笠原一輝のユビキタス情報局

Viivに向けプラットフォーム戦略を拡張するIntel



 既報の通り、Intelは、先々週行なわれたIntel Developer Forumにおいて、これまで開発コードネーム“East Fork”で呼んできたデジタルホーム向けプラットフォームのブランドネームを“Viivテクノロジ”と発表した。

 Intelは来年の第1四半期にViivテクノロジに対応した製品をOEMメーカーに対して発表する予定だが、Intelはそれに合わせて、そのプラットフォーム戦略を着々と拡張していく。本レポートではその戦略についてお伝えしていきたい。


●2006年第1四半期にIntel 975XとPentium XE 955をリリース

Intelの2005~2006年のプラットフォームロードマップ(筆者予想)

 IntelはViivテクノロジのリリースに向け、既存のプラットフォームを含めてデスクトップPCのプラットフォームを拡張していく。OEMメーカー筋の情報によれば、Intelは2006年の第1四半期にIntel 975Xという新チップセットをリリースすると伝えてきたという。Intel 975Xは、現在Pentium Extreme Edition(XE)向けにリリースされているIntel 955Xの後継となる製品で、基本的にはIntel 955Xの改良版という扱いになる。

 大きな違いは、ノースブリッジのPCI Express x16をx8が2つとして扱えるようになることだ。これにより、ATIのCrossFireのようなPCI Express x8が2つという構成のデュアルGPUに対応することが可能になる。

 現在IntelはPCI Express x16と、物理的にはx16だが電気的にはx4というスロットを備えたIntel 955X搭載マザーボード(D955XBK、元麻布氏の記事を参照)をリリースしているが、Intel 975Xを搭載した次世代製品(D975XBK)ではPCI Express x8(物理的にはx16のスロット)が2つ搭載されることになる。

 これに合わせて、Presler(プレスラー)コアを搭載したPentium XEも投入される。プロセッサナンバ“955”で呼ばれる新しいPentium XEは、L2キャッシュが2MB×2に拡張されるほか、システムバスは800MHzから1,066MHzに引き上げられることになる。

●YonahをスリムデスクトップPC向け市場に投入へ

 Intelは同じ第1四半期にハイエンド向けだけでなく、新しいプラットフォームとしてスリムPC向けの製品ラインを投入する。具体的には、YonahをデスクトップPC市場へと投入する。

 ただし、投入するといっても、すでに日本ではNECのようにBanias/DothanをデスクトップPCに採用している例もあり、特に目新しくはなく思えるだろう。しかし、Intelがモバイル向けのCPUであるYonahをデスクトップPC向けに投入するということは、Yonahを利用したデザインガイドなどがOEMベンダに提供される、ということであり、台湾のODMベンダなどがYonahを搭載したPCを低コストで作ることが可能になる。Yonahを採用したスリムタイプのベアボーンPCなどが数多くリリースされる可能性がでてくるのだ。

 Intelは、YonahとCalistoga(カリストガ)を搭載したミニPC、いってみれば“Mac Mini”ライクなPCをComputex TaipeiやIDFなどですでに展示しており、台湾のODMベンダに働きかけている。Intel自身が設計したリファレンスデザインを元にFICがサンプルを製造しているほか、AOpenもMac Miniライクな製品をComputex Taipeiに展示し、話題を呼んだのは記憶に新しいところではないだろうか。

 Yonahの後継としては、第3四半期に投入されるConroe(コンロー)以降は、Conroeベースに置き換えられるとされている。といっても、Yonahの熱設計消費電力は31Wで、Conroeは65Wであることを考えると、そのままYonahと置き換わるというのは考えがたい。実際には熱設計消費電力が34WとなるMeromベースになるのではないだろうか。

 なお、デスクトップPC向けのYonahとCalistogaのブランド名だが、Calistogaの方は「Intel 945GT」というブランドネームであることがOEMベンダ向けに通知されているが、Yonahに関しては何も明らかにされていないという。たしかにモバイル向けではないのにPentium Mというのもやや奇異な感じがするのも事実で、Pentium Dのラインにすることを検討しているのではないだろうか。

