ソニーから登場した「VAIO type G」(以下type G)は、1スピンドルモデルでは重量898gの世界最軽量ボディ、2スピンドルモデルでは約12.5時間という世界最長駆動時間を実現した12.1型液晶搭載のモバイルノートPCだ。このクラスのモバイルノートPCとしては、パナソニックの「Let'snote」シリーズが高いシェアを獲得している。type GはVAIOとしてこのビジネスノートマーケットに勝負を挑む製品だ。 これまでVAIOシリーズでは、「バイオノート505」に始まり、「VAIO type T」や「VAIO type S」など、携帯性を重視したモバイルノートPCがリリースされてきたが、これらは基本的にコンシューマ向け製品であった。それに対し、type Gは、ビジネスユーザー向けに本格設計されていることが特徴だ。 また、ビジネスユーザー向けのノートPCとしては、15.4型/14.1型液晶搭載の「VAIO type BX」が登場しているが、携帯性重視のビジネス市場向けモバイルノートPCは、今回のtype GがVAIOシリーズ初となる。ライバルを上回る軽量性と堅牢性、バッテリ駆動時間を実現したtype Gは、ソニーの底力をまざまざと見せつけられる製品だ。 今回は、そのtype Gの開発の中心となった企画担当者やエンジニア、デザイナーにインタビューする機会を得た。いろいろ聞いてみたので、早速その内容を紹介していこう。●ゼロから作ったビジネス向けモバイルノートPC Q:今回のtype Gのコンセプトについて教えてください。 高橋 企画担当の高橋です。ビジネス向けノートPCは、以前A4サイズのtype BXという商品を出しましたが、日本のモバイル市場においては、B5サイズが主流になっています。特に首都圏では、電車などの公共交通機関で移動される方が多いので、モバイル需要がなくなることはないだろうと考えています。その中で、軽さやバッテリ駆動時間、さらにビジネスシーンで必要な壊れないという安心感が必要でないかと考えました。 モバイルを得意とするVAIOとしてはビジネスPCの世界においてもモバイルを提案していきたいと考えており、今回のtype Gは戦略モデルとして、ビジネス向け製品拡大の起爆剤として投入しました。 VAIOは、そのロゴに意味が込められているように、パソコンでAVを楽しもう、というエンターテインメントマシンがそもそものコンセプトです。そのため、初めから、VAIOはビジネス向け商品ではないというお声をいただいてしまう、ということが多々ありました。海外などでは、type Tやtype Sはビジネスパーソンに好評なのですが……。そのため、ゼロからビジネス向けモバイルノートPCを作ろうと。そしてやるからには、VAIOらしい提案というのを模索して、1年半ほど前からプロジェクトをスタートして、今日に至ったわけです。
Q:先日もBCNの調査結果が出てましたが、やはりこのクラスの製品は、パナソニックのLet'snoteシリーズが、B5以下では50%以上のシェアを持っていて、ソニーが2位で28%でした。率直に言って、実物を見させていただいたときに、Let'snoteをよく研究されていると思ったんですけども、そのあたりはいかがですか? また、そのライバル製品に対するtype Gのアドバンテージとは何でしょうか? 高橋 Let'snoteを意識しなかったといったら、それは嘘になりますが、意識したのはLet'snoteだけではありません。ただ、モバイルPCというのはやっぱり、VAIOが本家だろうと。そういう自負もあります。やはり元祖モバイルPCはVAIOでしょ、ということをもう一度知っていただきたいと、奮起してやってきました。 他社が実現しているところは、絶対に超えなくてはダメだというのを共通認識として、ここにいるメンバーと設計が必死で頑張ってきました。そこにVAIOらしい軽さだとか、薄さだとか、バッテリ駆動時間を実現しようと。 もう1つ、今回積極的にやろうと考えたのは、品質試験の数値の公表でした。他社は上手ですよね。 だけど、我々も実はアピールこそしてきませんでしたが、type Tなどは、実際には高いレベルを実現していたんですね。だったらもっと積極的にアピールしていこう、世の中のお客様が関心を持ってくださっていることが常識になりつつあるのだから、VAIOも積極的にやることによってVAIOのアドバンテージに高めていこうということを、最初の構想段階で考えました。 Q:その辺もソニーとしては、結構大きなチャレンジというか、今までテストはしていても、耐圧何kgfといった数値は外に出していなかったわけですよね。 高橋 そこは相当、内部でマネージメント層の説得をしました。ビジネス拡大のためには、堅牢性をこうやってアピールしていく必要があるんだと。 Q:かなりいい数値がでているそうですね。例えば、加圧振動試験で120kgfですよね。 高橋 限界値としてはもっと上を行ってますので、ご安心いただきたいと思います。もちろん、壊れないことを保証しているわけではないんですが。 Q:それは他社さんもそうですよね。テストをクリアしたけど、壊れないことを保証するわけではないですよね。やはり想定ユーザーとしては、ビジネスの道具として持ち歩くヘビーなモバイラーあたりですか? 高橋 主なターゲットユーザーはそうですね。営業マンや保険外交員、コンサルタントなど、常日頃顧客先でPCを使うことが多いビジネスモバイルユーザーです。もちろん、標準PC的な使い方も想定しています。