第359回
Office Liveで始めてみよう。個人ベースのサーバー活用



 このところ2回、PLAYSTATION 3の取材記事を掲載させていただいた。PS3に関しては、あと数件、ゲーム機として以外の話題について取材をしているが、間に少しPCの話題を挟みたい。

βサービスを開始したOffice Live

 昨日(12月11日)、マイクロソフトは米国でβテストを開始していたOffice Liveの日本語版βサービスの開始をアナウンスした。

 Officeはここ数回のアップデートの中で、少しずつではあるが.NETの基本的なコンセプトであるネットワークサービスとソフトウェアを融合させたソリューションプラットフォームへと変化してきていた。共同作業用のポータル構築ツールを作って、クライアントであるOfficeアプリケーションと結合したり、Office文書の形式をOpened Document FormatとしてXMLをベースにオープンな仕様として公開したり、といったこともその一環と言える。

 しかし、それらの機能はマイクロソフトのサーバーに対して社内からアクセスしているユーザー以外には、あまり知られることも、使われることもない。マイクロソフトのサーバー群を導入していたとしても、Office Systemの機能を活用するようお膳立てを情報システム部側で行なわなければならない。そして以前から言われているように、Outlookの機能を活かすにはExchange Serverと組み合わせた環境の構築が不可欠だ。

 しかし、Office Liveを使えば小規模事業者やSOHO運営者はもちろん、個人ベースでもOfficeというアプリケーションのパフォーマンスを引き出すことができる。業務のために活用するばかりでなく、個人のサークル活動や友人同士のコミュニティ構築、あるいは独自ドメインでのWebサーバーと電子メールの運用など、その応用範囲は広い。

●独自ドメイン運用費を含め完全無料化

 Office Liveには完全無償のBasics、ビジネスユーザー向けのコラボレーション機能などを盛り込んだEssentials、グループウェア機能なども組み込まれたPremiumが用意されている。商用運用は2007年の第2四半期だが、EssentialsとPremiumの日本での価格は決まっていない。米国ではEssentialsが月額19ドル、Premiumは月額39ドルで、登録料やミニマムチャージはなく、月単位でサインナップと退会を行なえるシステムだ。ここでは無償版のBasicsを中心に話を進めよう。

 各サービスで利用可能な容量、機能などは、Office LiveのWebサイトを参照していただきたいが、画期的なのはサービスの利用料金はもちろん、.com、.net、.orgをトップドメインとする独自ドメインを取得する費用、および利用期間内におけるドメイン維持手数料までマイクロソフトが負担してくれることだ。

 サインアップには(無料のBasicsの場合にも)クレジットカードが必要になり、あるクレジットカードで作ったIDに対して1サイトのみ無償提供というルールはあるが、クレジットカードの枚数分はドメインを無料で持てることになる(同一IDで追加ドメインを取得、運用するコストも年額固定で1,080円とかなり安価)。

 その理由は広告収入による運用モデルを採用するからとのことだが、現時点では実際に広告が入っていないため、どのような広告になるのかはわからない。しかし、容量の追加購入なども含め、実に安価に提供されている。

 興味があるならば登録。まずは使ってみて、どんなことができそうかを見極めることから始めるといいだろう。

 なお既に独自ドメインを運営しているユーザーも、国別ドメイン以外の場合(.com、.net、.orgなど)は、ドメインレジストラにドメイン登録レコードのロックを外しておいてもらい、Office Liveのサインナップ時に自分のドメイン名を指定すれば簡単に移行できるそうだ(β版ということもあり、筆者自身は行なっていない)。

 なお、マイクロソフトは正式運用までには.jpドメインの移行機能を加えたいとしている。またBasics、Essentials、Premiumは容量と機能の違いだけで、サーバーのパフォーマンスは均質とのこと。無料だからといって、サーバーパフォーマンスに劣るといったことはないようだ。

●アプリケーション+サービスだからできるモバイルPC向けの機能

Office Liveのスタート画面

 独自ドメインはともかく、これまでも単に大容量のWebメールサービス、大容量のストレージサービスといったものならば、無償あるいは安価に提供するサービスプロバイダはあった。しかしWebブラウザをフロントエンドとしたサービスの場合、特にメールにおいてモバイルPCでの使い勝手が問題となる。

 たとえばGoogleのGmailは3GB近い容量を提供しており、Ajaxによるインタラクティブなユーザーインターフェイスで、快適にメールを扱える。これだけでメールサービスは十分という人もいるだろう。複数のPCを職場、自宅、出先などで使い分けている人なら、すべてのメールをGoogleのサーバーに集約しておけるメリットもある。

 しかしGmailでは独自ドメインのメールアドレスを利用できないことに加え、オンライン時にしかメールの内容を参照できない。オフラインでもメールを活用しようとするなら、これまではレンタルサーバーでIMAP4をサポートするサービスと契約するか、あるいは独自にメールサーバーを導入するほか無かった。

