筆者がこのコラムで初めてネットワーク接続型のストレージデバイス(NAS)を取り上げたのは2001年10月末のことだった。取り上げたアイ・オー・データ機器「ET-NAS60G」のディスク容量は、今から考えるとわずか60GBで、価格も12万円と高価だった。それから2年半あまりが経過し、今では100GBを超える容量のものが、2万円台から購入可能になっている。設定も専用ユーティリティを用いて、IPアドレス等を意識せずに可能なものが増えており、この業界の進歩の速さを痛感させられる。 ここで取り上げるLogitecのLHD-LAN250は、ネットワークに接続して共有するパーソナル/SOHO向けのNAS。企業向けの高価なNASと違い、高度なセキュリティ機能や管理機能、RAID構成によるフォールトトレランスの実現といった機能は持たないが、手軽で安価なことが特徴だ。家庭内等のネットワークにちょっとぶら下げて、複数のPCで共有したいデータを置いておくには丁度いい。このLHD-LAN250はモデル名からも明らかなように250GBのハードディスクを内蔵したモデル(標準価格49,500円)だが、ほかに160GBと300GBの2タイプ、計3製品がラインナップされている。 ●HDDは7,200rpmの製品を搭載
外観は写真のように、黒とシルバーの2トーンカラー。やや大振りの筐体にACアダプタの組合せで、余裕を持たせた作りのおかげか冷却ファンなしで済んでいるのはありがたい。最大の特徴は、前面に1つ、背面に2つの計3ポート用意されたUSB 2.0ポートで、ここに合計3台までのUSBマスストレージデバイス(HDD、フラッシュメモリ、デジタルカメラ等)あるいは1台のプリンタを接続することができる。
USBストレージデバイスは内蔵するハードディスクの増設用として利用することができるほか、内蔵ハードディスクより大容量のものは、バックアップ用に設定することも可能だ。バックアップ用に設定されたハードディスクに対しては、スケジューリング機能を用いて、定期的な自動バックアップを行なうことができる。 また、前面に設けられたUSBポートにフラッシュメモリやメモリカード、デジタルカメラを接続した場合、ポートの上にある「COPY」ボタンを押すことで、これらのデータを簡単に内蔵ハードディスクへコピーすることも可能だ(自動的にコピーした日付の名前のフォルダが生成される)。 試用した製品が内蔵していたドライブはWestern DigitalのCaviarの250GB(WD2500BB)。この種の製品に用いられているドライブはスピンドル回転数が5,400rpmのものが大半だが、本製品には7,200rpmのドライブが使われていることになる。 コントローラ部は、Web等でも情報公開されている通り、IntelのXScaleコアの組み込みプロセッサ(IXP420 266MHz)に、SynologyのNAS専用OSを組み合わせたもの。以前取り上げたLHD-NASは、x86プラットフォーム(VIA TechnologiesのEDENプラットフォームのリファレンスデザイン)にSynologyのNAS OS(Synology Filerシリーズ)だったが、このLHD-LANシリーズには、同じSynology社のNAS OSでもよりパーソナル指向のSynology DiskSationが用いられている。
ハードウェア、NAS OS共に、パーソナル向けに低価格化と使い勝手の向上を強く意識しているようだ。同じ250GBモデルで比較して、SOHO向けのLHD-NAS250(実売価格で90,000円前後)に比べて本製品はおおよそ半額(実売価格で47,000円前後)と大幅に買い求めやすくなっている。おおむね他社の250GBクラスのパーソナル向けNASも同じような価格帯で、製品としての競争力は間違いなく向上している。 ●ベンチマークテストではそこそこのパフォーマンス
このように個人使用を強く意識しているだけに本機のセットアップは非常に簡単。 特にルータのあるブロードバンド環境ならハブ(ルータ内蔵を含む)に本製品を接続し、ACアダプタを接続したら、あとは付属のCD-ROMをPCにセットしセットアップツールを起動すれば良い。 ブロードバンドルータがDHCPサーバーとなっている一般的な環境なら、何回か「次へ」のボタンを押していれば、いつの間にか設定は完了する。マイコンピュータを開けば、そこにネットワークドライブとして本製品が、DHCPサーバーに割り当てられたIPアドレスと共に登録されている、というわけだ。これで最低限利用可能な環境は整う。ワークグループ名を変更したり、共有フォルダの設定を行ないたければ内蔵のWebブラウザベースの設定ツールを利用することになるが、ブラウザに入力すべきIPアドレスはマイコンピュータを見れば一目瞭然だ。
ただ、いくら使い勝手が悪くなくても、性能がイマイチではしょうがない。わざわざ7,200rpmのドライブを採用しているくらいだから、本機の性能は悪くないと思うのだが、一応は確認しておきたい。 というわけで簡単なベンチマークテストを行なってみた。実施したのは723MBのMPEG-2ファイルのコピー(1ファイル)と、合計181MBになるJPEGファイル(合計389枚のデジカメ写真)のコピーだ。比較に用いたのは筆者が常用しているパーソナル向けNASであるバッファローのHD-120LANである。HD-120LANは新しい製品ではないが、DVDクオリティのMPEG-2ファイルをネットワーク経由で再生する(個人向けとしてはこれが最低限か)のに十分な性能くらいはある。 【723MBのMPEG-2ファイルコピー】
【181MBのJPEGファイルコピー(389枚)】
この表がテスト結果だが、7,200rpmのドライブを採用していると思うと物足りない気もするが、おそらくドライブ以外の部分がボトルネックになっているものと思われる。723MBのMPEG-2ファイルのコピーでは、多くの製品がだいたいこのくらいの性能(5~6MB/sec)に落ち着く。一方、小さなファイルをたくさんコピーするJPEGファイルのコピーでは、LHD-LAN250はHD-120LANに明らかな差をつけた。スピンドル回転数の速いドライブを用いたことによる、データアクセス速度の向上が貢献しているのだろう。いずれにしても個人や家庭で利用するネットワークストレージとしては十分な性能である。 現在250GBの外付けハードディスクの価格は、USB 2.0に対応した製品でおおむね3万円前後だ。ネットワーク対応の本製品の価格はそれより17,000円ほど高いことになるわけだが、ネットワークに対応したOSの存在、OSを走らせるハードウェアのコストを考えれば、価格的にも頑張っていると思う。ブロードバンドを導入するなどして、有線あるいは無線のネットワークを構築している家庭は少なくないハズだ。そのネットワークにストレージを加えることの便利さは、この差額に十分見合うものだと筆者は考える。 □関連記事 (2004年6月30日) [Text by 元麻布春男]
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