ビジネスの土俵に乗っかるというのは、まず企業内のITマネージャーさんに、VAIOも安心して社内PCとして使えるねという、安心感をもってもらうのが第一です。 それに加えて、いかにVAIOの魅力に気付いていただくか。個人のお財布で買っていただく、あるいは領収書を切って経費で落としてもらう。そういう個人買いのお客様というのが、ビジネスユースには非常に多いです。そういうお客様を取り込んでいくには、やはりVAIOの強みというものをもっとアピールしていかなくちゃいけないと。バッテリ駆動時間とか軽さとか、堅牢といったこと以外に、やっぱり薄さだとか、デザインだとか、VAIOらしいと思ってもらえること、そこをいかに盛り込んで、選んでいただけるようにするかを考えました。 ユーザー様が、実際にクライアントさんのところに出向いてさりげなく取り出したときに、「これはいいですね」と言ってもらえるようなものにしたいというのが狙いですね。要するに所有感をきちんと出していきたい。持ち歩いてそれを使うシーンに対して、満足感をお客様自身が持ってもらえる。単なる仕事の道具を超えるもの、そこが一番注力したところじゃないかと思っています。 ●カーボン素材をボディの3面に採用 Q:type Gは、軽さ、丈夫さ、バッテリ駆動時間について、世界最高レベルを達成したわけですが、その開発にはいろいろ苦労されたと思います。特に苦労した点は何ですか? 林 やはり、軽量と剛性、堅牢性のバランスをとるのに非常に苦労しました。type Gを作るにあたって、やはり、世界最軽量のマシンを目指したかった。そうはいってもビジネスで使ってもらうためには、安心感は欠かせないので、堅牢性も重視しています。 今までもVAIOは他社以上に堅牢性を重視して作ってるつもりなんですが、お客様にはVAIOは華奢だというようなイメージを持たれがちでした。そこで数字で実証することを目標にして、軽いけれど、丈夫だということを実現するために、メカ的なところですごく苦労してます。 浅輪 軽さと強さと薄さですね、その3つを両立させるために、素材にこだわって、素材にカーボンを全部で3面に使ったり、その素材の強さを生かしつつ、穴を開けて軽量化するとか、バランスをうまくとってやっています。
Q:カーボンを3面に使ったというのは、今回が初めてですか? 林 そうですね。初めてですね。 Q:カーボンがボディに占める割合が、今までで1番多いわけですね。パームレスト部分もカーボンなんですか? 林 それは、カーボンモールドと呼んでまして、カーボン繊維を練り込んだ樹脂の成型品になっています。 Q:いわゆるCFRPとは違うんですか? 林 我々が「マルチレイヤーカーボン」と呼んでいる部分が、天板と底面ですね。パームレスト部分はカーボンモールドと呼ばれている、練り込み樹脂の成型品です。 Q:素材としては2種類あるということですね。 林 そうですね。両方とも広義の意味ではCFRPなんですけども、我々はカーボン繊維を敷き詰めて積層したマルチレイヤーカーボンと、カーボン繊維を練り込んだカーボン補強樹脂の2種類を使い分けていて、今回パームレストに使っているのは、カーボン補強樹脂です。 Q:マルチレイヤーカーボンのほうが強いというか、材料としては上になるわけですね。 林 はい、カーボンの含有率から言っても、マルチレイヤーの方はほとんどカーボンですが、カーボン補強樹脂のほうは、割合で10%くらいのカーボン繊維が入っていますので、物性的にはかなり差があります。それでも、通常の樹脂に比べれば飛躍的に強いですが。 Q:やはり力のかかり方などを考えて、外部の天板と底面の強度をまず高くしてということですか。 林 はい、表面はものすごく固いもので作ってやって、パームレストはそれに次いでという感じです。形状的な難しさもあって、パームレスト部分って構造が複雑になるので、CFRPの積層板だと作りきれないというところがありますね。 浅輪 ちょっと色が変わって見えているところなんですけども、こちらがCFRPの積層板、マルチレイヤーカーボンと呼んでいるパーツでして、そこに樹脂をくっつけてできたものが天板と底面です。実際はちょっと材料が違うんですけども、この樹脂にもカーボンが入ってまして、このカーボン補強樹脂だけで作っているのがパームレストになります。 Q:カーボンを採用したメリットとしては、丈夫なことももちろんですが、導電性があるので、EMI対策も楽になりますよね。 浅輪 はい、例えば、type Tの底面には金属のシールド板が貼られていますが、type Gにはシールド板は貼られていません。
Q:コスト的には普通のプラスチックよりも高いわけですね。 浅輪 はい。ただ、こういったシールド用の部品がいらなくなるというメリットもありますので、そんなに圧倒的に高くなるというものではないです。
Q:他社では、ボディにカーボンを採用した製品って見かけませんよね。マグネシウム合金はいろんなメーカーで使われていますけど。これはやはり使うのが難しいということなんでしょうか。 浅輪 はい。こういった情報機器でこういう形でカーボンを使っているのは、我々だけだと思います。カーボンメーカーさんと共同開発してやっています。 Q:以前はプレミアムモデルとして、カーボンの繊維をわざと見えるようにしたりしてましたが、type Gではあまり素材感は強調していませんね。 浅輪 そうですね。素材が持っている特徴を生かしているという感じで、見た目よりは強度とか、そういうのですね。 ●使い勝手のいい、誠実なデザインを目指した Q:type Gは、シンプルですっきりとしていて、ビジネスの道具として優れたデザインだと思います。最初からこういう形にしようと思っていたのですか?
