大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

米Apple、フィリップ・シラー上席副社長インタビュー
〜アップルストアが来月にも2カ所に出店




 米Apple ComputerのNo.2を務めるフィリップ・シラー上席副社長が来日しインタビューに応じた。

 今年は、例年以上に来日回数が多く、筆者自身も今回が3回目のインタビューとなる。「それだけ日本を重要な市場だと意識していることの証と受け取ってもらっていい」と語るシラー上席副社長に、最近のAppleの動きを、iPodへの取り組みを中心に聞いた。

●iPodの国内シェア60%を越える

フィリップ・シラー上席副社長
大河原: iPodの動きがいいようですね。

シラー:今日、新たにお話しできるのは、iPodの日本国内におけるシェアが、なんと約60%に達したということです。BCN総研の調べによると、9月以降、5割を超えるシェアを獲得しており、日本の携帯音楽プレーヤー市場を牽引しています。また、この図表からもわかるように、一番のライバルであるソニーは、10%近くで推移しています。

 iPodの全世界での累計販売台数は、いまや3,000万台に到達しています。最初の3年間で1,000万台の出荷だったものが、今年に入ってからの9カ月で2,000万台を出荷しています。

 この大きな伸びにはいくつかの要因があります。例えば、iPod nanoによって、多くのユーザーに音楽の楽しみを提供できたことはその大きな要素です。この小ささのなかに、1,000曲を入れられることに驚いた人は多かったのではないでしょうか。

 もう1つは、第5世代のiPodの登場だといえます。これによって、音楽を聴くということだけでなく、ビデオを視聴するという新たな使い方を提案しました。また、オーディオブックを聴いたり、写真のライブラリを持ち運んだりといったこともできる。多くの人が、この新たな使い方に満足しているはずです。

 iPodは、年末商戦に向けて、これまでにない強力な製品ファミリーが整っています。価格帯についても、さまざまな選択肢を用意できましたし、多くのパートナーから、数多くのアクセサリーも出ています。いまや、1,000を超えるiPod用アクセサリーが登場し、家庭におけるホームオーディオとしてiPodを利用したり、あるいは持ち歩きながら音楽を楽しむ、車のなかで音楽を楽しむといった使い方へと広がっている。どこにいても、生活の一部を構成するツールとして、iPodが使われ始めています。

 車を例にとっても、日本においては、来年発売される予定の新車のうち、3分の1の車において、iPodと統合できるオプションを提供することになります。

iPodの売り上げ 日本市場のシェア

●来月にも国内のアップルストアは6店舗に

大河原: 今年はさまざまな新製品が登場しましたし、日本では、名古屋、渋谷へのAppleストアの出店、iTunes Music Store(iTMS)のサービス開始といった動きもありました。このなかから、最大のトピックスを挙げてもらうとすればどれでしょうか。

シラー:Appleストアは、現在4店舗ありますが、来月には6店舗の体制になります。(編集部注:仙台と福岡への出店とみられている)。日本のユーザーには、ぜひ楽しみにしていただきたいと思っていますし、ここで新たな体験をしていただきたい。まだまだ動きはありますよ。

 さて、最大のトピックスということですが、これは難しい質問ですね。このなかで、あえて1つ挙げるとすればと、日本のユーザーにとっては、iPod nanoの登場が挙げられるのではないでしょうか。iPod nanoは、日本のユーザにとって魅力的な製品であったといえます。1,000曲もの楽曲を持ち運んで、それを地下鉄のなかで聴くことができるという点でも、日本のエンターテイメントマーケットにとって、完璧なものが提供できたのではないでしょうか。

大河原: ビデオiPodが発売から約1カ月を経過していますが、手応えはどうですか。

シラー:具体的な数字についてはお話しできませんが、第5世代のiPodは大いに成功していると判断しています。出荷台数も日を追うごとに増加傾向にあります。米国では、ABCやディズニーとの提携によって、人気TV番組の配信や、1,000以上の音楽ビデオクリッピング、ポッドキャスティングの利用、ピクサーのショートフィルムなどの提供も行なっていますし、これも第5世代iPodの売れ行きに追い風になっています。20日目で動画ダウンロード実績が100万本を超えましたが、これは私の個人的な期待を上回るものでした。大変嬉しいことです。

