米国で販売中のソニーの「mylo」は、“Personal Communicator”という位置付けの機器。 なんだかPSPを小さくしたような感じのデザインで、音楽や静止画、動画プレーヤーとOpera Webブラウザ、Skype、Google Talkなどを搭載している。無線LANが内蔵されているため、ホットスポットなどで、チャットや通話(マイク内蔵)が利用できる。 現在、取材で米国に来ているのだが、暇つぶしのつもりで購入。だが、このマシン、ちゃんと日本語が表示できる。内蔵しているWebブラウザで、日本語表示が可能なばかりか、テキストファイルの表示やMP3のID3タグ表示などで、何もせずに日本語が出るのである。 2005年から、やれ、CCDだ、リチウムイオンバッテリだと、ソニー製品を買ってもいないのに、不良品に悩まされてきたが、このmyloで筆者のソニー評価が2段階ほど回復した感じである。 購入は、米国のFry's Electronics。価格は349.95ドル。1ドル110円換算で、約38,500円ぐらい。色は白と黒の2色あり、筆者が購入したのは黒である。細かい点などは、myloのサイトを参照されたい。 ただし、CPUやOSなどの仕様は公開されていない。中を開けてみようと思ったが、特殊なネジが使われていて、米国滞在中なので工具がなく断念した。帰国したら、分解して再度レポートすることにしよう。 ただ、OSはLinuxでGUIツールキットにTrolltechの「Qtopia」を使っていることはわかっている。この点でみれば、シャープのLinux搭載「Zaurus」と兄弟みたいなマシンである。 ●ほんとの名前はCOM-1 この製品だが、「Personal Communicator COM-1」というのが正式名称である。なんだかMS-DOSのシリアルポートみたいな型番である。だが、このCOMと1の間のハイフンは重要だ(WindowsでもCOM1というファイル名は使えない)。ちなみにmyloとは愛称で、“MY Life Online”の略のようである。 本体は、2つの円盤を並べたような感じで、左右側面に透明部品が使われていて、電源や充電、無線LAN状態などでこの部分が光るようになっている。正面には、液晶と4つボタンと円形のカーソルキー(内側のオレンジの部分が実行キー)となっている。また、本体左側の円盤部分がスライドするスイッチになっていて、下が電源ボタン、上が無線LANのON/OFFスイッチ(無線LAN接続ツールが起動)になっている。 本体背面は、バッテリホルダ部分とボリュームボタン、ホールドスイッチなどがある。また、側面には、USBコネクタ(ミニB)とヘッドフォン用コネクタ(携帯電話用の平型コネクタによくにている)、ジョグスイッチなどがある。また、メモリースティックスロットは、カバーで覆われているが、このカバーは、柔らかい部品で本体とつながっているため、取り外すことはできないようになっている。 この液晶部分を上にスライドさせるとキーボードが現れる。キーボードは、シート状のものだが、キートップがふくらんでいるため、比較的押しやすい。両手で持って、親指で操作する感じで、慣れればタッチタイプとはいわないまでも、比較的高速な入力が可能。 液晶は、2.4型のQVGA(320×240ドット)液晶。TFTで65,536色の表示が可能。写真などを表示させてみたが、色がおかしくなるようなこともない。 本体には、1GBの記憶用メモリ(おそらくはフラッシュメモリ)が搭載されていて、ここに音楽や写真、動画などを置くことができる。画像や音楽は、各種フォーマットに対応しており、特に変換を行なう必要もない。また、メモリースティックPROデュオスロットがあるので、拡張も可能だ。SDカードスロットが欲しいところだが、ソニー製品だからしかたがない。 バッテリは、リチウムイオンで、音楽再生のみなら45時間、動画再生で8時間、無線LANを使ったインターネット接続だと連続3.5時間となる。無線LANを使ったときの3.5時間をどう見るかだが、まあ、ちょっとした外出であればなんとかなる範囲だろう。
●内蔵ソフトウェア
