1月29日発表

　株式会社東芝は29日、2003年度のPC事業の赤字幅が、当初見込みのマイナス210億円からマイナス265億円に拡大するとの見通しを示した。昨年10月に80億円の赤字見通しから下方修正したのに続き、今年度2回目の下方修正となる。

　今年1月1日付けで、PCおよびサーバー、ネットワーク事業を分社化し、PC事業の抜本的な構造改革に乗り出している同社だが、LCDを中心とした部材価格が高止まりしていることでコスト削減効果が思うように引き出せなかったことに加えて、LCDそのものの供給が逼迫していることで予定数量を調達できずに計画の生産数に達しなかったこと、構造改革による製品数の絞り込みや低価格製品の増強による製品構成の変化などが、今回の下方修正へとつながった。

　また、当初の想定価格よりも約1万円低い価格で平均価格が推移しているといった読み違いの影響も見逃せない。

　これにより、年間出荷台数も、国内は当初計画通りの110万台としたものの、海外が10万台減の340万台へと下方修正。海外の出荷計画の下方修正も2度目となり、全世界合計では前年比14%増となる450万台の年間出荷計画となった。

　だが、赤字幅は第2四半期が約100億円程度の赤字、第3四半期が50数億円の赤字であるのに続き、第4四半期は40億円程度の赤字を見込んでいるというように、期を追うごとに赤字幅が減少していることを示し、「PC事業においては収益改善への兆しが少しずつ出ている。新年度に向けて、PC用LCDの調達にもめどがついた」(東芝)としている。

　だが、その一方で、「1月からスタートしたPC事業の新体制では、これまでの施策だけで立ち直らせるのは難しいとして、もう少し突っ込んだ改革に関する検討を開始している」(同社)とした。

　今後、PC事業の構造改革に関する追加施策が発表される公算が高そうだ。

　一方、2003年度第3四半期連結決算は、連結売上高は、前年同期比1%増の1兆3,247億円、営業利益は116億円改善の140億円、税引前利益は262億円改善の94億円と増収増益。だが、当期純損益は、税負担の増加などの影響で23億円減少のマイナス92億円の最終赤字となった。

　増収の背景には、電子デバイス部門の好調ぶりが特筆されるほか、松下東芝映像ディスプレイへのブラウン管事業の移管、東芝三菱電機産業システムへの産業システム事業の移管によって発生している約500億円の減収分を差し引くと、前年同期比5%の増収になるという。

　セグメント別では、PCなどが含まれるデジタルプロダクツが、売上高で前年同期比2%減の5,345億円、営業損益で166億円悪化のマイナス78億円の赤字。PCや海外向け携帯電話、北米市場向けプロジェクションTVの売り上げ減が大きく影響し減収減益となった。

　携帯電話については、国内のカメラ付き携帯電話は伸張しているが、海外向けが減少し、トータルでは減収だという。

　成長を支えた電子デバイス部門は、売上高が前年同期比6%増の3,379億円、営業利益が251億円増の344億円の増収増益。松下東芝映像ディスプレイへの移管分210億円を考慮すると13%増の伸びになるという。半導体事業において、NAND型フラッシュメモリや携帯電話向けMCPが好調であるのに加えて、液晶事業でも携帯電話向けやモバイルPC向けが伸張。とくに液晶事業は、売上高で212億円増の778億円となり、収益面でも黒字転換を果たしたという。

　社会インフラ部門は、海外向け火力プラントの減少や産業システム事業の事業移管などによって、売上高は8%減の3,144億円。営業損益はマイナス181億円の赤字となったものの、交通システム、医療システムなどの成長によって、前年同期に比べて24億円の改善となった。

　家庭電器部門は、個人消費の低迷の影響を受けて、売上高が1%減の1,541億円、営業損益が11億円減のマイナス3億円の赤字と減収減益となった。

　なお、2003年度の通期見通しである売上高5兆6,500億円、営業利益1,400億円、税引前利益900億円、当期純利益の250億円には変更がないが、「PCをはじめとするデジタルプロダクツ事業は厳しい状況にある。これを半導体でカバーすることになる」として、電子デバイス事業を今年度の成長エンジンとする姿勢を明らかにしている。

□東芝のホームページ
http://www.toshiba.co.jp/
□決算概要
http://www.toshiba.co.jp/about/ir/er200401/japanese/index_j.htm
□関連記事
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【2003年7月31日】東芝、第1四半期は413億円の赤字
～PCとTVの価格下落が影響
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0731/toshiba.htm

(2004年1月29日)

[Reported by 大河原克行]