槻ノ木隆のPC実験室

Pentium M用Socket 478ゲタ「CT-479」を試す
〜Pentium 4用マザーでPentium Mが動作




 今年のCeBITで製品アナウンスがあり、既に出荷開始されたASUSTeKの「CT-479」。Pentium MをSocket 478マザーボードで利用するための変換アダプタ(というか、「下駄」の方が通りが良いかもしれない)である。秋葉原では4月第2週から販売されており、今では改造モデルまで販売されているという人気ぶりである。この製品の実力を確認してみよう。

(写真1)後のP4P800 SEの箱と比べると、おおむね大きさがわかると思う (写真2)パッケージ内容、マニュアルは英語と日本語が併記されており、英語が苦手な方でも問題ない

●マーケット動向

 CT-479のメリットとは、言うまでもなくPentium Mを利用できること。Pentium 4系の消費電力や発熱に悩まされていたユーザーには、もってこいの製品である。Pentium 4の場合、既にNorthwood系列の製品はほとんど入手できないから、現在利用できるのは発熱が多いPrescott系列のみ。ということは、TDPは最低でも84Wであって、EIST(Enhanced Intel Speedstep Technology)もないから、冬には便利でも夏場には辛いマシンとなる。特に省スペースPCの場合、発熱対策は大問題であろう。これに対しPentium Mは、最新の770(2.13GHz)でもTDPは27Wと低く、その割に性能は悪くないわけで、3Dゲームをガンガン回すとかビデオのエンコードといった、絶対的なCPUパワーを必要とするユーザー以外にはかなり良い選択肢である。

 Pentium M場合の問題は、マザーボードの選択肢が限られることだ。現時点で入手可能なマザーボードといえば、以下の製品ぐらいしかない。

  • PFU PD-41PM160M1:スペックはともかく、入手性もよくなく、またCPUクーラーが付属しない。価格もやや高価。
  • COMMELL LV-671:ファンレス構成を取れるのはメリットだが、拡張性に乏しく、しかも高価。入手性もやや悪い。
  • AOpen i855GMEm-LFS:Pentium Mを使う時のスタンダードな選択肢。入手性もよく、最近は価格も下がってきた。
  • AOpen i915GMm-HFS:Pentium MでPCI Expressを使いたい場合、現状唯一の選択肢。ただ価格は高め。
  • AOpen XC Cube EZ855:入手性やコストパフォーマンスはは悪くないと思うが、キューブ型PC以外の構成を求めている場合には意味がない。
  • DFI 852GME-MGF:ちょっとピーキーな製品であるのは以前にレポートした通り。価格もやや高め。

 産業用ボードコンピュータを探せば他にもいろいろ見つかるのだが、個人ユーザーが購入できるのはまぁこのあたりまでだろう。現実的な選択肢はi855GMEm-LFS(Ver 2)かi915GMm-HFSで、前者は3月の時点で25,000円を切り、最近では最安値が20,000円をちょい切るあたりまで落ちてきている。後者はやはり3月の時点で32,000円〜35,000円のレンジ。最近は最安値がジャスト3万あたりまで落ちては来たが、今しばらくはこのままといった感じである。割と高値なのが欠点と言える。

 これに対し、今回CT-479に組み合わせたASUSTeK P4P800 SEの場合、実売価格は12,700円(PC DEPOT:税込)と格安。CT-479は6,489円(高速電脳:税込)とあわせても2万を切っており、ほぼ価格では同等である。運良く既にASUSTeKのマザーを持っているユーザーであればCT-479代だけで済むから、移行コストは最小に抑えられるだろう。

 なお、ASUSTeKはCT-479でEISTをサポートしないと表明している。理由として挙げられたのは、EISTが動作するためにはサウスブリッジがICH5ではなくICH-5Mである必要があり、ところがこれを搭載したIntel 865PE/G搭載マザーボードが無いから、という話だった。これはちょっと残念だが、ただPentium 4をPentium Mに変えるだけで大幅な省電力化が可能だから、あきらめざるを得ないだろう。

