森山和道の「ヒトと機械の境界面」

二足歩行ロボット競技大会 第5回ROBO-ONE開催
〜「夢と感動、そしてそれを現実に」



 既に本誌読者にはお馴染みの二足歩行ロボットによる競技大会「ROBO-ONE」の第5回大会が日本科学未来館にて開かれた。今回は2月1日の決勝の模様を中心にレポートをお届けする。

神矢みのる氏(右)。現在、月刊誌「チャンピオンRED」にて『プラレス3四郎』の続編である『プラレスラーVan』連載中

 今大会では、かつて一世を風靡したマンガ『プラレス3四郎』のマンガ家・神矢みのる氏が特別審査員としてROBO-ONEに初参加。残念ながら柔王丸はまだ登場していないが、ROBO-ONEの中心世代である20代後半〜30代前半世代には嬉しい大会となった。

 まず今大会の大きな特徴は、エントリー台数129台に対し、参加台数は101台にのぼったということだ。今まではエントリーはしたものの、実際には参加できなかった人が多かったが、今回の選手控え室は人でいっぱいだった。なお、予選出場台数は62台。決勝トーナメント出場台数は、32台である。


●32台の戦い始まる

 さて試合だが、決勝戦は予選を突破した32台によって行なわれた。今回から前回までと少しルールが変わり、1回戦、2回戦まではデモンストレーションなしの1ラウンド制、つまり一発勝負のバトルのみで勝ち上がっていく方式になった。そのため試合数は多いものの極めて早いペースで進行していくことになった。

 まず、1回戦16試合と、2回戦8試合の模様を紹介する。


長谷川翔平さんの「HAYABUSA」。九州大学ヒューマノイドチームによる「2325-RX」の変態的パンチに破れる。しかも場外リングアウト。これに観客が燃える。クッションがあるとは言え、製作者は真っ青!?

佐伯博史さんによる恐竜型ロボット「Ultra-Chopper」VS 斉藤均さんによる足と振り子のロボット「Looper」でも場外リングアウトが! 三沢研究所 堀江支店の「ちょんまげの啓三」VS 韓国からの挑戦者Chang-Hoon, Jeonさんの「Storm Waves」。「Storm Waves」の勝ち

写真左のJin Satoさんは「ORF-A1」を携え、カナダからの参加。だが強敵中村さんの「HS-WR-03"」の猛攻撃に破れる マスタースレーブで操作する「剛王丸」の津藤智さん、「HAJIME ROBOT」の坂本元さんは共にROBO-ONE常連の強豪。勝利は「HAJIME ROBOT」に

予選19位通過、ほりですさんの「たぬたぬ」VS 予選3位通過、Dr.GIYさんの「ヨコヅナグレート不知火」。ヨコヅナグレート不知火は無線そのほかの不具合もあったようで、「謝り倒す攻撃」という名の頭突き攻撃を持つ「たぬたぬ」に敗退 パンチの応酬、予選4位通過、バーニング宮田さんの「バーニングスター」VS 中村さんの「HS-WR-04」。残念ながらバーニングスターは途中でハングアップ状態に。より安定していた「HS-WR-04」が勝利 相撲ロボットのノウハウを持った吉川祥隆さんの「力士マン」VS 山口雅昭さんの「Brownie04a」。Brownie04aは綺麗な歩行をするロボットだが、重量5kgの力士マンの持つ圧倒的なプッシュに為すすべもなく倒れた

金色ボディ、しもさささんの「U-kngiht」VS 山田茂さんの「Walker -Worker」。U-kngihtはデザインにこだわったロボットだが、まだ歩行や起きあがりなど基本動作の安定を欠き、敗退 SISOさんが掲げる「G-Tune」は実は変形機構を備えたロボット。Admant Victoriaに敗退 大河原和広さんの「MAGI」は重さ1.5kgしかない軽量ロボット。だが試合では少しバランスを崩したか、起きあがりに苦戦し韓国の「TAEKWON-V」に敗退

