PCと同程度の快適さを得るには、デファクトスタンダードになり、Webページ側が対応することも重要となる。もっとも、汎用的なWebブラウジングが、Wiiのカギになるとは、任天堂も考えていないだろう。 Wiiチャンネルを触った印象では、ネットワーク配信型のWiiチャンネルは、明らかに、今見えているものとは別な、より付加価値の高いものが必要だ。遊びとゲームの中間にあって、非ゲーマーがつい触ってみたくなるシカケが。任天堂は、それを提供しないと、Wiiチャンネルを活かすことができない。問題はそのスピードで、うまく間に合うように矢継ぎ早に用意できないと、いい初速でスタートしたWiiが、結局、埋もれてしまう可能性もある。今回、任天堂は、ネットワーク系チャンネルの提供にタイムラグがあったりと、この部分ではドタバタしている雰囲気がある。 ●3ゲーム機でかなり異なるOSの感触 もっとも、任天堂にしてみると、よりリッチなOSやその上の非ゲームアプリ、ネットワークといった要素は、ほとんどが初のチャレンジ。荷が重いのは確かだ。SCEも含めてだが、こうしたソフトウェア開発力では、ソフトウェア屋であるMicrosoftとの差が大きい。また、ソフトウェア層の作り方自体が、Microsoftと他の2社では、設計思想的に、かなりの違いがある。 例えば、Wiiを稼働し始めて気づくのは、ソフトの切り替え時に、一呼吸のレイテンシがあること。また、アプリやゲームを立ち上げると、Wiiリモコンのリンクが一回切れて、再リンクする。立ち上げと同時にWii側のソフトウェアスタックが、デバイスドライバも含めてフラッシュされるようで、WiiリモコンはWii本体からコールしてウエイクアップしているようだ。 ちなみに、PS3も、PS2ゲームに切り替える時は、I/O回りがフラッシュされる。そのために、PS3とPS2の切り替え時には、ユーザーがコントローラの「PSボタン」を押して再リンクしなければならない。これがかなり興ざめなのだが、Wiiではリモコンのリンクが切れても自動的に再リンクされる。ただ、Wiiの場合は、前世代のニンテンドーゲームキューブ(GC)タイトルをプレイする場合には、システムを完全にGCモードでブートアップし直している。GCモード時には、I/O回りも仮想化されないため、GCコントローラとGCメモリカードしか使えない。また、GCモードから戻る場合には再起動となる。WiiハードまるごとGCに化けてしまうイメージだ。これは、WiiにGCのポートがついているのを見たときから想定範囲だったのだが、この手堅さは、任天堂らしい。 この方法なら、PS3と違って前世代機のタイトルとの後方互換性を上げやすい。しかし、Wiiの利点がGCタイトルで活かせないトレードオフがある。例えば、PS3ではPS2メモリカードがHDD上で仮想化され、また、PS2ゲームでも無線コントローラが使える。それに対して、Wiiではそうした利点がなく、GCゲームをWiiでプレイする利点が薄い。 デバイス仮想化の違いを含めて、今世代機は、OSを触った感触が、かなり各マシンで違う。Xbox 360はバックグラウンドタスクが円滑に動くのに、PS3では現状はまだシングルタスクに占有される、Wiiではアプリの切り替え時にI/Oからフラッシュされる。 ものすごく乱暴に例えれば、Wiiが“DOS+ランチャー”、PS3が“Windows 3.x”、Xbox 360が“Windows 2000”みたいなイメージだ。こう書くと、Xbox 360がいちばんいいように見えるが、汎用マシンではないので、そうした基準では考えることができない。ソフトウェア層が厚ければ厚いほど、ゲームからハードへのアクセスがインダクレクトになり、原理的にはパフォーマンスが削がれる。さらに重要なのは、OSがスケジュールをハンドルすると、ゲーム系プログラムのデバッグや検証がやっかいになる。このあたりも考えると、優劣というより、各マシンの設計思想の問題だと言えそうだ。 ●相変わらずXbox 360がフル稼働状態 3台の新世代ゲーム機が揃ったゴトウ家で、現在の稼働状況はというと、相変わらずXbox 360が稼働している。Xbox 360は、コントローラのリチャージャブルバッテリが果ててしまったほど酷使されている。次男のRPG『ブルードラゴン』が終わらないので、ゴトウ担当の『ロストプラネット』が、まだフル稼働できない状況にある。ロストプラネットはウズウズ状態だが、パイプラインが完全に詰まってしまっている。 