ソニーから、2006年秋モデルの最後を飾る製品として、12.1型液晶搭載モバイルノートPC「VAIO type G」が発表された。 VAIO type Gは、VAIOシリーズ初のビジネス向けモバイルノートPCとして企画されたモデルであり、携帯性と堅牢性、バッテリ駆動時間という、モバイルノートPCで特に重要なスペックにとことんこだわって設計されている。この分野では、パナソニックの「Let'snote」シリーズが高いシェアと人気を誇っているが、VAIO type Gは、Let'snoteシリーズを上回る携帯性や堅牢性、バッテリ駆動時間を実現しており、強力なライバルとなるだろう。 VAIO type Gは、1スピンドルモデルと2スピンドルモデルが用意されているが、今回は両モデルを試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。ただし、今回試用したマシンは試作機であり、正式出荷品とは細部が異なる可能性もある。また、VAIO type G開発者インタビューもあわせて読んでいただければ、参考になるだろう。 ●3面にカーボン素材を採用し、スリムで軽いボディを実現 ソニーのVAIO type G(以下type G)は、12.1型液晶を搭載したモバイルノートPCである。type Gには、店頭モデルとして、1スピンドルモデル「VGN-G1LAP」と2スピンドルモデル「VGN-G1KAP」の2製品が用意されているほか、直販専用で仕様をカスタマイズ可能なVAIO・OWNER・MADEモデル「VGN-G1AAPS」、法人向けモデルが用意されている。ここでは、店頭モデルの2製品を試用した。 1スピンドルモデルと2スピンドルモデルでは、光学ドライブの搭載/非搭載以外に、標準で付属するバッテリやIEEE 1394ポートの有無などが異なるが、CPUやメモリ、HDDといった基本スペックや筐体は同一である。 type Gは、1スピンドルモデル(3セルバッテリ時)で約898g、2スピンドルモデル(6セルバッテリ時)で約1,116gという、超軽量ボディを実現していることがウリの1つだ。1スピンドルモデルの約898gという重量は、12.1型液晶搭載モバイルノートPCとしては、現時点で世界最軽量となる。type Gのライバルと目される「Let'snote T5」(12.1型液晶搭載1スピンドルモデル)と「Let'snote W5」(12.1型液晶搭載2スピンドルモデル)の重量は、それぞれ約1,260g(オプションの軽量バッテリ利用時は約1,040g)、約1,199gであり、type Gがいかに軽いかがよくわかるだろう。 また、type Gの本体サイズは、277×215×23.5~25.5mm(幅×奥行き×高さ)で、非常にスリムなことも魅力だ。最薄部と最厚部の差が2mmしかない、フラットなボディが特徴で、鞄などへの収まりもよい。ちなみに、Let'snote T5/W5の本体サイズは268×210.4×24.9~44.3mm(同)で、フットプリントはLet'snote T5/W5のほうが多少小さいが、最厚部は19mm程度も厚い。 また、type Gは、120kgfの加圧振動試験や非動作時90cm、動作時72cmの落下試験をクリアするなど、堅牢性も非常に高く、Let'snote T5/W5(100kgf加圧振動試験など)を上回っている。ビジネスシーンにおいては、何よりも壊れにくさが重視されるが、これだけの堅牢性を実現しているのなら、安心して大事なデータを入れておける。 type Gが、このように軽くて丈夫なボディを実現した秘密は、カーボン素材の採用にある。これまでにも「バイオ505エクストリーム」など、カーボン素材を天板に採用した製品はあったが、type Gでは、ボディの天板と底面、パームレスト部分の3面にカーボン素材を採用するという、非常に贅沢な作りになっている。3面のうち、天板はマルチレイヤーカーボン、底面はマルチレイヤーカーボンとカーボンモールドの組み合わせ、パームレスト部分はカーボンモールドでできている。 筐体のデザインは一見シンプルだが、側面をよく見ると複雑な形状になっている。これは、多面体デザインと呼ばれており、本体奥のコネクタ部分は上から見えやすいように上向きの傾斜がついており、手前部分には逆に下向きの傾斜を付けることで、本体を持ち上げるときに手がかかりやすいというものだ。ラッチレスデザインで、液晶の開閉もスマートに行なえる。また、バッテリの後ろにヒンジを持ってくることで、後ろから見ても非常にすっきりとした外観を実現している。ボディカラーはブラックとシルバーを基調にしており、ビジネスの道具としてオフィスなどに違和感なく溶け込めるであろう。