熊野 もちろん、いろいろ試行錯誤した結果ですが、基本的なコンセプトは、使い勝手を訴求できる、誠実なデザインというのを心がけています。 今回私がこだわったのが、後ろから見た際の見栄えですね。特にビジネスユースでは、相手の方には液晶の背面を見られることが多いんですが、今までは一番最後にデザインされることが多く、バッテリが出っ張ってたりとか、コネクタが来てたりしていましたが、今回、バッテリの後ろにヒンジを持ってくるという、結構大胆な構成をこちらからお願いしました。それによって開いたときは、板が間仕切りのように相手との間にできるようなこととか、閉じて置いたときには、他のノートPCに比べて圧倒的に薄く見えるということも、考えています。 あと、使い勝手という意味では、type BXの頃からやっていますが、側面を斜めにしてコネクタが挿しやすいデザインにしています。ただ、それを全部手前のほうまで持ってきてしまうと、モバイル機器としては重たいものに見えてしまうので、手前は逆に入れ替えて手が入りやすいようにして、使い勝手を高めています。奥は上を向いて使いやすく、手前は下を向いて取り出しやすくというような、仮に多面的デザインと呼んでますが、そうしたことも細かく積み上げています。 今回、堅牢性を高めるために、マザーボードと外装の距離をある程度離していかなくてはいけなくて、このちょうど多面体の出っ張っているところがマザーボードの高さに来ているので、衝撃を側面で受けて、内部にはできるだけ影響がでないような距離を取ったりとか、ディスプレイを閉じた状態で横を当てられても、横から液晶が割れるというようなことを極力防ぐようなことを含めて、堅牢性を重視したデザインをしています。 通常のVAIOのデザインは、やはりコンシューマにAV要素などをアピールする製品が多かったと思いますが、今回は手法を変えて、とにかく積み上げできっちりビジネスユースで使える誠実なマシンを作っているつもりです。
Q:ボディカラーに関してはこの1種類ですよね? 熊野 はいそうです。type BXと揃えたカラーになっています。 Q:将来的にはカラーバリエーションとかもBTOで可能になったりするんですか? 熊野 視野には入れています。ビジネスユースでもVAIOならではのラインナップを提供できれば、と思っています。 高橋 ビジネス向けPCとしての、type BXとの一体感、兄弟感は、絶対にやっていこうと。VAIOは、ビジネス向けとしてはいわば最後発に近い。VAIOもちゃんとビジネス向けをやってますよ、ということをまだまだ言い続けないと。そういうフェーズだと思います。その意味で、デザイン的にも先に出したtype BXのエッセンスを取り込んでもらってます。天板とかヒンジ構造とか。type BXのモバイルという位置付けですね。作り込みは全然違いますけども。12.1型という中でのVAIOビジネスPCというポジションをまず明確にしました。 林 今回type Gという商品を作ることで、我々はビジネスユーザーに対して、ビジネスユーザー向けの商品をきっちり作り込んだというメッセージを発したかったんです。そこはスタートする時点から、道具としての自己主張をあまりしない、お客様を主役にたてるようなデザインにしてほしいというリクエストをして作ってもらっているので、今までとは大分違う発想になっています。 ●軽量化のために0.1g単位で部品の見直しを行なう Q:type Gは、同じ筐体で1スピンドルモデルと2スピンドルモデルがあるわけですが、これも最初の段階で、両方作ることに決めたんですか? 例えば、2スピンドルモデルで、光学ドライブを着脱式にするとかのは、強度とか重量の面で難しいということでしょうか。 熊野 ベイ構造にしてしまうと、その分厚くなって重くなるので、今回は、そういう手法はとらないことにしました。
肥後 取り外せるのなら便利だとは思うんですけども、それよりも軽くて薄いほうが、モバイルノートとしては使い勝手がいいのではないかと。 高橋 今回、1スピンドル、2スピンドル、両方出した背景は、マジョリティは2スピンドルだと認識しているんですけども、1スピンドルノートの「バイオノート SR」シリーズの再来を望む声は非常に大きいんです。そこで、今回、バッテリを含めた重さが見えた段階で、1スピンドルモデルは、とことん軽さを追求しようと舵を修正しました。1スピンドルで898gですね。それに惹かれるお客様も少なからずいらっしゃるのではないかなと期待をしています。 Q:1スピンドルで900gを切ったと。これまでにもLet'snoteや富士通の「LOOX Q」が、1kgを切って900g台を実現したということで、かなりインパクトがあったんですけれども、800g台というのは当然さらにインパクトがありますよね。しかもこのサイズで。「VAIO type U」などは小さいから、軽いのも分かるんですが、このサイズで800g台というのはやはりすごいですよね。持ってみると、モックアップじゃないの? というくらい軽く感じるんですが、その軽さを実現するためにいろいろ苦労されていると思います。その辺の秘密を教えてください。 肥後 まず、今回の液晶なんですが、type Tの11.1型ワイドと比べて、12.1型の4:3になると、面積的には大きくなりますが、重量は10g以上軽くなってます。いろんな工夫をしています。厚みに関しても若干薄くなってます。重さで一番効いているのは、ガラスの厚みを0.3mmから0.2mmまで薄くしたことですね。その他に、導光板の厚みも若干薄くして、駆動回路の基板面積も小さくしてもらって、薄く軽くしました。 浅輪 とにかく、全ての部分について重さを全部見直しをかけていきました。液晶から始まって、最初にお話ししたハウジング関係、素材を見直したりとか、基板もなるべく小さくしようとか、基板を繋ぐ接続部分の部品を軽くしようだとか、いろんなパーツを取り付ける板金なんかを、もうなくしちゃおうだとか、そういった工夫を至るところにしています。それこそ、0.1g単位で軽くする努力をしています。例えば、ハウジング、特にパームレストなんかがそうなんですが、穴を部分部分に空けたりとか、肉を薄くしたりとかしています。