西川和久の不定期コラム

ターボリナックス ホームを使ってみました!



ターボリナックス ホーム

 「ターボリナックス ホーム」の画面キャプチャがはじめて公開された時「これって……。」と非常に懐かしい感じがした。そう、日本語Windows 3.1の頃流行ったDesktopメニューそっくりなのだ。各PCメーカーがそれぞれ独自のメニュープログラムを作り、初心者でも使い易く工夫していたあの時代である。同じ時期、筆者の会社でもメニュープログラムを作って販売していたので、そのタイムスタンプを見ると、'94〜'95年。ちょうど10年前だ。

 ここまで初心者をターゲットしたLinuxのDesktop環境は初の試みだろう。筆者としても興味深々。早速発売日に買ってインストールした。

Text by Kazuhisa Nishikawa


●ターボリナックス ホームの概要

 Turbolinuxは「10 Desktop」の頃から、Windowsシステムフォント互換のリコーのTrueTypeフォントやATOKをバンドルするなど、サーバー用途が多くを占めるLinux市場の中、Linux Desktopの可能性を打ち出してきたディストリビューションだ。その後、「Turbolinux 10 F...」を経て、今回の「ターボリナックス ホーム」を発表した。製品の詳細はメーカーの製品情報をご覧頂きたいが、簡単にまとめると以下の通りである。

  1. CD-ROM 4枚組み(システム 2枚/アプリケーション 1枚/PartitionExpert 1枚)
  2. Kernel 2.6.0/XFree86 4.3.0/KDE 3.1.5
  3. 1クリックで簡単に使えるメニュープログラム
  4. PartitionExpert 2003付属
  5. 主なバンドルソフトウェアは、筆ぐるめ for Turbolinux、ATOK for Linux、Mozilla 1.7.3、Turboメディアプレーヤ、RealPlayer、画像作成ソフト(GIMP 1.2.5)、インスタント・メッセンジャー(kopete 0.8.0)、デジカメ取り込み(digikam 0.6.2)、CD/DVD ライティングソフト(K3b 0.11.17)、統合オフィスツール OpenOffice 1.1.2、Acrobat Reader、iPod接続ツール(gtkpod)、リコーのTrueTypeフォント、エプソンとキヤノンのプリンタドライバなど
 中でも特筆すべきは“メニュープログラム”と“筆ぐるめ for Turbolinux”の搭載だろう。これまでもKDEやgnomeなどDesktop環境はあったものの、Windowsでさえ難しいと言っている初心者に対しては敷居が高い。このようなメニューによるDesktopのシンプル化は非常に有効だ。少し使い慣れて物足らなくなったらKDEなどに切り替えができ、ステップアップも可能である。

 更に一般家庭用途を考えたとき、葉書印刷ソフトは無くてはならない存在だ。実際ターボリナックス ホームを買いにソフトウェア売り場へ行ったところ、季節柄、年賀状系のソフトウェアで一杯。かなり売れているようだった。また、他のコーナーを眺めるとキーワードは、セキュリティ&ウイルス、携帯リンク、デジカメ画像処理、フォント、DVDなどメディア再生及び書き込み、オフィス……と、こんな感じだった。つまり、Webブラウザとメールソフトに加え、これだけのジャンルのアプリケーションが含まれると、ほぼ市場の要求を満たすことになる。ターボリナックス ホームは携帯リンク系のアプリケーションが無い以外、家で使うのであれば十分な機能を持ちLinuxを意識しないように工夫されているという。なかなか面白いアプローチだ。

 ただキャッチコピーの一部になっているウィルスに感染しにくいのは、OSがセキュアであること以上に現時点では単に、その環境がマイナーで誰もターゲットにしていないのが理由だ。この点を強調するのは痛し痒しと言ったところだろう。

●インストール手順

 今回テストでインストールしたマシンは2パターン。一台は昔記事にしたベアボーンPC。その後少し手を入れ、Pentium III-600MHz/Memory 256MBになっている。もう一つは、Xeon 2GHz Dual/Memory 1GBのマシン上でVMwareを使った。どちらもPartitionExpertを使わずHDD丸ごと新規インストールしている。後者は何とも言えないが、最近のマシンスペックを考えるとかなり貧弱な環境だ。いずれにしても推奨環境はPentium III 1GHz以上相当(Hyper-Threadingテクノロジー対応)、Memory 512MB以上なので最低ライン以下のマシン構成である。

