記録型DVDドライブの高速化は、等速→2倍速(2.4倍速)→4倍速→8倍速と倍々ペースで進んできており、現在では8倍速対応ドライブが主流となっている。しかし、高速化がこれで終わったわけではない。CD-RWドライブの記録速度競争もそうだったが、やはり少しでも短い時間で記録できるにこしたことはないからだ。 今回紹介するプレクスターのDVD±R/RWドライブ「PX-712A」は、世界で初めてDVD+Rへの12倍速記録を実現していることが特徴であり、8倍速対応ドライブよりもさらに短い時間で書き込みが可能だ。
プレクスターのDVD±R/RWドライブ「PX-712A」は、業界で初めてDVD+Rへの12倍速書き込みを実現したことが最大のウリだ。 現在、DVD+RとDVD-Rへの記録速度は8倍速が主流であり、12倍速書き込みに対応した製品は現時点でPX-712Aのみとなる。PX-712Aは、5種類の記録型DVDメディアのうち、DVD-RAM以外の4種類(DVD-R、DVD-RW、DVD+R、DVD+RW)に対応しているが、12倍速記録が可能なのはDVD+Rのみで、それ以外のメディアについては最大8倍速または4倍速での書き込みとなる。 なお、PX-712Aの発売は5月上旬の予定で、今回試用したのは製品版ではなく、評価用のサンプル品である。そのため、製品版では挙動や性能が異なる可能性があることに注意して欲しい。 【PX-712Aがサポートする記録型DVDメディアと最大書き込み速度】
●CD-Rへの書き込み速度や、メディアの読み出し速度も高速化されたPX-712Aは、昨年7月に発表された(出荷は9月中旬)、PX-708Aの後継として位置づけられる製品だ。PX-708Aは規格が正式に策定される前に、独自に8倍速記録をサポートしたことで注目を集めたが、PX-712Aの12倍速記録も現時点ではまだ規格が正式に策定されているわけではない。いわば「フライング対応」であり、12倍速記録を公式にサポートしたメディアが存在していない現状では、8倍速対応DVD+Rメディアを利用することになる(詳しくは後述)。 また、PX-712Aでは、PX-708Aと比べてCD-Rへの書き込み速度も最大48倍速に高速化されている(PX-708AのCD-Rへの書き込み速度は最大40倍速)。最大読み出し速度は、一層のDVD-ROMが16倍速、二層DVDと記録型メディアが12倍速、CD-Rは48倍速、CD-RWが40倍速となっており、PX-708Aに比べて読み出し速度も全体的に高速化されている(PX-708Aの最大読み出し速度は、一層のDVD-ROMが12倍速、二層DVDと記録型メディアが8倍速、CD-Rは40倍速、CD-RWが40倍速)。
●記録品質をチェックできるオリジナルユーティリティソフトが付属PX-712Aは、ATAPI対応の内蔵型ベーシックモデルであり、ベゼルの色の違いによって、ホワイトモデル(PX-712A/JP)とブラックモデル(PX-712A/JPB)の2モデルが用意されている。また、姉妹製品として、光学ドライブとして初めてSerial ATAに対応したPX-712SA/JPも6月上旬に登場する予定となっている。 付属アプリケーションも充実しており、CD/DVDライティングソフトの「B's Recorder GOLD7 BASIC」および「Nero Burning Rom 6 SE」、CD/DVDパケットライトソフト「B's CLiP5」、DVDオーサリングソフトの「PowerProducer 2 GOLDドルビーデジタルDivX対応版」、DVDプレーヤーソフトの「PowerDVD 5」がバンドルされている。さらに、PX-712Aでは、プレクスターオリジナルのユーティリティソフト「PlexTools Professional」が追加されていることも特筆したい。 PlexTools Professionalは、PX-712Aの各種の設定変更とテストが行なえるツールだ。騒音レベルを下げるために速度を意図的に落としたり、トレーの開閉速度、スピンダウン時間の調整、CD-R 1枚(80分メディア)に最大910MBの書込みを行なう大容量記録(GigaRec)が可能なほか、オーディオリッピング機能やメディア品質チェック機能(Q-Check)、簡易ライティング機能なども備えている。 メディア品質チェック機能では、読み出し/書込み速度のテストや、作成したメディアのエラーテスト(C1/C2エラー、PI/POFエラー、FE/TEエラー、Beta/Jittar)を行なえるので、メディアの書き込み品質をチェックするのに役立つ。