できるところは全部やろうという形でやっています。 Q:かなり頑張らないとこの重さにはならないですよね。 林 今回、やるならダントツにやりたかったんですよね。他社が何gだからそこを目指してとかじゃなくて、やる以上はダントツでやりたかったので、本当に徹底的にこだわって、マルチレイヤーカーボンも先ほど浅輪が、他のパーツがなくなったりするので、そんなに高い素材じゃないと言ってたんですけど、コストを管理する側から見たら、カーボンはものすごい高いパーツなんですよね(一同笑)。だけど、今回はそれを2面に使って、あとパームレストにもカーボン素材を使って、そういうところにもなりふりかまわず軽量化をやりました。あるところを目指してそれができればいいというのではなく、とにかくやるならダントツでやりたいという意志があったので、できることは全てやりました。 Q:やはり100gの位が違うと、インパクトありますしね。 林 我々はモバイルノートというのは、先ほどバイオノート 505のことをおっしゃってましたが、ソニーが先鞭を付けて切り開いてきた市場だという意志があって、そこはモバイルの本家としてどうしてもダントツになりたかったんですよ。
●堅牢性を重視して1.8インチHDDを採用 Q:今回、標準モデルではCPUにCore Solo U1300を搭載していますよね。このクラスの製品だとCPUの選択肢もそれほど多いわけではありませんが。あと、軽さを重視して、HDDは1.8インチですよね。type Tなどでも1.8インチHDDが使われていますが、そのあたりのスペック的なご判断はいかがですか? 肥後 1.8インチHDDを選択した理由は、軽くなるという面も大きいんですけども、HDDの耐衝撃性が全然違うんですね。堅牢というのを前面に出していきたかったので、軽さというのももちろん大切だったんですけども、落下とかそういう衝撃に対して、1.8インチHDDのほうが強いので、HDDは1.8インチを選択しました。 林 やはり一番最初から、耐衝撃、耐荷重というのをtype Gの中で1番ウリのスペックにしたかったので、それを重視していろいろな構成を決めてます。1.8インチのHDDとか、カーボンを上下両面使って、上と下の1番外にさらされる部分に強い素材を使っているというのも、耐衝撃性っていうのを意識して選びました。 Q:丈夫な殻で囲ったようなイメージですね。ハードなスーツケースとか。 林 そうですね。そういうイメージですね。 Q:堅牢性を高める工夫としては、カーボンを使ったことや1.8インチHDDを使ったこと以外にもいろいろな工夫がされているわけですよね。基板周りの話なんかも聞かせてください。 肥後 基板の取り付け方法も工夫して、衝撃が直接基板に伝わらないようにしています。 林 たとえば、コネクタやPCカードスロットの基板をマザーボードとは別にして、コネクタを差している状態で何か衝撃を受けたときにも、マザーボードには直接衝撃がいかないような工夫をしてます。 Q:ファンを搭載している理由ですが?
林 我々はそれにはすごいこだわりがあって、お客様に安心して使ってもらうためには、ファンは絶対必要だと思っています。ファンを使っていることのデメリットさえなければ、ファンはあったほうが絶対いいと思っていて、それでは、デメリットは何かというと、1つは騒音、もう1つは重量が重くなるということです。そこで、それを解決するソリューションを盛り込みました。超低電圧といえども連続でフルパワー動作させると、このサイズの筐体では自然空冷では熱を消化しきれないと思ってますし、実際、他社さんの製品では、フルパワーで使い続けるとスロットリングがかかる設定になっていると思っています。我々はそこをどんな使用状況でも必ずフルパワーが出せるというのを目標にしてやってますので。 肥後 騒音についても、ソフト的に静音モードやパワーモードを何種類か用意しています。 林 実際、オフィスアプリなどを使っている限りだと、本当にそよそよ回っているだけで、気になるようなノイズは出ません。 Q:ヒートパイプを使わずに、グラファイトシートで熱を伝えてるとのことですが、これもVAIOでは初めてですか? 林 X505(バイオノート505エクストリーム)のときは、グラファイトシートだけで自然空冷していたんです。あそこまで薄く、軽くというのだと、それも1つの割り切りだと思います。今回は、ファンを搭載していて、通常はファンの部分に熱を移動させるのにはヒートパイプを使いますが、ヒートパイプは銅製で結構重いので、軽量化のためにグラファイトシートにしました。先ほどいった、ファンのデメリットを消すための軽量化というのはこういうところで図っています。 Q:熱伝導率の非常に高いグラファイトシートが開発されたというリリースは以前に見たことがあるんですが、あまりPCでは使われていないですよね? 林 使い方が難しいんですよね。シート状で供給されていますので、あまり大容量の熱輸送には向かないんですよ。ULVクラスの熱、たとえば5Wとか8Wとか、そういうものを消化するのはなんとかいけるんですが、もっと大きい熱量には使えないんですよね。 ●地道な努力で世界最長12.5時間駆動を実現 Q:バッテリ駆動時間も、世界最長レベルの12.5時間を実現してますよね。