●CT-479の構造

 さてそのCT-479であるが、ASUSTeKによれば5つの問題があったという。

  • (1) ピンの配置がSocket 478とSocket 479で全く異なる
  • (2) コア電圧設定の仕様が異なる
  • (3) Pentium Mには、VCCAと呼ばれるPLL用の1.8Vの電源供給が必要
  • (4) 信号レベルが微妙に異なる
  • (5) 機械的形状が大きく異なる

がそれである。まず(1)、実は今回筆者も調べて初めて知ったのだが、Socket 478とSocket 479は単にピンを1本足したというレベルではなく、全く信号配置が異なっている。表1にいくつかダイジェストで示したが、まるで信号が異なっている事が判るはずだ。この結果、全部のピンについて配線を入れ替えてやらなければならない。

【表1:Pentium MとPentium 4のピン配置の違い】
ピン番号 Pentium M Pentium 4
ピン名 信号タイプ 入出力 ピン名 信号タイプ 入出力
A2
VSS Power/Other   THERMTRIP# Asynch GTL+ Output
A3
IGNNE# CMOS Input VSS Power/Other  
A4
IERR# Open Drain Output VSS_SENSE Power/Other Output
A5
VSS Power/Other   VCC_SENSE Power/Other Output
A6
SLP# CMOS Input TESTHI11 Power/Other Input
A7
DBR# CMOS Output RESERVED    
A8
VSS Power/Other   VCC Power/Other  
A9
BPM[2]# Common Clock Output VSS Power/Other  
A10
PRDY# Common Clock Output VCC Power/Other  
A11
VSS Power/Other   VSS Power/Other  
A12
TDO Open Drain Output VCC Power/Other  
A13
TCK CMOS Input VSS Power/Other  
A14
VSS Power/Other   VCC Power/Other  
A15
ITP_CLK[1] CMOS input VSS Power/Other  
A16
ITP_CLK[0] CMOS input VCC Power/Other  
A17
VSS Power/Other   VSS Power/Other  
A18
THERMDC Power/Other   VCC Power/Other  
A19
D[0]# Source Synch Input/Output VSS Power/Other  
A20
VSS Power/Other   VCC Power/Other  
A21
D[6]# Source Synch Input/Output VSS Power/Other  
A22
D[2]# Source Synch Input/Output RESERVED  
A23
VSS Power/Other   D2# Source Synch Input/Output
A24
D[4]# Source Synch Input/Output VSS Power/Other  
A25
D[1]# Source Synch Input/Output D3# Source Synch Input/Output
A26
VSS Power/Other   VSS Power/Other  
AA1
VSS Power/Other   VSS Power/Other  
AA2
A[16]# Source Synch Input/Output TESTHI1 Power/Other Input
AA3
A[14]# Source Synch Input/Output BINIT# Common Clock Input/Output
AA4
VSS Power/Other   VSS Power/Other  
AA5
VCC Power/Other   BPM4# Common Clock Input/Output
AA6
VSS Power/Other   GTLREF Power/Other Input
AA7
VCC Power/Other   VSS Power/Other  
AA8
VSS Power/Other   VCC Power/Other  
AA9
VCC Power/Other   VSS Power/Other  
AA10
VSS Power/Other   VCC Power/Other  
AA11
VCC Power/Other   VSS Power/Other  
AA12
VSS Power/Other   VCC Power/Other  
AA13
VCC Power/Other   VSS Power/Other  
AA14
VSS Power/Other   VCC Power/Other  
AA15
VCC Power/Other   VSS Power/Other  
AA16
VSS Power/Other   VCC Power/Other  
AA17
VCC Power/Other   VSS Power/Other  
AA18
VSS Power/Other   VCC Power/Other  
AA19
VCC Power/Other   VSS Power/Other  
AA20
VSS Power/Other   TESTHI6 Power/Other Input
AA21
VCC Power/Other   GTLREF Power/Other Input
AA22
VSS Power/Other   D62# Source Synch Input/Output
AA23
D[40]# Source Synch Input/Output VSS Power/Other  
AA24
D[33]# Source Synch Input/Output D63# Source Synch Input/Output
AA25
VSS Power/Other   D61# Source Synch Input/Output
AA26
D[46]# Source Synch Input/Output VSS Power/Other  

