Microsoftは12月19日(現地時間)、Windows Vistaの最新β版リリースとなるWindows Vista December Community Technology Preview(CTP)を同社のβテスターやMSDNに加入している開発者などに公開した。 ビルド番号では、ビルド5270となるこのバージョンは、10月半ばに公開されたビルド5231のβテストフィードバックなどを元に作られたβ2候補で、米国がクリスマス休暇に入る前ということもあり、まさに今年最後のβ版ということになる。 今回のビルド5270ではユーザーインターフェイスにも若干手が入れられ、Windows 95から慣れ親しんだ四角いスタートボタンが丸くなるなど、見た目にも大きな変更が入れられているのが特徴だ。 徐々にだが、β2に向けてバージョンアップしている様子がうかがえる。 ●四角いスタートボタンが、丸に変更される Windows Vista CTPのビルド5270(以下ビルド5270)では、パッと見でわかる大きな変更がある。それが、タスクバーのスタートボタンだ。スタートボタンと言えば、Windows 95以来四角なボタンと相場が決まっていた感があるのだが、今回のビルド5270ではボタンが丸に変更され、さらに“スタート”という文字も無くなり、Windowsのアイコンだけが表示されるものになっている。 だが、変わったのはスタートボタンだけではない。スタートボタンを押すことで表示されるスタートメニューの構造も、Windows XPと大きく変更されている。 Windows XPでは、インストールされているプログラムは、すべてのプログラムを選ぶとスタートメニューからはみでて表示されていたが、ビルド5270ではスタートメニューの左側に表示されているよく使うアプリケーションを隠す形で表示される形に変更されている。 また、Windowsの終了のさせ方も変わっている。Windows XPでは下段にログオフとシャットダウンのボタンがあり、シャットダウンのボタンを押すと、電源をシャットダウンするのか、サスペンドするのか、リブートするのかを選ぶメニューが表示するようになっていたが、ビルド5270では鍵のボタンと電源ボタンの2つに変更された。鍵のボタンを押すと、PCはロックされ、ユーザーがパスワードを入力するまでは使えないモードへと移行する。電源ボタンの方は押すと標準でサスペンドへと移行することになる。 なお、リブートやシャットダウンをしたいときには、鍵ボタンの横にあるメニューからリブートやシャットダウンを選ぶことで選択できる。このように、シャットダウンやリブートは一階層下がったところに位置していることから、Microsoftとしては、今後Windowsの終了はスタンバイを標準にしたいという意向を持っていることがわかる。
●セキュリティ周りの機能が強化、アンチスパイウェアはWindows Defenderに ビルド5270のもう1つの特徴は、β2に向けセキュリティ周りの機能が強化されていることだ。ビルド5270では、Microsoftの認証を受けていない実行ファイルやDLLなどを呼び出す場合に、その都度Windows Securityの画面が起動し、本当に実行してよいのか、ということをユーザーに尋ねる仕様になっている。 Security Centerに関してもバージョンアップが加えられており、ServicePack2のSecurity Centerにはないアンチスパイウェアの項目が追加されている。また、これに合わせて、Microsoft製アンチスパイウェアであるWindows Defenderが搭載された。これは、現在Microsoft Anti-Spywareとしてβテストが続けられているスパイウェア検出ソフトウェアのWindows Vistaバージョンで、Windows Vistaでは標準で搭載されることになる。Windows Defenderも、Microsoft Anti-Spywareと同じようにスケジュールされたスパイウェアの検出や、リアルタイム保護などの機能が用意されている。
●Windows Media Player 11とVista用メディアセンターが搭載 今回のビルド5270のもう1つ大きな変更点としては、Windows Media Playerがバージョン10(Windows Media Player 10、以下WMP10)からバージョン11(Windows Media Player 11、以下WMP11)へとバージョンアップされている。従来のビルド5231ではWindows Media Playerの機能はバージョン10で、現在のWindows XPとほぼ同じものが実装されていた。 ただし、WMP 11はパッと見はあまりWMP 10とは大きな違いは見あたらない。ほとんどの機能はWMP 10と同等であり、若干デザインが変わっていることをのぞけば、ほぼ同じような機能であると言っていいだろう。MicrosoftのWebサイトによれば、今回のビルド5270に搭載されているWMP 11は開発中の機能限定版で、WMP 11のすべての機能を実装したものではないという。なお、WMP 11のより詳細な情報は、2006年1月にラスベガスで開催されるInternational CESで語られる予定となっている。 また、ビルド5231でも実装されていたメディアセンターも、Update Rollup2(開発コードネーム、エメラルド)相当のバージョンから、Windows Vista用へとバージョンアップされている。ただし、ユーザーインターフェイスの見た目などは、ビルド5231とほぼ同等で、特に今回目新しい機能は追加されていない。メディアセンターに関しても、やはりInternational CESでより詳細な情報が公開される予定だ。
●NVIDIA GPUやIntel 945GでもAero Glassが動作 後藤氏のレポートにもあるように、新しい3Dを利用したユーザーインターフェイスであるAero Glassへの対応がWindows Vistaの課題の1つとなっている。 今回のビルド5270では、それに関しても進化を見せている。具体的にはビルド5231では、Aero Glassが動作していなかったNVIDIAのGPUと、Intel 945Gの内蔵GPUでも動作するようになっている。ビルド5270では、新しいバージョンのドライバWDDM(従来はLDDMと呼ばれていたWindows Vista専用のグラフィックスドライバ)が提供されており、ATI以外でもAero Glassが動作するようになっている。 実際、筆者は手元にあったGPUを搭載したシステムに、ビルド5270をインストールしてみたが、いずれのGPUでも、Aero Glassの特徴の1つである透過ウインドウなどの機能が実現されていた。
NVIDIAとIntelではAero Glassが動作しなかったビルド5231に比べると大きな進化ということができるだろう。 もっとも、現状ではあくまで動いた、というレベルであり、今後は、各OEMベンダやβテスターなどで、実際のアプリケーションなどと組み合わせての動作検証が行なわれ、その結果がβ2に反映されることになる。 ●徐々に姿を見せるWindows Vista、4月のβ2に向けてテストは続く 以上のように、今回リリースされたWindows Vista December CTP(ビルド5270)は、明らかに前リリースのビルド5231に比べて完成度が上がってきている。特に、ATIのGPUだけでなく、NVIDIAやIntelのGPUでもAero Glassが動くようになってきたのは、一歩前進といえ、Windows Vistaの完成度にやきもきしているOEMベンダの関係者にとっては良いニュースと言えるだろう。 今回のビルド5270でのフィードバックは、次のCTPや4月に予定されているβ2に反映されることになる。これからβテスタや開発者がこのビルド5270を利用してさまざまなテストを行なっていくことになるわけだが、果たして4月に予定されているβ2の出来は、どのようなものになるのだろうか、期待したいところだ。 □関連記事 (2005年12月21日) [Reported by 笠原一輝]
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