笠原一輝のユビキタス情報局

Xbox 360の消費電力と騒音を調べる



 13日のレポートでは、Xbox 360のPC連携の機能に関してお伝えした。今回は、Xbox 360をリビングに置く場合に気になる騒音、消費電力など、具体的な使い勝手などについてレポートしていきたい。

●動画再生はHDDからのみ

Xbox 360

 前回は、Ethernetなどの物理ネットワークを利用してIPベースのホームネットワークにXbox 360を接続した時の使い勝手をレポートしたが、今回は主にXbox 360のローカルにあるコンテンツ(音楽/写真/動画)を再生するときの機能について紹介していきたい。

 基本的にXbox 360は、以下の4つの媒体に格納されているコンテンツを再生することができる。

・内蔵HDD
・USB接続されたストレージデバイス
・WMC(Windows Media Connect)経由で接続されているPC
・光学ディスク

【表1】Xboxのコンテンツ再生機能
 音楽静止画動画
内蔵HDD
USBストレージ-
WMC接続-
光学ディスク-
 

 音楽の機能としては、CDのリッピング機能が用意されている。CDを再生しているときに、“CDを取り込む”を選択することで、圧縮してHDDに保存できる。曲情報は、Xbox 360がネットワークに接続されていれば、自動的に取得してくれる。

 ただ、HDDの容量は20GBと限られており、すぐHDDは一杯になってしまうだろう。また、Xbox 360は他の機器に自分のHDD内のデータを公開するメディアサーバー機能を有していないので、ここで取り込んだ音楽は他のデバイスで利用することができない。Xbox 360上でライブラリを構築するのは、いまのところあまりお勧めできない。

 このほか、WMC経由で接続されたPC、光学ディスク、USB接続されたストレージデバイス内に格納された音楽ファイル(MP3/WMA)を再生することができる。試しにアップルのiPod(第3世代/40GB)を接続してみたが、これも音楽を再生することができた。もちろん、同期などはできないので、あくまでもiPodの中の音楽をXbox 360からデータとして認識し、再生することができたというだけだ。

 写真の機能としては、USBストレージ上や光学ディスク上のデータの他、デジタルカメラを直接接続して中の写真を閲覧できる。利用できるのは、USBポートが用意されているデジタルカメラで、筆者の手元にあったキヤノンの「PowerShot A95」で試したところ、きちんと表示できた。

 動画の再生に関しては前回の記事で説明したとおり、WMCで他のPCに接続するというオプションが設定されていないほか、USB接続されたストレージデバイスや光学ディスク上にある動画ファイルも再生できない(DVDビデオは除く)。Xbox 360のHDDに最初から入っている動画ファイルや、オンラインサービス「Xbox Live!」などを利用してダウンロードした動画ファイルだけが再生できる。

 Xbox 360は標準でHDTVに対応しており、動画の再生環境としてもそれなりに魅力的だと思うのだが、ユーザーが自分のPCからはアップロードなどをできないのは残念だ。WMC経由で動画再生ができないことと合わせて、ぜひ改善して欲しい点と言えるだろう。

Xbox 360の音楽再生機能、音楽CD、CD-R/DVD-R、内蔵HDD、WMC経由でPC、USBストレージなどを接続して音楽コンテンツを再生できる 音楽CDは圧縮してHDDにリッピングできる
USBケーブルでiPodを接続して再生することも可能 USBケーブルで接続したデジタルカメラやUSB接続のストレージデバイス、光学ディスクなどにあるファイルを再生できる ビデオは内蔵HDDにあるファイルを再生することができる。WMC経由や光学ディスク上のビデオも再生できれば……と思うのは筆者だけではあるまい

●DVDプレーヤーの操作体系はWindows XP MCE似

 Xbox 360は次世代DVDの再生機能は備えていないものの、既存のDVDビデオにはもちろん対応する。S/PDIF出力端子も用意されているので、ドルビーデジタルやTHXなどに対応したAVアンプに接続すれば、5.1chや7.1chの音声を楽しむことも可能だ。