 

 (2)については、Pentium MではIMVP(Intel Mobile Voltage Positioning)と呼ばれる方式で電圧設定を行なっており、一方Pentium 4ではVRM(Voltage Regulator Module) 10.1として定められている方式で電圧設定を行なっている。どちらもCPUへのコア電圧を設定するための方式で、CPUから出るVID0〜VID5という6bitの信号線が示す値に応じて、マザーボード側で電圧を生成してCPUに供給するという仕組みであるが、このVIDの解釈がIMVPとVRMで全く異なっている。IMVPは0.7V〜1.708Vの範囲を0.016V刻みで指定するのに対し、VRM 10.1は0.8375V〜1.6Vの範囲を0.0125V刻みで指定する、というあたりで互換性が無いわけだが、さらにIMVPとVRM 10.1ではVIDの並び順も異なっており、結果として表2に示す通り、これまた完璧にマッピングが全然異なっている。従ってVIDをPentium MからPentium 4マザーボードにそのまま渡すと、CPUが焼けるか動かないかのどちらかという事になりかねない。

【表2:Pentium MとPentium 4のVIDの違い】
VID Pentium M
Vcc(V)
Pentium 4
Vcc(V)
5 4 3 2 1 0
0
0
0
0
0
0
1.708
1.0875
0
0
0
0
0
1
1.692
1.0625
0
0
0
0
1
0
1.676
1.0375
0
0
0
0
1
1
1.660
1.0125
0
0
0
1
0
0
1.644
0.9875
0
0
0
1
0
1
1.628
0.9625
0
0
0
1
1
0
1.612
0.9375
0
0
0
1
1
1
1.596
0.9125
0
0
1
0
0
0
1.580
0.8875
0
0
1
0
0
1
1.564
0.8625
0
0
1
0
1
0
1.548
0.8375
0
0
1
0
1
1
1.532
1.5875
0
0
1
1
0
0
1.516
1.5625
0
0
1
1
0
1
1.500
1.5375
0
0
1
1
1
0
1.484
1.5125
0
0
1
1
1
1
1.468
1.4875
0
1
0
0
0
0
1.452
1.4625
0
1
0
0
0
1
1.436
1.4375
0
1
0
0
1
0
1.420
1.4125
0
1
0
0
1
1
1.404
1.3875
0
1
0
1
0
0
1.388
1.3625
0
1
0
1
0
1
1.372
1.3375
0
1
0
1
1
0
1.356
1.3125
0
1
0
1
1
1
1.340
1.2875
0
1
1
0
0
0
1.324
1.2625
0
1
1
0
0
1
1.308
1.2375
0
1
1
0
1
0
1.292
1.2125
0
1
1
0
1
1
1.276
1.1875
0
1
1
1
0
0
1.260
1.1625
0
1
1
1
0
1
1.244
1.1375
0
1
1
1
1
0
1.228
1.1125
0
1
1
1
1
1
1.212
Output off
1
0
0
0
0
0
1.196
1.0750
1
0
0
0
0
1
1.180
1.0500
1
0
0
0
1
0
1.164
1.0250
1
0
0
0
1
1
1.148
1.0000
1
0
0
1
0
0
1.132
0.9750
1
0
0
1
0
1
1.116
0.9500
1
0
0
1
1
0
1.100
0.9250
1
0
0
1
1
1
1.084
0.9000
1
0
1
0
0
0
1.068
0.8750
1
0
1
0
0
1
1.052
0.8500
1
0
1
0
1
0
1.036
1.6000
1
0
1
0
1
1
1.020
1.5750
1
0
1
1
0
0
1.004
1.5500
1
0
1
1
0
1
0.988
1.5250
1
0
1
1
1
0
0.972
1.5000
1
0
1
1
1
1
0.956
1.4750
1
1
0
0
0
0
0.940
1.4500
1
1
0
0
0
1
0.924
1.4250
1
1
0
0
1
0
0.908
1.4000
1
1
0
0
1
1
0.892
1.3750
1
1
0
1
0
0
0.876
1.3500
1
1
0
1
0
1
0.860
1.3250
1
1
0
1
1
0
0.844
1.3000
1
1
0
1
1
1
0.828
1.2750
1
1
1
0
0
0
0.812
1.2500
1
1
1
0
0
1
0.796
1.2250
1
1
1
0
1
0
0.780
1.2000
1
1
1
0
1
1
0.764
1.1750
1
1
1
1
0
0
0.748
1.1500
1
1
1
1
0
1
0.732
1.1250
1
1
1
1
1
0
0.716
1.1000
1
1
1
1
1
1
0.700
Output off

