前回、ターボリナックスホームの記事を書くとき、ネット上で情報を集めたが、なかなか興味深いことに気が付いた。数年前に触った時は「先が長いな!」と思っていたいろいろなことが、ここにきて一気に揃ってきた。 |
先日、ある会社の役員と食事をしたのだが、新卒、中途に関わらず、人を採用すると予想外の初期投資がかかるという。「何か!?」と尋ねたら職場のPC環境だという。最近マシン自体は安くなったが、ほぼそれと同額に相当する金額のOffice 2003をワンセット買わなければならず、採用した人数分揃えると結構な金額になる。また機能自体は古いOffice 2000で十分であるが、仕事のやり取りで送られてくるファイルの互換性などを考えると数年毎にバージョンアップも必要。全員分を一気にバージョンアップすると、とんでもない金額になるそうだ。しかも必要も無い機能ばかりが増えて重くなる一方。これが俗に言われるMS税だ。納得いかないのも肯ける。
確かに10年ほど前ならある程度マシンの価格が高かったので、少々アプリケーションの価格が高くても全体に占める割合は低くあまり気にならなかったが、安価に揃えるとマシンフルセットが6万円程度のこのご時世、Officeスイート1本がほぼ同額と言うのは何ともおかしな話だ。10年前と比較すれば市場規模は桁違いに大きくなっている。こう言った場合、多くのケースでは量産効果で価格は大幅に下がるのが常識だ。なのに価格は大差無し。当時互角に勝負していたLotus SuperOfficeは2,980円に値下げする発表があったばかりだ。これはある意味安過ぎるかも知れないが、いずれにしても5,000円未満が適正価格だと思われる。
これはOS本体にも同じことが言える、パッケージ版のWindows XPはHome Editionで25,800円、Professionalで35,800円。OEM版はメモリやFDDなどと一緒に買う必要があるので、その実態は正確に解らないものの、Professionalで15,000円以上といった感じだろう。パソコンを構成するキーコンポーネンツとしてはCPUやマザーボードの次に(CPUのランクによると一番)高い値段だ。確かにパソコンはソフトが無ければただの箱であるが、OSの価格がキーコンポーネンツと1位2位を争うのは、誰の眼から見ても不自然だ。あるハードウェアメーカーのエンジニア曰く「寝る間を削って1銭単位でコストを落としてもOSの価格がねぇ」と、愚痴をこぼしていた。 ●競争の無いマーケットなぜこうなってしまったか!? 理由は簡単。世界的なシェアでみれば80%(90%?)以上を占め、1社独占状態になったからだ。同じ事が一昔前のIntelにも当てはまり、高価でクロックもなかなか上がらない時期があった。しかしAMDやその他CPUベンダーが頑張った結果、今のような競争原理が成り立ち、安価でしかもマーケットの要求に合わせていろいろなタイプのCPUを作るようになっている。パソコンの世界に限らず競争原理が働かないと進化は鈍化し、価格はメーカーにコントロールされる。正に今、その状態なのだ。パソコン本体の値段に対して価格が適正でないから不正コピーも多発する。その対応策として低価格OS「Windows XP Starter Edition」を発表をしたが、同時に実行可能なプログラムが3つまで、1つのプログラムで使用可能なウィンドウが3つまで、ファイル共有やプリンタ共有、マルチユーザーアカウントなどの機能無し……など、機能限定する中、一番笑えるのは、画面解像度が800×600までというところだ。アジア地域では所得格差などがPCの普及の妨げになっていると言え、今時800×600までしか表示できないモニタもしくは液晶ディスプレイを探す方が難しい。これは1,024×768以上に対応した途端、少なくとも家庭用途では十分。Home Editionの必要性が無くなり自分の首を絞めるからだと筆者は思っている。 更にいつになるか解らないLonghornに組み込まれようとしている機能を待ち望んでいる人は何%居るのだろうか!? 筆者の眼から見れば市場調査をした結果ではなく、エンジニアの自己満足で設計しているように思える。従っていつまでも完成しないのだ。