大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

Let'snote 10周年記念モデルの決定版を下期に投入
〜松下電器・高木事業部長インタビュー




松下電器産業 パナソニックAVCネットワークス社 ITプロダクツ事業部 事業部長 高木俊幸氏。8月26日に行なわれたパソコン組み立て教室では、自らもTシャツを着て、参加者を迎えた

 今年(2006年)、発売10周年を迎えた「Let'snote」。4月に発表したW5、T5、R5、Y5の各製品は、10周年を記念した第1弾製品と位置付けられ、中でも防滴機能を採用したY5シリーズは、計画以上の好調な売れ行きを見せているという。

 そのLet'snote事業において陣頭指揮を執る松下電器のパナソニックAVCネットワークス社ITプロダクツ事業部 高木俊幸事業部長は、「10周年モデルの決定版ともいえる製品を今後投入する計画がある」ことを明かす。

 果たして、10周年記念モデルの決定版とは何か。2006年度上期の実績と、下期の事業展開とともにLet'snote戦略を聞いた。



-- 9月末で上期が終了しますが、国内におけるLet'snoteの実績はどうですか。

高木: おかげさまで大変順調な売れ行きを見せています。国内における上期の実績は、台数ベースで前年同期比10%増を若干下回る程度で推移しています。業界全体が前年割れというなかでは、極めて順調な実績だといえるのではないでしょうか。今年度は、2kg以下のノートPC市場において、20%以上のシェア獲得を目指していますが、これも現時点でほぼ射程距離に入ってきている状態です。

-- 10周年モデルとして投入したW5、T5、R5、Y5の売れ行きが貢献していていると。

高木: そうですね。いずれの製品も、法人からのリピートオーダーや、リプレース案件が増加していることが大きい。これまでは、一度試験的に導入しても、なかなか次につながらないということが多かったが、それが数百台単位のまとまった数で、継続的に導入していただけるようになった。頑丈(タフ)であることや、長時間連続駆動ができるといったことが認知されてはじめてきたことの証だといえます。

Let'snote W5(左)、T5(中央)、R5(右)

 特に、上期の場合は、防滴機能を採用したY5シリーズの売れ行きが予想以上にいい。企業ユーザーからの評価も思った以上に高く、同シリーズに限定すると、前年同期比20%増に近い水準で動いている。キーボードに飲み物をこぼしてしまったという経験をしている人が意外にも多く、それがYシリーズの高い評価に集まっているようです。

 企業によっては、飲み物を飲みながらPCを操作することを禁止する例もありますが、現実的には、飲み物をこぼしてしまったことを原因とする不良が後を絶たない。防滴機能は、企業がPCを購入する際の安心の1つにつながっているようです。ユーザー調査によると、Yシリーズを購入するユーザーの約3割が防滴機能を選択利用にあげています。

好調な売れ行きを見せているCF-Y5 4月の発表会ではY5のキーボードに水をかけるデモが行なわれた

-- 3割という比率は意外と少ないように聞こえますが。

高木: 防滴機能は、企業の導入担当者にとって、安心を提供できるものでありますが、やはりタフであるとか、長時間駆動が可能、軽量であるといったモバイルPCに必要とされる基本的な要素を持っていることが前提となります。防滴機能に対する3割という比率は、そうした要素に次ぐものですから、私はむしろ高い比率だと捉えています。

-- モデルごとの出荷構成比は変わりましたか。

高木: 大きな変化があったわけではありません。やはり、Wシリーズの出荷台数が最も多く、その他の3シリーズには大きな差がありません。ただ、2005年度まではYシリーズの構成比だけがやや低かったものが、2006年度上期にはRシリーズ、Tシリーズと同等の構成比にまで高まっています。

-- 防滴機能は、Yシリーズ以外にも採用する予定ですか。

高木: Yシリーズは、14.1型の液晶を搭載した製品ですから、どちらかというと机の上に設置して利用するという使い方が多い。だから、防滴の機能が必要となる場面が多いのです。TシリーズやWシリーズにも搭載して欲しいというご要望もいただきますが、私は、すべてのモデルに防滴機能は必要ではないとも考えています。というのも、現在の技術で防滴機能を搭載すると、どうしても重量の面でマイナスとなる。これでは、TシリーズやWシリーズの軽量という魅力を欠くことになる。Yシリーズ以外の製品に防滴機能を搭載する可能性はゼロではありませんが、課題をクリアできればやりたいというスタンスです。慌てて搭載して、製品の魅力を失うことだけは避けたいと考えています。

-- 一方で、上期の海外での展開はどうですか。

高木: 欧米ともに順調に事業を拡大しています。海外ではLet'snoteを「Toughbook Light」の名称で販売しており、現在は、T4、W4、Y4をラインアップしています。海外モデルでは、日本ほど軽量化を重視していませんから、HDDの脱着機能や、一部モデルでタッチパネルを採用したり、ミニポートリプリケータを標準で添付したりといったことをやっています。秋には、日本で人気のW5を投入する予定であるほか、今年は広域ワイヤレスブロードバンドへの対応を強化したい。海外でビジネスを伸ばす条件として、広域ワイヤレスブロードバンドへの対応は不可欠だと考えています。米国では、低価格指向が強い中で、Let'snoteの付加価値をどう訴えるかかが、これからの知恵の使いどころですね。

