第319回

2006年は“モバイルPCベンダーの意気を感じる年”に



 昨年最後のコラムとなった第272回は「2005年は“モバイルPCを買い換えたくなる年”に」というタイトルだった。HDDの容量アップに関しては期待がはずれた面もあるが、国産PCベンダーの踏ん張りに関しては予想を超えて良い成果が見られたように思う。実際、Intel製モバイルプロセッサが停滞した1年にもかかわらず、さまざまな切り口で製品の魅力を引き出した製品が多かったように思う。

 デスクトップPCに比べれば、CPUやチップセットのスペックに対する依存度が低く、製品の魅力はメーカーの能力に委ねられているという意味では、ノートPCは物作りに長けた日本のベンダーに有利な分野だ。

 しかしそうは言っても、コスト下げ圧力はそうした優位性をも押しつぶす勢いである。その中で各社が“モバイルコンピューティング”という枠の中で、コストに見合う物作りに真剣に取り組んだ結果として見ると、今年1年を物作りを見つめ直す1年間として過ごしたのは、PCベンダーにとってプラスだったと思えるに違いない。

●Intel Coreだけに頼らない物作りの体制

 例によって年末に来年の話をする際は、具体的なベンダー名は出しにくい。下手をすると特定ベンダーの製品計画を開かすことになってしまうからだ。しかし1つだけハッキリとベンダー名を明かせるのがレノボである。

 IBMからレノボとなって、初めての主力ThinkPadフルモデルチェンジが、年明けもそれほど時間を空けずに行なわれるだろう。もちろん、正式発表を行なっているわけではないが、これまでIBM/レノボはThinkPadシリーズを計画的にモデルチェンジしてきており、現行Tシリーズ登場から3年近い時間が経過していることから考えて、Tシリーズ、Xシリーズのモデルチェンジが近いのでは、と見られている。

 以前、日本IBM時代にThinkPadシリーズの企画/設計をとりまとめていた小林正樹氏は、次のフルモデルチェンジでは大幅なアーキテクチャ全体の更新を図ると明言しており、ドッキング端子など周辺機器との連携なども含め、大きな更新となるだろう。

 すでにZシリーズではチタンカラーのトップカバーやACアダプタの変更などが行なわれており、来年、Yonahと同時期に発表する新製品では、レノボとしての設計能力を世に問う製品となりそうだ。

 もっとも、レノボだけに限らず、日本のベンダーは、どこもIntelの新しいIntel Coreシリーズに頼った物作りを行なうつもりはないようだ。

 これまでのパターンでは、全く新しいアーキテクチャが登場すると、まずはマイナーチェンジで既存筐体へと載せ、その後にフルモデルチェンジで新しいIntelプラットフォームにフィットした製品を開発するというサイクルだった。

 もちろんそうした製品もあるだろうが、Yonahや年末に一部機種から搭載されると目されるMeromの能力に頼り切った製品はODMやOEMに任せ、独自性のある製品で攻めてくるベンダーが多い。

 あるいは今年、プロセッサのクロックアップやアーキテクチャ変更による需要喚起にたよれなくなったことで、より一層、独自の差異化要因開発へと傾倒したからなのかもしれない。国内工場でのモバイルPCの生産と言えば、富士通や松下電器、ソニー、東芝などが知られているが、どこの生産工場も利益や雇用を確保するためにも、競争力確保に必死だ。加えて最終組み立て以外はすべて海外に移転していたNECも、米沢で設計はもちろん、基板実装から生産を行なう体制を整えてきている。

 こうした懸命さは、さほど遠くないうちに製品へと反映されることだろう。まずは1月、Yonahの発表に注目だが、もちろん、その先にもさまざまな製品が控えている。

●ほとんど遅れていなかったWindows Vistaの開発スケジュール

Windows Vistaビルド5270のスクリーンショット
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 来年の動向を占う上で、どうしても避けられないのがWindows Vistaの動向だろう。

 OEM筋からWindows Vistaのβ2が大幅に遅れるとの情報をもらったとき、一瞬「またか」と思ったが、どうもMicrosoft関係者によると話が違うようだ。若干の開発遅れはあったものの、ほとんどスケジュールへの影響はなかったのだという。

