■元麻布春男の週刊PCホットライン■2GBメモリースティックPRO購入記 |
今年の2月に発売されたソニーの「CLIE PEG-TH55」は、発売後しばらくは店頭在庫を見つけるのが困難なほどのベストセラーとなった。筆者も、発売日の朝、新宿の量販店で購入し、すぐに春のIDFへ持参するほどのお気に入りとなった。
CLIE PEG-TH55 |
が、実をいうと春のIDFから帰国後、古いCLIEを使っていた家人にPEG-TH55を譲り、筆者は再び古い「PEG-NX73V」に戻っていた。その最大の理由は、半年後の秋のIDFまで待って、新しくリリースされるかもしれないCLIEと比べてから本格的に乗り換えようと考えたからだ。
だが、結局ソニーから筆者が期待したような新製品の発表はなかった。また新製品である「PEG-VZ90」のプロセッサが、既存のCLIEと同じ123MHz動作のHandheld Engineに据え置かれたことから、近い将来プロセッサのクロックアップを行なったマイナーチェンジモデルの投入もないと判断。心置きなくPEG-TH55を購入し、IDFに持参した。春との違いは、新しく追加された辞書キット付きの「PEG-TH55DK」にしたことと、1GBのメモリースティックPROを同時に購入したことだ。
1GBのメモリースティックPROを購入した大きな理由は、メモリースティックの入れ替えを最小限にしたいと考えたからだ。メモリースティックスロットにカバーのないPEG-NX73Vを使っていた時代は、普段は128MB~256MB程度のメディアを常用しつつ、ボイスレコーダーや動画再生などの時に、メディアの入れ替えを行なっていた。
PEGA-VR100K |
が、メモリースティックスロットにカバーのあるPEG-TH55では、いちいち入れ替えるのがうっとおしい。ボタンやカメラの関係でなかなか良いケース(カバー)が見つからず、本体と同時に予備のメモリースティックを持参するのが難しくなったという事情もある。動画再生は、メモリースティックビデオレコーダー「PEGA-VR100K」による予約録画との兼ね合いがあるのでメディアの入れ替えが避けられないとしても、それ以外の用途については入れっぱなしの1本でまかなおうと考えたわけだ。
このアイデアは筆者にとっては大ヒットで、ますますPEG-TH55を使う機会が増えた。1GBのメモリースティックに約5万円という出費(当時)は少々痛かったが、その価値はあったと思っている。またメモリースティック容量が増大したことの副効果として、電車の中などで音楽を聴く機会も増えた。これにより音楽CDの購入量まで増えるという、さらなる副効果さえあったほどだ。
実際、PEG-TH55はバッテリ駆動時間も十分だし(カタログによるMP3ファイルの連続再生時間は24.5時間)、Shureの「E3c」のような遮音性の高いインナーイヤー型のイヤホンを使ってもハムなどが気にならない。このあたりは、AV機器メーカーでもあるソニーの底力なのだろう。
こうしてMP3ファイルを溜め込み始めると、余裕と考えられていた1GBという容量も決して十分ではなくなってきた。予定では、1GBのうち300MB程度はボイスレコーダー用に残しておくつもりだったのだが、だんだんMP3ファイルがボイスレコーダー用の予約域を圧迫しはじめた。こうなると解決策はただ1つ。もっと大容量のメモリースティックPROを購入することしかない。
●ソニーの新メモリースティックが急遽延期
2GBのメモリースティックPRO |
そう思った筆者にとても魅力的に映ったのが、ソニーが9月10日に発表した新しいHigh Speed版のメモリースティックPROだ。筆者の場合、128KbpsのMP3ファイルの再生が主用途だから、高速性はほとんど必要ない。したがって、「従来の2倍の転送速度」より、もうちょっと値段を安くして欲しい(2GBの予価は74,000円前後)と思うばかりなのだがしょうがない。2GBの発売日である11月26日を粛々と待つつもりだった。
ところが10月7日、このシナリオが突然崩れてしまう。ソニーは2GBタイプを含むHigh Speed型メモリースティックPROの発売を2005年2月10日まで延期すると発表したのだ。ハッキリいって「そりゃねーよ」である。もう1GBのメモリースティックPROはパンパンになっており、ボイスレコーダーを利用する時はメディアの入れ替えを余儀なくされている状態だ。至急、代案が欲しい。
実をいうと、代案はないわけではなかった。今年のCESで、SanDiskが2GBのメモリースティックPROを2月発売予定で発表しているのである。同社はソニーから独自にメモリースティック関連製品を開発/製造するライセンスを取得しており、本家にない製品を持っている。このプランを検討してこなかった理由は2つ。1つはしばらく前にSanDiskのSDカードで、ちょっと痛い目に遭っていたこと。もう1つは発表時の価格が1,000ドルと、べらぼうに高かったことだ。