やっぱり大人気、こうじさんらによる「マジンガア」。今回はダンスダンスレボリューションのマットも使い、全身で操作。相手の菅谷稔さんによる「Felsen」は絶妙のタイミングで繰り出される攻撃に敗退

前回、前々回と優勝2連覇の菅原雄介・影こと森口拓雄チーム は生まれ変わった「A-Do」を携えて登場。森口氏は「マトリックス」のエージェントスミスの物真似をしながら操縦。人間のように片手をついて起きあがる動作を持ちながらも、より安定したOmniStrikerに敗退。優勝2連覇チームは一回戦で消えた
緑色ボディ、チャーリーさんによる「FZ-3」VS SUMYさんによる「ARIUS 2」。見た目と違い、ARIUS 2の攻撃力のほうが勝っていた

●2回戦開始

森永さん「Metalic Fighter」VS Chang-Hoon, Jeonさん「Storm Waves」 井上裕二さんの「マイケル」 VS 「2325-RX」 佐伯博史さんの「Ultra-Chopper」VS 中村さんの「HS-WR-03"」。Ultra-Chopperは鳥脚型ではないものの恐竜型のロボット。首と尻尾で攻撃する。健闘したものの、起きあがりが得意ではない方向に倒れてしまい、敗退

「HAJIME ROBOT」VS「たぬたぬ」。これはもう、HAJIME ROBOTの圧勝。たぬたぬは相手が悪かった 「力士マン」VS「HS-WR-04」。重さ5キロ、ラジコンサーボではなくDCモータを使った重量級の力士マンはやはり大きなHS-WR-04にとっても強敵だと思われたが、パワーはほぼ互角だったようで、HS-WR-04が、いったん倒れると立つことのできない力士マンを押し倒して勝利をおさめた。だがHS-WR-04だから勝てたものの、他のロボットとあたったら力士マンが勝つ可能性が高かったと思われる。次は起きあがり機構を備えて挑戦してもらいたい 山田茂さんの「Walker-Worker」VS SUMYさんの「ARIUS 2」。ほぼ同じくらいのサイズのロボット同士の戦いは、よりバランスと自重を使った攻撃に長けた「ARIUS 2」の勝利に。「ARIUS 2」には審査員たちから「動きが優雅」という賞賛の言葉も寄せられた

Jeon Young Suさんの「TAEKWON-V」VS 滝沢一博さんの「Admant Victoria」。「Admant Victoria」はだいぶ安定してきたが、今回も途中で調子が悪くなってしまった こうじさんの「マジンガア」VS 前田武志さんの「OmniStriker」。マジンガアは今回快調に見えたが、途中でやはり調子が悪くなり惜しくも敗退

その後、敗退したロボットたちによって「ランブル」が行なわれた。これば米国のバトルボッツを見てきた西村委員長の発案によるもので、ロボット同士のバトルロイヤルだ。ロボットが狭いリングの上で動き回る様子に観客、参加者ともに盛り上がった。最終的に山田茂さんの「Walker-Worker」とほりですさんの「たぬたぬ」がリング上に残ったが、会場ならびに審査員判定の結果、勝者は「たぬたぬ」となった

●ベスト8

 こうしてベスト8に勝ち上がったのは森永さんの「Metalic Fighter」、九州大学ヒューマノイドプロジェクトの「2325-RX」、中村素弘さんの「HS-WR-03"」「HS-WR-04」、坂本元さんの「HAJIME ROBOT」、SUMYさんの「ARIUS 2」、Jeon Young Suさんの「TAEKWON-V」、前田武志さんの「OmniStriker」。

準決勝第一試合、まず行なわれたのは森永さんの「Metalic Fighter」VS 九州大学ヒューマノイドプロジェクトの「2325-RX」の戦い。どちらもほぼ万全の状態で臨んだこの戦いは、間違いなく今大会ベストバウトの一つに数えられる名勝負だろう。特に「Metalic Fighter」の逆立ち蹴り、「2325-RX」のパンチによるリングアウトの瞬間には会場の興奮度が一気に上昇!