●推奨メディアでも12倍速記録できない場合もあるPX-712Aは、他社に先駆けて12倍速書き込みをサポートしていることが最大の魅力だ。そこで、DVD+Rの12倍速書き込みの性能を検証するために、以下のテスト環境で、合計4.17GBのファイル(フォルダ数1,299、ファイル数15,391)を書き込むのにかかる時間を計測することにした。 比較対照用として、アイ・オー・データ機器のDVD±R/RWドライブ「DVR-ABN8」(DVD+RとDVD-Rへの8倍速書き込み対応)を用意し、同様に書き込み時間を計測した。ライティングソフトとしては付属のB's Recorder GOLD7 BASICを用い、オンザフライ方式で直接メディアに書き込みを行なった。また、書き込み時間は、セッションクローズの時間も含めて計測している。 なお、PX-712AでDVD+Rへの12倍速書き込みを行なうには、利用するメディアに注意が必要だ。前述したように、DVD+Rへの12倍速記録は、まだDVD+RWアライアンスが正式に策定したものではなく、12倍速対応を公式にうたっているDVD+Rメディアは存在しない。そのため、現時点では8倍速対応DVD+Rメディアを利用することになるが、全ての8倍速対応DVD+Rメディアで12倍速記録が行なえるわけではない。 現時点でプレクスターが12倍速記録の動作確認を行なったメディアは、リコー製8倍速対応DVD+Rメディア(DRD-8XCW5、DRD-8XCW10、DRD-8XCWCR10、DRD-8XCWPR10、RD-8XSPPR20、DRV-8XCWPR5)と日立マクセル製8倍速対応DVD+Rメディア(D+R47C.1P、D+R47C.1P5S)、太陽誘電製8倍速DVD+Rメディア(DVD+R47TY5PA)である。 ここで注意したいのは、プレクスターが推奨しているメディアでも、必ず12倍速記録が可能だとは限らないということだ。本来8倍速までにしか対応していないメディアに対して12倍速で書き込むわけなので、メディアの品質のバラツキによって、正常に書き込みができない可能性がある。 そこで、PX-712Aでは、書き込む前にメディアの品質をチェックする「PowerRec」機能を搭載しており、このチェックをパスしたメディアにのみ、12倍速で書き込めるように設計されている。このため、推奨メディアであっても、12倍速書き込みには不適切と判断された場合は、自動的にそれ以下の速度(通常は8倍速)で書き込まれることになる。 今回は、DVD+Rメディアとして、プレクスターが推奨しているリコー製メディアと日立マクセル製メディア(ともに8倍速対応)とイメーション製メディア(4倍速対応)を用意して、テストを行なうことにした。 また、DVD+R以外のメディアに対する書き込み時間の計測用に、ビクター製8倍速対応DVD-Rメディア、ビクター製4倍速対応DVD-RWメディア、三菱化学製4倍速DVD+RW対応メディアも用意した。 12倍速書き込み推奨メディアであるリコー製DVD+Rメディアや日立マクセル製DVD+RメディアをPX-712Aに挿入すると、書き込み速度の選択で12倍速が選択できるようになる。しかし、リコー製8倍速対応メディアの場合、4.17GBのファイルの書き込みにかかった時間は7分57秒であり、DVD-Rメディアに8倍速記録を行なった場合(8分23秒)と比べて、あまり高速化されていなかった。 そこで、日立マクセル製8倍速対応メディアを利用して、同様に12倍速を選択して書き込んだところ、6分33秒で終了した。念のためもう1枚ずつ書き込みテストを行なってみたのだが、下の表にまとめたように、結果は1回目とほとんど変わらなかった。今回のテストの場合、リコー製8倍速対応メディアでは、書き込み速度で12倍速を選択しても、実際は12倍速にはなっていないと推測される。 前モデルのPX-708Aでは、4倍速対応DVD+Rメディアに8倍速記録が可能であったので、イメーション製4倍速対応メディアでテストしてみたところ、やはり8倍速記録が選択できた。この場合の書き込み時間は7分55秒であり、8倍速で記録されていると考えてよい。
