●薄く軽くなっただけではない ソニーの携帯ゲーム機「PlayStation Portable(PSP)」のリファインバージョンが「PSP-2000」だ。 PSPは、UMDで提供されるゲームをプレイ可能な、4.3型液晶を搭載した小型のゲーム機。音楽と動画の再生や、静止画の表示が可能なほか、無線LANによるネットワーク機能も備える。旧型PSPからの変更点として、まず薄型化と軽量化のほか、カラーバリエーションの追加や、「UMDキャッシュ」機能による2回目以降の読み込みの高速化がある。また、オプションでワンセグ視聴機能と、TVへの出力機能を提供する。
旧型の重量は280gで新型は189gと、だいたい3割ほど軽くなっている。CMでは、女子高生が「かーるっ!」などと微妙なリアクションをしているが、実際持ってみると本当に軽くなっていて驚いた。重量を量ってみたら、「ニンテンドーDS Lite」は218g(ソフト込み)で、新型PSPにUMDやメモリースティックを搭載した場合には201gと、わずかに下回った。 筐体の厚さは23mmから18.6mmになっているが、取り回しやホールド感などはあまり変わらず、さほどインパクトは感じなかった。しかし、薄くなりながらも、ボタンのクリック感は向上しており、ゲームプレイ時の操作感が良くなっている。そのほか、ハードウェア面での変更点については分解レビューなどが既に掲載されているので、そちらを参照して欲しい。(関連記事1、関連記事2) 以降で、順番に新型PSPと追加された各機能を見て行く。動画や音楽再生、インターネットなどの機能については、旧型PSPとほぼ変わらないようなので省略する。
●新型PSPは必要最小限のパッケージ
実際にパッケージを見てみよう。現在、旧型PSPのようにオプションをバンドルしたボーナスパックのたぐいは発売されていない。そのため、パッケージは非選択的に通常のものとなる。中身はPSP本体とACアダプタ、バッテリ、取り扱い説明書などの4点で19,800円だ。 というわけで、実際にモバイルなデバイスとして運用するには、データ保存用のメモリースティック デュオや、いくつかのアイテムを追加購入する必要があるだろう。個人的に液晶を保護するフィルムは必須に近く、筐体を保護するケースなども必要だろう。今回は純正のアクセサリをパッケージにした「Play! Game Pack」を購入した。価格は3,300円。 Play! Game Packの内容物は、ソフト素材のポーチと、ストラップ、筐体を拭くクロス、メモリースティック デュオ 32MBだ。これを選択した理由は、かさばらないソフトケースとストラップが欲しかったからだ。不慮の事故による落下で、液晶が死亡するのはやはり避けたい。このほか、液晶フィルム(280円)を購入したが、2GBのメモリースティックPRO デュオは手持ちのものを流用した。 というわけで、オプションを追加した場合の金額は、本体(19,800円)+Play! Game Pack(3,300円)+液晶フィルム(280円)で合計23,380円。サードパーティーのケースは1,000~2,000円程度だが、100円ショップなどで探せば、より安価に構成することもできるだろう。これに、ゲームソフト1本(4,500円程度)を追加すると、3万円程度になる。実際の運用を考えてオプションを追加してすると結構な金額になる。
●アスペクト比は維持できるが、大きな額縁が表示されるTV出力 新型PSPの目玉機能の1つである、TVへの出力を見てみよう。旧型のPSPでは、改造やサードパーティによるデバイスでTV出力が可能だった。新型ではPSP本体が出力機能を搭載し、ケーブルを接続するだけでTVへの出力が可能になった。 公式のアクセサリとして、AV出力、Sビデオ、D端子、コンポーネントの4種類が用意されている。ゲームの出力にはプログレッシブ対応のTVが必要なため、D端子とコンポーネントのみ対応する。AV出力とSビデオのケーブルは、PSPのUIや動画、インターネットなどの表示のみ可能なため、注意が必要だ。
テストにはアイ・オー・データ機器の「LCD-MF241X」を利用した。D端子で接続すると、起動したあとのインターフェイス画面はD1入力として、ゲーム画面はD2入力として認識された。PSPの液晶は480×272ドットだが、TV出力の最大解像度は720×480ドット(UMDビデオ/インターフェイス画面など)に対応する。しかし、ゲームの解像度はPSPの液晶に合わせた480×272ドットなため、TVに出力すると、実際の画像の周りに額縁が表示される。 今回利用した液晶にはドットバイドット(DbD)や各種ズーム機能などが搭載されており、それらも試してみたがフル画面の表示は出来なかった。アスペクト比については、16:9での表示が可能だった。 個人的な感触や液晶の性能の問題になるが、外部ディスプレイに接続してゲームをプレイすると若干の遅延を感じた。拡大やフィルターによるものと思われるが定かではない。シビアなアクションゲームやパズルゲームなどを遊ぶ場合には注意したい。なお、ケーブル長は2.5m。TVの端子の位置によっては、TVが近すぎるなどの問題があるかもしれない。