 

 (3)はPentium M独自の規格で、これを起動時に外部から供給してやる必要がある。しかし電流自体は最大でも120mAなので、消費電力の事はあまり考える必要がない。ただVccは最大でも1.7Vそこそこだから、1.8Vが必要なVCCAに転用することはできない。

 (4)は微妙な問題である。Pentium 4/Pentium M共に、データ信号の電圧レベルは、GTLREFと呼ばれる信号を基準にすることになっている。このGTLREFの範囲、NorthwoodベースのPentium 4では-0.1〜+1.75V、Pentium Mでは-0.1〜+1.6Vの範囲なのだが、PrescottベースのPentium 4はPentium Mよりもやや狭い範囲になっている。従って昔の製品はともかく、最近のPrescottを前提にした製品ではカバーできる信号範囲に収まらない可能性がある。

 (5)は、ヒートスピレッダもないし、そもそもCT-479の高さがあるから、既存のヒートシンクがつかえないのは明白ということである。

 これらの問題に対してASUSTeKでは

  • (1) 6層基板を使い、配線を全て並べ替える事で対応した。
  • (2) 基板上にLevel Shifterと呼ばれる回路を搭載し、ここでIMVPの信号をVRM用に置き換えて送り出す事で、近い電圧を発生させるようにした。
  • (3) 基板上に、VCCA用の電源回路を別に設け、ここから直接電源供給を行なうようにした。
  • (4) チップセットのSpecificationを確認したところ、Pentium Mの信号もぎりぎりカバーされることが確認できたのでそのまま使うことにした。
  • (5) 専用のヒートシンクを用意した。

という形で解決している。(1)〜(3)に関しては、図1を見ていただくほうが早いかもしれない。ここでLevel ShifterはPLDを使って構成しているという話で、内部的にはTable Lookupで対応しているのではないかと思われる。要するに、以前のSlot1→Socket 370の下駄とかとは異なって、だいぶ手間が掛かっているわけだ。

(図1)CT-479構成図

 

 ちなみにもう1つ問題があって、それはBIOSの対応である。最近のBIOSは、CPUにロードするMicrocodeを格納しているわけだが、Pentium MとPentium 4では当然異なるMicrocodeが必要なので、これをBIOS側で対応しなければならない。つまり、既存のSocket 478マザーボードにCT-479を挿しただけでは、Pentium Mは動作しないわけで、これは対応BIOSを搭載したマザーボードが増えるのを待つしかないわけだ。パッケージの中身はCT-479本体と専用クーラー、クーラー取り付け用金具、電源ケーブル、マニュアルからなる。ドライバ類は一切必要ないため、付属していない。

 本体は、丁度Pentium 4のヒートシンク取付金具の内側に収まるサイズとなっている(写真3)。裏面はCPUピンが突き出しているだけのシンプルな構成だ(写真4)。

(写真3)パッケージ表面。CPUソケットの右にある、縦に2つ並んだICがLevel Shifter。ソケット上側に並ぶのはVCCA用レギュレータ回路。左下のジャンパは400MHz FSBと533MHz FSBの切り替え。写真では533MHz FSBに設定されている (写真4)裏面。CT-479+Pentium Mだとそれなりの重量になるから、変なところに置いてピンを曲げないように注意したい

 

 さて、インストールであるが、CT-479を装着する前に、先に述べた通りBIOSを対応したものにする必要がある。今回購入したP4P800 SEの場合、BIOS Version 1007.003が入っていたが(写真5)、このバージョンはまだPentium Mに未対応。CT-479を介してPentium Mを装着しても、全くブートしない。そこでまずはPentium 4かCeleronを装着してBIOS Updateを実行し(写真6)、Version 1008に上げてやる必要がある(写真7)。無事に1008にバージョンが上がれば準備完了である。

