マイクロソフト、Vistaの数々の新機能を総括11月21日 実施 Windows Vistaの開発が終了し、一般販売まで2カ月あまりとなり、マイクロソフトによるWindows Vista露出の機会が増えてきた。実際、21日に行なわれたVistaの新施策に関する発表会でも、3時間近い時間を取ってVistaの新機能についての統括的な説明が行なわれた。 大部分はこれまでのイベントや発表会でも紹介されてきたものだが、おさらいと予習の意味でここに紹介する。なお、一部の機能は、下位のエディションでは省かれている。エディションごとの機能の違いは、最後の表を参照して欲しい。 ●わかりやすさと性能 Windows Vistaのもっとも特徴的な部分は「Windows Aero」と呼ばれるユーザーインターフェイス(UI)だろう。ウィンドウが透過的になったり、3D表示されたりと、見た目の派手さに目がいくが、Vistaでは、このUIを含め、より直感的でわかりやすいようにとの配慮がなされている。 Windows Vistaは、デスクトップ検索機能を標準搭載しており、もっとも頻繁に利用されるであろう「Explorer」にも検索フォームがついた。これにより、フォルダをたどっていかずとも、目的のファイルにたどり着ける。検索条件は保存できるので、複数の検索条件を保存しておくことで、ファイル自体を複数のフォルダにコピーしたりしないでも、任意のファイルを一覧表示できる。 ファイルの表示ペインでは、アイコンの大きさが変更でき、1ページ目のサムネールを表示できるので、ファイル名から中身が分からない場合も、アプリケーションを開くことなく中身を知ることができる。また、オーディオファイルについても、ジャケット画像データを表示できるようになったので、視覚的に把握できる。加えて言うなら、日本語フォントとして初めてClearTypeに対応するメイリオを搭載したことで、日本語の視認性が向上している。
性能向上についてもいくつかの新機能が搭載されている。1つは「Windows SuperFetch」と呼ばれる、プリロード機能。Windows XPでは、使用した順番にアプリケーションやデータをキャッシュ内に保持していたが、Vistaでは利用頻度に応じてキャッシュにプリロードするようになったため、利用頻度が高いアプリケーションはHDDからの読み込みが減り、起動時間を短縮できる。また、Vistaでは、ウイルススキャンなどのアイドルタスクがキャッシュされても、そのタスクが終了次第キャッシュから取り除かれ、頻度の高いものが再キャッシュされる。 さらに、バックグラウンドプロセスはユーザープロセスより低優先度のI/Oとして実行されるため、ウイルススキャンが発生しても、フォアグラウンドのアプリケーションをストレスなく利用できる。 メインメモリの増設が難しいノートPC向けに、「Windows ReadyBoost」と呼ばれる、USBメモリの活用技術が搭載されている。この機能を利用すると、USBメモリをリードキャッシュとして使えるようになる。ライトキャッシュにはならないので、いつでもUSBメモリを抜き差しできる。
どちらかというとシャットダウンに関する機能だが、Vistaでは電源のOFFを実行すると標準でスリープモードに移行する。そのため、起動(復帰)時間が大幅に短縮されている。ノートPCでは、スリープから18時間が経過するか、バッテリレベルが一定以下になると、自動的にハイバネーションが行なわれ、デスクトップではスリープとハイバネーションが同時実行される。 性能についておもしろいのが、Vistaでは、「Windowsエクスペリエンスインデックス」という性能指標を確認できる。これは、プロセッサや、メモリ、グラフィックス、HDDなどの性能を5.9点満点で表示するもので、自分のPCのおよその性能を知ることができる。また、Vista対応ゲームでは、推奨スコアが表示され、そのゲームを自分のPCで実行できるか、そのゲームを動かすには何をアップグレードすれば良いかを把握できるようになっている。
実はWindows Aeroも性能向上に寄与している。Vista以前のOSでは、ウィンドウを動かすと画面全体を再描画するため、CPU負荷がかかるが、Windows AeroではGPUの3D機能を用いて、各ウィンドウを別レイヤーで描画しているので、ウィンドウを動かしても、全体の再描画が不要となっている。 バックアップも利便性が向上している。新たに自社エンジンを搭載し、バックアップ時間が短縮されたほか、差分バックアップや、過去のバックアップからのファイルの復元機能が追加された。ファイルの復元については、HDD容量の許す限り履歴が保存され、ゴミ箱から削除した場合でも、任意のバージョンのファイルを復元できる。 このほか、XP搭載機からの移行を助ける手段として、サードパーティから「転送ツールケーブル」と呼ばれるUSBケーブルが発売される。このケーブルをXP機とVista機に挿すことで、ウィザードに従って各種ユーザーデータや設定を新PCに移行できる。 ●セキュリティ Vistaは、当初からセキュリティの向上を念頭に開発されていることがアピールされてきた。