西川和久の
「Mac OS X、ちょっと触って見ました!!」


Mac OS X

 Windows XP Beta2のレポートがどんどん掲載されていくのを横目に、筆者はMac OS Xでも遊んでいる。数年前までPower Macintosh 8500/180を使っていたこともあり、Macの次世代OSといわれるこの環境に興味があるからだ。とはいえ現在、作動条件を満たすMacを持っているわけではなく、友人に無理をいってPower Mac G4 Cube(PowerPC G4 450MHz,64MB+256MB, HDD 20GB)を借り、いろいろチェックしている真っ最中。

 どんなOSでも大幅にバージョンが上がるときはワクワク感一杯。触ってて非常に楽しい。このMac OS Xも例外ではなく、Windowsはもちろん、従来のMac OSでもない、新しい雰囲気を持つOSだ。今回はそのファーストインプレッションをお届けする。

Text by Kazuhisa Nishikawa


●Mac OS XってどんなOS!?

 Mac OS Xは、これまで親しまれてきたMac OS 9.x系とは中身は全く別のOS。乱暴な表現をすると「Windows 9xとWindows NT(2000)の関係にある」と書けばわかり易いかも知れない。(もちろん前者がMac OS 9.x) つまり、メモリ保護、プリエンティブ・マルチタスキング、先進的なメモリ管理、マルチスレッド型プロセス、対称型マルチプロセッシング……など、Windows NTが発表されたとき、いい尽くされた言葉がそのままMac OS Xにも当てはまる。「21世紀の今ごろになって!?」という意見もあるだろうが、長年Appleにもいろいろ事情があり、紆余曲折してたどり着いたゴール(スタート地点?)なのだ。Windows NTも一般向けデスクトップOSという位置付けでは今年出荷予定のWindows XPでやっと本番。対応ドライバやアプリケーションなどの数こそ桁違いであるが、どちらも2001年から始まるという意味では大差ないという見方もできる。

 Mac OS Xの特徴を知る上で重要なキーワードは、Aqua、Darwin、Quartz、OpenGL、QuickTime 5、Classic、Carbon、Cocoa、Java 2 SE、Unicode、BSD Networking、Multi User、Multi CPU……と、こんな感じだろうか。もちろん、今時のOSに必要なTCP/IP、Internet環境、USB、IEEE 1394、プラグ&プレイなどに対応しているのはいうまでもない。この中で解説が必要そうな項目だけピックアップすると以下のようになる。
Aqua 美しさと機能を兼ね備えた新開発のGUI。言葉で書くより、下の画面キャプチャを見た方がわかり易いだろう
Quartz 2Dグラフィックシステム。画面の描画は基本的にPDFで行なわれ、アンチエイリアス、TrueType/Type 1/OpenType Font、ColorSyncなどに対応している。(3DはOpenGL)
Darwin UnixベースでBSDを継承するコアオペレーティングシステム
Classic Mac OS 9.x互換環境。デスクトップ上にMac OS Xネイティブ・アプリケーションと混在可能
Carbon 従来のMac OS APIを継承/機能強化したMac OS Xネイティブ環境。Classicアプリケーションからの容易な移植を目的としている
Cocoa OPENSTEPのフレームワークをベースに、FoundationKit、AppKit、Quartzなどを取り込んだ、もう一つのネイティブ環境。こちらが真のMac OS X環境であり、Objective-CだけでなくJavaからもアクセスできるのが目新しい

 ちょっと難しい言葉も入っているが、単に触るだけのユーザーになってしまった筆者にはあまり関係ない話。 Mac OS Xの特徴的な画面を並べたので、雰囲気を味わって欲しい。

Desktop
これが新GUIのAqua。アプリケーション起動時にアイコンが跳ねたり、メニューやボタンが半透明など、触っていて楽しい環境だ。見事にスケーリングされるアイコンも斬新。いい意味でWindowsとはまったく逆のUIを目指している感じがする。下に見えるのが“Dock”と呼ばれるインターフェース。Windowsのタスクバー的な機能を持つ。新搭載の“ヒラギノ”フォントも美しい

Classicアプリケーション
従来のMacアプリケーション(Netscape)を起動したところ。Classicアプリケーションを使っているときは、上のメニューバーを含めMac OS 9のLook&Feelに変わる。Mac OS X起動後初めてClassicアプリケーションを立ち上げる時はMac OS 9.1も一緒にロードするため少し時間がかかるものの、よくできた互換環境だ

Interface Builder
Mac OS Xのパッケージにもれなく付いてくるDeveloper Tools CD。この画面はそこに入っているInterface Builderだ。しかし考えてみればMac OS Xを買うと、Developer Tools CDとMac OS 9.1まで入っている。Windows XPにWindows MeとVisual Studioが入っているようなものだ。これで14,800円はかなりお買い得!!