AOpenがComputex Taipeiで公開したミニPC Intelが開発し、FICが製造したYonahベースのミニPC

●第2四半期には新世代チップセットのBroadwaterシリーズを投入

 2006年の第2四半期には、現在のIntel 945シリーズの後継となる、開発コードネーム「Broadwater」(ブロードウォータ)で呼ばれる次世代チップセットが投入される。

 Broadwaterにおける強化ポイントは、主にメモリ、GPU周りとサウスブリッジの機能強化。メインメモリはDDR2-800に対応(現行945はDDR2-667まで)。デュアルチャネル構成で、実に12GB/secの帯域幅を実現することになる。

 ただし、システムバスは従来通りP4バスの1,066MHz(8.5GB/sec)にとどまることになるので、主に内蔵GPU側の性能向上に貢献することになるだろう。メモリが高速になることで、GPUの3D描画性能も大幅に高まることになる。現時点では、GPUの改善点などは明らかではないが、基本的には従来のGMA900シリーズの延長線上となる可能性が高い。このほか、ビデオ再生時の品質なども改善されるとOEMベンダには説明されているという。

 サウスブリッジの強化点としては、シリアルATAのポート数が4から6へと増やされること、さらにはUSB 2.0のコントローラ数が従来の8から10へと増やされることになる。

 BroadwaterのSKU(製品群)は、従来の-P、-Gの他に、-GC、-GFというSKUが用意される。Broadwater-GCは、GPU内蔵版のBroadwater-Gの拡張版で、メディア再生などの機能がBroadwater-Gに比べて強化されることになるという。Broadwater-GFは、Broadwater-GからPCI Express x16を省略したものとなる。

【BroadwaterのSKU(筆者予想)】
 Broadwater-GCBroadwater-PBroadwater-GBroadwater-GF
システムバス1,066/800/533MHz
メモリDDR2-800/667/533
内蔵GPU-
メディア強化機能---
PCIe x16-
サウスブリッジICH8ICH8ICH8ICH8

●第3四半期にConroe投入でリフレッシュしVistaに備える

IDF Fallで公開されたConroe
(Photo by Hiroshige Goto)

 Broadwaterファミリーと組み合わせれるCPUは、当初はPentium D 9xxで呼ばれることになるPreslerになる。Preslerは、現在のPentium D 8xx(Smithfiled、90nmプロセスルール)の65nmプロセス版で、L2キャッシュが2MBになる以外は、基本的には現行のPentium Dの延長線上にある製品だ。以前の記事でも触れたように、性能面でAthlon 64 X2に遅れをとっているという現状を覆すような製品とはならない。

 そうした状況を覆すのが、第3四半期に投入が予定されているConroeだ。Conroeは、従来通りパッケージはLGA775のままで、システムバスもP4バスの800MHzとなるので、Preslerとピン互換で利用できる。そして既報の通り、熱設計消費電力は65Wと、Smithfield/Preslerの130Wから半分程度となるため、Preslerが利用できるように電源周りに余裕をもって設計されるBroadwaterのマザーボードでそのまま利用できることになる(むろんBIOSのアップデートなどは必要になるだろうが……)。

 Banias系コアの流れをくむConroeは3GHz台の動作周波数で駆動され、4MB/2MBのL2キャッシュを備えるモデルが用意されるという。また、「Merom New Instruction(MNI)」と呼ばれる新しい命令セットも追加される予定で、主にメディアファイル処理時の性能が大幅に向上することになるという。

 Conroeによるプラットフォームのリフレッシュは、Intelにとって大きな意味を持つ。それは、Microsoftがリリースを予定しているWindows Vistaのタイミングと合わせられることだ。特に、米国市場最大の商戦期であるクリスマス商戦に向けて、Windows Vistaとタイミングをあわせて新アーキテクチャであるConroeを投入する……新しい製品をリリースする時期としてはピッタリのタイミングであるといえるだろう。

□関連記事
【6月2日】【笠原】Intel、“East Fork”を2006年第1四半期に延期
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0602/ubiq115.htm

バックナンバー

(2005年9月13日)

[Reported by 笠原一輝]


【PC Watchホームページ】


PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp ご質問に対して、個別にご回答はいたしません

Copyright (c) 2005 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.