起動直後
起動直後
installを選択。640×480ドットのVGA解像度で動くのはここまで。いつも新しいOSをインストールする時はワクワクする
言語選択
言語選択
ここで日本語を選択。以降はすべて日本語で表示される。10 Desktopとあまり変わりは無いようだ
インストール方法を選択
インストール方法を選択
いろいろ設定をするのが面倒な時はTurboインストールを選択する。ただし、初心者以外は標準を選んだ方がいいだろう
ユーザー/パスワードなど設定
ユーザー/パスワードなど設定
rootのパスワードと必要であればユーザーを追加する。標準で"ID:turbo/PW:turbo"ユーザーが設定済み
インストール準備完了
インストール準備完了
必要事項を入力するのはここまで。後は、自動。Windowsと比較しても非常に簡単で拍子抜けする程だ
パッケージ展開中
パッケージ展開中
どちらもHDDが遅いこともあり、約30分強時間がかかった。最近のマシンだともっと速いと思われる
オプションパッケージのインストール
オプションパッケージのインストール
筆ぐるめやATOKなど、商用アプリケーションはこの先で指定する。スキップすると何もインストールされないので要注意!
オプションパッケージの選択
オプションパッケージの選択
ほとんどすべてチェックで問題無い。選ぶとすればプリンタドライバにキヤノンを使うか、エプソンを使うか程度であろう
インストール完了
インストール完了
オプションパッケージを含めて約40分程でインストールは終了した。再起動すればターボリナックス ホームが立ち上がる

●実際に使ってみる!

 インストールも終わり、いよいよターボリナックス ホームが起動する。ざっと触った感じでは、10 Desktop系+メニュー+αといったところだ。速度もマシンスペックが低い割にはそこそこ動いている(VMwareはVMware-Toolsを後でインストール)。以降、順を追って説明する。

Bootセレクタ
Bootセレクタ
今回はHDDまるごとインストールだったので、セレクタはTurbolinux一つである。Windowsなどその他のOSと混在している時は、項目が増えて表示される
ターボリナックス ホームのDesktop
ターボリナックス ホームのDesktop
左上のボタンがTurboアップデート、右上のボタンがログアウト/再起動/停止、左横にあるアクティブバナーはON/OFFできる。最小限の表示で非常にシンプルなDesktopだ
Mozilla
Mozilla
いつの間にかバージョンは1.7.3になっていた。メールソフトもMozillaのものを使用。久々に使ったが結構キビキビ動き、既存のコンテンツに対する互換性も高まっている
KEditとATOK
KEditとATOK
[文章を書く]ボタンにはKEditがアサインされている。ATOKを使って何の不便なく日本語の入力が出来る。筆者はMS-IMEをATOKキー配列で使ってることもあり違和感は無い
筆ぐるめ
筆ぐるめ
こんな形で再会するとは……。実はWindows 3.1版筆ぐるめは筆者の会社との共同開発だったのだ。もう中身は全く違うと思われるが画面周りはほとんど当時のままである
OpenOffice
OpenOffice
1.0の頃はMS Officeのファイルと互換性は低く、読み込めずにハングアップばかりしていたが、1.1はレイアウトは崩れながらも読み込めるようになった。あと少しか!?
KDEコントロールセンター
KDEコントロールセンター
[その他のソフトを使う]ボタンにはKメニューがそのまま入っている。実際存在しないソフトの項目もあるので注意が必要だ。KDEコントロールセンターを呼び出したところ
Windowsネットワークの設定
Windowsネットワークの設定
事務所でチェックしたこともあり、他のWindowsマシンと接続しないとデータのやり取りが面倒。ワークグループ/ユーザー名/パスワードと、Windowsと同じものを入力する
Windowsネットワークへアクセス
Windowsネットワークへアクセス
[ファイルブラウザ]ボタンから[Home]→[Desktop]と階層を追いWindowsネットワークから事務所内のマシンへ接続する。上のフォルダに見えるのが接続しているマシン名だ
各ドキュメントのサムネイル
各ドキュメントのサムネイル
フォルダ内にある各ドキュメントはご覧のようにサムネイル化して表示もできる。見せ方は少し違うものの、Windowsとほぼ同じ内容になっている
Acrobat Reader
Acrobat Reader
PDFファイルの表示は仕事でも趣味でも無くてはならない機能の一つだ。記事の内容自体は少し古いものであるが、まったく問題無く表示できる
GIMP
GIMP
グラフィックソフトには、Linuxで定番のGIMPがアサインされている。ただ非常に多機能なので、この環境しか使えないユーザーには少し難しいかも知れない
セッションの切り替え
セッションの切り替え
初心者を対象にしたこの独自のDesktopは、中級者以上にはかなり物足らない。セッションを切り替え他の環境を使うこともできる。[設定]ボタンからも変更可能だ
KDEで起動
KDEで起動
セッションの切り替えを使ってKDEを起動した。メニュー環境は1,024×768ドットより大きい解像度だと表示が崩れるので必然的に高解像度ユーザーはこちらを使うことになる
Turboアップデート
Turboアップデート
10 Desktopから搭載された非常に便利な機能だ。オプション設定で毎回起動時にチェックすることも可能であるが、ある程度時間がかかるのでお勧めしない