-- 松下電器は、この1年間に渡り、「タフ」というメッセージを発信し続けてきましたが、下期もそのスタンスに変わりはありませんか。

高木: それは変わりません。「タフ」という要素はまだまだ追求する余地がある。Let'snoteは、使っていて安心だというイメージをもっと定着させたいと考えています。そのために、評価方法も大きく変えています。単に落下試験や振動試験をするのではなく、実際に利用者が置かれた状況を再現し、その中で評価試験を行なうようにしています。一般的なノートPCとは異なり、Let'snoteが追求しているモバイルPCの領域では、思いもよらない場所や環境で使用されたりますから、まさに、どんなことが起こるかわからない。バイクの荷台に乗せて未舗装路を走ったり、車のなかに長時間放置したり(笑)、当社が、社内で考えた試験環境をクリアしただけでは、ユーザーが満足するタフの領域まで到達しない。実際にどんな使われ方をしているのか、お客様と接するビジネスの中から、それを知り、そこまで踏み込んで試験をやっていく必要がある。また、軽量化、長時間化といった基本的な性能に対する技術的な進化も、これまでのやり方では限界にきている。

-- どんな点ですか。

高木: 例えば、軽量化については、筐体、液晶パネル、バッテリ、プリント基板、光学ドライブというように改善できる部分は多い。しかし、それを一歩進めることが、これまでとは比べものにならないほどの難易度となっている。これらの部分で軽量化を図るには、当社だけの努力ではどうにもならないところにまで来ているからです。つまり、PCメーカーと素材メーカー、部品メーカーが一緒になって取り組んでいかなくては、これ以上の軽量化は図れない。

 例えば、Y5では、約0.2mm厚の液晶パネルを採用しています。また、W5、T5、R5では約0.3mm厚の液晶パネルを採用しています。もともとは0.6mm厚の液晶パネルを使っていましたから、大幅な軽量化と薄型化が実現できている。これも、液晶パネルメーカーと一緒になって取り組まないと実現できないことでした。例えば、12.1型の液晶パネルで、0.1mmガラスが薄くなると12g軽くなります。液晶パネルは、2枚のガラスを貼り合わせていますから、0.1mm薄くするだけで、実際には0.2mm、24g軽くなるという計算です。

 しかし、これだけの薄型化、軽量化を図ると、どうしても強度が弱くなる。そこで、今度はパネルを支えるキャビネットも開発する。これも1社の力だけではなく、パートナー企業との共同作業で開発する。つまり、これからのPCの進化は、いかに素材メーカーや部品メーカーと深い関係を構築できるかにかかっている。しかも、各社が作ったモジュールを組み合わせれば、軽量化し、タフなものになるとは限らない。組み合わせた時に思いもよらない問題が起こる。

軽量化されたシャーシ(左)と光学ドライブ(右)

 また、先にも触れたように、これまでの評価試験ではカバーできないような使い方も増えている。設計の仕方、生産の仕方、評価の仕方、そして、パートナーとの協業のやり方を変えないと、軽量、長時間、タフという要件はクリアできなくなるのです。

-- それに向けた体制づくりはどうですか。

高木: Let'snoteは、国内生産にこだわり続けています。それによって、高い製品品質を実現し、ユーザーの要求仕様にあわせて、短納期で納めることができる、あるいは修理も短い時間でできるというメリットにつながっています。一方で、こうした新たな素材や部品の開発のほとんどにおいて、日本の企業との連携が不可欠となりますから、その点でも日本で開発、設計、評価、生産、サポートを行なっている強みが発揮できます。

-- ところで、Let'snoteには、ワイド液晶搭載モデルがありません。各社からワイド液晶を搭載したノートPCが相次いでいますが、松下電器ではその動きをどう捉えていますか。

高木: 企業ユーザーを対象に、ワイド液晶は必要ですか、という調査を行なった結果、現時点では、それほど多くの企業ユーザーがワイド液晶を必要としていないことがわかりました。理由は、重量が重くなること、あるいは、PowerPointやExcel、既存の各種アプリケーションを利用していても、現在の4:3の液晶で十分であるということです。とはいえ、いつでも、ワイド液晶モデルを投入する準備だけはしています。ワイド液晶モデルをやらないというわけではなく、当社が中心に考える企業ユーザーの、いまの需要の中では必要がない、必要があれば投入していくということです。

-- 下期に10周年記念モデルは新たに投入するのですか。

高木: 今の段階でどこまでお話ししたらいいのかわかりませんが(笑)、下期には、10周年記念モデルの決定版ともいえるものを投入する予定です。Let'snoteは、'96年6月の「AL-N1」が第1号製品ですが、現在のLet'snoteは、ビジネスモバイルに特化した「ライト&タフ」という製品コンセプトを明確に打ち出した第2フェーズといえるものであり、これは、2002年3月に発売した「CF-R1」を原点としています。つまり、10年間に渡りLet'snote事業が継続できたのも、この2002年のCF-R1の存在が見逃せない。ですから、事業部としては、10周年記念モデルとして納得のいく製品を投入したいとは考えています。もうこれ以上はお話しできませんが(笑)、決定版ともいえる10周年記念モデルの投入にも期待していてください。

Let'snoteの第2フェーズの第1号機といえるCF-R1 Let'snoteの10年間、100万台の歩み

□松下電器のホームページ
http://panasonic.jp/
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【2005年12月19日】【大河原】松下電器産業 高木事業部長インタビュー
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/1219/gyokai145.htm

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(2006年9月13日)

[Text by 大河原克行]


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