10月28日に発売した九十九電機の新しいデスクトップPC「Aero Stream」(エアロ ストリーム)シリーズ。九十九電機はPC専門店であり、ショップブランドの「eX.computer(イーエックス コンピュータ)シリーズ」を販売するなど、すでに多数のオリジナルPCを取り扱っている。リリースを受け取った時には、Aero Streamも単なる新製品の1つと捉えてしまった。 だが、九十九電機の商品部 商品開発課の石村多加志担当部長は、「Aero Streamは他のPCショップのオリジナルPCとは一線を画すものにしたいと考えている。これまでの当社のショップブランドPC “TSシリーズ”の延長ではなく、ショップにいらっしゃるお客さんの声を反映した全く新しい商品だと捉えてもらいたい」とその見方に異議を唱える。 九十九電機は、同社が最初に取り扱いを始め主力商品に育てた米eMachines製PCが他社での取り扱いを広げたことで、次の主力商品が求められている時期でもある。Aero Streamをどんな製品に育てていきたいと考えているのだろうか。
●拡張性と簡単に買える完成品の良さの両方が必要だった Aero Streamは九十九電機と石丸電気で販売される新しい製品だ。 「機器の拡張が容易なBTOの強みと、部品の知識がなくても気軽にPCを購入できる気軽さとの両方を兼ね備えたPCを作ることができないか、というのがAero Streamを開発するポイントとなった」とこの商品の開発を担当した石村部長は説明する。 マニアユーザーには必須の自分好みの仕様に拡張できる融通の高さと、PCに詳しくないユーザーには必須の「気軽に購入できる」という相反する2つの特徴を兼ね備えた製品の開発に着手したのは、九十九電機がeMachinesを販売したことに起因する。 石村部長は、「eMachinesが日本で売れ行きを伸ばした要因は、最初に製品が投入された2003年当時、同等の低価格と機能を備えたコンシューマ向けPCはメーカー製品には存在せず、ユーザーの自作機かショップブランドのPCでしか選択できなかった点にある。価格や機能の点で、既存のメーカー製品には満足できなかった層がeMachinesのユーザーとなったため」と分析した。 ユーザーの中には、自作機も所有するマニアユーザーもいれば、自分ではPCを作ることができないレベルのユーザーもいた。ユーザーレベルはさまざまながら、既存のPCでは飽き足らなかった層がeMachinesユーザーとなったのだ。 だが、2005年のPC市場は2003年時点とは変わってきている。「現在は同じようなコンセプトの製品を複数のメーカーが発売するようになってきた。また、eMachinesを販売していく中で、お客様からもっとこの部分をこう変えて欲しいという声を多く寄せられたのに対し、対応できないジレンマを感じるようになっていた」と石村部長は説明する。 「メモリを増強したい」、「電源容量をもっと大きくして欲しい」――顧客からあがるこうした要望に答えるには、eMachinesでは限界がある。そこで拡張要望に対しては、eMachinesではなくツクモのショップブランド、TSシリーズを薦めていた。 だが、TSシリーズは自分で部品を選択し、製品を作り上げていかなければならない。「自分で部品を選択することができないお客様にとっては、敷居の高い商品となってしまっていた」(石村部長)のである。 顧客からあがる声を受けて九十九電機社内では、「自分で好みにカスタマイズできるBTOの良さと、量販店ですぐにPCを購入できる良さの両方を兼ね備えた製品が開発できないだろうか」という議論が交わされた。 その結果、開発されたのがAero Streamシリーズなのである。 ●拡張にも耐えられる電源容量など搭載する部品に対する強いこだわり 10月28日に発売されたAero Streamは7機種。この7機種はあくまで基本モデルで、基本モデルのスペックに不満があれば、拡張も簡単にできる。自分で部品を選ぶのは面倒だという人は、基本スペック7機種の中から、自分にあった仕様を選べばいい。 自分仕様にも、既存仕様にも、どちらにもなるのがAero Streamのコンセプトである。 基本の7製品の中で59,800円と最も低価格な「B31J-5400C」は、CPUにCeleron D 336(2.8GHz)、VIA P4M800チップセット(ビデオ機能内蔵)、メモリ512MB、HDD 160GB、DVDスーパーマルチドライブを搭載し、電源はTopower製470W静音電源を採用している。 