大河原: 日本では、まだTV番組の配信が開始されていませんし、携帯電話と一体化したiPodも登場していません。日本のユーザーは、Appleのサービスに対して不満に思っている部分がありますが。

シラー:私は、日本のユーザーが不満に思っているとは感じていません。日本市場において、最新のiPodをいち早く市場に提供できましたし、iTMSも、日本でのサービス開始は、最短の時間で実現できたと自負しています。日本のチームも、日本のコンテンツの品揃えに力を入れていますし、不満に思っているユーザーの数よりは、満足しているユーザーの数の方が多いと思います。ビデオのコンテンツに関しては、まだまだ始まったばかりですから、慌てないでください。

●液晶問題、課金問題も大きな影響はない

大河原: ところで、iPod nanoの液晶に傷がつくという問題が出ていますが、なぜこうしたことが起こってしまったのでしょうか。

シラー:これには2つの話があり、これを切り分ける必要があります。1つは、発売直後の最初のモデルのなかで、液晶が割れていたという問題がありました。極めて少ない数なのですが、これを買ってしまった人は、Appleケアサービスに連絡して交換してもらうという措置をとりました。これは、すでに解決しています。

 もう1つ、nanoを使っていて自然に液晶に傷がついてしまうというものですが、これも当社には、ごく少ない数の問い合わせしかありませんでした。nanoで使っている材料は、他のiPod製品と同じものを使っているわけですから、nanoだけが、そうした問題になるというのはおかしいのです。もしかしたら、発売当初は、nano用のケースが足りなかったということもあり、こうした問題が起こりやすかったのかもしれません。いまは、ケースも手に入りやすくなっていますから、さらに問題が起こりにくくなっていると思います。

大河原: 日本では、iPod課金と呼ばれる私的録音録画に関する補償金を、iPodの価格に上乗せして販売するという議論が行なわれています。ひとまずは2007年に先送りされましたが、この点についてはどう捉えていますか。

シラー:補償金については政府が決めることなのでApple側からはなんとも言えませんし、さらに、iPodに限らず、すべてのミュージックプレーヤーに対するものですから、課金されることで、iPodだけが不利になるというものではないと思います。この件に関しては、政府と協力していますし、私どもとしては、なるべく少額、できるならばゼロという形でなることを期待しています。お客様にとって、適切なものになることを期待しています。

大河原: 今年はAppleからたくさんのサプライズがありましたが、来年はどれぐらいのサプライズがあるでしょうか。

シラー:それは秘密ですよ(笑)。一番重要なのはカスタマを驚かせるということで、そのために私たちは仕事をしています。みなさんがいままで見たことがないような、あるいは他のメーカーが作らないような製品を作って、それをドーンと派手に発表して、みなさんをハッピーにするというがAppleの役割です。

 そして、みなさんの驚く顔を見るのが私たちは大好きです(笑)。今年はいままで以上にたくさんの製品がでましたし、他社ができないことを数多くできたと思っています。しかし、Appleは、毎年、年を追うごとに前年以上のサプライズを提供してきましたから、ぜひ来年も楽しみにしていてください。


□アップルのホームページ
http://www.apple.com/jp/
□iPodのシェアに関するリリース
http://www.apple.com/jp/news/2006/nov/16ipoditunes.html
□関連記事
【11月16日】iPodの国内シェアが約60%に拡大(AV)
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20051116/apple.htm
【8月4日】iTunes Music Store、日本での準備は100点満点(AV)
−フィリップ・シラー上席副社長、日本での勝算を語る
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20050804/apple2.htm
【3月15日】【大河原】Apple上級副社長、フィル・シラー氏直撃インタビュー
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0315/gyokai119.htm

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(2005年11月16日)

[Text by 大河原克行]


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