IntelがCPUにYonahを採用したNapaプラットフォームを2005年末に計画しているというのは、以前この連載で説明したとおりだが、その後の取材で2006年の末にはMeromベースのSanta Rosa(サンタロサ)と呼ばれるプラットフォームを計画していることが明らかになってきた。 さらに、Yonahなどで構成されるNapaプラットフォーム以降、IntelはCentrinoモバイル・テクノロジ(CMT)のブランド名に関しても変更する計画を持っているということもわかってきた。2005年末以降、Intelのモバイル戦略は新しい時代に突入する。 ●デュアルコア版とシングルコア版が存在するYonah
Napaプラットフォームに関してはいくつかの新しい情報がわかってきた。情報筋によれば、デュアルコアとなるYonahだが、どうやら1コア版と2コア版の両方バージョンが存在している模様だ。 すでにお伝えしているように、Yonahはデュアルコア構成となり、ノートPCが使われるロケーションに応じてCPUコアの数は動的に増減される。 たとえば、ACアダプタに接続している場合にはデュアルコアをフルパワーで動作させ、バッテリで駆動している時にはシングルコアにしてもう片方のコアの電源を落とす、という使い方をするようになる。 シン&ライト向け、つまり熱設計消費電力の枠が45Wに拡張される通常電圧版のYonahはデュアルコア版となる。ただし、一部情報によると、以前IntelはYonahの1コア版をDothanの65nm版として投入する計画を持っていたという。だが、別の情報筋は通常電圧版のシングルコア版の存在を否定しており、現時点ではデュアルコア版からの投入となる可能性が高そうだ。 なお、熱設計消費電力の上限が5Wとなる超低電圧版にはデュアルコア版のYonahは投入されず、シングルコア版のみとなる。というのも、デュアルコア版では5Wというファンレス設計が可能な熱設計消費電力を実現するのが難しくなるからだ。 Yonahは2005年の末にリリースされることもあり、MicrosoftがリリースするLonghornに実装されるNGSCB(Next Generation Secure Computing Base)で必要なセキュリティ技術「LaGrandeテクノロジ」(LT)が実装される可能性が高い。 MicrosoftはLonghornのリリース時期を明確にしていないが、同社に近い筋によれば2005年の末から2006年が現在のリリースターゲットになっているとOEMメーカーなどに説明しているとのことで、2005年末にリリースされるYonahではLTに対応している必要がある。 実際、複数の情報筋がYonahはLTを実装すると伝えてきている。ただし、実装されているからといって、すぐ有効にされるかどうか現時点では不明で、マーケットのニーズに依存することになるだろう。 LTに対応しているのであれば、同じような技術の応用といえるVT(Vanderpoolテクノロジ)に関しても実装していると考えるのが自然で、こちらも可能性が高いといえるだろう。また、Longhornのリリース時期には、64bitアプリケーションも出そろい、64bit OSがメインストリームに降りてくる時期となる。であれば、同じようにYonah世代においてIA-32eが実装される可能性はかなり高いのではないだろうか。 ●Yonah+Calistoga+Gastonから構成されるNapaプラットフォーム
情報筋によれば、Napaプラットフォームのチップセット、つまりYonahのチップセットはCalistoga(カリストガ、開発コードネーム)になるという。Calistogaは、基本的には2005年の第2四半期にリリースされる予定のデスクトップPC向けチップセットであるLakeport(レイクポート、開発コードネーム)のモバイル版となる製品だ。 Sonoma世代のチップセットであるAlvisoからCalistogaへの変更点は多くない。内蔵GPUが高クロック化され、メモリがDDR2-667に対応すること、サウスブリッジがICH7-Mに変更され、Serial ATA-300に対応することなどわずかな変更にとどまる。 Yonah、Calistogaに続くもう1つのNapaプラットフォームの要素は、Gaston(ガストン、開発コードネーム)という名前で呼ばれる無線LANモジュールだ。 Gastonの大きな特徴はPCI Expressに対応することだ。今年の半ばにデビューする予定のIntel Pro/Wireless 2915ABG(開発コードネーム:Calexico2)では、IEEE 802.11a/b/gのトリプルモードに対応し、さらにIEEE 802.11i(WPA v2)やIEEE 802.11eのWMEなどに対応するため、一応無線LANの機能としてはCalexico2で完成をみることになる。 しかし、Calexico2は依然としてバスインターフェイスはPCIとなる。Calexico2にやや遅れてデビューするSonomaプラットフォーム用のチップセットであるIntel 915PM/GM(開発コードネーム:Alviso)では、新しいバスアーキテクチャ「PCI Express」もサポートされるが、無線LANに関してはPCIベースのCalexico2のままとなる。 現在のPCI Expressのコントローラは消費電力が高く、あまりモバイル向きとは言えず、急いでPCI Expressに移行する環境にはないのも事実。