肥後 実はtype Gの開発が始まった頃の目標はもうちょっと低かったんですね。設計的には世界最長のバッテリ駆動時間を目指していて、当初の目標はtype Tの10時間を越えることでした。が、開発途中で他社さんから12時間というモデルが出てきて、ハードルがあがってしまった。 それでどうしたかというと、まず、バッテリに関しては、最新の一番高容量のものを使ってます。ほかは、液晶の方で消費電力を抑えたりとか、基板的にはアーキテクチャが一緒なのであまり差異は出てこないんですね。ですから、本当にコツコツとやりました。 Q:ある1つのアイデアで、がーんと消費電力が下がったとかではなくて、本当に地道にやったわけですね。 肥後 たとえば、使ってないところはこまめに切るようにするとかですね。メモリースティックにしろSDメモリーカードにしろ、使っていないものはなるべく電源を切れるようにして、ほんの何mW節約できるところまで、コツコツ、コツコツ、やっていきました。できることはすべてやると。じゃ、それができたからといってたとえば、メモリースティックの電源を切ったから何分延びるの? って言ったら、せいぜい3分とか5分とかですね。でも、それを10個やれば30分になりますから。1分とか2~3分のものもありますけど、本当にそういうものをコツコツ、コツコツやるしかもう手が残ってないんですよ。同じバッテリを使っているのであれば、さらに2~3時間駆動時間が延びるというのは、現時点ではほとんど無理だと思ってますので、あとはどこまで細かく止めれるかですね。 Q:パナソニックは液晶バックライトはLEDではなくて冷陰極管だったと思います。type Gで採用しているLEDバックライトのほうが効率が高そうですが、それはそれほどでもないんですか? 肥後 いや、LEDのほうが効率は高いので、我々にとってはアドバンテージだと思っています。 Q:同じようなスペックのノートでも、駆動時間についてはかなり差がありますよね。パナソニックやソニーはトップクラスですが、直販系メーカーなどではかなり駆動時間が短いものもあります。 肥後 やはり、ノウハウの積み重ねもありますよね。どこまで自分たちでやるかというか、3分単位のものを10個積み重ねて30分みたいなのは、自分たちで最初から最後まできちんと設計しているからこそというのがあるので。 Q:もう1つ使い勝手という点では、ACアダプタが小さく軽くなったことも嬉しいですね。 高橋 本体相応の軽さ、小ささが必要でしょうということで、そこも、頑張ったところです。 ●コネクタも削って、軽量化と高信頼性を実現 (ここでtype Gを分解してもらい、基板を見ながら解説してもらう)浅輪 この辺がですね、見えないんですけど、この基板とここのフレキシブルケーブルはコネクタを使わずに接続されているんですよ。 肥後 軽くなるのはコネクタだけの重さですけど、コネクタのスペースも稼げますね。コンマ何gか軽くなって。 Q:信頼性はどうなんですか? 肥後 コネクタの接触不良がなくなるので、信頼性も上がると考えています。 Q:今までそうしなかった理由はなんですか? 肥後 やはり実装が難しいからですね。 Q:パームレスト部分のシャーシに穴が開いているのも、軽くするためですか? 浅輪 はい、これをみると、すごく苦労の跡が分かると思うんですが(一同笑)。こういった部品でも、穴をあけて、必要のないところは軽くしています。よく見ると、基板にも穴が開いてるんですよね。
Q:これはネジのための穴ではないんですね。 浅輪 違うんですよ。 Q:あんまりそういうのは見たことがないです。 浅輪 基板に穴を開けても、コンマ1gとかそういう単位にしかならないんですけども、やっぱりやれる部分はすべてやりたいということで。例えば、この基板もここがちょっと変な形をしてますけども、これって必要のない部分なので、切れる部分を全部切ってしまったんですよ。 林 さきほども説明しましたが、コネクタ基板は全部分けてあります。そのコネクタを差した状態でストレスをかけると、大きな負荷がかかってしまうんですけど、それでマザーボードに大きな衝撃がかかって、マザーボードを壊してしまうというのを避けたいので、インターフェイス基板というのは全部独立してます。 Q:HDDにも周囲に衝撃吸収用のダンパーを配置しているんですね。 林 あと、薄いセットながら、最大限に空間を利用して、HDDの下を結構空けました。 Q:HDDの厚みに近いくらい空いてますね。 林 その分を衝撃を吸収する空間にしていますので、このボディの中では贅沢に使ってますね。基板設計者と喧嘩したり(笑)。
Q:指紋センサーやFeliCaポートが搭載されているのは、ビジネスを意識してセキュリティを高めるためですか。 高橋 はい、指紋かFeliCaで、セキュリティを高めることができます。そういったセキュリティニーズは、継続して取り込んでいきたいと思っています。
Q:基板は10層なんですか? 肥後 10層ですね。 Q:実装密度もかなり高そうですよね。type Uはもっと上でしょうが。 肥後 そうですね。12.1型としてはかなり頑張ってます。 林 今回、堅牢性にすごくこだわりましたが、そうはいいながらも、かっこよく作りたいんですね。だから、最近、ボンネット構造がはやっていて、他社さんなどがやられていますが、我々は違ったアプローチで実現したくて、薄くてかっこいいままで、さらっと堅牢性も実現しているというのをやりたかったんです。そのためにカーボンなどの素材にこだわりました。 Q:確かに、ボンネット構造で天板がデコボコしているのが嫌だっていう人もいますよね。丈夫なのは認めるけど、見た目も気になるし、鞄に入れたときにもひっかかるとか。 肥後 そうですよね。そこが一番、私たちも気にしまして、鞄に入れづらいですよね。なので、うちは逆にフラットに近い形にして、鞄にもすっと入れられるような薄さとフラットさを強調しています。 林 ボンネット構造って、強度的にすごく強いというのは確かだと思いますが、我々の設計思想はちょっと違っていてフルフラットに作っていますので、荷重が1カ所にかかったとしても、全部に分散してかかるんですよね。ボンネット構造は強度的には強いんですが、実際の使用上、押してしまうと、たとえば、鞄の中で何かに押されたときって、必ずボンネットの凸の部分だけに荷重がかかってしまうんですよ。我々の設計は、あくまでフルフラットにすることで、1カ所への荷重集中というのを極力抑えたいという思想で作っています。 高橋 やはり同じような堅牢性を実現するにしてもやっぱりそこはVAIOらしさにこだわってやりたいです。 Q:さっきおっしゃってたように、液晶パネル部分が少しオフセットされているというか、内側にあるんですね。本体部分の外側で衝撃を吸収するようになっているわけですね。 熊野 そうですね。天板はフラットで荷重に関しても非常に強いんですが、側面から当たった場合に対処して、まずボトムから当たるように考えています。 Q:それ以外にこだわったところはありますか?
