松下電器産業のLet'snoteシリーズは、軽くてバッテリ駆動時間が長いモバイルノートPCとして、人気の製品だ。今回発表された夏モデルは、従来のLet'noteシリーズの路線をさらに発展させた製品であり、モバイルノートPCとしての完成度はさらに向上している。 夏モデル4製品のうち、12.1型液晶を搭載した「Let'snote W4」と「Let'snote T4」の2製品は、より堅牢になった新設計の筐体を採用していることが特徴だ。今回は、12.1型液晶搭載の1スピンドルモバイルノートPC「Let'snote T4」を試用する機会を得たので、レビューしていきたい。 ●Intelの最新統合型チップセット「Intel 915GMS」を搭載
Let'snote T4(以下T4)は、2005年2月に発売された「Let'snote T2F」(以下T2F)の後継となる製品だ。T4では、CPUとして超低電圧版Pentium M 753(1.2GHz)を、チップセットとしてグラフィックス統合型のIntel 915GMSを採用している。CPUは前モデルのT2Fと同じだが、チップセットが最新のIntel 915GMSになり、PC2-3200(DDR2-400)をサポートしたことと、グラフィックスコアのクロックが向上したことで、パフォーマンスは向上している。なお、Intel 915GMとは違って、デュアルチャネルメモリアクセスには対応していない。 T4では、標準実装メモリが従来の256MBから512MBに倍増したことも評価できる。256MBでは、Windows XPを快適に動かすには不足であったが、512MBあれば、とりあえず増設しなくても、Windows XPを快適に利用することができる。また、底面にはMicroDIMMスロットが1基用意されているので、最大1GBまでの増設が可能だ。 HDD容量は40GBで、T2Fと同じである。このクラスのモバイルノートPCとしては標準的な容量であるが、画像や動画などのデータを多数保存するには、やや心許ない。60GBに増やして欲しかったところである。 ●田園都市線のラッシュにも耐える新筐体 T4のウリの1つが、より丈夫になった新筐体を採用していることだ。従来のT2Fも、ボンネット構造による堅牢なボディが特徴であったが、T4では、筐体の設計を一新することで、さらに丈夫になった。 具体的には、従来のT2Fの天板の耐荷重が50kgf(つまり天板全体で50kgの重さを支えられるということ)であったのに対し、T4では、耐荷重が2倍の100kgfに向上している。50kgfという圧力は山手線のラッシュ時に相当し、100kgでは日本一混雑する路線である田園都市線のラッシュ時に相当するという。 さらに、非動作時30cm(26面)の落下試験をクリアするなど、耐衝撃性も向上しているので、安心して持ち歩くことができる。天板には、0.5mm厚の薄型マグネシウム合金が採用されており、プレス成形によって、中央部の強度を確保している。 ボディカラーも新色の「シルバーフェザー」が全モデルで採用され、シリーズとしての統一感が増した。筐体のサイズは、268×210.4×24.9~44.3mm(幅×奥行き×高さ)で、T2F(268×210×26.1~39.1mm)に比べて、最薄部は1.2mmほど薄くなっているが、最厚部は逆に5.2mmほど厚くなっている。 液晶ディスプレイとして、12.1型液晶(XGA)を採用。AVノートPCでよくある、光沢タイプではなく、ノングレアタイプの液晶を採用しているため、外光の映り込みが少ない。光沢タイプは確かに鮮やかだが、外光が映り込みやすいことが欠点だ。据え置きで使われるノートPCなら、光沢タイプの液晶が適しているが、さまざまな環境で使われることになるモバイルノートPCには、ノングレアタイプが適している。液晶の輝度は21段階に変更可能だ。
●キーレイアウトが変更 キーボードのピッチは横19mm、縦16mmで、キートップは横長である。キー配列は標準的だが、キートップが横長なので、人によっては慣れるまでやや違和感があるかもしれない。キー自体も改善されており、キーを支えるパンタグラフ構造の改良によって、キーの遊びが小さくなり、剛性感も増している。 カーソルキー周りのレイアウトが変更されており、上カーソルキーの左右にスペースができ、ミスタイプもしにくくなった(キーの数が2つ減っている)。また、レーザー印刷を採用し、キートップの文字の耐久性も向上した。パームレスト部分の塗装にも高耐久塗料が採用されており、一般的な塗料と比較して、約3倍の耐摩耗性能を実現している。 ポインティングデバイスとしては、Let'snoteシリーズではお馴染みの円形ホイールパッドを採用。縦(上下)スクロールだけでなく、横(左右)スクロールにも対応しているので、表計算ソフトを使う場合などに便利だ。
●無線LAN切り替えスイッチを装備 インターフェイスとしては、T2Fと同様に、USB 2.0×2、外部ディスプレイ、LAN、モデムの各ポートと、SDメモリーカードスロット、PCカードスロット(Type2×1)を装備している。PCカードスロットのフタが、ダミーカード方式ではないのも嬉しい。 なお、SDメモリーカードスロットの転送速度が最大8MB(T2Fでは2MB)に高速化されたほか、USB 2.0ポートの場所が左側面から右側面に変更されており、マウス接続時などの使い勝手が向上した。無線LAN機能は前モデルと同じくIEEE 802.11a/b/g対応だが、新たに無線LAN切り替えスイッチが用意されたことも評価できる。ただし、無線LANインジケータは用意されていない。そのほか、TPMセキュリティチップが搭載され、セキュリティ機能も強化されている。
