パナソニックのLUMIX FZシリーズは、FZ1が高い評価を得ていた。小型軽量なのに、12倍ズームを搭載。しかも手ブレ補正付きである。 ただし、200万画素とプログラムAEのみという点がこのカメラの足を引っ張っていたとも言える。そこで、まずプログラムAEのみを絞り優先AEやシャッター優先AEにも切り替えられるFZ2が登場した。 そして真打ちとして、撮像素子の画素数を400万画素とし、サイズも1/3.2型から1/2.5型と大型化したFZ10が登場した。これに伴い、ボディーだけでなく、レンズも大型化した。「一眼レフ?」と質問されるほど、迫力のあるレンズだ。 なお、FZ1をFZ2相当の機能にするバージョンアップキット「DMW-VUZ1」が発売されている。
●使い勝手はFZ1とかなり良く似ている FZ10がFZ1よりどれだけ大きくなったかは、並べてみれば一目瞭然だ(写真B)。中でもレンズの大きさが目に付く。ライカの認証を得た、DCバリオエルマリート6~72mmF2.8(35mm判換算35~420mm)である。正面から見ると、まったく別のカメラに見える。 しかし、操作性はかなり良く似ている。まず、メインのダイヤルで、露出モードや再生などを選ぶ(写真C)。FZ10で絞り優先AE、シャッター優先AE、マニュアルモードを使用するには、このダイヤルでASMポジションを選択する。 シャッターボタン周辺の、ズーミングや拡大縮小再生ができるレバーとか、連写の切り替えスイッチなども、まったく同じ配置だ。 背面も液晶モニタが1.5型から2型に大きくなり、見やすくなったが、その右の操作部は同じだ(写真D)。十字キーで、露出補正/オートブラケット、セルフタイマー、ストロボ、再生を切り替えられる。ただし、FZ10では、ホワイトバランスの微調整や調光補正も加わった。
また、液晶モニタ上部のスイッチもほぼ同じ(写真E)。変わった点はフォーカススイッチが前面のレンズわきに移されたかわりに、露出調整スイッチが付いたぐらいだ(写真F)。内蔵ストロボのポップアップスイッチの位置も多少変わった。 光学ファインダーはなく、液晶モニタとEVFを切り替えて使うことになるが、FZ10のEVFはFZ1より見やすくなった。ただ、EVF特有のレスポンスの悪さはまだ残っている。このタイプの高倍率ズームレンズ一体型カメラはEVFが理想だとは思うが、EVFをもっと改良してもらいたいところだ。
液晶モニタのメニューは基本的にほとんど同じ(写真G)。非常にわかりやすく、使用説明書を見ないでも操作できた。やたらとメニューの階層を深くしていないので、本当に使いやすい。手ブレ防止機構もこのメニューでオンオフ、あるいはモード1(常時手ブレ補正)、モード2(シャッターレリーズ時に手ブレ補正)に切り替えることができる(写真H)。再生時のメニューが画像と重なるもので、絵柄によっては見にくくなる(写真I)。
電源はリチウムイオン充電池。FZ1とまったく同じで、互換性がある。この電池室に記録メディア(SDカード)を収納するのもFZ1と同じだ(写真J)。 内蔵ストロボの発光部はかなり高い位置までアップする(写真K)。さらに、外付けストロボのパナソニックPE-36Sがホットシューに装着できる(写真L)。もともとパナソニックはカメラ用ストロボで有名だった。傘下のウエスト電気がプロ用を含めて、ストロボをずっと作ってきた実績があるからだ。
このように操作性を受け継いでいるために、FZ1のユーザーは抵抗なくFZ10を使うことができるだろう。こういう操作性の継続は地味だが、重要なことなのだ。 あとFZ10に要望したいことは、質感の向上だ。だいぶ高級感が出てきたが、400万画素12倍ズームレンズのデジカメとしては、もうひとつつき抜けて欲しいところだ。 ●FZ1からの進化が見えた、実写の結果 ここで、いつもの通り、実写テストをしてみた。 まず、定点観測の中心となる、ビルの撮影。FZ1ではプログラムAEのみで、絞りの調整はできない。このため、FZ1ではプログラムAEでF5.6、FZ10では絞り優先AEでF5.6のみで撮影した。結果は400万画素のFZ10の描写が非常にいい。しかし、FZ1も200万画素にしてはいい描写である。両方ともコントラストが高く、くっきりとした描写になった(写真1)。 次は望遠側で撮影した。これもF5.6で撮影している。FZ10は文句のない描写である。FZ1はやや露出がアンダーとなったが、まずまずの描写だ(写真2)。
次の定点観測はレインボーブリッジだが、今回は難航した。露出がうまく合わないのだ。けっきょく、FZ10は絞りF5.6の絞り優先AE、FZ1はプログラムAEで撮影して、ようやく露出をほぼ近くすることができた。絞りがちがうので、比較にならないが、FZ10の画質の良さがわかる。しかしこの条件なら、もう少しくっきりとした描写になって欲しい。やや、AFが甘いようだ(写真3)。
もうひとつの定点観測は特急列車の通過を連写で撮影するもの。これも露出が合わなくて、苦労した。結局、FZ10は絞りF2.8開放の絞り優先AE、FZ1はプログラムAEでF4にしかならなかった。両方とも被写界深度が深いし、ピントの上では問題がない(写真4、写真5)。ただし、JPEGの最高画質で撮ると、連写は最大4コマまでで、もう1コマ撮れたらいいのに、と思った。連写速度が速いのだから、バッファメモリを増やして、6コマぐらいは連写できるようにして欲しい。なお、FZ1はやや露出アンダーめになった。
そして、モデル撮影。曇り日だったので、屋外での撮影は全身の撮影にした。オートホワイトバランスまかせで、わずかに青みがかっているが、マニュアルホワイトバランスに切り替えるよりいい(写真6)。
室内の電灯光(タングステン光)でのオートホワイトバランスはFZ1のほうが赤くなった(写真7)。マニュアルホワイトバランスだと、FZ10はほぼ完璧に補正されるが、FZ1はまだ黄色味が残っている(写真8)。 ●頼りになる手ブレ補正、望遠も接写もこなす 手ブレ補正機構は本当に効果が高い。暗い室内などで手持ち撮影をすると、補正ありと補正なしでは、ブレがまったくちがう。手ブレ補正がオンになっていると、手ブレはゼロと言ってもいい。
【お詫びと訂正】記事初出時、写真9a、9bのキャプションが間違っていました。お詫びして訂正させていただきます。 また、12倍ズームの望遠側は35mm判で420mmに相当する超望遠で、部分的な切り取りができる(写真10)。なお、この写真で見ると、FZ10のダイナミックレンジは1/2.5型CCDにしては普通である。 FZ10は非常にきれいな発色をするため、花の写真などにも向いている(写真11)。なお、広角側では5cmまでの超接写も可能だ。 このカメラは手ブレの心配が少ないので、薄暮のシーンなども手持ち撮影が楽々できる(写真12)。 パナソニックLUMIX FZ10は大型化したが、そのぶん画質が向上し、また応用範囲が広くなった。これ1台で、どんな撮影にも対応できるオールマイティーのデジカメである。 【お詫びと訂正】記事初出時、写真3b、5a~c、6b、7b、8b、9bのキャプション内でISO感度の表記を誤っておりました。お詫びして訂正させていただきます。 □松下電器産業のホームページ ■注意■
(2003年11月25日)
【PC Watchホームページ】
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