熊野 デザインのことでいいますと、堅牢感を感じさせるデザインというのがありますが、今までは、ボトムを黒にしてパームレストを違う色にするみたいな、薄く見せるための工夫をしていたんですけど、今回はあえてそういうことをやめて、本当に薄いんですよ。というのをボトム1色、トップ1色というので表現しました。 それから、タッチパッドのボタンも、タッチパッドからボタンに渡ったときの感覚の微妙な違いとかも重視して、うっすらテクスチャを入れてます。このボタンも実は2色成型で、黒い樹脂の上に透明の樹脂を入れて2色で成型しているんですね。これは、やはり1番使うところですので、塗装剥がれとかが出てくるのがいやで、そういった工夫もしています。 ●静音性にこだわってキーボードを新しく設計 Q:キーボードについてもこだわっているそうですが。 林 今回は、すごくキーボードにこだわって作っています。特に静音性にこだわりました。やはり出先で使ってもらうものなので、キーボードの音がカシャカシャうるさいっていうことが起きて欲しくないので、メンブレンのラバーの構造から新規に見直して、非常に静音性の高いキーボードにしています。 Q:キーチップの印刷もシンプルで見やすいですよね。ひらがななしの日本語キーボードも選べるとか。 熊野 カスタマイズモデルでは選べますね。 Q:キートップはレーザー印刷なので、酷使しても印刷が剥げるということはないんですよね。 熊野 剥がれということに関しては、通常の印刷に比べれば強いはずです。 林 たとえ表面が削れるくらいの使われ方をしてきたときにも、消えてしまうことはないです。まあ、一定の深さ以上、本当に削り取られたら消えちゃいますが。印刷の場合は、印刷の表面が一番先に消えてなくなってしまいますが、レーザー印刷なら発泡させた樹脂が内部まで入り込んでいるので、表面が削れてしまっても、残ります。
Q:ユーティリティソフトもビジネス寄りのものが搭載されてますよね。プレゼンモードとか、インターフェイスをロックできる機能とか。 林 ビジネスでの使い勝手というのを考えて、そのために作ったPCなので。 Q:バッテリのエコモードも搭載してますよね。フル充電させないことで、サイクル寿命を延ばすという機能ですよね。Let'snoteシリーズでも同じような機能が搭載されてますが、あちらは充電を8割にとどめるのに対し、type Gでは5割までと8割までの2段階で選べるんですね。 林 「バッテリーいたわりモード」ですね。はい、5割にとどめると満充電保存の劣化が抑制できて、寿命が大幅に伸びます。モバイルPCといいながらも、一日中持ち歩くわけではなく、社内で使っていて、社内会議のときに移動して使うというお客さんがたくさんいると思っています。そういう人に対しては、5割の充電でも十分用が足りるし、充電しっぱなしにしているお客さんほど、バッテリの消耗って早いので、こういう機能を付けました。
Q:無線LANスイッチがわかりやすい場所に付いているのはいいですね。 肥後 それも議論があってこだわったところです。手前に配置したほうがやりやすい面もあるんですが、実際にいろいろ意見を聞くと、使っているときにON/OFFする機会が意外と多いことが分かって、それならちまちまと付けるのではなく、堂々と付けようというのが今回こだわったポイントの1つです。 ●マウスのためにBluetoothを搭載 Q:インターフェイスに関しては、ソニーは最近、Bluetoothに力を入れてますよね。ビジネスシーンでもBluetoothというのは使われているのでしょうか? 肥後 実はアクセサリで、とても売れているのがBluetooth対応マウスなんですよ。その需要が伸びてます。やはりドングルを付けてワイヤレスにするのは嫌ですし、VAIOの強みって、アクセサリが充実していることですね。プレゼン用のBluetooth対応マウスがあったりとか、今後ビジネスユースでもしっかりと使えていくということを考えていくと、やっぱり搭載すべきかなと。 Q:i.LINK(IEEE 1394)は、1スピンドルモデルのほうだけ対応ですよね。 林 1スピンドルモデルだけi.LINKが載っている1番大きな理由は、光学ドライブのソリューションをソニーの純正アクセサリで用意するには、どうしても必要だったんですよ。PCは、光学ドライブからインストールを行なう場面も出てきますので、VAIOとしてオプションを用意しておかなくてはならないということですね。 Q:USBポートに関しては左右1つずつですよね。さすがに3個つけるのはスペース的に厳しいでしょうが、2個あればだいたい十分ということでしょうか。 肥後 見ていただければ分かると思うんですけども、もうコネクタを出す場所がないんです。左右にはスペースがなくて、さらに何かしようとすると、もう前面に出すしかないと。左にはHDDがついてますし、ここにコネクタを出して使い勝手がいいのかという話にもなりますし。 林 そこは、サイズと重量とのトレードオフを考えたときに、USBを3つにして大きくしてしまうよりは、2つに割り切って小さくしたほうがいいと。 肥後 一応、裏もとっています。企画のほうで、USBポートに何を接続しているのかを調査したところ、マウスとあと何か1つというのが現状では多かったです。それ以上繋ぐ場合は、ちょっと違うもの、デスクトップリプレースメントの機種になってきますので。 Q:あとは、メモリカードスロットですが、ソニーなので当然メモリースティックスロットは装備しているとして、SDメモリーカードスロットが用意されているというのも、使い勝手の面ではいいですよね。今はデジカメとかSDメモリーカード対応製品が多くなっていますので。 林 そうですね。お客様に不便を強いるよりは、実際のお客さんを見てちゃんとやりましょうということで。