そして結果は2325-RXの勝利に。Metalic Fighterはリングにうつぶせになって悔しがる。こんなモーションまで作ってくるなんて、さすが(笑) 準決勝第2試合、中村さんの「HS-WR-03"」VS 坂本さんの「HAJIME ROBOT」の戦いもまた良い勝負だったが、より連打のスピードにまさる「HAJIME ROBOT」が勝利を収めた

準決勝第3試合、破れた中村さんは続けて「HS-WR-04」でSUMYさんの「ARIUS 2」に挑むが、こちらも敗退。ARIUS 2は小柄ながら、のし掛かられても、相手を押し返すほどの素晴らしいバランスを見せた

準決勝第4試合、韓国のJeon Young Suさんの「TAEKWON-V」VS 前田さんの「OmniStriker」。OmniStrikerは床に置かれたボールを掴んで自分で蹴るデモンストレーションを見せる

日本のROBO-ONE大会でも前回、前々回では多かった低いバランスで攻めてくるスタイルの「TAEKWON-V」に対して「OmniStriker」は上から引っかけるように、あるいはアッパーで攻撃する。だが途中でサーボに負荷がかかり調子が悪くなったOmniStrikerはしゃがんだ状態での攻撃にシフト。この格好でも歩行できるのでルール上は問題ない。
 普段はちゃんと立ったままで戦うが、いざというときの為にこういうモードも用意しておく、この美意識と作戦の両面に作者の考え方を感じる。TAEKWON-Vもアルミ加工技術を使った綺麗なロボットだったが、勝利は多様な攻撃と防御で手堅くOmniStrikerがおさめた

●ベスト4による準決勝、3位決定戦

 こうしてベスト4に残ったのは「HAJIME ROBOT」「2325-RX」「ARIUS 2」「OmniStriker」。まずは「HAJIME ROBOT」VS「2325-RX」戦から。

両者とも非常に速い歩行速度を誇るロボットである。お互いがグルグルと背後を取ろうとする様子は、大変エキサイティングだった。ラウンドは「HAJIME ROBOT」が取ったが、果敢な攻めやアクロバティックな動きが評価され、結局勝利は九州大学の「2325-RX」が勝ち取った

見事なバランスの「ARIUS 2」。予選ではお子さんが操縦していたが、決勝では奥さんが操縦。ロボットのバランスだけではなく夫婦間のバランスも見事なもの。実際問題として、ロボットの特性を把握している製作者はセコンドとなって操縦は別の人間が行なうというのはなかなか良い選択かもしれない。ちなみに操縦インタフェースはWindows CE上で動作する

青いボディの「ARIUS 2」 VS 赤いボディの「OmniStriker」。両者とも抜群のバランス感覚を持つロボットで、個人的にはこの一戦に非常に注目していた。だが「ARIUS 2」は今一歩OmniStrikerの懐に入ることができず、伸縮自在の長いリーチと一歩で180度ターンする能力を持つOmniStrikerに破れた

「ARIUS 2」はその後そのまま3位決定戦に挑む。だが圧倒的な安定感と復帰能力を持ち、大技も繰り出せる「HAJIME ROBOT」に破れた。この浴びせ蹴りにはさすがにひとたまりもない 「HAJIME ROBOT」で勝利をおさめ3位に輝いた坂本さん

●決勝戦

 決勝戦は九州大学チーム「2325-RX」と前田さんの「OmniStriker」の戦いとなった。
九州大学チーム
2325-RXは自分で敷いた敷物の上でのでんぐり返しからデモンストレーション開始。戦いはお互いがお互いの背後を取ろうとするレベルの高いバトルとなったが、後ろにも攻撃できる腕を持った「OmniStriker」有利で展開

「2325-RX」は何度も変則的パンチを繰り出すが、バランスの取れた「OmniStriker」には通用せず、逆に圧倒的な攻撃力の前に苦しむ。一方、「OmniStriker」の前田さんはガッツポーズを連発!