 β2がもっとも早くテスターに渡るタイミングは来年の2〜3月ぐらい(4月説もある)になるようだが、これはむしろリリース時期を早めるための措置だ。

 β2は開発者限定のβ1とは異なり、比較的幅広いユーザーに配布するため、それなりに安定して動作しなければならない。また機能面でもある程度フィックスさせ、大きな問題がなければ、そのまま製品化に迎える程度には、ユーザーインターフェイスなども整備されている必要がある。もちろん、幅広いユーザーに使ってもらうとなれば、ドライバの充実も不可欠だ。

 しかし、そうした安定した中間バージョンを作るには、かなりの工数がかかる。開発はもちろんだが、ある程度のテストも行なって不具合についてあらかじめ確認しておく必要もあるだろう。β2としてリリースできないと判断した機能に関しては、再度、開発にコードを提出してもらうか、あるいは機能を落とすといった判断も必要となる。

 要はそうしたβ2を発行するためのプロセスを惜しんででも、スケジュールを少しでも前倒しにする必要に迫られているわけだ。

 Windows Vistaの発売は年末ごろと言われているが、実際には年末商戦に参加するすべてのPCに搭載されるのが理想である。しかし、早いところは9月ぐらいから年末向けモデルを発表しはじめる。また年末商戦ともなると新機種数も多い。これらを考えると、少なくとも7月には製品版のOSイメージが必要だと、PCベンダーは強く主張している。

 このため、MicrosoftはWindows Vistaのβテストコミュニティに対して中間ビルドを継続的に提供しながら、機能やバグに関するフィードバックを集めて改良し、β2兼RC0をリリースする。

 おそらくはβ2として開発が続けられていたバージョンは、すでにWindows Vistaのβサイトにビルド5270としてアップロードされている。β1やその後にリリースされたビルド5219に比べると、ドライバが増加し、機能的にも洗練され、ユーザーインターフェイスの改善も一部進められている。動作も格段に軽くなってきた。

 ビルド5270に関しては、近いうちにどのようにして実装が進んでいるかを検証次第、この連載の中でお伝えすることにしたい。

 ただし、良い事ばかりではないかもしれない。具体的な取捨選択の表などは見せられていないが、どうやらリリースを優先させるため、進捗の遅い機能を次々にカットしていく措置が取られているという。重要な機能は落とさないと思いたいが、重要な機能ほど実装が難しいものだ。心配が杞憂になることを願いたいものだ。

 とはいえ、本格的にリリース時期最優先で走り出しており、年末商戦にWindows Vistaが間に合う事は間違いなさそうだ。

Windows Vistaビルド5270のスクリーンショット(別ウィンドウで開きます)

●モバイルPCユーザーにとって2006年は

 さて、最後に2006年、モバイルPCはどのようになっていくのだろう。

 おそらくモバイルPCを利用するユーザーは、PCベンダー側のさまざまなアイディアに感心したり、あるいは閉口したりと、さまざまな意味で楽しめる年になると思う。国内のPCベンダーは、どこも自社ブランドを確立させるために、製造業者としてシンボルとなり得るような製品作りを必要としている。

 景気の良い時期には、コストをかけた豪華な製品が登場することはあるが、細やかな気配りやユーザーシナリオにフィットした使い勝手の提案といった部分、あるいは品質や最新技術の積極的な導入おいった面でマイナスに働く事が多いものだ。2005年というPC業界にとっては足踏みが続いた時期は過ぎたからこそ2006年は、新しいチャレンジを行なえる年であると思う。

 それは個人的な希望ではない。PCベンダー各社と話して感じる意気込みだ。

 もちろん、中には“いやぁ、これはおもしろいとは思うけどなぁ”といった、少し外した製品もあるかもしれない。しかし、的を射た製品を100%企画/開発することなど不可能である。我々ユーザーとしては、情熱を傾け知恵を振り絞った結果の製品を楽しみたい。

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【2004年12月28日】【本田】2005年は“モバイルPCを買い換えたくなる年”に
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/1228/mobile272.htm

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(2005年12月27日)

[Text by 本田雅一]


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