●あえてCore Duoを搭載しないという決断 Q:今回、新しくtype Gの筐体を作ったわけですが、この筐体でしばらく行くわけですよね。今後、CPUがアップグレードしたりという展開は当然考えられるわけですが。 林 はい、やはりビジネスのお客さんは、長くきちんと付き合っていかなくちゃいけないと思います。ころころとデザインを変えたりとか、機種のコンセプトを変えたりすると、お客さんを困らせてしまうので、我々としてもこのデザインを継続していくつもりで考えています。 Q:「Let'snote W5」では、直販限定の10周年記念モデルというややイレギュラーな位置付けではありますが、超低電圧版Core Duoを搭載した製品が出ています。type Gの場合は、VAIO・OWNER・MADEモデルでは、Core Solo U1400は選べますが、Core Duoの選択肢は現状ではないですよね。熱設計的にはCore Duoも搭載できるようになっているのですか? 林 我々が考える基準では、このサイズ、この重さの今の設計では、Core Duoは放熱設計の基準からは外れてしまいます。将来的にはそういうことも見越して考えていますが、少なくとも今このセットの中にCore Duoを入れてしまうと、我々の基準は満たせないと考えています。 Q:Core SoloとCore DuoではTDPもかなり違いますよね。 林 結局、フルパワーをかけてしまった時を想定すると、相当違いが出てしまうので。 Q:将来的には、IntelのCPUも超低電圧版といえどもTDPが少しずつ上がっていくような感じですが、10Wを超えるようなところまで行くと、作るほうもなかなか大変だと思います。 林 そうですね。今回は、あえてCore Duoへの対応っていうのは割り切って、ダントツに軽いというものを作りたかったんです。Core Duoへ対応しようと思えばもう少しなんとかすればなりそうだったんですが、軽さを重視してあえて割り切ったというのがありますね。 Q:例えば、これでHDVの編集をするとかは考えられないでしょうし、それほど複数のアプリケーションを同時に開いてガンガン作業をするというのも、こうした製品では考えにくいので、それほどデュアルコアの重要性は高くないかもしれませんね。 林 そう思ってるんですね。バッテリライフに関しても、Core Duoにすると短くなってしまいますし。この製品のコンセプトでは、Core Duoのプライオリティは、他のものより少し低かったということです。 Q:それから、今は一般的なノートPCではワイド液晶の比率がどんどん高くなっていますよね。もちろん、ビジネス用途では、たとえばPowerPointなんかも4:3のほうがマッチするという部分もあると思います。ただ、Vistaでは、サイドバーが追加されてますので、ワイド液晶を活かせるOSだというような言い方がされることもありますよね。 林 我々も、ワイドか4:3か、すごく悩みました。将来的には間違いなくワイド液晶になると思ってますし、VAIOもコンシューマ向けモデルはほとんどがワイドになっているんですが、今日本でのビジネスモバイルを考えたときには、まだ今年は4:3のほうがお客さんにとっての利便性も大きいと思います。Vistaが登場しても、ビジネスのお客さんは、すぐにVistaに乗り換えるという人はあまりいないと認識していますので、あえて今年は4:3ということで、狙っていきました。 Q:VistaだとDPIのスケーリングが自由にできるようになっているので、12.1型でXGAよりハイレゾというのが、普通に使って実用的かどうかという議論もありますが、解像度が高いと、一度に表示できる情報量は増えるので楽しいかなと思います(笑)。 林 個人的にはこれにSXGA+液晶を載せたものがほしいんですけどね。 Q:今回、現状でできることはほとんどやり尽くしてしまったということですが、今後の方向性を教えてください。ビジネスノートマーケットにVAIOが参入することで、切磋琢磨することで、さらに製品が進化していくわけですから、ユーザーとしては嬉しい状況になったと思います。 肥後 その通りだと思います。たぶん、今はその分野ではある程度独占に近いような感じで、そこにうちが出ていくことによって、抜かれたり、抜いたりしながらやっていって、どんどん競争することによって、いろいろないい機能だとかが入ってきて、結果、お客さんにとっていいことが増えてくると思っているので、まずはそこに入り込むというのが今回の目的だと思っています。もちろん、負けないつもりでやっていくつもりです。