 なお、D端子でHDTVと接続している場合、多くのユーザーは720pの解像度で利用していると思うが、DVDビデオ再生時には480pにダウンスキャンされて出力されることになる。これは、DVDの規格でD端子やコンポーネント端子に出力する場合、480pが上限とされているためであって、Xbox 360側の制限ではない。

 DVDの操作は付属のメディアリモコンでも、ワイヤレスコントローラでもできる。DVDビデオの機能は一通り用意されているが、リモコンのボタンに関しては若干の慣れが必要だろう。例えば、ワイドの切替はリモコンの“表示”ボタンを押して表示されたOSDのメニューから“ズーム”というボタンを押す必要がある。Windows XP MCEのメディアセンターのDVDプレーヤーと同じような仕様だが、慣れるまでは若干時間がかかるかもしれない。それでも、一般的なスキップなどのボタンはほとんど用意されており、DVDプレーヤーとして十分活用することができるだろう。

●つけっぱなしには要注意

 入手してから約5日間、Xbox 360をリビングにおいてゲームマシンやメディアプレイヤーとして利用してきたが、使ってみていくつか気になった点がある。それは消費電力と騒音の問題だ。

 消費電力は、実際に計測してみるとPC並に大きいことがわかってきた。利用したのはサンワサプライや計測技術研究所などから発売されている「ワットチェッカー」で、コンセントに差し込むと、その瞬間の電圧、電流、電力などの計測が可能だ。これを利用して、どの程度の電力が消費されているかを計測してみた。なお、実際には消費電力は上下するので、その場合、前後した数字の中間を結果とすることにした。

 参考までに、Pentium D 820(2.8GHz)+Radeon X700、Athlon 64 X2 3800+(2GHz)+Radeon X700という、それなりに最新のパーツを利用したデスクトップPCを2台、さらにはPlayStation 2(SCPH-30000)を用意して、いずれも3Dゲームを走らせてみた。結果は表2の通りだ。

【表2】Xbox 360、Pentium D+Radeon X700搭載PC、Athlon 64 X2+Radeon X700搭載PC、
PlayStation 2(SCPH-30000)の消費電力比較
 瞬間消費電力
Xbox 360Xboxダッシュボード135W
MCX(Media Center Extender)起動時134W
MCXテレビ再生時134W
リッジレーサー6起動ビデオ再生時152W
リッジレーサー6リプレイ時164W
PC(システム全体)Pentium D 820+Radeon X700(アイドル時)125W
Pentium D 820+Radeon X700(3DMark05 Game1)201W
Athlon 64 X2 3800+ +Radeon X700(アイドル時)114W
Athlon 64 X2 3800+ +Radeon X700(3DMark05 Game1)175W
PlayStation 2
(SCPH-30000)
起動時30W
GT3プレイ時33W

 Xbox 360を起動して、Xboxダッシュボードを動かしている状態、Windowsで言えばWindowsデスクトップが表示されている、低負荷状態でも135Wの消費電力となっている。MCX(Media Center Extender)を起動した場合は134Wとほぼ変わりない。

 だが、3DエンジンとCPUをブン回すゲームを実行すると、さらに消費電力は上昇する。「リッジレーサー6」を起動すると、起動時に表示されるビデオのところで152W、そして実際にゲームを開始すると実に164Wを記録した。ちなみに、これはPCで3DMark05のGame1を実行した時よりは若干低いものの、PlayStation 2でGT3をプレイしているときの消費電力33Wに比べると、実に5倍近くになっていることがわかる。

 Xbox 360には、6時間経つと自動で電源を切るというオプションが用意されているが、これはONにしておかないと、電気代もバカにならない。できれば、1時間とか、30分とかの選択肢もあった方が良いと思うほどだ。

●ゲームプレイ時のディスクドライブの騒音が気になるXbox 360

 もう1つXbox 360で気になるのが騒音だ。これも計測してみた。利用したのは、CUSTOMが発売している「SL-1370」という騒音計で、各デバイスから50cmほど離した位置に三脚で固定して計測した。比較に利用したのは、「VAIO type X Living」(Pentium D 820搭載)というリビング向けPC、「Xビデオステーション」、そして「CoCoon」(CSV-EX9)の3つだ。