139,800円と最も高価な「B30A-5461X」は、CPUにAthlon 64 X2 4200+、nVIDIA nForce4 Ultraチップセット、メモリ1GB、HDD 250GB(シリアルATA)、ビデオカードにnVIDIA GeForce 6600 GT(メモリ128MB)、DVDスーパーマルチドライブなどを搭載し、電源はTopower製530W静音電源を採用している。 いずれもディスプレイ、キーボード、マウスは別売りだ。 スペックを見ると、eMachinesよりもハイエンド寄りの方向だ。例えばメモリについては、DDR-400はCentury Micro製、DDR-533はHynix製のみを使用している。 「製品仕様を固めていく際、どのメーカーの部品を採用するのかについて、社内でずいぶん話し合った。基本的にパーツ販売を行なう中で、『これが一番!』という評価があがったものを採用している」(石村部長) eMachinesを販売していて、「もっと容量を大きくして欲しい」という声があがっていた電源部分については、最も低価格なB31J-5400Cでも470Wの電源ユニットを搭載した。ハイエンドモデルでは530Wの電源ユニットを搭載している。 「オーバースペックだという声が上がるかもしれないが、これで拡張しすぎて電源容量が足りないというお客様の要望にも応えられるだろう」という。 筐体はこの製品のために開発されたオリジナル。ミニタワータイプ、ミドルタワータイプがあり、色は黒、白のいずれかを選択することができる。黒と白というベーシックな色ならば、隣に周辺機器を置いても違和感がないと判断したからだ。
「筐体は、ホワイトボックスとメーカー品の違いが最も現れる部分。ホワイトボックスはメーカー製に比べてデザインに頓着していないものが多い。Aero Streamに関してはメーカー品に比べて遜色ない見た目とすることにこだわった。ただ、デザインだけで、実がないのも意味がない。12cmのファンを搭載しながら、静音にもこだわってみた」という。 ファンの周囲にはホコリがたまりやすいことも考慮し、前面とパッシブダクト側に防塵フィルターを搭載。ホコリがたまってきたと思ったら、防塵フィルターを掃除して、内部からホコリをシャットアウトできる作りになっている。 「ホコリ対策は細かい部分ではあるが、長いことPCを使い続けていれば必ず気になる部分。使ってもらえば細かいこだわりがわかってもらえるのではないか」と石村部長は苦心した部分を明かす。
生産は国内で行なっており、注文を受けてから最短で3営業日で出荷できる。 修理については、店頭に商品を持ち込んで修理を頼むこともできるし、引き取りやパーツ交換などのサービスも用意する。 「他店のショップブランドと違う点が、このサポート部分。メーカー製品と遜色のないサポート体制をもつことで、購入した方が安心して使ってもらうことができる体制を作っている」(石村部長)
●口コミによるユーザー層拡大を期待
発売当初から、九十九電機だけでなく、石丸電気での販売が決まったことで、「実はニュースリリースにも、『ショップブランド』という言葉は使わずに、『プライベートブランド』と表記した。本体にもツクモのロゴはあえて入れなかった。当店以外のPCショップでも販売する商品で、ショップブランドではない」と販売促進課の後藤大和担当部長は説明する。 石丸電気以外のショップから販売したいという申し出があれば、「それに応じる可能性もある」という。 ユーザー層としては、「既存のPCでは物足りないと考えているお客様が購入してくれるのではないか。まず、PCに詳しい方が購入し、そこから口コミでユーザーが増えていくことになるのでは。実はeMachinesの販売当初にも同じようなところがあり、最初はマニア層がお客様だったが、製品の良さが理解されていくにつれて、幅広いユーザー層に拡大していった」(後藤部長)と予測する。 ネットカフェなど、これまでショップブランドのPCを利用することが多かった顧客層の購入も出てくると予測している。 また、今後のAero Streamシリーズについては、「お客様の声をどんどん取り込んでいくことができるのが製品の特徴となってくるだろう。色々なニーズをもらえれば、それにあわせた製品作りができる。是非、色々な声を寄せてもらいたい」とユーザーからのフィードバックにも期待しているという。
□九十九電機のホームページ (2005年11月17日) [Reported by 三浦優子]
【PC Watchホームページ】
|
|