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■元麻布春男の週刊PCホットライン■
バッファローの“3倍速い”「TeraStation PRO」製品版を試す
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●毎年新モデルが登場するTeraStation
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TS-HTGL/R5 |
2004年暮れに発売した初代TeraStation(HD-HTTGL/R5)は、10万円近い価格でありながら、1TBというストレージ容量、RAID 5の冗長性による安心感から、発売直後はなかなか買えないほどのヒット商品となった。それから2年、発売元のバッファローはほぼ1年ごとにモデルチェンジを行ない、今回三代目にあたるTeraStation PRO(TS-HTGL/R5シリーズ)をリリースした。
名称に「PRO」という文字が加えられたことでも明らかなように、新製品はビジネス向けを指向したもの。2005年リリースされた二代目のTeraStataionから、ビジネス向けでNTドメイン連携機能を持つ「TS-TGL/R5」シリーズと、コンシューマ向けにメディアサーバ機能やDLNAサーバ機能を持つ「HS-DTGL/R5」シリーズの2系統に分化したが、TeraStation PROは前者の系譜ということになる。機能的には、Active Directory連携機能や、RAID 5より冗長性の高いRAID 10のサポートが加わったことが特徴だ。
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【写真1】TeraStation PROの外観。ロゴ以外に特に変わったようには見えない |
【写真2、3】ドライブは専用金具でマウントされるため、交換は容易だが、ホットプラグをサポートしているわけではない |
ハードウェア面の変化は、外観だけではうかがいにくい。前面、ドライブベイのロゴが“TeraStaion PRO”に変わったこと以外、特に変化はないように見える。が、内部を見れば、フルモデルチェンジに相当することが分かる。写真5はTeraStation PRO(三代目)の内部だが、写真6に示した二代目と比べればマザーボードが大幅に小型化されているのは明らかだ。
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【写真4】TeraStation PROの背面。USBポートの並びが変わったこと以外、こちらも二代目と変わったことはない |
【写真5】カバーを開いたTeraStation PRO(三代目)。写真6と比べれば、マザーボードが大幅に小型化したことが分かる |
【写真6】カバーを開いたTeraStation(二代目)。三代目に比べるとマザーボード面積が広い |
もちろん変わったのは、マザーボードのサイズだけではない。写真7(三代目)と写真8(二代目)は、それぞれのマザーボードだが、二代目のマザーボードがPowerPCアーキテクチャのプロセッサ(Freescale MPC8241)を採用していたのに対し、三代目はARM系コアを用いたSOCチップ(Marvell Orion)ベースのアーキテクチャに変更されている。これに伴い、周辺チップも大きく変更されており、主要なチップの供給元の変遷を表1にまとめておいた。
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【写真7】Marvell製チップセットに変更された三代目のマザーボード |
【写真8】FreescaleのMPC8241をベースにした二代目のマザーボード |
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【写真9】ARM11コアを用いたMarvell Orionチップ。試作機にあったファン付ヒートシンクがなくなり、型番で確認することができた |
【写真10】NAS-TGLの文字が見えるLCDコントローラ |
【表1】主要チップのベンダ変遷
| 二代目 | 三代目(TeraStation Pro) |
CPU | Freescale MPC8241 (PowerPC) | Marvell Orion (ARM11) |
Gigabit Ethernet | RealTek | Marvell |
シリアルATA | Silicon Image | Marvell |
USB | NEC | NEC(パッケージ小型化) |
LCD Controller | NEC | カスタム? |
DRAM | Micron | Elpida |
Flash | ST | ST |
なお、2カ月ほど前に、本機の試作機をプレビューしたが、その時に用いた試作機に用いられていたマザーボードとの違いは、
1. Marvell Orionチップのファン付ヒートシンクがなくなり、ファンレスとなった
2. LCDコントローラがNEC製から、「NAS-TGL」の文字があるもの(文字列からいってカスタムチップと思われる)に変わった
の2点だ。ヒートシンクがなくなったことで、Orionベースであることが確認できた。
プロセッサのアーキテクチャが変わったということは、ソフトウェアも一新されたことを意味する。設定は基本的にWebベースで、それを助けるユーティリティが添付されるというスタイルはこれまで同様。設定項目等も従来と大きな違いはないが、初期化など重要な設定情報の変更を伴う操作の際に、ユーザーから確認番号の入力を求めるよう改められている(画面1)。
機能面では冒頭でも触れたように、Active Directry連携が加わり、サポートするRAIDモードの拡張により、RAID 10とRAID 0(ストライピング)が追加された。また、ついにUTF8対応が行なわれ、MacとWindowsで日本語フォルダを共有することが可能になっている。細かな点では、ジャンボフレームの設定も拡張された(画面2)。これらが主要な違いだ。
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【画面1】重要な変更を加える際は、4ケタの数字による確認が行なわれる |
【画面2】二代目(PowerPCベース)TeraStationではジャンボフレームの設定は無し(1,518bytes)、4,100bytes、7,418bytesの3通りだったが、三代目では無し(1,518bytes)、4,102bytes、7,422bytes、9,694bytesの3通りとなった |
●ベンチマーク結果
実際にTeraStation PROを使ってみたが、ビジネス向けとうたわれるだけあって、コンシューマ向けのTeraStationより若干動作音が気になる。これはファンの回転音より、HDDの動作音(シーク音など)で、静音性より冷却の向上による信頼性を重視した結果かもしれない。音がそのまま聞こえてくる印象だ。