【表3】Xbox 360と他機器の騒音チェック
デバイス状態騒音
Xbox 360Xboxダッシュボード起動時38.5dB
DVD再生時38.6dB
リッジレーサー6起動時54.8dB
VAIO type X LivingWindows起動状態35.2dB
DVDディスクロード時37.0dB
VAIO Xビデオステーション録画時42.0dB
CoCoon(CSV-EX9)録画時36.0dB
 

 まず、何も起動していない状態での騒音を計ってみると、32dBだった。夜中の静かな時に計測したので、かなり静かな状態と言ってよい。この状態で、Xboxダッシュボードを起動すると38.5dBとなった。DVDを再生してオーディオをOFFにした状態でも計測してみたが、38.6dBとほとんど変わらなかった。

 個人的には40dBが音が気になる、気にならないの境目で、実際リビングにおいているXビデオステーションは40dBをやや超えていて少々騒音が気になるのだが、神経質な人でなければまぁ大丈夫だろう。

 問題なのは3Dゲームをプレイしているときだ。このテストは本体を縦に置いた状態で行なっているのだが、この場合騒音は54.8dBまでいった。DVDディスクを高速で読み取っている状態だと思うのだが、この時“ブーン”というかなり気になる音がする。

 50dBを超えると、はっきりって“うるさい”デバイスということなる。オーディオ周りが優れているリッジレーサー6をプレイしている時に、ブーンという音が聞こえてくるのは興ざめだ。光ドライブをはじめとして、もうちょっと静粛性には気をつかって欲しい。

●騒音と消費電力は気になるが、リビングに置いておくには楽しいデバイス

 2回にわたり、ゲーム以外のXbox 360の魅力をチェックしてきたが、MCXでWindows XP MCEに接続できたり、WMCを利用してPC内の写真と音楽を再生したり、DVDプレーヤーとして利用できたり、デジタルカメラを接続して写真が再生できたり、とXbox 360はゲーム以外にもさまざまな用途に利用することができる。この点は素直に評価してよいと思う。

 ただ、やはり消費電力と騒音に関しては気になるところだ。特にゲームをプレイしている時にドライブから発生する騒音はかなり気になる。これは、ぜひとも改善して欲しい点だと言える。消費電力に関しては、3コアのマルチプロセッサに、ATIの最新GPUという構成を考えれば、この程度に収まっている、という言い方も可能だろう。これだけ高精細な3Dグラフィックスを再生する、ということを考えると、PC並の消費電力というのは致し方ないとも言える。

 おそらく、来年登場してくるであろうPLAYSTATION 3とて、こうした呪縛からは逃れられないだろう。PLAYSTATION 3がリリースされたら、もう一度比較しながら評価したいところだ。

 一部報道では、Xbox 360の日本での販売量は、最初の2日間で6万台と報じられている。厳しいスタートと言っていいだろう。ただし、現時点ではビッグタイトルが出そろっておらず、ユーザーも様子見なのではないだろうか。今後、ビッグタイトルが出てくれば、評価も変わってくることだろう。

 筆者個人としては、いくつかの点で不満は残るものの、ゲーム以外の用途にも使えるXbox 360は、リビングに置いておく価値はあるかなと思っており、しばらくは、このまま使ってみるつもりだ。

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【12月13日】【笠原】Xbox 360のPC連係機能レポート
~本領発揮にはWindows XP MCEが必要
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/1213/ubiq136.htm
【12月12日】Xbox 360ハードウェアレポート【周辺機器編】
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【12月10日】Xbox 360ハードウェアレポート【本体編】
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【10月17日】マイクロソフト、Xbox 360接続対応のMCE 2005アップデート
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【5月7日】【笠原】DMAを標準化するWindows Media Connect
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0507/ubiq61.htm

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(2005年12月16日)

[Reported by 笠原一輝]


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