●8倍速以上では、パーシャルCAV方式を採用記録型DVDドライブでは、4倍速記録(一部の製品では6倍速記録もCLV方式)まではCLV方式で記録されるのに対し、8倍速以上で記録する場合は、ゾーンCLV方式またはパーシャルCAV方式で記録される。 つまり、4倍速(6倍速)までは、メディア全域にその速度で記録されるのだが、8倍速以上ではメディアの内周部はそれよりも遅い速度で書き込まれ、外周に行くにしたがって、記録速度が上がっていくことになる。記録型DVDドライブの8倍速記録や12倍速記録は、あくまで「最大」記録速度であり、メディア全域をその速度で書き込めるわけではないことに注意が必要だ。 そこで「Nero CD-DVD Speed」を用いて、DVD+Rへの最大書き込み速度の推移を計測してみた。DVD+Rメディアは、リコー製8倍速対応メディアと日立マクセル製8倍速対応メディアのそれぞれでテストを行なった結果を下のグラフに示す。グラフの緑色の線が書き込み速度を表し、黄色の線が回転数を表している。また、比較用にDVR-ABN8でDVD+Rへの8倍速記録を行なった際のグラフもあわせて掲載している。 リコー製8倍速対応メディアの場合、6倍速でスタートし、CAV方式で8倍速までは速度が向上しているが、そこで速度向上が打ち止めになっており、以後は8倍速のCLV方式で記録されていることがわかる。8倍速に達したときに記録速度が一瞬低下しているが、これはおそらく、より高速で書き込めるか記録品質をチェックするPowerRec機能が働いているのであろう。 平均速度は7.89倍速であり、内周6倍速でスタートするタイプの8倍速対応ドライブ(パイオニアのDVR-A07-Jの平均速度は7.72倍速)とほとんど変わらない。やはり、今回利用したリコー製8倍速対応メディアでは、先ほど推測したように12倍速記録は行なえていないことがわかる。今回利用したメディアの品質がたまたま悪かった可能性もあるが、推奨メディアでも常に12倍速記録が保証されているわけではないことは、留意すべき点だ。 それに対して、日立マクセル製8倍速対応メディアでは、6倍速でスタートして、CAV方式で12倍速まで速度が向上し、以後12倍速のCLV方式で記録されている。こちらも8倍速と10倍速、12倍速に達したときに、記録速度が一瞬低下しており、メディアの品質チェックを行なっていると推測される。こちらは、平均速度も10.34倍速と高速で、ドライブの真価がフルに発揮されているといえる。 ●少しでも短い時間でDVDへの記録を行ないたい人にはお勧めPX-712Aは、他社に先駆けて12倍速記録を実現したDVD±R/RWドライブである。4GBを超えるファイルを6分台で記録できるという高速性は、頻繁にDVDへの書き込みを行なうヘビーユーザーにとっては、非常に魅力的であろう。 正式に12倍速対応メディアが出ていない現状では、メディアの品質のバラツキによって12倍速記録が行なえない場合もあるようだが、今後はメディア側の対応が進むことが期待される。 なお、DVD+RWアライアンスでは、2004年内にDVD+Rの16倍速記録規格を策定する予定であり、CeBIT 2004でも、BENQやリコーなどがDVD+R 16倍速対応ドライブを出展していたが、製品が登場するのは今年後半になるようだ(リコーは16倍速対応DVD+RメディアもCeBIT 2004で展示していた)。 PX-712Aは、読み出し性能やCD-R/RWへの書き込み性能もトップクラスであり、速度を重視する人にはお勧めの製品だ。PlexTools Professionalを利用して細かな設定やメディアの品質チェックが行なえるのも、マニアには魅力的であろう。 □関連記事 (2004年4月20日)
[Reported by 石井英男]
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