電源を入れると、メロディが鳴り、しばらくするとホームメニューが表示される。これは最初だけで、一度メニューが起動すると、次回からは電源を入れるとすぐに前回利用していた画面が復帰する。バッテリを一度抜くとまた、起動に時間がかかるようになるので、RAMなどのバッテリバックアップされている部分の初期化などを行なっていると考えられる。 最上位のメニューは、 ・What's Up の8つ。操作は、円形のカーソルキー(上下左右と実行キー)とHome、Backの2つのボタンで行なう。Optionは状況に応じたコンテキストメニューとして、Infoは表示している写真や音楽の情報を表示する場合に使う。 ホーム画面からメニューをたどることで、すべての機能にアクセスができる。プログラムを組み込んで実行するような機能は用意されていない。その点では、完全に家電的である。 「What's Up」は現在再生中の音楽の情報を表示したり、登録した知り合いのSkypeやGoogleTalkのIDを登録しておくところ。 「Communication」は、サブメニューとしてSkype、GoogleTalk、Yahoo! MessengerとAdhoc Applicationに分かれている。Adhoc Applicationは、無線LANのアドホックモードで、mylo同士を接続し、他のmyloで再生している音楽を聴くことができる。 「Web」で搭載されているブラウザはOperaに相当するが、その前にサブメニューとしてブックマークの参照やURLの直接入力などが行なえる。また、表示しているWebページを保存する機能もあり、オフラインでの利用に備えて、ページを記憶させておくことが可能だ。
無線LANの接続などは、必要に応じて自動的に接続ページが起動するし、本体側面の無線LANスイッチからも行なえる。見つかったアクセスポイントのSSIDやWEPキーが登録してあるなら、接続は自動的に行なわれる。 「Music」は、音楽プレーヤーで、MP3のほか、WMAやATRACにも対応している。MP3でしか試していないが、ID3v2タグによる表示などに対応している。なお、COM-1のUSB接続には、MTPモードがあり、これを使うと、Windows Media PlayerがCOM-1をポータブルオーディオデバイスとして認識し、同期操作などが行なえるようになる。 付属してくる音楽管理ソフト「SonicStage」を使う場合には、USBモードを大容量記憶装置モードにして使う。このときには、WindowsのExplorerからそのままCOM-1内のディレクトリが見えるので、ファイルを自分で転送することも可能だ。
「Photo」は、静止画の表示機能で、スライドショーも可能。JPEG、PNG、BMPに対応し、JPEGでは、すべてではないがExif情報を表示することもできる。800万画素のデジカメ画像を表示させると、表示まで少し待たされるものの、ちゃんと表示できる。発色もそう悪くなく、デジカメ写真を入れて持ち歩き、人に見せるといった用途にも十分利用できる。 付属CDには、前述のSonicStageとともにPC上で動作する「mylo Utility」が収録されている。その中に画像転送ツールがあり、これを使うと、写真、プロファイル登録用イメージ、壁紙の登録がPC側から行なえる。それぞれ、最適な解像度、たとえば写真ならばQVGA解像度、プロファイル用ならば96×96ドットなどに変換が行なわれる。機能的には、サイズ変換を行なわなくとも表示は可能だが、液晶に見合ったにあった解像度なら、記憶領域を有効に使えるし、表示も速くなる。 「Text」は、簡単なテキストエディタで、EUC、Unicode、Shift-JISの3種の日本語文字コードに対応している。ただし、今のところ入力できるのはアルファベットのみ。だが、Shift-JISのものがそのまま表示できるのはありがたい。
●無線LANが使える環境なら COM-1の基本機能は、コミュニケーション、Web、そしてメディアプレーヤーで、PDAではないが、無線LANが使える環境なら、GoogleカレンダーやGMailで予定管理や電子メール、そして、GMail/GoogleTalk、Skypeの連絡先管理でなんとかなりそうだ。 PDAといえばアドレス帳や予定表が必須という感じだったが、こうしていろいろなサービスが登場し、また、コミュニケーション手段がメールやVoIP通話などいろいろ出てくると、それも変わってくる。 無線LANというある程度高速なネットワークが、このサイズでちゃんと使えるというのがこのPersonal Communicator COM-1の魅力といえる。Webブラウザを搭載している点が、無線LANを使った安価なSkype専用端末とは違うところ。無線LANの上で動く「携帯電話」といった感じの製品か。 □myloの製品情報(英文) (2006年10月12日) [Text by 塩田紳二]
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