(写真5)購入時のBIOS Versionは1007。ただコチラにあるように、一部のショップではBIOS更新サービスを行なってくれているので、これを利用すればBIOS Updateの作業は当然不要になる (写真6)ASUS Updateを使って、Windows XP上から更新。何故か直接インターネット経由でのUpdateが出来なかった(ファイルが見つからないと怒られた)ので、ASUSのサイトから最新BIOSをブラウザでダウンロードし、これを読み込ませてBIOS Updateした (写真7)更新後は1008となる

 

 さて、インストール自体は比較的容易である。

  • (1) P4P800 SEからPentium 4を取り去る(写真8)。
  • (2) CT-479を装着し、Socket 478のレバーを下ろしてロックする(写真9)。
  • (3) Pentium Mを装着し、ロックする。必要ならFSB設定のジャンパ位置を変更する(写真10)。
  • (4) VCCA用電源を接続する(写真11)。
  • (5) 専用クーラーを載せる(写真12)。
  • (6) 取付金具を使ってクーラーを固定する(写真13)。

 あとは、Vcca用配線とクーラーの配線をそれぞれ電源に接続すれば、インストール作業は完了ということになる。

 ただここで注意は、写真14のようにクーラーが傾かないようにすることだ。この状況だと、クーラーがCPUのコアの端に接触し、最悪コアが欠ける事がある(というか、これが理由で1つコア欠けさせてしまった)。正しい装着方法は写真12の状態で、片手でクーラー全体を上からホールドしつつ、もう片手で金具を取り付けることで、クーラーが傾かないようにすることだ。Pentium 4と異なりヒートスプレッダは無いから、かつてのAthlon XP同様、コア欠けには十分注意してほしい。

(写真8)まずCPUソケットのレバーを上げておく (写真9)この向きからだと、上手く装着できたかどうか見やすいと思う。装着後はレバーを下ろしてロックする
(写真10)CPU装着の図。ちなみにこの手順はマニュアルに従ったものだが、あらかじめPentium MをCT-479に取り付けておき、それからSocket 478に装着するほうがやや楽であった。ただその際にはピンを曲げないよう注意が必要 (写真11)電源を接続する。クーラーを装着すると、スペース的に後から電源の接続はできないので、先に行なっておく必要がある (写真12)上からまっすぐクーラーをかぶせる
(写真13)うまく固定金具を取付出来た図 (写真14)固定金具を両手で取り付けようとすると、すぐにこうなってしまう。なので、片手で常にクーラーを水平になるよう抑えておかないといけない。これがちょっとトリッキーかも

 

 

 問題なく装着すれば、電源を入れると正しくブートするはずだ(写真15)。Windowsも当然問題なく立ち上がり、特にドライバの追加といった作業は必要ない。実際使っている分にはあまり違和感がないのだが、Crystal CPUIDで見てみると、ちゃんとIntel 865PEの上でPentium Mが動作していることが判る(写真16)。

(写真15)問題がなければあっさり立ち上がる (写真16)Pentium MがIntel 865PE上で動作していることが判る

●で、性能は?

 長い前置きが終ったところで、実力比較である。本当ならこの手のテストだと内蔵グラフィックを使うところだが、現状ではIntel 865G/915G搭載製品がまだCT-479に未対応なので、Intel 865PE搭載マザーでのテストとなった。このためテストではRADEON 9600 XTを利用している。また、CPUとしては

  • Pentium M 725 (1.60GHz/400MHz FSB)
  • Pentium M 730 (1.60GHz/533MHz FSB)
  • Pentium M 735 (1.70GHz/400MHz FSB)
  • Pentium M 750 (1.86GHz/533MHz FSB)
  • Pentium M 770 (2.13GHz/533MHz FSB)

の5つのCPUが利用出来たので、これを一挙に行なったほか、比較対象としてCT-479を使わずに直接

  • Pentium 4 1.60E GHz(Pentium 4 3.20E GHzを400MHz FSBで動作させた)
  • Pentium 4 2.80E GHz
  • Pentium 4 3.20E GHz

