NVIDIAのハイエンドGPUは、昨年4月に「GeForce 6800 Ultra」が発表されて以来、PCI Express版を追加するなど、GeForce 6の製品バリエーションの拡充が続いてきた。この間、NVIDIA SLIといったグラフィック性能を向上させるアーキテクチャの投入などは行なってきたが、基本的にGPUの機能拡張は行なわれていない。 しかも、搭載ビデオカードのリテール販売は、特にPCI Express版製品で品薄な状態が続き、GeForce 6800 UltraのPCI Express版に至っては今年1月まで待たされた。この間、ライバルのATIはRADEON X800シリーズ、同X850シリーズを投入。ハイエンドGPUの分野において一歩リードしているのが現状といえる。 しかし、米時間の6月21日。NVIDIAが久々のハイエンド向けGPUとなる「GeForce 7800 GTX」を発表した。GeForce 6800 Ultraの登場から1年以上を経て登場した本製品のパフォーマンスを検証したい。 ●GeForce 6800シリーズのブラッシュアップ版 まずは、今回発表された「GeForce 7800 GTX」のスペックについて、GeForce 6800 Ultraの主な仕様と相違点をまとめた表1を元に簡単に紹介していきたい。
まず、GPU自体の製造プロセスルールは0.13μmから0.11μmへとシュリンクされた。ただ、GeForce 6800シリーズがリリースされた後に登場した、「GeForce 6600」シリーズや「同6200」シリーズですでに採用されたプロセスであり、この点はとくに目新しさはなく、ハイエンド向けGPUでようやくプロセスが移行したに過ぎない。 動作クロックは、コア、メモリともに向上。ちなみに表ではメモリ容量を256MBとしているが、これは借用したリファレンスボードを参考にしている。この点は、ちょっと気に留めておきたいことがあるのだが、後ほど改めて触れることにしたい。 続いてシェーダ処理のユニットに関してだが、ピクセルレンダリングパイプラインは16本から24本へ。バーテックスシェーダユニットは6個から8個へとそれぞれ増加している。そして、シェーダエンジンは従来の「Cine FX 3.0」から「同4.0」へ。アンチエイリアシング技術の「IntelliSample」も3.0から4.0へとバージョンアップされた。前者はバーテックスシェーダにおけるトライアングルセットアップや、ピクセルシェーダにおける積和演算処理の高速化などが図られ、後者は16x異方性フィルタリング時に最大128点を参照するなどの技術拡張が行なわれている。 これらの点から分かるとおり、GeForce 7800 GTXはまったく新しいアーキテクチャを採用しているわけではなく、主に高速化を目的としたGeForce 6800シリーズのブラッシュアップ版と考えて良さそうである。 さて、今回借用したものは前述の通り、NVIDIAのリファレンスボードである(写真1)。GeForce FX 5800から続いた2スロットを占有する大型のクーラーはようやく改善され、面積こそ広く専有しているが1スロットで収まる形状になっている(写真2)。もちろん、裏面にもヒートシンクはないので、チップセットのヒートシンクなどとの干渉も心配ない(写真3)。
今回のリファレンスボードを試用するにあたって、ドライバはForceWareの77.62を使っている(画面1)。このドライバ設定画面から、GeForce 7800 GTXの温度を確認すると、SLI構成で3DMark05のGame1~3を実行した直後の温度が61度。しきい値は115度に設定されており、薄型のクーラーではあるものの、冷却性能についての問題はひとまずなさそうである(画面2、3)。 ただ、NVIDIAから提供された資料によると、消費電力はビデオカード一枚あたり100~110Wとされている。結果、電源ユニットは、シングル使用の場合で22A以上の12Vラインを持つ350W以上の製品。SLI使用時には30A以上の12Vラインを持つ500W以上の製品が、それぞれ推奨されている。
続いてブラケット部の入出力インタフェースだが、こちらはGeForce 6800と同様、DVI×2+Sビデオ端子という構成になる(写真4)。 先にコアクロック、メモリクロックなどについて触れたが、この点をForceWareのCoolbitを操作してチェックしてみると、スペックとして示されている430MHz/1.2GHz(コア/メモリクロック)は3D描画時のみで、2D描画時には275MHz/1.2GHz(同)とコアクロックが落とされていることが分かる(画面4、5)。この仕組みは、GeForce FXシリーズでは多用されていたが、GeForce 6800シリーズのリファレンスボードでは採用されておらず、GeForce 7800 GTXで復活した格好となる。 メモリ容量については256MBのGDDR3メモリを搭載している。表面/裏面にそれぞれ4個、計8個のメモリチップを搭載しており、256Mbitのメモリチップを使っていることが分かる。 さらに、表面/裏面ともに、メモリチップ用と思われる空きパターンが存在することも確認できる(写真5)。将来的に512MBなど、メモリ容量を増加させたバリエーションモデルの登場もあり得そうだ。 ●単体でGeForce 6800 GT×2に肉薄する性能 それでは、パフォーマンスを検証していきたい。今回用意した比較対象はGeForce 6800 GTと、ATIのRADEON X850 XT Platinum Edition。NVIDIAの2製品については、SLI構成での検証も行なう。環境は表2のとおりだ。
