「W-ZERO3[es]」ことWS007SHが7月27日に発売された。すでに発表会のレポートなどがあるので、ここでは、スペックや外観などについては解説しないことにする。 パッケージの内容は、WS003SH/WS004SHとそう変わりない。ただ、ACアダプタが薄型のものに変更になり、差し込み部分を折りたためるようになっている。スペックは同じ出力の5V1Aで、こちらのほうが持ち運びに便利だ。あとは、メールソフトウェアなどが追加された関係でマニュアルが若干厚くなっている。 今回は、ハードウェア編をお送りし、搭載ソフトウェアなどに関してはもう少し評価してからレポートする。
●さっそく開けてみました WS007SHの筐体構造は、サイズが違うことを除けばWS003SH/WS004SHとほとんど同じである。スライドするフレームの上下に液晶部とキーボード部が付き、その間がフレキシブル基板で接続されている。閉じたときの固定は、レールにあるバネと磁石の組み合せというのも同じ。筐体構造だけをみれば、WS003SH/WS004SHの左右を詰めただけになっている。 ただ、WS007SHは、WS003SH/WS004SHよりも幅が狭いため、バッテリ形状が変わっており、バッテリとカメラ/スピーカー部が縦に並ぶように配置されている。このバッテリ、見た目は、小さくなっているが容量的には従来のWS003SH/WS004SHと同じ。ただし、厚みが若干増えている。 バッテリのある側は、WS003SH/WS004SHでは、バッテリの左側にカメラやスピーカーが、右側にスタイラスの格納部分があったが、WS007SHでは、バッテリが短くなり、その空いたスペースにカメラやスピーカーが配置されている。 筐体が小さくなった分、WS003SH/WS004SHよりも分解は難しくなっている。ネジの数が増えていて、カメラ部分を覆う銀色のプラスチックの下に隠れたネジなどもある。本体側の上下の黒い部分は、別のプラスチックで接着剤で貼り合わせてあるようだ。分解するときには、ここに力をかけないようにしないと接着が剥がれてしまう。
●小さくなったメイン基板 WS007SHの筐体の中ほぼいっぱいにメイン基板が入っている。つまり、筐体を小さくできたのは、メイン基板を小さくできたからだ。しかし、部品的には、無線LANが無くなった程度である。 メイン基板は、一方にキーボード用のメンブレンスイッチとキー照明用LEDが付き、反対側が部品面になっている。これも従来のWS003SH/WS004SHと同じ。メイン基板上のパーツだが、主要なものは従来機種とほとんど同じか、上位互換のチップが使われている。ただ、ファイル領域用のNANDフラッシュメモリとメインメモリ(SDRAM)は、マルチチップとして1つのパッケージに入ったものが使われている。WS003SH/WS004SHのNANDフラッシュはフットプリントがかなり大きかった。今回、小型化にあたり、部品点数を少なくするためにマルチチップが使われたのだろう。このマルチチップはSamsungのものと思われる。 コネクタ関係はすべて基板上に載っているが、本体右側面のボリュームと画面回転スイッチは、別基板に載っていて、メイン基板とはフレキシブル基板で接続されている。ここも、WS003SH/WS004SHではメイン基板に取り付けられていた。メイン基板上のスイッチとしては、バッテリ室側のフルリセットボタン、バッテリカバー検出スイッチなどがあるのみ。WS003SH/WS004SHにあったシャッターボタンはなくなっている。 システム起動用のNORフラッシュとCPLD(Complex Programmable Logic Device)はWS003SH/WS004SHと同じである。CPLDについてはXilinxが発表を行なっており、それによれば、これは、キーボードインターフェイスやI/Oなどに使われているようだ。 WS003SH/WS004SHの時には解説しなかったが、CODECチップのそばにあったデバイスは、TIのCODECとアンプを統合したデバイス「TLV320AIC28」と判明した。WS003SHのとき“WZ3”というシルク印刷があったためにカスタムチップかと思っていたが、これはTIの「TLV320AIC28」だった。もう1つのサウンドチップである「WM8976」にもアナログ/デジタル、デジタル/アナログのコンバーターが搭載されていて、これらの機能はかなり重複している。 1つは、CPUと直接接続していてCPUからの音声データを再生したり、音声を取り込んでデジタル化する場合に使われていて、もう1つは、W-SIM用の音声を扱うのではないかと思われる。というのは、W-SIMは、音声通話用のCODECを外部に接続するようになっているからである。WS003SH/WS004SHとWS007SHとの主要なデバイスを比較したのが下の表である。
【表】WS007SHとWS003SH/WS004SHの主要デバイスの比較
また、WS003SH/WS004SHで液晶側との接続用に使われていたSER/DES(直列/並列変換)デバイスは見あたらなくなった。これなども、メイン基板小型化に寄与している。WS003SHの記事のとき、これを液晶側との通信用と考えたのは、メイン基板、液晶側の両方に同じSER/DESが載っていたからだ。今回も液晶側とキーボード側は同じようなフレキシブル基板による接続だが、どうも信号線の数は増えているようだ。また、WS007SHでは、液晶側には、シャープ製のLH38891というデバイスが載っている。このデバイスそのものはシャープのサイトなどに情報はないものの、近い番号のものにLCD関係のコントローラーがあったので、似たような用途のデバイスかもしれない。 WS007SHは、外見やデバイスなどに違いはあるが、回路や筐体は、WS003SH/WS004SHをベースにしたものといえる。メイン基板が小型化するなど着実に改良されているといっていいだろう。
□W-ZERO3[es]の製品情報 (2006年7月28日) [Text by 塩田紳二]
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