以前、このコラムで紹介したリコー製デジタルカメラ「Caplio GX」用に、SanDiskのSDメモリーカード「Ultra II 512MB」を購入したのだが、認識されたりされなかったり(SDカードに記録したつもりが内蔵メモリに記録されたり)というトラブルが出て、ついにはカードがまったく認識されなくなってしまった(もちろんフォーマットもできない)。
購入して直後のことだったので、初期不良として交換してもらったのだが、印象として良いハズがない。交換してもらったカードも、最初「EXILIM EX-Z30」でうまく利用できなかったりしたのだが、他のカメラでフォーマットした後は問題なく使えているから、おそらく1枚目のカードが単なる初期不良ということだったのだろう。それでも、こうした経験からして、できれば避けたいブランドの1つになっていた。だが状況を考えれば、避けてばかりもいられない。
●フラッシュメモリの日米価格差
そう思って実際の販売価格を調べてみると、意外なことが判明した。日本国内での販売がいまだにないのは困ったことなのだが、米国での販売価格が急激に下がっている。ちょっと探すと、たちまち300ドル以下で販売しているオンラインショップが見つかった。これが魅力的な価格であることは言うまでもないが、メモリースティックに限らず1GBを超えるフラッシュメディアの価格は、日米格差が非常に大きいことが分かった。
大容量フラッシュメディアの代表格はCFだが、2GBタイプの国内価格が35,000円から5万円というところなのに対し、米国では150ドル~350ドル程度で購入可能だ(価格のバラつきが大きい理由の1つは、CFの速度グレードの幅が大きいこと)。国内で6万円~10万円の4GBタイプも、米国では300ドルから650ドル程度、国内では価格を聞くのも怖い8GBタイプの米国内での販売価格は690ドル~2,000ドル程度である。
もちろん日米では人気のあるブランドが違っていたりもするが、ブランドだけで日本人が喜んで高いお金を払うとも思えない。こうした価格差がある場合によく言われるのは、米国の方が大きな市場を持つということだが、大容量のフラッシュメディアにも同じことが該当するのかどうかは不明だ。
それはともかく、2GBのメモリースティックPROが300ドル以下で手に入るとなれば、俄然魅力的に思えてきた。初期不良を引いてしまったら交換するしかないが、大昔、まだ日本のPCの主流が「PC-9801」シリーズだった頃、個人輸入したPCパーツの初期不良品や故障品について、RMA(返品承認番号)を取って送り返していたことを考えれば、まぁ何とかできる。
気になるのは相性問題だが、さまざまなメーカーが幅広い機器でサポートするSDカードと違い、メモリースティックは、ソニー製品向けの専用オプションに近い(以前はコニカのデジカメなど、サードパーティによる採用もあったのだが)。ソニー製品でさえ動けばよいのだから、互換性の問題も多少は軽減されるハズだ。
2月に発売されるソニー製の2GBと違い、High Speed対応ではないが、筆者の手元にあるメモリースティックPRO対応機器はPEG-TH55だけ。その専用メモリのつもりで購入するのだから、データ転送速度は問題にならない。
というわけで、2GBのメモリースティックPROを購入する気になったのだが、いざ買おうとするとけっこう難しいことに気づく。日本に出荷してくれるショップを見つける必要があることはもちろんだが、意外と大容量メディア(メモリースティックPROだけでなくCFも含めて)の在庫を持っているショップが少ない。
確かによく考えると、IDFなどで米国に行っても、店頭で大容量のフラッシュメディアを見かけることはあまりない。この状況を考えると、大容量フラッシュメディアに対して、米国内にどれくらいの規模の市場があるのか(日米価格差を正当化できるほどの規模の市場があるのか)疑わしくなろうというものだ。
それでも何とかこの条件を満たすショップを見つけて注文した。価格は290ドル4セント、これに別途送料32ドル91セントが加わり、322ドル95セント。注文して約1週間で手元に届いたが、その際消費税相当分を800円支払った。1ドル110円で換算して約35,000円というところだが、国内での1GBのメモリースティックPROや2GB CFの販売価格を考えれば、リーズナブルというか、安いと思う。
ブリスターパック入りの2GBメモリースティックPRO。最新のHigh Speedタイプではないが、PDAでの利用にはまったく問題ない | パックから取り出したメモリースティックPRO。裏を見ると中国製となっていた |