●Core Solo U1300と512MBメモリを搭載 type Gの店頭モデルでは、CPUとしてCore Solo U1300(1.06GHz)が搭載されている(VAIO・OWNER・MADEモデルでは、Core Solo U1400や超低電圧版Celeron M 423も選択可能)。Let'snote T5/W5では、Core Solo U1400が搭載されているので、Let'snote T5/W5に比べるとCPU性能は多少落ちるが、このクラスのモバイルノートPCとしては、十分な性能を持っているといってよい。 チップセットは、グラフィックス統合型のIntel 945GMS Expressで、メモリはオンボードで512MB実装されている。DDR2対応のSO-DIMMスロットを1基搭載しており、最大1.5GBまで増設が可能だ。 HDDは、1.8インチの80GBを搭載する。チップセットやメモリに関するスペックは、Let'snote T5/W5とほぼ同じで、HDD容量はtype Gが20GB多い(ただし、Let'snote T5/W5では2.5インチHDDを搭載)。パフォーマンス的には、2.5インチHDDのほうが有利だが、耐衝撃性は1.8インチHDDのほうが優れている。type Gでは、耐衝撃性や軽さを重視して1.8インチHDDを選択したとのことだ。3次元加速度センサーによって落下や衝撃を感知し、自動的にヘッドを退避させる「VAIO・ハードディスク・プロテクション」機能も搭載している。 1スピンドルモデルでは当然光学ドライブは内蔵されていないが、2スピンドルモデルのVGN-G1KAPには、±R DL対応DVDスーパーマルチドライブが搭載されている。なお、光学ドライブは固定式で、着脱はできない。
●静音性を重視した新設計のキーボードを搭載 液晶ディスプレイとして、12.1型液晶パネルを搭載する。解像度はXGA(1,024×768ドット)と一般的だが、ノングレアタイプの液晶なので、表面の映り込みも少なく、長時間使っていても目への負担が少ない。VAIOシリーズで初めて、液晶のガラスの厚みを0.2mmにするなど、液晶の薄型化、軽量化を図っており、液晶に対する衝撃を分散するためのフローティング構造を採用している。バックライトの輝度は9段階に変更可能だ。
キーボードは、静音性にこだわり、ラバーカップの材質や形状を最適化するなど、ビジネスモバイルノートPCらしい配慮が行き届いている。キーピッチは約17mm、キーストロークは約2mmで、配列も標準的でタイピングはしやすい。キートップの印刷には、レーザー刻印が採用されており、表面が多少摩耗しても、印刷が剥げる心配はない。 また、直販専用の「VAIO・OWNER・MADE」モデルでは、英字キーボードや日本語カナ無しキーボードを選択することもできる。ポインティングデバイスとしては、インテリジェントタッチパッドを採用する。
インターフェイスとして、1スピンドルモデル、2スピンドルモデルともに、USB 2.0×2、ミニD-Sub15ピン、Gigabit Ethernet、モデム、マイク入力、ヘッドフォン出力を装備するほか、1スピンドルモデルのみ、IEEE 1394(4ピン)も用意されている。カードスロットとしては、PCカードスロットとメモリースティックスロット、SDメモリーカード/MMCスロットを搭載。ただし、PCカードスロットのフタはダミーカード方式である。
●指紋センサーとFeliCaポートを搭載 ワイヤレス機能としては、IEEE 802.11a/b/g無線LANとBluetooth 2.0+EDRをサポートする。ワイヤレス機能のON/OFFを行なうワイヤレススイッチが、キーボード左上に用意されているのも便利だ。無線LANやBluetoothのインジケータも本体右手前部分に用意されている。 ビジネス向け製品らしく、キーボード左に指紋センサーを搭載し、TPMセキュリティチップも内蔵するなどセキュリティ機能も充実している。パームレスト右側には、FeliCaポートも搭載している。SuicaやEdyカードなどの情報を読み取ることができるほか、スクリーンセーバーのロック解除やID/パスワード入力など、セキュリティ用途にも活用できる。
また、キーボード右上に、プレゼンテーションボタンが用意されているのも面白い。プレゼンテーションボタンを押すだけで、スクリーンセーバーをOFFにして、電源設定をプレゼンテーションに変更、背景の変更など、プレゼンテーションに適した状態に設定でき、特定のアプリケーションを起動させることもできる(プレゼンテーションボタンにそのほかの機能を割り当てることも可能)。
なお、プレゼンテーションボタンに右側のボタンは、1スピンドルモデルと2スピンドルモデルで役割が異なり、前者は消音ボタン(ユーティリティソフトで、消音以外の機能を割り当てることも可能)、後者はDVDドライブのイジェクトボタンとして動作する。
●同サイズで2種類の容量のバッテリを用意 バッテリは、6セルのバッテリパック(L)と3セルのバッテリパック(S)の2種類が用意されている。バッテリパック(L)もバッテリパック(S)もサイズは同じで、重量のみが異なる。バッテリパック(L)の仕様は10.8V/5,800mAh、バッテリパック(S)の仕様は10.8V/2,900mAhである。 VAIO・OWNER・MADEモデルでは、バッテリパックの選択が可能だが、店頭モデルの場合、1スピンドルモデルにはバッテリパック(S)が、2スピンドルモデルにはバッテリパック(L)が付属する。もちろん、それぞれのバッテリパックはオプションとして単体発売されるので、1スピンドルモデルにバッテリパック(L)を装着してバッテリ駆動時間を延ばしたり、逆に2スピンドルモデルにバッテリパック(S)を装着してさらなる軽量化を実現することも可能だ。