ところが最終ラウンドになって異変が発生。開始直後、いきなり「OmniStriker」の下半身が脱力、倒れてしまった。実は「念のために」と思って交換したバッテリが実は充電されておらず、バッテリ切れとなってしまったのだという。この後、審査中に行なわれたエキシビジョン・マッチではOmniStrikerが勝利したが、これは審査には影響せず 結局、バッテリ交換が仇となり、OmniStrikerが破れ、2325-RXが最終的な勝利をおさめた。喜びの九州大学チーム

●ベスト8によるランブル、そして

 そして決勝のあとはベスト8のマシン8台によるランブル。完成度の高いロボットによるバトルロイヤルに、会場はトーナメント戦以上に盛り上がった。まず一斉に中央に集まってくるのはさすが勝者たちと言うべきか。技と技の応酬、他のロボットを押し出したばかりのロボットがまた別のロボットに押し出されたり、柱を使ってそれを何とか防ぐロボットがいたりと、戦いは白熱。

 だが結果は予想どおり、坂本元さんの「HAJIME ROBOT」がまるでブルドーザーのように他のロボットを押し出して行き、勝利を収めた。

一斉に集まってくるロボット達 大乱戦。もう無茶苦茶
優勝ロボット「2325-RX」を押し出す「HAJIME ROBOT」 「気持ちいいです」と「HAJIME ROBOT」の坂本さん

 その後は表彰式や記念撮影大会。

優勝した九州大学チームと「2325-RX」。2325-RXはさすがに傷だらけだがニコニコマーク。手前の女性が持っている色紙は、特別審査員・神矢みのる氏による「2325-RX」似顔絵入りサイン色紙 こちらは準優勝の前田さんと「OmniStriker」

今度は夏

 今大会ではかつての上位陣がロボットを作り直したばかりで予選落ちしたり一回戦敗退したりした。このへんは次大会に期待したい。ただ、かつてのようなあっと驚く「技」が見られなくなったのは少し残念である。九州大学チームによる側転には驚かされたが。

 一方、いくつか新しく見られた面白い要素もあった。リングを囲っていたアクリル板がなくなったことによるリングアウトはやっぱり燃えるし、相手の後ろを取るためにお互いがグルグルと回り合ったり、(偶然ではなく)操縦によって相手の攻撃をスッと避けるロボットが登場したことは、今後のROBO-ONEの可能性を感じさせる。また、ルール改定によってウエイトをかけた攻撃が可能になった点も面白い。センサを活用するロボットも増えてきた。今後、ロボットの歩行と起きあがりが、より安定化してくれば、もっと大技も出てくるだろう。

 新しい戦いの形式もあり得るかもしれない。ランブルのような乱闘があれだけ盛り上がるのであれば、たとえば「タッグ戦」などはどうだろうか? 実際に今回、兄弟ロボット2台でエントリーした中村さんのような人もいた。2台のロボットによる合体技同士のぶつかりあいなどは、想像しただけでもわくわくする。

 最近はホビイストの世界から抜け出しつつある人もいる。ホビイスト用の新しいパーツ等も発売され始めている。ROBO-ONEの世界は、今後も進化していきそうだ。

 なお、2月29日には日本工学院専門学校(蒲田校)にて「ROBO-ONEスペシャル」が実施される。これはロボットの運動性能を競う総合競技で、ROBO-ONE版のアスレチックレースのようなものになる予定だという。こちらも期待したい。


□ROBO-ONEのホームページ
http://www.robo-one.com/
□ROBO-ONEスペシャル
http://www.robo-one.com/robo_special/robo_special.htm
□関連記事
【2003年8月19日】第4回ROBO-ONE観戦記【本戦編】
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0819/kyokai12.htm
【2003年8月18日】第4回ROBO-ONE観戦記【ROBO-ONEジュニア・予選編】
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0818/kyokai11.htm
【2003年2月10日】2足歩行ロボット競技大会「第3回ROBO-ONE」観戦記
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0210/kyokai03.htm

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(2004年2月4日)

[Reported by 森山和道]

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