も動作してみた。Pentium 4 1.60E GHzは、同じ1.6GHz/400MHz FSBのPentium M 725と動作周波数/FSBを同じにすることで、CPUの違いによる性能差を確認してみようという趣旨である。

 これとは別に、Pentium Mに関してはDFI 852GME-MGF上でも動作させて性能を見てみた。こちらは要するにモバイル用チップセットとデスクトップ用チップセットでの性能差を確認してみる、という趣旨だ。動作環境は表3に示す通りである。

【表3:テスト環境】
CPU Pentium 4 1.6E GHz/2.8E GHz/3.2E GHz Pentium M 725/730/735/750/770
M/B ASUSTeK P4P800 SE DFI 852GME-MGF
BIOS BIOS 1008 12/10/2004-i852-W83627HF-6A69ZD47C-00
Driver Intel Inf Driver 5.0.2.1003 Intel Inf Driver 6.2.1.1001
Memory PC3200 CL3 512MB×2
Video ATI Radeon 9600 XT 128MB
Driver CATALYST 5.4 ( 6.14.10.6525)
HDD Seagate Barracuda 7200.7 120GB SATA(ST312026AS) NTFSフォーマット
OS Windows XP Professional 英語版+SP2

 

 さて、まずはCPUコアの絶対性能比較ということで、Sandra 2005 SP1のCPU Testの結果を表4に示す。絶対性能自体はやはりPentium 4がやや上回るが、Pentium 4 3.20E GHzとPentium M 770を比べると、Pentium M 770がそれほど遜色ないスコアを出していること、あるいはPentium 4 1.60EHzとPentium M 725を比較すると、SSE2以外の全スコアでPentium Mが圧倒していることを考えると、やはりPentium Mは効率が良い事が見て取れる結果になっている。さすがにPentium M 725〜735あたりまでは数字がやや見劣りするが、750以上だとほぼPentium 4と互角な感じである。

【表4:Sandra 2005 SP1 CPU Arithmetic Benchmark/CPU Multi-Media Benchmark】
Sandra 2005 SP1 CPU Arithmetic Benchmark CPU Multi-Media Benchmark
Dhrystone ALU
(MIPS)
Whetstone FPU
(MFLOPS)
Whetstone iSSE2
(MFLOPS)
Integer x8 iSSE2
(it/s)
Float x4 iSSE2
(it/s)
ASUSTeK
P4P800 SE
Pentium 4 1.60E GHz
4654
1841
3323
11286
14995
Pentium 4 2.80E GHz
8131
3213
5795
19806
26338
Pentium 4 3.20E GHz
9335
3690
6614
22636
29904
Pentium M 725
6915
2230
2853
15290
16843
Pentium M 730
6917
2231
2854
15294
16849
Pentium M 735
7347
2370
3032
16246
17898
Pentium M 750
8073
2604
3331
17848
19663
Pentium M 770
9225
2975
3806
20400
22479
DFI 852GME-MGF Pentium M 725
6932
2237
2861
15333
16891
Pentium M 730
6909
2229
2859
15315
16872
Pentium M 735
7354
2375
3036
16278
17942
Pentium M 750
8082
2608
3336
17873
19691
Pentium M 770
9240
2980
3813
20429
22515

 

 では実際に使うとどうか? ということでPCMark04の結果をまとめたのが表5である。このテストだとPentium 4系はHyperThreadingの威力で、同時実行テストで良い結果をだすためか、成績がちょっと上乗せされているのが判る。CPU TestのScoreを見ればこれは一目瞭然である。ただ、同一クロック比較だとやはりPentium 4はどうにもならない感じで、Pentium Mの効率のよさが再確認できた形だ。ちなみに852GME-MGFの結果がやや低いのは、こちらでレポートした通りメモリバスが遅いからで、このあたりはDDR400をきちんとサポートし、デュアルチャネル構成のメモリバスを持つIntel 865PEの方にアドバンテージがあると言う事だろう。