●録画機能の無いワンセグ
ワンセグモジュールは、PSPの上に取り付けるタイプなため、若干かさばる。普通のケースには受信機を付けたまま入らないため、相応のケースを使わなければ取り外しの手間が発生するだろう。アンテナは伸縮するタイプで、電車内で伸ばすのはためらわれる長さだ。 当初は、データ放送に対応していなかったが9月のアップデートにより対応。視聴機能は充実しているが、録画はできない。表示はソースままの解像度と全画面のスケールアップに対応している。 操作体系は、三角ボタンからのメニュー表示など他のモード同様となっており、初めてでも問題なく操作可能になっている。レスポンスや画質、受信感度については特別な問題などはなく良好だった。
●PCからゲームの購入に対応
9月のアップデートにより、Playstation.com内の「PLAYSTATION Store」にてPCでダウンロードコンテンツを購入し、PSPへ転送可能になったので、ついでに紹介する。これまではコンテンツの購入にはPS3が必要だったが、その条件が緩和された。 PLAYSTATION Storeでは、PSPで動作するPS1のゲームが購入可能なほか、追加データやゲームのプロモーション動画、体験版などを無料でダウンロードできる。ゲームは「BIO HAZARD DIRECTOR'S CUT」や「俺の屍を越えてゆけ」、「XI[sai]」など、懐かしソフトがいずれも600円で販売されている。 手順はシンプルで、前もってアカウントを作成し、ファイルの転送を行なうソフトをインストールしておく。PSPをPCにUSBで接続し、ソフトを購入してファイルのダウンロードを開始すると、転送ソフトが立ち上がり自動的にファイルを転送する。なお、ダウンロードしたゲームはメモリースティックデュオに保存されるので、最低でも1GBのものが必要になるだろう。
●まとめ 以上見てきたように、新型PSPは機能強化や筐体の軽量/薄型化により、さらに魅力的デバイスになっている。しかし、いくつか残念な点もあるので、そのあたりに触れながらまとめたい。 よくある残念なパターンとして、電車で移動中にゲームをプレイし、電車を降りたところで音楽再生に切り替えるようなシーンを想定してみよう。
PSPはプレイ途中のゲームをスリープして音楽再生へとモードを切り替えることが出来ない。つまり、ゲームをセーブしてきちんと終了させなければ、音楽を再生できない。RPGならともかく、SLGでは、マップをクリアする必要があるため、ゲーム終了のタイミングを計る必要があるだろう。最近は、「Final Fantasy Tactics」をプレイしているが、ゲームと音楽再生の両立はかなり難しい。 加えて、ゲームと音楽ではゲームの方が音量が低いため、ゲームと音楽を切り替えるたびに音量を調節する必要がある。もちろん、エンコード時に音量を調整すれば不要だが、一手間かかるのが気になる。アクセサリとしてリモコン付きイヤフォンが販売されているので、これを利用するべきなのだろう。フォルダの移動をリモコンで行なうことはできないが、音量調節のために毎回PSPを取り出すのも手間だからだ。 といったように、ゲームや音楽再生など、個々の機能は必要十分なものを備えているが、モード間のスムーズな移行であるとか、トータルでの体験といったレベルでは、調整不足を感じた。 また、音楽再生については、PSPの電源を落とすとシャッフルやリピートなどのプレイモードがリセットされてしまうため、毎回設定する必要がある。しかも、PSPはフォルダ毎の再生が標準ではないので、これも同様だ。このあたりの作り込みはまだ甘い。 大ざっぱにまとめると、普通の4.3型液晶搭載のゲーム機にメディアプレーヤー機能を足したのがPSP。ついでにオプションでワンセグも見れる。トータルでのエクスペリエンスは今ひとつだが、いつも持ち歩いていたい製品いうのが個人的な結論だ。 □SCEIのホームページ (2007年10月9日) [Reported by matuyama@impress.co.jp]
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