ウィルコムの「W-ZERO3」は、国内初のWindows Mobile 5.0搭載スマートフォン。製造は、シャープだ。これまで国内でもSymbian OSを搭載した携帯電話はあったが、Windows Mobile(Windows CE)を搭載した機種はなかった。 ベースがPDAであるため、このW-ZERO3は、Pocket PC用に作られたアプリケーションを動かすことができる。また、いろいろなアプリケーションを使いながら電話としても利用できる。 Symbian OSを搭載したボーダフォンの「702NK」やドコモの「M1000」も、ネイティブのアプリケーションをインストールすることはできるのだが、Pocket PCに比べるとソフトウェアの数はまだ少ない。 このW-ZERO3の登場で、ようやく日本もスマートフォン普及の兆しが見えてきた。この機種の評判いかんでは、これに追従する事業者も出てくると思われる。W-ZERO3は、14日に発売されたが、PCを扱うような大手量販店などでは売り切れ状態。多くは、予約だけで当日販売することもなかったという(もっとも単に製造数が少ないだけという話もあるが)。また、9日にウィルコムのサイトで予約が始まったが、アクセス集中でまともに予約することもできなかった。筆者も2回、バスケットに入れるところまで進めたものの、その先でタイムアウトし、予約することができなかった。 現在では、W-ZERO3は、一部店舗での予約受け付けと、ウィルコムサイトでの抽選販売のみ。14日にあちこちの量販店で再入荷について聞いてみたが、年内入手は無理とのことだった(あくまでも筆者が新宿、秋葉原近辺で聞いた話である)。 ●スペック W-ZERO3は、CPUにIntelのPXA270を採用、クロックは最大416MHzである。国内の通信端末にPXA270が搭載されるのも初めて。ここ3年ほど、Intelは、携帯電話での採用を目標にがんばっていたが、ようやくの搭載である。 メモリは、RAMが64MB、フラッシュROMが128MBとなっている。Windows Mobile 5.0からは、ユーザーファイルは、フラッシュROM側に格納され、RAMは純粋に実行用となった。従来のPocket PCでは、RAMをファイル領域と実行用メモリに分割して使っていたため、多数のプログラムをインストールしてしまうと実行用メモリが足りなくなってしまうことがあった。しかし、W-ZERO3は、ストレージ領域と実行用メモリが分離されているため、こうした問題は起きない。 なお、W-ZERO3では、75MBをユーザーファイルとして利用可能となっている。これで足りなければ、miniSDカードによりストレージ領域を拡大することが可能。 液晶は、3.7型のVGA解像度で最大65536色表示が可能なもの。また、ソフトウェアにより、画面の向きを縦、横に切り替えることができる。 インターフェイスとしては、PCとの接続用のUSB端子のみだ。miniSDはあるが、CFスロットはない。また、今のところ、miniSDはSDIOとして利用することもできない。 ただし、W-ZERO3は、最大128kbps(4xパケット方式)での通信が可能なW-SIMを内蔵していることに加え、IEEE 802.11b無線LANも内蔵しているため、拡張の必要性はあまりないだろう。 ●パッケージ W-ZERO3のパッケージは、普通の携帯電話などと同じような箱である。中には、 ・本体 が入っている。付属CDに収録されている同期ソフトは「ActiveSync 4.0」で、これにはすでに不具合が見つかり、Ver.4.1にアップデートされている。箱に入っていた紙(これを「投げ込み」という。マニュアルの印刷も終わり、出荷ぎりぎりになって判明した問題などがあったときに入れられるものだからである。特に注意を引きたくて別の紙にしているわけではない)にも注意書きがある。また、このCDには、他社のPocket PCのようにOutlookが含まれていない。PCとスケジュールやメールの同期を行なうには、別途ユーザーが用意する必要がある。 オマケのソフトウェア(無線LANのユーティリティやOperaなど)もこのCDの中にはなく、W-ZERO3を使って専用サイトからダウンロードする。このため、このCDを開封しなくともすべてのセットアップを行なうことが可能だ。なんだか、慌てて作られたって感じがする。