【表5:PCMark04】
PCMark04 PCMark CPU Memory Graphics HDD
ASUSTeK
P4P800 SE
Pentium 4 1.60E GHz
2665
2459
2713
2865
4238
Pentium 4 2.80E GHz
4356
4240
4696
3193
4213
Pentium 4 3.20E GHz
4895
4818
4959
3244
4216
Pentium M 725
3448
3173
2886
3154
4395
Pentium M 730
3504
3190
3250
3150
4433
Pentium M 735
3630
3360
2945
3174
4420
Pentium M 750
3965
3658
3477
3175
4403
Pentium M 770
4427
4169
3685
3206
4406
DFI 852GME-MGF Pentium M 725
3293
3120
2141
3030
4402
Pentium M 730
3412
3137
2535
3054
4397
Pentium M 735
3580
3365
2824
3073
4398
Pentium M 750
3849
3637
2679
3086
4371
Pentium M 770
4321
4133
2890
3109
4430

 

 ついでにSYSMarkを実施した結果が表6である。Pentium 4 1.60E GHzは話にならない性能の低さなので置いておくとして、Pentium 4 2.80E GHzとPentium M 750がほぼ同等、Pentium 4 3.20E GHzとPentiuM M 770がほぼ同等といったところで、Pentium M 725〜735は多少成績は落ちるものの、大きく違うわけではない。Pentium Mで構成しても、デスクトップでの利用に大きな遜色があるとは言えないようだ。ついでに言えば、852GME-MGFの結果もかなり優秀でほとんどP4P800 SEと差がないのは、あまりFSBの性能が関係ない=Dothanの2MB L2キャッシュが良い仕事をしている、という事だろう。

【表6:SYSMark 2004】
SYSMark 2004 SYSmark 2004 Rating Internet Content Creation Office Productivity
ASUSTeK
P4P800 SE
Pentium 4 1.60E GHz
98
96
100
Pentium 4 2.80E GHz
165
180
152
Pentium 4 3.20E GHz
184
206
164
Pentium M 725
144
151
137
Pentium M 730
146
153
140
Pentium M 735
152
164
141
Pentium M 750
165
180
152
Pentium M 770
180
201
162
DFI 852GME-MGF Pentium M 725
146
153
139
Pentium M 730
147
155
139
Pentium M 735
154
163
145
Pentium M 750
163
178
149
Pentium M 770
180
202
160

 

 では3D系は? というところだが、使っているビデオカードがRADEON 9600 XTだから、3DMark05とかを掛けても余り意味がない。今回は3DMark03とFinal Fantasy XI Official Bench V3、それとDoom3のDemo 1を実施してみた。3DMark03とDoom3は、1,024×768ピクセルで利用している。結果はというと、これまたPentium Mに見劣り一切無しという結果である。まぁもっと性能の高いビデオカードを使うとまた話が変わるのかもしれないが、今回利用した3Dゲーム位なら、Pentium Mで(Pentium 4の)代替が十分勤まる、という事が確認できたのは有意義であろう。ちなみにこのテストでは再び852GME-MGFの成績が低めだが、テクスチャの転送とかでメモリ帯域の低さがモロに出てしまったためであろう(こればっかりはキャッシュ容量を大きくしても救えない)。

【表7:各種3Dベンチマーク】
3D Benchmark 3DMark03 FFXIBench 3 Doom3 Demo1(fps)
Low High
ASUSTeK
P4P800 SE
Pentium 4 1.60E GHz
3790
3614
2449
23.0
Pentium 4 2.80E GHz
4323
5709
3649
23.9
Pentium 4 3.20E GHz
4358
6113
3889
24.1
Pentium M 725
4293
5611
3656
24.0
Pentium M 730
4304
5842
3770
24.0
Pentium M 735
4309
5757
3724
24.0
Pentium M 750
4341
6254
4042
24.1
Pentium M 770
4365
6552
4198
24.3
DFI 852GME-MGF Pentium M 725
4190
5621
3671
18.1
Pentium M 730
4257
5556
3636
19.2
Pentium M 735
4283
5778
3740
19.4
Pentium M 750
4285
5938
3878
19.1
Pentium M 770
4303
6217
4090
19.3