もちろん、どんなに安価でも使えなければしょうがない。早速届いた2GBのメモリースティックPROのブリスターパッケージを開封し、PCの内蔵カードリーダ(USB 2.0接続)に突っ込む。もちろんカードはちゃんと認識された。と同時に愛用のPEG-TH55をクレードル(別売オプション)にセット、外付けドライブとしてマウントする。そしてPEG-TH55の1GBメモリースティックPROの全内容をそのまま2GBのメモリースティックPROにコピーした。コピーが完了した2GBのメモリースティックPROをPEG-TH55にセットし、電源を投入すると、実にアッサリ、何の問題もなく認識された。愛用のサードパーティ製MP3プレーヤーソフトであるPocketTunesは、そのまま前回終了時の続きから再生したほどだ(図1、図2)。
PEG-TH55付属のユーティリティでメディア情報を見ても、怪しいところは何もない(図3)。詳細をチェックしてみても、ちゃんと2GBのメモリースティックPROとして認識されている(図4)。製造元がソニーになっているのは、内蔵しているコントローラがソニー製だからだろうか。そういえば、これまで使ってきた1GBのメモリースティックPROも、Lexarブランドだがソニー製と表示されていた(ただしこちらはソニーのOEM品だと思われる)。
というわけで購入した2GBのメモリースティックPROは、筆者にとって極めて満足すべき結果を生んだ。が、すでにSanDiskは既報の通り、4GBのメモリースティックPROを11月から799ドルで発売すると発表している(この時の英文プレスリリースで既存の2GBタイプの価格が399.99ドルに改定されているのだが、実売価格はもっと安い)。その前にフォトキナで発表された上位版(Ultra IIタイプ)の960ドルも4GBモデルとしては決して高いとは思わなかったが、799ドルはさらに魅力的だ。
もちろん799ドルは、絶対的な金額としては決して安価ではない(何しろCLIE本体よりはるかに高い)。が、実売価格はSanDiskの発表値より低いだろうし、1,000ドルと言われた2GBが1年と経たないうちに300ドル以下になったことを考えれば、来年の今頃は250ドル程度で4GBのメモリースティックPROが買えても不思議ではない(実際、SanDiskはプレス向けのブリーフィングで1GBあたりの単価は60ドル程度になる、と説明しているようだ)。4GBのメモリースティックPROがあれば、PEG-TH55の容量はHDDタイプの専用プレーヤーであるiPod Miniに匹敵する。
2GBで足りなくなったら、速攻で欲しくなりそうなアイテムなのだが、なぜ日本ではこうした大容量フラッシュメディアの販売予定がないのだろう。CFも含めて、日本の大容量フラッシュメディアは高価すぎると感じるのは筆者だけではないハズだ。音楽プレーヤーをバラして中のMicrodriveを抜くなんて悲しいことを、望んで行なっているユーザーはいないと思うし、CFの価格が下がればそんなことをするユーザーはいなくなると思うのだが。
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【9月10日】ソニー、転送速度10MB/secの高速版メモリースティックPROなど
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【2月25日】【元麻布】CLIE「PEG-TH55」を試す 屋外編
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0225/hot306.htm
【2月9日】【元麻布】生まれ変わったCLIE「PEG-TH55」を試す
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【1月9日】SanDisk、容量2GBの「メモリースティックPRO」
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【2003年11月14日】【元麻布】メモリースティックビデオレコーダー「PEGA-VR100K」を試す
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/1114/hot289.htm
【2003年9月5日】ソニー、MPEG-4記録の据置型「メモリースティックビデオレコーダー」(AV)
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20030905/sony.htm
【2003年5月27日】ソニー、127万画素CCDを搭載したクリエ NX80V
~31万画素CCDを搭載したNX73Vも
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0527/sony.htm
(2004年11月8日)
[Reported by 元麻布春男]