少なくとも世界中で優秀なエンジニアを一番多く抱えていると思われるMicrosoftが何年経ってもOSを作れない事自体、異常事態または危機感の無い(=何もしなくても売れる)証拠である。 ●Microsoft離れは可能か!?'90年代とは違い、OSを触りたくてパソコンを使っている人はもう居ない時代になった。前回の記事に書いたように個人用途なら、Webブラウザ、メールソフトに加え、セキュリティ&ウィルス、携帯リンク、デジカメ画像処理、フォント、DVDなどメディア再生及び書き込み、ハガキ印刷、Office……こんなところだろう。オフィス用途なら、Webブラウザ、メールソフト、セキュリティ&ウィルス、Officeに加えて特定業務ソフトが動けば大部分はカバーできる。極端な話、OSはこれらのアプリケーションが揃いデータの互換性さえあればある意味何でも良い。 余談になるが、現在、企業が使う特定業務ソフトは、フロントエンドにJavaを使っているケースが非常に多いと聞く。一時期のVisual BASICを彷彿するが、Javaであれば基本的にどこでも動くのでOSによる縛りは無くなる。今となっては作動速度も十分。企業としては正しい選択と言える。 さてWindows以外で考えられるデスクトップOSとしては、
こんな感じだろうか。有償・無償と価格差はあるものの、機能的にはWindowsに対抗できるOSだ。筆者的にはOS/2が21世紀チューンをして、もしくはWebブラウザを中核として再登場しても面白いのでは、と思っている。もちろんアプリケーションを作るには開発環境も重要だ。無償、もしくは安価でないと現時点ではまだマイナーなOSを買い込んでまで開発するデベロッパは少ないだろう。
アプリケーションが揃えばOSは何でも良いと言ったが、何をするにも取り合えず確実に必要なのはWebブラウザ(PDFやFlashなど最低限のPlug-inを含む)/メーラ、Office、動画や音声の再生だと思う。とりあえずこれだけあれば個人用途で使うにしてもオフィスで使うにしても半分程度(以上?)の用途は賄える。特に前者2つに関しては現時点でかなり絞られているようだ。多くのOSで動く無償のキーアプリケーションとしては、次の2つがあげられる。
どちらも初期バージョンはまだまだの感じもあったが、今や十分な性能を誇り、既存のコンテンツやドキュメントに対しても高い互換性を持つ。新規に作るドキュメントはどうにでもなるが、既存の膨大なドキュメントや他とのやり取りで添付されるドキュメントを操作する場合、どうしても互換性が必要になる。即採用とはいかないだろうが、企業の担当者が評価すべき時期に入っているように思う。更に完成度が高まるにつれ、Microsoftのセキュリティ&ウィルス対策、価格の問題に変化が無ければ徐々にではあるがIEやOffice XP離れは確実に起こるだろう。筆者もメールのやり取り、ドキュメント作成、資料集めを目的としたWebブラウズなどの業務用途に使っているパソコンはSolaris 10が出たら試しに付属のMozillaやStarSuiteなどのアプリケーションと共に使ってみるつもりだ。数ヵ月間ストレス無く使えればWindowsを捨てても問題無い。他の一般的なアプリケーションに関してはMac OS X以外はまだまだな感じもするが、これは焦らずMicrosoftがいろいろな意味でもたもたしている間に準備をすれば良い。この流れは世界的なものだと思うので、きっと時間が解決するだろう。 ただし、仮にある程度アプリケーションが揃ってもインターネットが無かった昔と違って大きな問題が1つある。動画や音楽などデジタルコンテンツの再生ができないとかなりマイナス要因となってしまうのだ。特にDRMなど著作権保護機能が付いたデジタルデータの扱いに関しては難問だ。しかしこれに付いてもRealPlayerを筆頭に何とかなりそうな雰囲気になってきた。この点は最近見られるユーザー不在の行き過ぎた著作権保護も関係するので、まだまだ着地点は見えない。今後の動向が気になるところだ。 ●総論
□関連記事 (2004年12月6日)
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