性能だが、10月にテストした時と同じ、簡単なテストを実施した。どうもFDBenchのWriteテストと相性が悪いらしく、書き込み性能がパッとしない。が、この傾向は(もう少し穏やかであるとはいえ)同じMarvell Orionベースのアーキテクチャを採用したアイ・オー・データ機器の「HDL-GT1.0」にも見られた。ハードウェア、あるいはARM版Linuxの実装に、何か理由があるのかもしれない。
【表2】クライアントPCの構成
CPU | Core 2 Extreme X6800(2.93GHz) |
Motherboard | Intel D975XBX |
Memory | 2GB DDR2-800 |
HDD | HGST HDS722580VLSA80(80GB) |
USBポート | チップセット内蔵 |
シリアルATAポート | チップセット内蔵 |
Network | Intel PRO/1000 PL (Onboard) |
Frame Size | 9,014bytes |
OS | Windows XP SP2 |
【表3】ベンチマーク結果
メーカー名 | バッファロー | ロジテック (参考) | バッファロー (参考) | アイ・オー (参考) |
型番 | TS-H1.0TGL/R5(三代目) | TS-1.0TGL/R5(二代目) | LHD- LAN2000QG | HD- HT1.0TGL/R5 (初代) | HDL-GT1.0 |
プロセッサアーキテクチャ | ARM | PowerPC | PowerPC | PowerPC | ARM |
RAID構成 | RAID 5 | RAID 5 | RAID 5 | RAID 5 | RAID 5 |
ジャンボフレームの設定 | 無効 | 有効 | 有効 | 有効 | 無効 | 有効 | 有効 | 有効 | 有効 | 有効 |
フレームサイズ | 1,518bytes | 4,102bytes | 7,422bytes | 9,694bytes | 1,518bytes | 4,100bytes | 7,418bytes | 8,000bytes | 7,418bytes | 9,000bytes |
FDBench 1.01 (KB/sec) |
Read Write | 10254 | 12401 | 14350 | 13722 | 8944 | 13230 | 13847 | 11641 | 14739 | 11035 |
Read | 19976 | 24538 | 26961 | 25793 | 10534 | 12270 | 14992 | 21275 | 19501 | 17288 |
Write | 2215 | 2252 | 2100 | 2226 | 6971 | 13539 | 12458 | 9510 | 14275 | 4052 |
Random Read | 15564 | 19556 | 25006 | 23567 | 11598 | 15676 | 16381 | 7379 | 13265 | 19047 |
Random Write | 3261 | 3260 | 3333 | 3301 | 6673 | 11436 | 11557 | 8401 | 11915 | 3753 |
Copy | 1718 | 1711 | 1795 | 1817 | 5685 | 8985 | 9435 | 13580 | 10971 | 4943 |
2K | 24 | 23 | 24 | 24 | 319 | 326 | 325 | 498 | 577 | 174 |
32K | 377 | 372 | 351 | 368 | 3468 | 4160 | 4262 | 6496 | 6579 | 2240 |
256K | 3006 | 2882 | 2992 | 2941 | 8511 | 13598 | 14284 | 20702 | 16691 | 8140 |
Variable | 3465 | 3569 | 3813 | 3936 | 10444 | 17856 | 18869 | 26624 | 20038 | 9218 |
831MBのファイル(871,774,212bytes) |
NASへ 書き込み | 1分02秒 | 52秒 | 51秒 | 55秒 | 2分52秒 | 1分26秒 | 1分25秒 | 1分53秒 | 1分30秒 | 1分16秒 |
NASから 読み出し | 47秒 | 39秒 | 36秒 | 36秒 | 1分24秒 | 1分02秒 | 1分00秒 | 40秒 | 57秒 | 52秒 |
また、ジャンボフレームの設定は一定の効果があるものの、フレームサイズを変更した際の変化がMPC8241ベースの二代目に比べて少ないのも三代目の特徴だ。このことから考えて、プロセッサの処理能力そのものは、MPC8241より、Orionの方が上なのではないかと思われるのだが、基本ソフトウェアが異なるため断言はできない。
実際にネットワーク経由でファイルのコピーを行なってみると、FDBenchで見られたような書き込みの遅さはうかがえない。むしろ、このクラスのNASとしては、最も高速な部類に属する。今回、二代目TeraStationと同じ条件で比較することができたが、ジャンボフレームを無効にした状態では、バッファローが言う通り、ほぼ3倍の性能を持つことが確認できた(ファイルの書き込み速度)。読み出し速度も、二代目に対しほぼ2倍近い性能になっており、これはジャンボフレームを設定した場合も維持された。
シリーズ三代目となったTeraStation PROは、このクラスのNASとしては、一般的なファイルストレージとしての使い方をした場合、最も高速な製品の1つだと思われる。ホットスワップこそできないものの、ドライブの交換は容易だ。二代目と同じ筐体を採用したため、競合製品に対し、大型で設置面積を必要とする点が気にならなければ、企業の支社、支店、あるいはスモールビジネス向けのストレージとして、利用しやすい製品に違いない。
□バッファローのホームページ
http://buffalo.jp/
□製品情報
http://buffalo.jp/products/catalog/item/t/ts-htgl_r5/
□関連記事
【11月15日】バッファロー、転送速度を約3倍高速化した「TeraStation Pro」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/1115/buffalo2.htm
【10月30日】バッファローの“3倍速い”「TeraStation Pro」を試す
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/1030/hot454.htm
□バックナンバー
(2006年12月25日)
[Reported by 元麻布春男]
PC Watch編集部
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