Wiiは『Elebits』がゴトウと次男にヒットして、クリア。次に『SDガンダム スカッドハンマーズ』の波が来始めている。今回は、ヒットが任天堂タイトルでないところがミソで、Wiiではサードパーティがアイデア勝負で力を入れ始めたことが反映されている。 そもそも、ゴトウは、任天堂タイトルでも、メインストリームのマリオ&ゼルダから外れたタイトルにハマる傾向がある。GC世代で最大のヒットは『ピクミン』シリーズと『どうぶつの森』シリーズ。ちなみに、ピクミン2では、チャレンジモードで苦戦していたら、「へへ、ついにやりましたよ」と友人のライターN川氏に先を越されてがっくりした経験がある。そのショックで挫折したおかげで、ルーイの秘密(真のエンディング)は、未だに見れていない。 PS3もタイトルが続いているので、それなりに稼働している。PS3では、レースゲーム『モーターストーム』が当たった。ゴトウはゲームライターでも開発者でもないので、ここで書いているゲームの話は、技術とかゲーム自体の善し悪しではなく、単純にゴトウとその家族が好きかキライかのみ。Xbox 360のシューティングゲーム『Gears of War』も、技術がというより、まずテイストが好きというのが強い。例え、ゲームとして成り立ってなくても、絵がしょぼくても、バグだらけでも、クソゲーと言われていても、好きなものは好き。難点は、脳内補完でなんとかしてしまう。 でも、モーターストームは友人宅でやって、ゲームの技術で感心して買ってしまったという珍しい例。絵のクオリティに見合う挙動の自然さ、という話を、前に久夛良木健氏(SCEI グループCEO兼代表取締役会長)が語っていたが、モーターストームを見ると納得する。ただし、PS3でゲームとして凄いタイトルは、モーターストームにしろ『RESISTANCE(レジスタンス) ~人類没落の日~』にしろ、国外開発のものばかりなのが寂しい。 一方、Wiiの場合、明らかに弱点はこうした、リアル系ゲームにある。Wiiは家庭に受け入れられやすくするために、HD解像度やマルチコアCPU、今時グラフィックスといった、ほかの2ゲーム機の特徴は全て切り捨てている。そのため、この手のゲームになると、PS3/Xbox 360に比べるとギャップがあり過ぎる。ゲームはプロセッシングパフォーマンスでは決まらないが、パフォーマンスが重要要素のゲームカテゴリも多いのは確か。Elebitsのように“絵が可愛くてゲーム性で勝負”系のタイトルはWiiで違和感がないが、GCの『バイオハザード1/0/4』のような驚きはWiiには期待できない。このあたりの割り切りが、ゲーム機としては大きな賭だと、つくづく感じる。 ●ゲームの前に立ちふさがるビデオ 全体で言うと、ゴトウ家はゲーム全盛で、2006年前半までのゲーム不振がウソのように盛り上がっている。週替わりで新しいゲームをやっている状況で、「ゲーム天国だねえ」と次男が言う。全部やっていたら、過労、睡眠不足、栄養不良、自律神経も失調、心身ともにボロボロという状態になってしまいかねない。だから、ゴトウ長男次男の3人が、それぞれ1人1本ずつゲームを分担してプレイしている状態だ。 しかし、前半で書いたように、こんなにゲームに入れ込む家は、かなり例外的だと思う。それに、ゴトウ家でも、このゲーム優勢が継続して続くかどうかは、まだわからない。というのは、今では、ゲーム機の最大の敵として、ビデオが成長しているからだ。 ゴトウ個人について言えば、ビデオとゲームは、完全に排他的で両立できない。例えば、ゲームに集中しているこの1カ月半は、1分もビデオを観ていない。ビデオは消費しないまま、全て録り貯めになっていて、充填率120%に達してしまっている。ゲームの波が収まったら解消しようモードだ。今のところ、ゲームに終わりが見えないから、しばらくはビデオは低調のままだろう。 しかし、しばらくすれば、またビデオとゲームが競合し始めるのは目に見えている。PS2の時と、最も違うのはこの点だ。PS2が家庭に入ってきた頃は、TVに接続されているのはVHSビデオデッキとDVDプレーヤーだけだった。ビデオは、今のようなHDD録画の利便性を持たず、ビデオ消費時間ははるかに少なかった。 ところが、今はどの家でもTVにHDDレコーダなどビデオデバイスが接続されている。タイムシフトできる番組数は膨大にふくらみ、それがリモコン1つで簡単に再生できる環境となっている。ビデオ消費が激増したため、限られた時間を、ビデオに使うかゲームに使うかが、厳しいせめぎ合いとなっている。 ●HDDレコーダのおかげでリッチになったビデオ環境 ゴトウ家のリビングを例に取ると、HDDレコーダが4台、TVに接続されている。NECの「AX300」が2台に、東芝の「RD-H1」が1台、ソニーの「Xビデオステーション」が1台の構成だ。HDDレコーダが4台というのが、また極端に見えるかも知れないが、これもユーザー数が多いからだ。HDDレコーダとPCを合わせて、最大5並列のビデオ再生が可能で、5モニタとぴったり釣り合っている。ゴトウ家の場合、家族5人のそれぞれの観るコンテンツが、オーバーラップはあるもののかなりずれている。そうなると、最大で5並列のビデオが必要になる。 というわけで、ビデオを手軽に並列に観るために、ウチのリビングのシステムは組まれている。以前はビデオ録画にPCを使っていたが、ここ数年はLAN対応のHDDレコーダに集約している。長期的に残したいビデオは、HDDレコーダからLAN経由でエンコードPCに吸い出して、トランスコードしてPCのビデオサーバーに貯め込む方式だ。全てアナログソースなのは、画質よりコンテンツの自由度の方を重視しているからだ。 HDDレコーダをフロントにした最大の理由は利便性で、子供が扱えるインターフェイス、実用的な早聞き機能、こうした要素が重要だったため。PCベースのメディアサーバークライアントシステム「DiXiM」も導入しているが、やはり小学校低学年が自由に使うレベルに行かない。HDDレコーダも大半はインターフェイスが悪いが、AXシリーズは使いやすい。そこで、子供でも扱えるAX300を長女と次男が1台ずつ、早聞き機能があるRD-H1は奥さん、4チャンネルのXビデオステーションをゴトウが占有している。 ビデオヲタクの空想具現化のようだが、じつはそんなにコストをかけているわけではなく、ケチれるだけケチっている。Xビデオステーションも最小構成(4チャンネル)の廉価版。AXシリーズは、自己責任によるHDDの載せ替えを重ねて延命している。 HDDレコーダはアナログスイッチで5つのTVモニタ間でスイッチできるようにしてある。原始的だが、これが最も低コストだ。構成でわかる通り、ビデオについては画質は二の次、ボタン1つでどのモニタでもビデオを観られる利便性に集中した、大家庭向け多モニタ小画面システムだ。 ビデオも、ここまで便利になると、消費量が激増する。しかし、人間がエンターテイメントに割ける時間は増えない。ビデオとゲームが食い合いになるわけだ。ゲーム機側で、この問題を解決する手段は1つしかない。それは、ゲーム機がビデオをエンターテイメントコンテンツの1つとして、もっと密接に取り込むことだ。 というと、PS3ならBD再生、Xbox 360ならHD DVDプレーヤーがあると指摘されるかも知れない。また、エンコードしたビデオをメディアから再生したり、Xbox 360のようにPC上のビデオファイルのプレイもできると言われるだろう。しかし、問題はゲーム機の場合は、メディアプレーヤーとしてだけで使われては、ビジネスモデルが成り立たないことにある。 ゲーム機は、依然として通常の家電とは違うビジネスモデルを取っている。そのため、コンテンツでプラットフォームベンダーが儲けられないと、モデルが崩れてしまう。だから、ビデオにしても、ディスクコンテンツの再生やタイムシフティングだけに使われるのはまずいはずだ。 PS2の場合は、DVDを動機にしてマシンを入れさせて、ゲームへと誘ったわけだが、それはあくまでも副次効果狙い。ダイレクトにゲーム機のモデルに結びつけようとしたら、必然的に導き出されるのは、ビデオコンテンツの有料配信サービスだ。ネット帯域とストレージ容量さえなんとかなれば、ビデオも本格的にコンテンツに組み込める。もちろん、こんなことはSCEやMicrosoftは当然気がついているはずで、きっと何らかの手は打ってくると思う。 今世代ゲーム機のゴトウ家への導入は、これで一段落。あとは、Xbox 360で潜在的な高グラフィックスパフォーマンスを、PS3で使い切れていないコンピューティングパフォーマンスを、Wiiで可能性の広がった新マンマシンインターフェイスを、どうやって開花させて行くのかをウォッチすることになる。個人的には、ゲーム機は多様性が広がったおかげで、前世代より格段に面白くなった印象だ。
□関連記事 (2006年12月26日) [Reported by 後藤弘茂]
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