林 軽量化と堅牢性に関しても、今回それなりの結果を出せたと思っているんですが、やはり究極の目標はまだまだだと思っていて、例えば、X505だと785gであの薄さを実現してましたよね。僕も実際に使っていたんですが、出張に持って行くには最適なマシンなんですよね。まだ、そういうところまでは達していないので、もっともっとやることはあると思っています。 Q:また素材や技術が進化していけば、さらに上を狙える可能性はあるわけですね。 林 ええ。今、できることは全てやり尽くしたと思っていますけど。これからは、本当に細かいことの積み重ねにしかなっていかないと思いますが、そうはいいながら、それを積み重ねて、今回、12時間に対して12.5時間ということができたので、そのコンマ5を何回も繰り返せば、それが1時間、2時間になっていくと思っています。 Q:昔は、バッテリで3時間持てば合格という時代もありましたが、最近はバッテリ駆動時間もずいぶん延びましたね。 林 10時間を越えるものの出てきましたからね。ただ、両極端に分かれてますよね。やっているメーカーは10時間超だけど、そうじゃないメーカーは5~6時間とか。 Q:軽さや駆動時間にこだわっている製品はそれだけコストもかかってますよね。Let'snoteシリーズもそうですけど、こういうこだわった製品は、単にCPUなどのスペックだけ見ると価格が高いと思う人もいるでしょうが、ただこういう製品は軽くて、バッテリが長持ちすることに価値があるわけですから。例えば100g軽くするのに何万円というわけではないでしょうが(笑)、努力してコストをかけて軽くしているわけですよね。 林 はい。まさにそこだと思っていて、我々はスペックだけでPCを語りたくないんですよね。スペックじゃない部分にこそ、日本のメーカーの良さが生きてくると思ってます。我々、携帯機器を作り続けてきたソニーだからこそできるということを、PCの世界でもきちんと実現したいし、お客様に飽きられて終わってほしくないので。よくコモディティ化とかいうじゃないですか。だけど、携帯機器って絶対そういうものじゃないと思っています。自分が手で触れて持ち歩いて使うものって、そういうこだわりの部分を絶対に重視したいものじゃないですか。そこをずっと発信し続けて、お客様と一緒に市場を作っていきたいと思ってます。 ●ビジネスモバイルの究極の形として考えつく限りのことをやった Q:最後に今回のtype Gにかける思いや、読者へのメッセージを1人ずつお願いします。 浅輪 とにかく重さに関しては、私も今までいくつかの機種をやってきましたが、ここまで徹底的にやったのは初めてです。重さも厚さも、強さもそうですが、細部にもこだわっていいものに仕上がったと思っているので、非常に自信を持って、皆さんに提供できるかなと思っています。 熊野 今回、軽くする中での制約があって、カーボンも実はデザインにとっては制約が多くて、平面しかできないとか、曲げがこれだけしかできないとかっていう中で、設計チームと綿密にタッグを組んで、何がいいのかをさんざん議論して、最終的に非常に完成度の高いマシンになったと思います。自分でも本当に使いたい、長く使いたいと思います。ぱっと見の所有欲だけではない、なにかじんわりとくる良さが出てると思ってますので、ぜひ、長く使っていただきたいマシンだと思ってます。 肥後 特に軽いというところにこだわってますので、実際にモノを見て持っていただければ、すぐにその良さが分かってもらえると思いますので、ぜひ店頭などで見て下さい。 林 軽さだけではなく、ビジネスユーザーの使用シーンを想定した堅牢性を実現するために努力しました。自信を持ってお勧めできるダントツの商品を作りましたので、ぜひ、本当に手に取って欲しいというのが希望です。 高橋 あと今回、企業向けに「Gトライアル」というトライ&バイを行ないますので、ぜひ手にとっていただきたいです。 Q:そのあたりも自信の表れですね。 高橋 はい、そうです。 熊野 今回、オプションでこういうキャリングカバーも用意しました。今まで、ケースはあったんですけども、やっぱりケースからべりっと出して使うというのはスマートじゃないですよね。ただやはりそのまま鞄に入れるのは抵抗がある方がいらっしゃるので、本革を使って、出したらそのまますぐ使えるというものに初めてトライしてみました。
高橋 ビジネス向けということで、ビジネスモバイルの究極の形ということで、我々が考えつく限りのことをやってきました。エンジニア、それからデザイナーも、我々の中では一線級の人たちを惜しみなく動かしていただいて、本当にいい仕上がりになったと思っています。ビジネスユーザーだけでなく、店頭でも売るということで、コンシューマユーザーにも、お選びいただけることを期待しております。VAIOも本気でビジネス向けをやっているんだということが、1人でも多くのビジネスパーソンに伝わればと思っております。これが第一歩だと思ってますので、引き続き努力を続けていく所存です。 Q:本日はお忙しいところありがとうございました。
□ソニーのホームページ (2006年11月1日) [Reported by 石井英男]
【PC Watchホームページ】
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