 一方、Office Liveのメール、スケジューラ、アドレス帳といった機能は、Windows Liveサービスと連携しており、Outlookに対してコネクタ(Outlookからこれらサービスに対してシームレスにアクセスできるようにするプラグインソフトウェア)をインストールすることで、オフラインでもホスティングされたメールやスケジュール、アドレス帳データを利用できる。

 Basicサービスでも25個(それぞれ2GBのメールストレージ)のアカウントが作成できるので、小規模な事業者やちょっとした仲間内でドメインを作成するといった用途であれば、別途、Exchange Serverを導入することなく、Outlookの持つ潜在的な機能をかなりの部分まで引き出すことが可能だ(もちろん、Internet ExplorerからAjaxアプリケーションとしてもアクセス可能)。

 ただし、メールデータだけであれば携帯電話や他ブラウザ、他プラットフォームからのアクセスも行なえるが、それ以外のサービスはWindows XP以降のOSとInternet Explorer 6.0以降のWebブラウザが無ければサービスを利用できない(Mac OSからのアクセスは行なえない)。

 また、これらOutlookをクライアントとするメール、スケジュール、連絡先、仕事、メモといったデータのホスティングは、Exchange ServerではなくWindows Liveサービスのサーバーで行なっているため、Exchange Serverと同じ機能が使えるわけではない。

Office Live Mailの画面 Outlookとの連携も可能

 上記の標準的な機能を使う上での差はほとんど感じないハズだが、たとえば他ユーザーに自分のスケジュールの編集権を与えてスケジュール管理を委任するといったことはできない(他ユーザーにスケジュールを公開することは可能。編集や追加が行なえない)。

 しかし大容量のホスティングサービスを用い、Outlookをフロントエンドに同じ上にに使用しているすべてのPCからアクセスできるという環境を、何の追加コスト、何の運用管理も行なわずに得られるメリットは小さなモノではない。

 加えてOffice Live Essentialsにまでアップグレードすれば、同じドメインに登録したユーザー同士でポータルサイトを運用することも可能だ。

●Office SharePoint Serverの機能を活用

 Basic版にはほかにWebページのデザインツール(部品を並べて文章を編集するだけで、簡単にデザインできる)がWebブラウザ上で動作するアプリケーションとして提供されているなど、これからホスティングサービスを利用する、あるいは既存のホスティングサービスを利用していたユーザーが移行するには十分な機能を有している。しかし、個人的にオススメなのはEssentialsの方だ。EssentialsサービスではOffice SharePoint Serverを用いたサービスが提供され、より幅広い使い方ができるからだ。

 北米でのサービス価格は月19ドル(β期間中は無料)というから、日本では2,000〜2,500円程度になるのだろうか。メールアカウントやWebページ容量が倍増するなどのボーナスもあるが、なんといってもSharePoint Serverによる共有ワークスペースの作成機能が使える点が大きい。

 取得アカウントに登録されたメールアドレスのユーザーでポータルを運用することで、さまざまな機能が利用可能になる。

 ドキュメント共有機能では、Officeアプリケーションからサーバーに対して直接文書を保存したり、サーバー上の文書を開いて編集、保存といった操作をローカルストレージと同様の感覚で利用でき、全文検索機能なども提供される。Wikiや掲示版といったサービスを、ポータル内に追加することもできるし、何より共有の連絡先データや予定表を持てる点も大きい。

 自分の予定表などの管理を他ユーザーに権限委譲できないと書いたが、ワークスペースを作成し、そこに共有予定表や連絡先を作成。編集権をユーザーに付与すれば、同じことができる。Office LiveのOutlook用コネクタにはSharePoint Serverへのコネクタ機能も含まれているため、Outlookでこれを同期しておくことができるからだ。

 前述したようにWindowsとIEの利用が必須のOffice Liveだが、Windowsしか利用しないのであれば、Officeそのものは2000以降(Outlook用コネクタはOutlook 2002以降、SharePointとのシームレス連携にはOffice 2003以降が必要)であれば利用できる。

 使ってみれば、“あぁ、Officeって最近、あんまり機能が変わっていないように思っていたけど、こんなところで変わっていたんだな”と実感できるものばかり。まずはβ期間中に遊び倒してみるところから始めてみることを勧めたい。

□マイクロソフトのホームページ
http://www.microsoft.com/japan/
□Office Liveのページ
http://officelive.microsoft.com/japan/
□関連記事
【12月11日】マイクロソフト、「Office Live」のβサービスを開始
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/1211/ms.htm
【6月8日】【本田】Office 2007が見せる新しい側面
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0608/mobile344.htm

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(2006年12月12日)

[Text by 本田雅一]


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