この成果の1つとして、ユーザーアカウントの制御方法が変更されている。 XPの場合、個人PCでは普通、利用者アカウントが管理者権限を持つ。そのため、知らず知らずのうちに重要な設定を変更してしまったり、Webを通じて悪意のあるプログラムをインストールしてしまうことがある。 これに対しVistaでは、管理者のアカウントであっても、ログオン時はスタンダードユーザー権限が付与される。プログラムのインストールなど管理者権限が必要なタスクでは、ダイアログの表示とともに、管理者権限が一時的に与えられ、そのタスクの実行について明示的な判断が求められ、不用意なインストール等を防ぐ。また、ゲストアカウントでログオンしたが、Internet Explorer (IE)を使うと、管理者権限が与えられるというXPの脆弱性にも対策した(IE 7の保護モード時)。
家族のための安全設定も標準で実装され、子供のアカウントに対して、保護者がPCの利用時間や、ゲームプレイの許可、好ましくないサイトへのアクセスブロックなどを設定できる。 このほか、XPでも利用できるが、アンチスパイウェアソフト「Windows Defender」や、フィッシング詐欺への対策機能などを搭載した「IE 7」が標準で搭載されている。 なお、同社ではこれらの機能は基礎的なものであり、ユーザーの用途やニーズによっては他社製のものを含め、標準機能以外のセキュリティソリューションを組み合わせて使っていく必要があるとしている。特に、アンチウイルスソフトは標準搭載されていないので、ユーザーが用意する必要があるだろう。 ●エンターテイメント Vistaは、「Windows Presentation Foundation」(WPF)と呼ばれる複合型メディアエンジンを実装している。開発者にとってのWPFの特徴は、プログラムコードとUIを分離した点にあるが、ユーザーにとっては、よりリッチなUIのアプリケーションを楽しめるというメリットがある。WPFの詳細は、関連記事に譲るが、Webコンテンツ/アプリケーションでも、動画なども含むWeb情報を3Dインターフェイスに載せて表示といったことが容易になる。 デモでは、カーレースにおける異なる視点/ドライバーからのストリーミング映像を立体的に表示し、クリックで視点やドライバーを変更したりしてみせた。これはパワーのあるPCならではのコンテンツといえ、TVやセットトップボックス、ネット対応端末では不可能な能力をPCにもたらす技術といえる。
Windows Home PremiumとUltimateのみの搭載となるが、Media Center機能もVistaの機能の1つ。10フィートGUIと呼ばれる、大きなアイコンと文字による画面をリモコンで操作し、各種メディアファイルやオンラインコンテンツを表示できる。このMedia Center機能もWPFを活用しており、3D効果をうまく使ったインパクトのあるコンテンツが開発されている。 なお、WPFは、「.NET Framework 3.0」上で動作するようになっており、今後XPでも.NET Framework 3.0のランタイムをインストールすることで利用できるようになる。また、ブラウザについても、標準サポートはIE 6以降だが、他社製ブラウザ用にサブセット版ランタイムが提供される予定。
写真、音楽、映像といったメディアファイルの扱いも洗練された。「Windowsフォトギャラリー」では、写真のサムネールサイズを多段階に調整したり、タグ付けして、特定の条件のものだけを表示といったことが簡単にできる。また、RAW画像の表示に対応し、「Windows DVDメーカー」とシームレスに連動して、DVDを作成できる。動画は「Windowsムービーメーカー」が1080pまでのHDデータに対応した。 Windows Media Playerもバージョンが11になり、取り込み、再生、CDへの書き込みなどの画面の統一性が向上しているが、これはWindows XP用がすでにリリースされている(日本語版は2007年1月の予定)。
●モビリティ 同社はこれまでのOSで、ホームとビジネスという2つの面における利用価値を提案してきたが、Vistaでは新たに、モビリティにおける価値も訴求している。 モビリティ機能を解説したこちらの記事に詳しいが、小型ディスプレイにスケジュールやメールなどの情報を表示する「Windows SideShow」、オンライン会議ツール「Windowsミーティングスペース」、より簡単でパワフルな電源管理機能、モビリティ周りの設定を集約的に行なえる「Windowsモビリティセンター」などが搭載されている。 また、HDD暗号化機能「BitLocker Drive Encryption」を利用することで、ノートPCを紛失しても、情報の漏洩を防げる。
□マイクロソフトのホームページ (2006年11月22日) [Reported by wakasugi@impress.co.jp]
【PC Watchホームページ】
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