テスト条件については、1,024×768/1,280×1,024(Unreal Tournamentのみ1,280×960)/1,600×1,200ドットの解像度で、それぞれアンチエイリアシング(AA)や異方性フィルタ(Aniso)を適用しない状態、4xAAのみ適用、4xAAに8x異方性フィルタを適用をテスト。加えて、NVIDIAの2製品のみ8xS AA+16xAAの条件を追加している。 では、まず「3DMark05」の結果から見ていきたい(グラフ1)。単体で測定した結果を見てみると、GeForce 6800 GTに対して差が小さいところで約1.5倍、大きいところで2倍近い性能向上が見てとれる。また、RADEON X850 XT PEに対しても、小さいところで約1.15倍、大きいところでは1.5倍以上の性能向上を見せており、かなりのポテンシャルを感じさせる結果が出ている。 いずれも、解像度が高く、かつフィルタを適用してグラフィック処理の負荷を高くした場合に、比較対象に対して差を大きくする傾向にある。つまり、高画質の条件にしても性能の落ち込みが他に比べて小さいというわけだ。 ただ、SLI構成においては、とくに低負荷の条件でGeForce 6800 GTとの差が小さくなっている。問題は、GeForce 7800 GTXのSLI構成で解像度の違いによる性能差はあるものの、フィルタの適用を重ねてもスコアがほとんど変わらない点だ。これは明らかに、ほぼすべてのテスト条件でCPUがボトルネックになってしまった結果と見ることができる。GeForce 6800 GTのSLI構成と大きく差がついたところで1.6倍程度となっているが、今後のCPU性能の向上によって、さらに差が開く可能性を持っているわけだ。
続いては、「3DMark03」の結果を見てみよう(グラフ2)。こちらは、CPUに対する要求が3DMark05よりも小さいためか、SLI構成においても、GeForce 6800 GTに対して大きなアドバンテージを見せている。ここでの、2万というスコアは驚きに値するものだ。 単体での性能もずば抜けている印象である。負荷の高い条件ほど他のビデオカードに対して差を広げるのは3DMark05と同じ傾向である。ちなみに、やや結果は上下するが、両テストとも、GeForce 6800 GTの1,024×768ドット/フィルタなしのスコアと、GeForce 7800 GTXの1,600×1,200ドット/8xAA+16xAnisoのスコアが同程度である。同一のフレームレートを確保しながら、画質面で相当な違いを得ることができるのは大きなメリットといえるだろう。 さらに注目したいのは、1,600×1,200ドットの8xS AA+16xAnisoのテスト条件で、GeForce 7800 FTX単体が、GeForce 6800 GTのSLI構成に肉薄する結果を見せている点だ。
続く、「AquaMark3」(グラフ3)、「DOOM3」(グラフ4)においては、このテスト条件においてGeForce 7800 GTX単体で、GeForce 6800 GTのSLI構成を上回るスコアを出した。ちなみに、低解像度においてもスコアが逆転する傾向が見て取れる個所があるが、これはビデオカードの性能ではなく、やはりCPUがボトルネックになってしまっているためだ。
さて、ほかには「FINAL FANTASY Official Benchmark 3」(グラフ5)、「Unreal Tournament 2003」(グラフ6~7)といったところをテストしているが、これまでのテストで見えてきた傾向と大きくは変わらない。負荷が小さいテストでCPUがボトルネックになりがちな点や、高解像度でGeForce 7800 GTXの性能の落ち込みが小さいことが、こうしたテストでも確認できる。
●現在のプラットフォームには“はやすぎる”GPU 以上のとおり、GeForce 7800 GTXをテストしてきたが、現時点で最高性能であるという点は間違いないだろう。ただ、今回使ったPentium 4 670の環境では、その性能の一端を見ることができたに留まる印象である。 つまり、その性能が飛び抜けてしまったゆえに、本製品を最大限活用するには周辺の環境についても相当にハイエンドな環境が求められるわけだ。特に本製品でSLI構成を組むのは、時期尚早といえる。今後、さらにCPU性能が向上するときまで待ったほうがいいだろう。 高解像度/フィルタ適用の環境における、GeForce 7800 GTXの性能の落ち込みの小ささは特筆でき、GeForce 6800 GTのSLI構成に肉薄/逆転する結果を見せることを考慮すれば、とりあえず1枚導入しておきSLIを使ったアップグレードパスを残す、という、NVIDIAが当初アピールしていたSLIの発想に沿った導入ステップはありだ。 現段階では、ATIのCrossFireのテストが行なえていないし、さらにATIでは第2四半期に「R520」のコードネームを持つGPUを投入する予定となっている。これらのテスト結果を見たとき、GeForce 7800 GTXが今後導入すべきビデオカードの最適解となるかどうか、今後も興味深い。 (2005年6月22日) [Text by 多和田新也]
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