 以上、特徴的な画面を中心に説明した。何と言ってもログイン画面が無く、いきなりDesktopが立ち上がるのには驚いてしまう。Linuxとしては画期的だ。全体的に良くチューニングされており、この範囲で使うのにはWindowsとあまり差が無いように思える。10 Desktopをこの環境と同じ(メニューを除く)にするにはインストール後もいろいろ触る必要があったので、格段の進歩と言えよう。

 操作上一番気になったのは、“/home/turbo/MyDocument”へのショートカットがメニュー上になく、[ファイルブラウザ]ボタンを押すといきなりドライブリストが出ることだ。もちろんこの件はマニュアルにも書かれているし、[Home]アイコンをクリックすればMyDocumentが出てくるので慣れの問題だろうが、少なくともこのメニュー環境を必要とするユーザーは、いきなりMyDocumentフォルダの出る方がわかりやすいと思われる。ZIPファイルもそのままでは解凍できない。また、[その他のソフトを使う]ボタンから表示されるメニューは、例えば[オフィス]→[StarSuite 6.0]など、実際インストールされていない項目まで出てくる。逆にOpenOfficeは[Default menu]→[プログラム]→[オフィス]の下と、結構深い位置だ。細かいことかも知れないが、コンセプト通りの層を狙うのであれば、こんな部分をも追い込む必要があるだろう。できればメニューをもう一列(または一行)増やし、出来るだけ[その他のソフトを使う]ボタンを使用しないよう、アプリケーションを配置するとベストか!?

 その他、若干気になった部分は、OpenOfficeのフォント代替機能がインストール直後だとOFFになっていることだ。MS Officeで作った文章の多くにはMSゴシック(P)やMS明朝(P)の書体が使われている。しかし、これに相当する書体へ代替しないとファイル自体は読み込めても文字化けもしくは表示しない。できればONの状態にして欲しかった。加えて[Alt+Tab]キーによるアプリケーションのスイッチングは可能であるが、タスクバーに相当する部分も無い。これもあった方が無難であろう。

 残念なのは特許やライセンスの問題から、Turbo Media PlayerはWMAのDRM(著作権管理機能)、MPEG-4、MP3、AAC、MOV、市販のDVD-Videoには非対応となっていることだ。とは言え、これらに対応してアプリケーションは市場に存在する。何らかの方法を使って対応すべきだろう。WindowsやMac上で再生できるコンテンツがNGなのは家庭用としては大きなデメリットだ。


●総論

VMware Workstation 4.5.2を使用

VMware Workstation 4.5.2を使用

 以上、駆け足であるが、ターボリナックス ホームの概要をご紹介した。ホーム(HOME)と命名するだけあって、これまでのLinuxとは一味違っている。興味を持った人も多いのではないだろうか!? ただ現在Unix系OSのDesktop環境として唯一成功しているMac OS Xと比較すると、先に挙げた問題点やコントロールパネルの一部がCUIのままなど、残念ながら詰めが甘く見劣りする部分もある。

 まだまだ始まったばかりのLinux Desktop環境、不必要に肥大化し続けるWindowsを横目に必要十分な環境になるのもそう遠くないと思われる。今後更なる発展を期待したい。

□ターボリナックスのホームページ
http://www.turbolinux.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.turbolinux.co.jp/news/2004/oct/tl1020.html
□関連記事
【10月21日】コンシューマ向けOS「ターボリナックス ホーム」製品発表会
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/1021/turbo.htm
【4月27日】ターボリナックス、Windows Media/DVDに対応した「Turbolinux 10 F...」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0427/turbo.htm

バックナンバー

(2004年11月17日)

[Text by 西川和久]


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