ちなみに標準構成での重量は、1スピンドルモデルが約898g、2スピンドルモデルが約1,116gであり、バッテリパック(L)の重量は約312g、バッテリパック(S)の重量は約180gとされているので、1スピンドルモデルにバッテリパック(L)を装着した場合の重量は約1,030g、2スピンドルモデルにバッテリパック(S)を装着した場合の重量は約984gとなる。
公称バッテリ駆動時間は、バッテリパック(L)装着時が約12.5時間、バッテリパック(S)装着時が約6時間であり、1スピンドルモデルでも2スピンドルモデルでも同じバッテリパックを装着した場合の駆動時間は変わらない。 また、バッテリへの充電を80%あるいは50%にとどめることで、サイクル寿命を延ばす「バッテリいたわり充電モード」の搭載も、VAIOシリーズで初となる。似た機能はLet'snoteシリーズにも搭載されているが、Let'snoteシリーズでは80%充電のみであったのに対し、type Gは、50%充電も選べるようになっている。50%充電なら、サイクル寿命を約2倍に延ばすことができる。バッテリいたわり充電モードを利用すれば、バッテリの買い替えサイクルを延ばすことができ、運用コストの削減に繋がる。省電力ユーティリティも使いやすく、細かく設定が可能だ。
●ACアダプタが小型軽量化され、ウォールマウントプラグアダプタも付属 type Gでは、従来に比べてACアダプタが小型軽量化されたことも評価できる。type GのACアダプタのサイズは、83.2×36×25.5mm(同)と手のひらに収まるほどで、重量も約170g(ACケーブルなし)と軽い。また、ウォールマウントプラグアダプタが付属しており、ACケーブルの代わりにウォールマウントプラグアダプタをACアダプタに装着すれば、壁などのACコンセントに直接ACアダプタを差し込んで使うことができる。邪魔なACケーブルを持ち運ばなくてもすむし、見た目もスマートだ。
●パフォーマンスはスペック相応 参考のために、いくつかベンチマークテストを行なってみた。ソフトは、PCMark05、3DMark03、FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3、FRONT MISSION ONLINEオフィシャルベンチマークソフトを利用した(電源プロパティの設定は「常にオン」で計測)。 結果は下の表にまとめたとおりである。比較用にGateway MX1020jやLet'snote Y5、FMV-BIBLO MG75Sの結果もあわせて掲載した。type Gは、シングルコアのCore Solo U1300を搭載しているため、さすがにデュアルコアのCore Duo L2300やT2300を搭載したLet'snote Y5やFMV-BIBLO MG75Sに比べると、ベンチマーク結果は見劣りするが、同じCore Solo U1300を搭載したGateway MX1020jとは近いスコアである。 ただし、Gateway MX1020jは、チップセットがIntel 945GM Expressで、type GのIntel 945GMS Expressに比べて、グラフィックス性能が高い。また、HDDも2.5インチタイプが採用されているので、HDD周りのパフォーマンスもGateway MX1020jのほうが高い。type Gのパフォーマンスは、スペック相応であり、このクラスのモバイルノートPCとしては標準的なレベルといってよい。 なお、バッテリパック(L)を装着した状態で、BBenchでバッテリ駆動時間を計測したところ(液晶輝度は下から4段階目。電源プロパティの設定は「ポータブル/ラップトップ」に設定。無線LANによるWebサイト巡回とキー入力のエミュレーションを行なう)、7時間の連続駆動が可能であった。バッテリ駆動時間に関しては、このクラスのモバイルノートPCの中でも、トップレベルだ。無線LANを無効にして、液晶輝度をさらに下げ、細かく省電力機能を効かせれば、さらに駆動時間は延びるだろう。
【表】VAIO type Gのベンチマーク結果
●モバイルノートPCとしての完成度は非常に高い type Gは、VAIOシリーズ初のビジネス向けモバイルノートPCだが、これまでソニーが培ってきた小型軽量化技術が惜しげもなく注ぎ込まれており、製品としての完成度は非常に高い。このジャンルにはLet'snoteシリーズという強力なライバルが存在するが、より薄くて軽いtype Gは、デザインや使い勝手にもこだわりたいという人に強くアピールするだろう。携帯性と堅牢性、バッテリ駆動時間を重視してモバイルノートPCを選ぶのなら、type Gはお勧めの製品だ。指紋センサーやFeliCaポートを搭載するなど、セキュリティ機能が充実していることも魅力だ。 これまでこのジャンルでは、Let'snoteシリーズが一人勝ちの様相を見せていたわけだが、今回type Gが登場し、軽さや堅牢性、バッテリ駆動時間でLet'snoteシリーズを上回ったことで、今後両社の間でさらなる競争が繰り広げられることになる。両社が切磋琢磨することによって製品はさらに進化していくわけで、ユーザーにとっては、嬉しい状況になったといえる。 □ソニーのホームページ (2006年11月13日) [Reported by 石井英男]
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