だが、近い将来にはPCカードスロットも現行のPCIベースのCardBusからPCI ExpressベースのExpress Cardへ移行することになるなど、徐々にPCI Expressに対応した無線LANの需要が高まっていくことが考えられる。 情報筋によれば、IntelはNapaプラットフォーム世代で、Gastonと呼ばれる無線LANモジュールへ移行することになるという。Gastonでは、バスインターフェイスがPCI Expressに変更され、Mini PCI Expressと呼ばれる現在のMini PCIに似たスロット向けに提供されることになる。 その情報筋によれば、Gastonの無線LANはIEEE 802.11a/b/gに対応する製品で、次世代無線LANであるIEEE 802.11nには対応していないという。しかし、CeBITのレポートでもお伝えしたように、Wi-Fi AllianceによればIEEE 802.11nの規格化は予定より1年前倒しにされ、2005年の第3四半期になるという。このため、今後Gastonの仕様にも何らかの変更がでてくる可能性はあるだろう。
●2006年の末にはSanta Rosaプラットフォームへ移行
Napaプラットフォーム世代の後半、2006年の半ばにはYonahの後継CPUとしてMeromが登場し、Yonahと置き換わることとなる。 Meromに関してはすでに後藤氏がレポートしたように、4MBのL2キャッシュが搭載されることが判明している。また、別記事にもあるように、Meromには第2世代のVTが搭載される。 2006年の末には、開発コードネーム「Santa Rosa」(サンタロサ)で呼ばれる新しいプラットフォームへと移行する。Santa RosaではCrestine(クレスティーン)と呼ばれる新しいチップセットへ移行する。 Crestineに関しては依然として詳細な情報は少ないのだが、内蔵されるGPUに関してはGrantsdale/Alviso世代でDirectX 9対応に拡張されるIntel Extreme Graphics3ベースとなるほか、メモリに関してはおそらくDDR2-800に対応することになるが、このあたりは今後のメモリの動向次第となるので、現時点ではあくまで予定であるという段階だ。 情報筋によればCrestine世代で最も大きなトピックは、無線LANのチップセットへの統合になる可能性が高い。実際そう説明する情報筋がある。ただし、この統合がサウスブリッジへの統合を意味するのか、それとも何か別の形になるのかはまだわかっていない。 最も自然な形はMACとベースバンドをサウスブリッジに統合し、無線部分だけを外部チップとする形だろう。いずれにせよ、この2006年末のプラットフォームに関してはまだまだ変更される可能性も高く、今後の情報を待ちたいところだ。
【Centrinoモバイル・テクノロジの予想スペック(筆者推定)】
●Napa、Santa Rosa世代では第2世代のCMTブランドネームの導入も計画
このように、Centrinoモバイル・テクノロジ(CMT)のラインナップは2005年末に導入されるNapaプラットフォーム以降、劇的な変化を遂げることとなる。 Napa以降、デュアルコアとなる第2世代HTテクノロジ、セキュリティのLaGrandeテクノロジ(LT)、ハードウェア仮想化のVanderpoolテクノロジ(VT)、さらには64bitのIA-32eなどが続々と搭載され、それまでのBaniasプラットフォーム(Carmelプラットフォームとコードネームで呼ばれることもある)、Sonomaプラットフォームと比べると、大きな違いがあることがわかる。 情報筋によれば、IntelはNapa以降のプラットフォーム、つまりNapaプラットフォーム、Santa Rosaプラットフォーム、Santa Rosaの後継プラットフォームとなる世代において、CMTに替わるブランドネームを導入する計画があるという。 といっても、Pentium II、Pentium IIIのように、Centrinoの名を受け継ぐものとなる可能性が高いとその情報筋は伝えている。 IntelがNapa以降で、新しいブランドネームを計画する背景には、Napa以降、ポータビリティのノートPCにもBanias系のYonahがCPUとして利用されるなど、Banias系のコアがメインストリームに進出するということがある。 このため、Napa以降のプラットフォームで新しいブランドネームを導入し、モバイルがニッチではなくメインストリームになったということを印象づける狙いがあるものと考えられる。 このように、Intelの長期戦略を眺めていると、Intelが長いレンジでモバイルPC普及への布石を打っていることが見て取れる。 Intelは最初のCMTで、(日本を除く地域では)プラットフォームの立ち上げをコーポレートプラットフォームにフォーカスした。それにある程度成功したところで、第2段階としてDothanのリリース時にプロセッサナンバを導入し、今度はそれを武器にコンシューマ市場においてもモバイルPCの普及を目指していく。 そして最後の仕上げとなるのが、新しいCMTブランドだ。これを導入することで、現在限られた市場となっているモバイルPCのマーケットをメインストリームにしていくわけだ。 □関連記事
(2004年3月26日) [Reported by 笠原一輝]
【PC Watchホームページ】
|
|