●世界最長の最大12時間駆動を実現 T4の最大のウリは、バッテリ駆動時間が大幅に延びたことだ。9セルの大容量バッテリ(11.1V、7.65Ah)を搭載することで、12.1型液晶搭載ノートPCとして、現時点世界最長の約12時間駆動を実現している。ちなみに、T2Fのバッテリ駆動時は約5時間であったので、実に2.4倍にも延びたことになる。 その代わり、重量は1070gから1260gへと増えているが、移動中などにノートPCを使う機会の多いヘビーモバイラーにとっては、200g足らずの重量増加で、持続時間が2.4倍に延びるのであれば、そちらのほうが嬉しいだろう。 また、バッテリの寿命(サイクル寿命)を延ばすエコノミーモード(ECOモード)が搭載されたことも面白い。ECOモードでは、バッテリをフル充電せずに80%充電でストップすることで、サイクル寿命を約1.5倍に延ばすことが可能になる。 従来は、3年間で2本のバッテリを買い換える必要があったが、ECOモードでは3年間で1本バッテリを買い換えれば済むことになる。もちろんECOモードでは、バッテリ駆動時間も80%の9.6時間になるわけだが、それでも駆動時間は十分長い。 従来通り、ファンレス設計を実現していることも特筆したい。ファンがないので、動作時の騒音も静かなだけでなく、ファンの故障によるトラブルも防げる。
●MobileMark 2002で9時間を超えるスコアを記録 参考のために、いくつかベンチマークテストを行なってみた。ベンチマークプログラムとしては、BAPCoのMobileMark 2002、SYSmark 2002、Futuremarkの3DMark2001 SEおよび3DMark03、id softwareのQuake III Arenaを利用した。 MobileMark 2002は、バッテリ駆動時のパフォーマンスとバッテリ駆動時間を計測するベンチマークであり、SYSmark 2002は、PCのトータルパフォーマンスを計測するベンチマークである。また、3DMark2001 SEやQuake III Arenaは、3D描画性能を計測するベンチマークだ。MobileMark 2002については、電源プロパティの設定を「ポータブル/ラップトップ」にし、それ以外のベンチマークについては、電源プロパティの設定を「常にオン」で計測した。 結果は下の表にまとめたとおりである。比較対照用にLet'snote R3やLaVie RX LR700/CD、VAIO type S VGN-S70B、VAIO type T VGN-T70Bの結果も掲載してある。 まず、MobileMark 2002の結果から見ていこう。バッテリ駆動時のパフォーマンスを示すPerformance ratingのスコアは166と、このクラスの製品としてはトップクラスだ。CPUのクロック自体は1.2GHzなのだが、チップセットが最新になり、メモリ帯域幅が向上したことが効いているのであろう。 バッテリ駆動時間を示すBattery life ratingは、563分(9時間23分)と非常に長い。同じLet'noteシリーズのLet'snote R3(旧モデルだが)は425分と好成績だが、それ以外の3製品は350分以下であり、いかにT4の駆動時間が長いかがよくわかる。これだけ長くバッテリが持つのなら、ACアダプタを持ち歩かなくても、丸一日仕事をすることができるだろう。 SYSmark 2002のスコアも好成績である。実クロック1.73GHzのPentium M 740を搭載するLaVie RX LR700/CDには及ばないものの、VAIO type S VGN-S70Bのスコアは上回っている。3DMark2001 SEやQuake III Arena、3DMark03といった3D系ベンチマークのスコアも、統合型チップセットとしては健闘している。しかし、やはり単体ビデオチップを搭載した製品に比べると3D描画性能は低いため、最新ゲームを快適に遊びたいという人には向いていない。 【Let'snote T4のベンチマーク結果】
●バッテリ駆動時間を重視する人に特にお勧め T4は、モバイルノートPCに要求される、「軽さ」、「丈夫さ」、「バッテリ駆動時間の長さ」という3つのポイントを高いレベルで満たしており、モバイルノートPCとしての完成度はトップクラスだ。 特に、最大約12時間というバッテリ駆動時間の長さは、ライバル製品を大きく上回っている。筐体が堅牢になったこともあわせ、バッテリ駆動時間を重視するヘビーモバイラーに特にお勧めしたい。 また、T4ほどの駆動時間は不要だが、軽くて丈夫な2スピンドルノートPCが欲しいという人には、スーパーマルチドライブを搭載した姉妹製品のLet'snote W4がお勧めだ。Let'snote W3も、T4と同じ耐100kgfの新筐体を採用しており、重さ1,199gで約8時間駆動が可能だ。 □関連記事 (2005年5月26日) [Reported by 石井英男]
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