●筐体 W-ZERO3は、黒いプラスティック製の筐体で、中央部分は正面、裏面とも光沢があり、側面部分には、革のような細かい凹凸が付けられている(滑り止めか?)。 筐体は、2枚の板を合わせたような構造で、裏側を横にスライドさせることでキーボードが現れる。複雑そうな仕組みだが、がたつきも少なくしっかりとした印象を受ける。半分ほど動かすとあとはバネの力で自動的に開閉する。 キーボードは、両方の親指で操作することを想定しており、左右の端を中心とした円弧状に配置されている。クリック感もありそれなりの高級感を感じる。キーは、シフトキーとFnキーにより文字や記号の入力が可能で、ドライブモードやバックライト輝度の調整などが可能。 スイッチやコネクタ類は両側面にあり、コネクタ類はすべてカバーが付けられている。液晶の下部には、5Wayナビゲーションキー(カーソルキー)と4つのアプリケーションボタン(Pocket IE/スタートメニュー/OK/電子メール)、電話用のオンフック/オフフックボタンと2つのソフトキーがある。ソフトキーは、Windows Mobile 5.0から取り入れられたもので、PCでいうファンクションキーである。アプリケーションや状態に応じて、画面下に現在の機能が表示され、多くの作業をこの2つのソフトキーで行なうことが可能だ。 背面には、内蔵カメラ(113万画素)があり、横にして持つと側面にあるシャッターボタンがカメラのように右上に来るようになっている。 また背面はほとんどカバーになっており、中にはバッテリとW-SIMスロットがある。W-SIMは、PHS電話機能の主要部分を組み込んだモジュールで、SDメモリーカードを少し長くした程度の大きさ(厚さは倍ぐらい)。ちょうどメモリースティックとSDメモリーカードの中間ぐらいの長さ。 ここにRF部やベースバンド、回線交換やパケット通信機能などが集積されている。認定番号などもここに記載されており、これが電話機本体で、W-ZERO3は付属品である。PHSは、マイクロセル方式を使うため、送信出力が小さく、また、基地局との距離も数百m程度であるため、ここまで小型化できるのであろう。
●ソフトウェア W-ZERO3は、PocketPC EditionのWindows Mobile 5.0を採用している。海外のスマートフォンでは、SmartPhone Editionを使っている。これは、SmartPhone EditionがGSM方式の電話を前提としたものであり、W-SIMを使うW-ZERO3には、ほとんど流用できるモジュールがなく、電話関連のモジュールを独自に作る必要があったためだという。 Windows Mobile 5.0の内蔵ソフトウェアは、従来のPocket PCのものを継承しているが、一部拡張されたところがある。Windows Mobile 5.0では、PowerPointの表示機能が追加されており、標準のメディアプレーヤーは、Windows Media Player 10相当になった。 サードパーティプログラムとしとては、Picsel PDF Viewer、Java(アプリックスのJBrend)、ブンコビューアー、バックアップツールなどが組み込まれている。また、電話関連の機能はシャープで開発したものが搭載されている。 起動直後に表示されるToday画面でマナーモードなどへの設定ができるほか、下部には、現在のモードを表すアイコンが表示される。このあたりは、日本の携帯電話を意識した作りである。 試作機を触ったとき、動作にもたつきがみられたが、製品版ではかなり改善されているようだ。なお、ソフトウェアについては、次回のレポートで詳しく紹介したい。
●電話機としての使い心地 W-ZERO3は、姿はPDAだが、各所に日本の携帯電話(PHSだが)的なところがある。たとえば、オフフックボタンを押すと自動的に電話アプリケーションが立ち上がり電話をかけることができるようになる。このとき、5wayナビゲーションキー(カーソルキー)の左右で発信履歴、着信履歴がアクセスできる。 着信は、画面が消えたスタンバイ状態であれば可能だが、電源を切ってしまうと着信することはできない。これも携帯電話と同じ。 着信音は、Windows CEとして扱える形式のサウンドなら指定が可能で、WMAやMP3などが利用可能。手持ちのサウンドデータなどが使え、携帯電話のように高い金を出してサウンドや音楽をダウンロードする必要はない。このあたりはPDA的なメリットか。 マイクは、キーボード側、メールキーの下あたりにあり、通話用のスピーカーは液晶の上部、通常のスピーカーは、背面にある。バイブレーターが組み込まれており、着信やメール到着時に振動させることも可能。 ただ、PDA的に使いながら、通話するにはイヤホンマイクが必要。本体のマイク、スピーカーを使って通話するには、普通の携帯電話のように持たねばならない。イヤホンマイクは、ドコモのFOMAと同じものが利用できる。これは、他社の3G携帯電話でも採用されているため、入手は難しくない。 だが、イヤホンマイクをつないだままだと取り扱いがちょっと不便。個人的には、液晶面に顔のアブラが付くので頬に当てて使いたくない。ここは、Bluetoothを搭載してほしかった。
□ウィルコム「W-ZERO3」の製品情報 (2005年12月21日)
[Text by 塩田紳二]
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