システム環境設定
システム環境設定パネル。各種の設定をここで行なう。よく使う設定をツールバーにドラッグできるのがWindowsと一味違うところだ。地域情報で各国語に切り替え可能で、英語/日本語/フランス語/ドイツ語/スペイン語/イタリア語/オランダ語に対応。メニューなどが指定した言語となる。システムのリソースが各国版で固定されるWindowsより一歩進んだマルチランゲージ環境といえよう。筆者的には是非Windowsでも欲しい機能である。*1

起動ディスク
ここで起動するOSを選択できる。Mac OS X上のClassic環境はけっこう使えるので、あえてMac OS 9.1を必要とするのは現在未対応のDVD-ROMかCD-Rを使う時程度ではないだろうか!? もちろんMac OS 9.1にも同じようなパネルがあり、そこからMac OS Xへ戻すことができる。見かけの速度はピュアなMac OS 9.1の方が速いものの、Mac OS Xは裏でいろいろ動いている上に複雑なことを行なっているので仕方がない

iTunes
パッケージには間に合わなかったiTunes。MP3アプリケーションで、AppleのHPからダウンロードできる。また動画編集アプリケーションのiMovie 2、簡易統合アプリケーションAppleWorksも同社のHPにあがっている。余談になるが、この“Radio Fusion”チャンネルは筆者のお気に入りだ。ここのところずっとBGMで流れている。(笑)

ネットワーク
ネットワークの設定パネル。xDSLで最近ユーザーが増えているPPPoEも標準搭載だ。“設定:内蔵モデム”にするとPPPoE、AppleTalkに替わってPPPとモデムのタブが現れる

共有
共有パネルとなっているが、ここでhttpd、ftpd、telnetdのON/OFFを行なっている。ベースがBSDなのでInternet Serverなど朝飯前といったところ!

ディスプレイ補正
ディスプレイの輝度・コントラスト、ガンマ値、カラー特性、色温度などを設定するパネル。手順は1/2/3/4/5/6を参照して欲しい。WindowsではPhotoshopに付属するAdobe Gamma Controlを使えば同じことができるものの、これがOS標準搭載とは羨ましい限り。Windows XPでは対応して欲しいものだ

*1 各国語のリソースを抱えているWindows 2000もあるらしいが(ドキュメントを見ただけで筆者は未確認)、いずれにしても一般向けには販売していない


●Macの皮を被ったUnix!?

 前半のキーワードに少し出ているし、いろいろ発表されているのでもうご存知の方も多いと思うが、Mac OS XのベースはOPENSTEP(初代NeXTstepから数えて五世代目?)であり、Darwin(Mach+FreeBSD)カーネルにBSDのコマンド群を備えた正真正銘のUnix。ザッと見た限り、Mac OSとOPENSTEPの融合はうまく機能しているようだ。一般向けデスクトップ環境として考えた場合、いかにUnixを表に出さないかがシステムデザインの最優先項目。これについてはほぼ100%達成しているといっても過言ではない。何も知らずに操作をすれば、単にMac OSの新バージョンとしか感じないハズである。

 なのに、あえてTerminalなどBSDのコマンド群を起動できるようにしているのは、従来のMacユーザーはもちろん、Unixユーザーをも取り込みたい意思表示だと思って間違いない。「ならば、Mac OS XをUnix的に使ってみよう!」と遊んでみた。ただ大昔、Win/VのサポートでNEXTSTEPは触っていたものの、最近はLinuxばかりでちょっと勝手が違う。適当にコマンドを叩いた程度で大したことはできなかった。もともと(15年以上前!?)はBSDの人だったのに……。

terminal
標準で入っているTerminalを起動。シェルはtcsh。残念なのは漢字には対応していないことだ。画面キャプチャはsuでrootになったところ。またlsで/etcのファイルを表示した。Unixを知っている人ならこれらのファイルを見れば何ができるかを想像するのは容易だろう

プロセス
プロセスビューア。これだけのものが裏で動いている。起動直後の“ps ax”の結果はこちら

ユーザー管理
ユーザー管理用のパネル。ユーザー名rootは既にシステムで定義済み。新規で登録してもエラーとなる。パブリックベータではインストール時に設定したパスワードがそのままrootのパスワードになっていたようだが、出荷版では仕様が変わってしまった

Apache
Windowsからhttpサーバーへアクセスしたところ。Mac OS Xのディレクトリでは、/Users/knishika(ユーザー名)/Sites下に実体がある。httpサーバーはApache

telnet
Windowsからtelnetを使ってMac OS Xにログインしたところ。この画面を見てホッとするのは何故!?

ftp
もちろんftpもOK。ただ気になったのは、Mac OS Xへftpを使ってファイルを転送すると、Terminalではファイルを確認できるものの、Finderからはファイルが見えないことだ。ファイルシステムとFinderが非同期なのだろう


●総論

 DVDやCD-R未サポート、約一週間ほど使ったところ何回かデッドロック、標準搭載のIE for Mac 5.1がプレビュー版、対応アプリケーションもまだ少ない……など、未完成な部分も残っているMac OS X。ただ、夏ごろから出荷されるMacでプリロードを予定していることもあり、これからブラッシュアップといった感じなのだろう。筆者としては(CarbonでもCocoaでもいいが)Adobe Photoshopのリリースが待ち遠しいところか!? もちろん、ベースのテクノロジーやこのOSが目指しているところを考えると先が楽しみ。更にどれだけUnixユーザーを取り込めるかにも興味がある。いずれにしても世の中Windowsだらけでは面白くない。一般向けデスクトップOSとして始めてUnixを採用したMac OS Xには是非頑張って欲しいと思う。

□Mac OS X製品情報
http://www.apple.co.jp/macosx/index.html
□関連記事
Mac OS X対応状況リンク集
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010326/macosx.htm

[Text by 西川和久]


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