 

●オーバークロックについて

 ここまでの結果を見ると、「なるほど、Pentium M+CT-479は確かに高速な事がわかった。しかしPentium Mは高くて買いにくい」という声が聞こえてきそうである。実際、今週のCPUの価格を見ると

  • Pentium M 725 22,820円
  • Pentium M 730 22,655円
  • Pentium M 735 26,572円
  • Pentium M 750 32,762円
  • Pentium M 770 70,297円
  • (いずれも平均値)

となっている。Pentium 4 3.20E GHzのリテールパッケージは24,788円だから、これはかなり割高に感じられるかもしれない。ところが、実はそうでもなかったりする。というのは、今回結果を示したPentium M 770というのは、実はPentium M 725のオーバークロックだったりするからだ。写真17を見れば明らかなように、1.6GHz動作のPentium M 730のFSBを400MHz→533MHzに上げただけで、電圧も何もいじっていないにも関わらず、あっさり2.13GHzで動作してしまった。これは別にCT-479と関係ない、というのは852GME-MGFでもやはり2.13GHzで問題なく動作したからで、ついでに付け加えればPentium M 735をうっかり533MHz動作にしてブートしたら、こちらもあっさり2.26GHz動作で動いてしまった。データは取っていないが、取ればおそらくPentium 4 3.20E GHzを凌駕し、3.40E GHzに迫る性能を出したであろう事は想像に難くない。まぁオーバークロック動作が好きでない人にはお勧めは出来ないが、こうなるとCPU+M/Bの価格は

  • Pentium 4 3.20E GHz + P4P800 SE : 24,788円 + 12,700円 = 37,488円
  • Pentium M 725 + CT-479 + P4P800 SE : 22,820円 + 6,489円 + 12,700円 = 42,009円

で、価格差はわずか4,521円。性能はほとんど変わらずに、消費電力を大きく下げる代償としては、ずいぶん安いと言わざるを得ない。当然CPUの個体差があるから、「必ず動作する」というものではないし、動作させている途中で壊れる危険性は大きく増すわけで、「あくまで自己責任」の世界の話ではあるが、それでも7万円のPentium M 770を買わずに済ませられるあたりはかなり魅力的に感じられるだろう。

(写真17)オーバークロック後のPentium M 725

●問題

 ざっとCT-479をご紹介してきたが、そんなわけでなかなか魅力的な構成が取りやすい事はおわかりいただけるかと思う。問題は対応マザーがなかなか増えないことだ。ASUSTeKによれば順次対応マザーは増やすとしつつも、対象はIntel 875/865以降を搭載する製品に限るとしている。理由は「検証にえらく手間がかかるから」ということだそうで、Intel以外のベンダーのチップセットや、Intelでも845シリーズなど古い製品については、「手が回らない」ということだそうである。こうした古い製品については、そういうわけで望みはなさそうだ。ただこれは仕方が無いかもしれない。

 加えて言えば、構造上Socket 478には対応できても、LGA775には対応が(機械的に)難しいのも、仕方がないとは言えちょっと残念である。まぁP4GD1が既にCT-479に対応しているので、Pentium MでPCI-Expressを使いたい、という場合にも選択肢があるのは正直嬉しいところである。欲を言えば、Intel 915Gを搭載したSocket 478マザーボードを出してもらい(それも出来ればMicroATXが嬉しい)、そこでCT-479が動作すれば完璧な気がするが、今のところそういう予定が丸っきりなさそうなのが、ちょっと残念である。

□ASUSTekのホームページ(英文)
http://www.asus.com
□製品情報(英文)
http://www.asus.com/products1.aspx?l1=3&l2=0&l3=0&modelmenu=0&share=txt/57
□関連記事
【3月31日】ASUSTeK開発担当者が来日し、新製品を多数紹介
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0331/asus.htm
【2月8日】異色のPentium Mマザー「DFI 852GME-MGF」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0208/pclabo32.htm
【1月12日】Pentium M対応ベアボーン「AOpen XC Cube EZ855」を試す
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0112/pclabo30.htm

バックナンバー

(2005年4月19日)

[Reported by 槻ノ木隆]


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